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私の診療雑感!!

米田恵寿

琉球大学大学院医学研究科感染制御医科学専攻
  感染症・呼吸器・消化器内科学(第一内科) 屋良 さとみ

皆様こんにちは。初めて御挨拶申し上げる 方々もいらっしゃることと存じます。琉球大学 第一内科の呼吸器で“びまん性肺疾患(間質性 肺炎)”を専門としております屋良さとみと申 します。この度、県医師会報8 月号特集の「緑 陰随筆コーナー」への自由テーマでの原稿依頼 封書が突如参りまして大いに困惑しておりま す。。。しかしこうなればもう自分を少々語るし かないかなということで書き始めたところで す。少々おつき合い下さい。。。

私の医者人生も早20 年弱!学生時代ポリク リで回った講座全てが面白いと思ってしまった 私は、尊敬する教授や先輩方が多いということ が入局の決め手となり第一内科に入局。胸部X 線・CT 読影から疾患を推定していく不可思議 な面白さに惹かれ呼吸器に属することとなりま した。更に1 年目研修医の私の初の夏休みを全 て返上することとなった“間質性肺炎の急性増 悪で入院し挿管され、多発性筋炎の確定診断を つけた初の重症例”の主治医となり、またいつ の間にか“家族性間質性肺炎”の患者さん達の 主治医にもなり、私の医者人生はレールに乗っ たかのように自然に“びまん性肺疾患(間質性 肺炎)”の分野に運ばれていきました。人生の 不思議を感じます。

また、私はどうやら頑丈に生まれつき、呼吸 器・感染症病棟にて回ってくる若々しい研修医 や学生さん、スタッフが次々に呼吸器感染症に 倒れ順繰り休む中で、10 歳以上も年上の私だ けがなぜかいつも一人倒れることから取り残さ れ、皆に“サイボーグ”と呼ばれ、有り難いこ とに医者に必要なしぶとい体力を持つことがで きているようです。

“サイボーグ”であるはずの私は“人”が大 好きで、それは診療態度にも出てしまうようで す。まず患者さんに対してはその“性格”も把 握したいと思い、患者さんの背景・全体像がわ かってくれば主治医として今後の診療にもスム ーズに結びつくだろうと考え、外来でもつい病 歴取りが長くなることがあります。

また私“呼吸器内科”なのに、外勤先の外来 で糖尿病はじめ高脂血症、高血圧症の慢性患者 さんが増えてきていて、「“糖負荷試験”施行率 は屋良先生がダントツトップですよ!」と言わ れてしまうのは、HbA1c 5.5 %前後、空腹時血 糖100mg/dl 台を見つけたら放っておけないた ちだからでしょうか?

2 年目の研修医の時には“命”に関わる不思 議な体験をさせて頂きました。。。1 年目の時に 大学で主治医を担当した肺気腫及び肺癌の70 代の男性患者さんが加療後郷里の離島に戻られ た後、かなりターミナル期となり在宅療養御希 望にて入院ではなく自宅療養されておられまし た。その頃に私が住民健診業務で当地を初めて 訪れた際に、偶然にも患者さんの娘さんが私を 見かけ声をかけて下さり「今晩は島に渡って父 に逢いうちに泊まっていって下さい!」と言っ て下さいました。夕方急遽乗船!そして懐かし い患者さんにお逢いした時、一時言葉を失いま した。私の記憶の中にあるこの患者さんは、親 分肌で威勢の良い明るい中肉中背の方だったの に、私の目の前のこの方はご自宅のお布団の中 に弱々しく寝たきりとなりお痩せになったお姿 だったのです。思わず涙が浮かんできました。。。 突然の私の訪問にとても喜んで下さりおしゃべ りし、子供さん達に指示して離島訪問が初めて である私を色々のどかに観光案内させて下さい ました。その日は夜まで語らい、翌朝手を振り ご挨拶をして健診に戻った私の深い思い出とな りました。。。そして翌年、再度離島健診に当た ったので、今度は自ら島を訪れました。。。そし てそこで肺癌であるこの患者さんがもう既に亡 くなられたことを初めて知り、今度はお焼香を することとなってしまいました。しかしそこで 子供さん方がお話し下さったのが「昨年先生が 来られた後から、長く寝たきりだったはずの父 は驚くべき事に、急に起きられるようになり数 ヶ月はお庭もゆっくり自分で歩いて散策できる までになっていたんですよ!父も嬉しかったん だと思います。。。」とのことでした。お焼香が とても悲しかったことを覚えています。

そして時々自分の疾患のついでに悩み等も語 られる患者さん方に「先生と話したらもう治っ た気がする!」と言って頂くことがあり、前述 の離島の経験とも重ね合わせる時“ちっぽけな 無力な私だけど、医者を続けていく意味・意義 はあるのかも。少しは皆さんのお役に立てるの かも。。。”と思うことができました。さらに十 人十色の患者さん・ご家族の前向きな良い生き 方、そして素晴らしい先輩・同輩・後輩医師・ スタッフの方々から日々“人生”を学ばせて頂 き、医者という仕事の奥深さを感じかみしめさ せて頂いている毎日です。今後も精一杯頑張っ ていきたいと思います。。。