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都道府県医師会救急災害医療担当理事連絡協議会

理事 玉井 修

去る7 月1 日(木)、日本医師会館において標 記協議会が開催されたので、概要を報告する。

開 会

石井正三常任理事より開会の挨拶があった。

挨 拶

原中勝征会長より、次のとおり挨拶があった。

「救急医療は、疲弊している地域医療の代表 的なものである。以前は、たらい回しが医療側 に責任があるようなことも言われていたが、実 際調べてみると病院側も疲弊していて受入でき ない状態であった。また、過疎地帯の救急、ド クターヘリの問題とか解決されていないものが 多々ある。いろんな面で日医は医療費をあげて いくことが地域医療を救うことだと申し上げ、 救急現場の声を中央に届ける努力をしてきた。 これから東海地震や大震災が起きる危険性を孕 んでいるので、このような場で救急災害医療に ついて話し合ってもらうことは国民を守ること に繋がる。ご協議よろしくお願いしたい。」

報 告

救急災害医療を巡る諸問題について

石井常任理事より、近年の救急医療に関わる 動き、平成21 年の消防法改正に関する「傷病 者の搬送及び傷病者の受入れの実施に関する基 準」(以下実施基準)の策定が各都県で進んでい ないこと、今後の課題について説明があった。 特に、実施基準については、現在6 県が策定し ているが、救急患者受入困難問題を解決するた めに早く受入させるというだけのルール作りで はなくて、各傷病者毎のルールづくり、搬送の 基準を秋までに各都県で策定いただきたいこ と、医師会としての災害医療対策として、前期 委員会報告書で提案された「医師会JMAT」 の具現化・研修体制の確立を行いたいとの説明 があった。詳細は下記のとおり

近年の救急医療に関わる動き

  • ・平成18 年 日本版心肺蘇生法ガイドライン 策定、「救急蘇生法の指針」を 全会員に配布
  • ・平成19 年 救急医療用ヘリコプター特別 措置法の成立・施行
             第1 回全国メディカルコント ロール協議会連絡会開催
  • ・平成20 年 新医療計画スタート(4 疾病5 事業)救急が重要なものとし て位置づけ
  • ・平成21 年 消防法改正法の成立、施行
  • ・平成22 年 救命救急センターの評価方法 見直し

平成21 年消防法改正

  • ・都道府県ごとの「傷病者の搬送及び傷病者 の受入れの実施に関する基準」の策定
     策定が済んだのは6 県しかない。秋までに 各都県で策定いただきたい。
  • ・協議会の設置(都道府県MC協議会、救対協)
  • ・消防法改正に関する日本医師会の主張

救急救命士の業務拡大、心肺蘇生法に関わ る動き、日医ACLS 研修(実施状況)、日本 医師会の救急蘇生法啓発活動

今後の課題

  • ・救急蘇生法の普及(市民・医師)⇒救急蘇 生法ガイドラインの策定、救急蘇生法指針 改定
  • ・消防法改正に関する「実施基準」の策定・ 施行、改善の実施⇒各都県での策定を促進
  • ・医療計画⇒第2 期医療計画(4 疾病5 事業) の策定に向けた検討、次期医療法の改正
  • ・救急医療体制⇒初期、二次、三次救急医療 体制、電話相談、後方体制(医療・介護) のあり方、充実。ドクターヘリ、ドクター カーの推進
  • ・救急救命士⇒業務拡大(3 行為)の実証研 究、検討。業務場所の拡大
  • ・災害医療対策⇒医師会JMAT の具現化、 研修体制の確立・平準化等

協 議

協議では、総務省消防庁担当者並びに厚労 省担当者よりそれぞれ施策について説明があ った。

総務省消防庁担当者は、「消防と医療の連 携の推進について」、救急搬送の現状・消防 法の改正により実施基準や分類基準等を定め たこと・策定状況・二次救急医療機関への助 成に係る地方財政措置(私的医療機関対象)・ 救急安心センターモデル事業の効果について 説明があった。

厚労省担当者は、「傷病者の搬送・受入に 係る実施基準の策定等について」、救急医療 体制の現状・実施基準・小児の実施基準例・ 受入困難事案の現状・平成22 年度予算(実施 基準関連)・救急救命士の業務のあり方等に ついて説明があった。

続いて、災害時医療への対策について、石 井常任理事より、日本医師会「救急災害医療 対策委員会」報告書(平成22 年3 月)の説明が あった。同報告書では、「日本医師会の名の 下に、全国の都道府県医師会が郡市区医師会 を単位として編成する災害医療チームのシス テムを構築することで、日本医師会は被災地 での災害医療活動を実行する能力を具備す る」、「そのシステムの名称として医師会 JMAT を提案する」としている。被災地郡市 区医師会、医師会JMAT、日本DMAT との 関係についても説明があったが、各県より日 本DMAT や日赤との連携等について意見が 多く出された。

また、東京都医師会より、東京都が平成 22 年3 月に策定して実施基準について説明 があった。詳細は下記のとおり。

(1)傷病者の搬送および受入の実施に関す る基準の策定について

1)総務省消防庁、厚生労働省担当者より施策 の説明

「消防と医療の連携の推進について」

◇救急搬送の現状

救急出場件数は10 年間で38 %増加する一 方、救急隊員は8 %の増加にとどまる。搬送 受入医療機関の選定に長時間要する事案が多 発。平成20 年中の救急車の現場到着時間は 7.7 分、1.7 分遅延。病院収容までの時間は 35 分で8.3 分遅延している。

◇消防法第35 条で実施基準の策定・分類基 準・医療機関リスト・観察基準・医療機関確 保基準等が決められた。搬送先医療機関が速 やかに決定しない場合、コーディネーターに よる調整や基幹病院による調整を行う。

◇ 7 月1 日現在、策定が済んだのは6 県。25 県 が今年12 月までに策定見込み。16 県は来年 3 月までの策定見込み。

◇照会回数別の件数の推移・照会回数4 回以上 の割合・救急隊の観察結果と初期診断の関 係・二次救急医療機関への助成に係る地方財 政措置(私的医療機関対象)

◇救急安心センターモデル事業の効果等

◇救急搬送にかかるトリアージの全体像につ いて

家庭・119 番通報の救急相談・救急搬送・ 救急外来の各段階で共有できる選別の体系 (JTAS)の構築について、関係学会で進め られている検討の方向を踏まえつつ、そのう ち救急業務に関連する部分(救急相談、コー ル・トリアージ、病院選定等)について検討 する。

東京都等では、救急相談センター(# 7119)を設置している。

2)「傷病者の搬送・受入に係る実施基準の策 定等について」(厚労省担当者より説明)

◇救急医療体制の整備状況の推移と消防法改正 による実施基準の策定、東京都が定めた実施 基準について説明。

◇小児の搬送・受入に係る実施基準例について は、小児の重症度・緊急度判断基準案、全身 状態と症状・バイタルサインとモニタ値の評 価について説明。

◇受入困難事案の現状については、重症以上の 傷病者の搬送で紹介回数が11 回以上であっ た事案の追跡調査結果、照会回数別件数、所 要時間(覚知から病院受入)と退院時の状 況、病名別件数など説明。

◇平成22 年度予算(実施基準関連)

1)受入困難事案患者受入医療機関支援事業 (新規)450,683 千円、2)救急患者退院コー ディネーター事業(新規)60,775 千円、3) 消防法一部改正に伴う救急患者受入実態調査 事業(新規)17,844 千円、4)身体合併症救 急医療確保事業(新規)

◇救急救命士の業務のあり方等について

・検討会報告書では、三行為(1】血統測定と 低血糖発作症例へのブドウ糖溶液の投与 2】重症喘息患者に対する吸入β刺激薬の使 用 3】心肺機能停止前の静脈路確保と輸液 の実施)が適当かどうかを検討した。

・三行為について、医療関係者と消防関係者 が共同で実証研究を行うことが適当とし て、平成22 年度から実証研究を行うこと になった。

3)質疑応答・協議(東京都医師会からの報告)

東京都が平成22 年3 月に策定した実施基準 について説明があった。東京都では、受入医療 機関確保基準(救急医療の東京ルールT)によ り、受入医療機関が決まらない時は、「地域救 急医療センター」や「救急患者受入コーディネ ーター」による調整を行うことになっている。

(2)災害時医療への対策について

1)日本医師会「救急災害医療対策委員会」報 告書(平成22 年3 月)

「救急災害医療における連携のあり方」と 「医師会の災害時医療救護体制」について、検 討した結果を纏めた。

救急災害医療については、消防法改正に伴う 実施基準の策定を踏まえて、医療と消防の連携 を促進すること、メディカルコントロール協議 会のあり方、救急救命士の業務の場所につい て、救急隊(消防機関)の救急救命士が、患者 搬送先医療機関で「救急救命処置」を行うこ と、救急救命士が救急医療機関に就業し、自院 内で「救命処置」を行うことの2 点の提議を行 った。この提議は、是非も含め日本医師会内外 での議論を喚起し、衆知を集めるためのもので ある。

ドクターカーについては、「搬送困難事案」 が大都市圏に多いことから、都市部を中心とし た普及を求めた。ドクターヘリについては、全 国への展開、消防用防災ヘリの活用とともに、 受入体制や救急医療機関の連携、後方体制整 備、かかりつけ医師の役割や地域医療の視点、 財源についても触れた。今後の課題としては、 「救急蘇生法の指針」等の改定への対応等を列 挙している。

医師会の災害時医療救護対策については、日 本医師会の防災会議・中央防災会議への参画、 日本DMAT との連携について具体的に述べた。 また、日本医師会の名の下に、全国の都道府県 医師会が郡市区医師会を単位として編成する災 害医療チームのシステムを構築することで、日 本医師会は被災地での災害医療活動を実行する 能力を具備する、そのシステムの名称として医 師会JMAT を提案した。医師会JMAT の基本 方針の作成、日医・都道府県医師会・郡市区医 師会の役割、医師会JMAT の構成・研修・活 動内容、地域DMAT との連携について示した。

2)質疑応答・協議

兵庫県:救急医療センターについて、東京都の システムが素晴らしいので兵庫県でもやろうと したが、事業仕分けで出来なかった。県行政と 話してもなかなかうまくいかない。同事業の継 続性について伺いたい。

総務省:モデル事業として検証を重ねる必要が あると主張したが、仕分けされた。基本プロト コルを作ることは重要である。これから手上げ したいというところをいくつかいただいている ので、今年は仕分けされたけれども今後も継続 していきたい。

石井常任理事:# 8000 と# 7119 は、地方に 行けば行くほどリソースがある。仕分けされた けれども今後できないわけではない。強く要望 していきたい。

地域医療が前提にあって救急医療がある。必 要な事業は、声をあげていかなければならな い。日医としても取り組んでいきたい。

伊藤委員(救急災害医療対策委員会)):日医 は、16 万人の会員集団である。災害時に、何 の対策も立てずに手をこまねいていて、DMAT が来るのを待っているだけというのではいけな い。ということで委員会で検討することにし た。ご理解を賜りたい。

石原委員(救急災害医療対策委員会)):中越地 震や宮城地震、すべての地震に医師会として参 加している。DMAT 隊員でもある。DMAT は 早ければ24 時間で出動できる。しかし、地域 の医師会と連携がとれておらず、被災地はまだ まだ問題が山積み状態なのにDMAT は帰って しまうこともある。もし、地域の医師会との連 携が計れるなら、地域の先生方と手を組み支援 することができる。各県の担当理事には、 DMAT と連携して教育を行うとよい。DMAT は施設指定であり、その指定病院をやめたと き、その技術を生かしてJMAT として被災し た地域の支援をお願いしたい。日本DMAT の 教育は4 日間であるが、JMAT はその中から2 日間の研修をやってもらいたい。日本DMAT も各県地域防災計画で「医師会との連携」とし て入れていない県もある。DMAT のみが活動 しているように書かれている県もあるので、 DMAT と医師会との連携を書き入れていただ きたい。

兵庫県から「救急医療センター」に関してご 質問があったが、安全センター(# 7119)は 医師会事業として有意義なことであると考えて いる。軽症者の安易な救急車の利用を少なくす ることに役立つ。県医事業として大きな柱とな るだろうし、地域の安全が守られるだろう。

大阪市医師会:大規模災害時のナショナル D M A T と都道府県D M A T、日赤チームと JMAT との連携、コミュニケーションはどのよ うにとるか、指揮系統はどうなるか。

石井常任理事: DMAT とのコミュニケーショ ンをどうやって実現するか。災害時優先の手続 きや衛星携帯、三重県では無線を使っているこ となど、今期の委員会で聞き取りして情報出し ていきたい。

厚労省:日本DMAT の規定が3 月に改正され た。今回の改正で地域医師会、日赤、消防が入 った形で対策協議会を作っていく。実態とし て、日赤は日本DMAT に4 チーム参加してい る。災害時優先電話も有効である。

新潟県:中越大地震で被災した。話しあいを多 く持っている。医師会長がコマンダーになって も、交通整理はやはりできないので、JMAT の 方が交通整理したほうがよい。地域の医師会が 支援することが効果的であるとの話があった。

神奈川県:実際は都道府県、市町村が中心であ る。DMAT は県知事の指示のもとに動く補償 があるが、JMAT は、誰の指示のもとに動くの か、補償があるのか、しっかりやることが必要。

熊本県: J M A T は、被災があったときに DMAT の下請け、DMAT を受入れということ になる。実際防災訓練できるのは1 〜 2 名であ り、あまりに敷居が高い。

石井常任理事:検討していきたい。

総括・閉会

横倉義武(日本医師会副会長)より、「消防 法改正に基く実施基準が策定できている県とそ うでない県がある。早めに策定いただきたい。 また、「医師会JMAT」については、被災地と そうでない県とで対応に温度差が見られる。引 き続きご検討をお願いしたい。」と挨拶があり、 閉会となった。




印象記

玉井修

理事 玉井 修

平成22 年7 月1 日、日本医師会館で都道府県医師会救急災害医療担当理事連絡協議会が開催さ れた。冒頭原中勝征日本医師会会長のご挨拶があり、引き続き石井正三常任理事による救急災害 医療を巡る諸問題に関してのご報告があった。

平成21 年消防法改正にともない県ごとに傷病者の搬送および傷病者の受け入れの実施に関する 基準策定をする事になった。傷病者に応じた搬送、情報伝達、受け入れに関するルール作りを行 いなさいという事なのだが、傷病者の重症度判定という根本的な問題を宙ぶらりんにしたまま、 大袈裟なシステム作りに何の意味があるのか良くわからない。果たして沖縄県にこのようなルー ル作りの必要性があるのか、非常に疑問がある。救急救命士の業務拡大に関しても、そのこと自 体は理解できるが、救急救命士の足を引っ張っているようにも見える。沖縄県から1 日かけて上 京し、聞かされる話はどうも雲の上の話で、現場感覚からかけ離れている感がある。私はお上り さんよろしく、高層建築を横目でみながら雲上人の会話をぼーっと見ているだけであった。

東京都医師会からお話のあった救急安心センターモデル事業の話は大人版# 8000 事業である。 しかし驚くべき事にこのモデル事業は119 番要請を相談者に代わって行う事ができるという。し かし、そんな事したら電話1 本で重症度を的確に判断するという大きな責任とリスクを背負う事 になる。本当にそんな事可能なのだろうか?現にこの事業は例の事業仕分けにおいて「廃止」が 決定されている。話を聞きながら少しシラケてきた。災害医療対策として日本医師会は各地区医 師会長をトップとしたJMAT(Japan Medical Association Team)を発足させて各地の大規模災 害時の災害救急に対応するというお話も聞いた。うーんDMAT(Disaster Medical Assistant Team)の2 番煎じじゃないの?沖縄県ではすでに沖縄赤十字病院など7 病院にDMAT が設置さ れており、県知事の要請に応じた災害時対応をするシステムがある。DMAT との棲み分けはどう するのかという質問に対して日医の回答によると、どうやら既存のDMAT よりも上にランクする 組織としての構想を持っているらしい。うーん既存のDMAT は怒るだろうな〜。沖縄から1 日か けて、飛行機に乗って大量の地球温暖化ガスを排出させてしまったという負い目からか、何かし らその話に素直に頷けない私なのでした。