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平成22 年度都道府県医師会生涯教育担当理事連絡協議会

理事 當銘 正彦

去る7 月16 日(金)、日本医師会館において 標記協議会が開催されたので、その概要につい て報告する。

開 会

定刻となり、三上裕司日本医師会常任理事よ り開会が宣言された。

挨 拶

原中勝征日本医師会長より、概ね次のとおり 挨拶があった。

日本医師会では、昭和62 年から自主申告に よる生涯教育制度を実施している。現在では、 約13 万人の会員(7 割を超える会員)が毎年、 生涯教育の申告をして頂いている。しかしなが ら、近年は医師が学習する姿を国民から見える かたちで評価することはできないかとの要望が 多く寄せられるようになった。こうした声に応 えることができるように会内でも積極的に検討 を進めている。

日本医師会では、生涯教育推進委員会を中心 に、「生涯教育カリキュラム< 2009 >」を作成 し、それに従い生涯教育を進めている。しかし、 専門性の高い診療科の医師及び専門医を目指す 勤務医が参加しにくいとの意見が多いことや事 務手続きが煩雑であるという点から、生涯教育 制度検討会を設置し検討を行った。1)いわゆる 総合医認定制度とは全く異なるものであること について、周知を図ること、2)専門性の高い医 師や専門医を目指す勤務医も取得できるよう認 定証の発行要件を、「30 単位・30 カリキュラム コードの取得」から、「単位数とカリキュラムコ ード数の合計で60 の取得」とすること、3)医師 の自己研鑽を支援するための日本医師会生涯教 育制度であることについて協議を行った。

今後も、国民の医療に効果があり、時代の進 歩に即応した生涯教育制度を確立できるよう充 実をはかっていきたいので、先生方のご協力と ご指導をお願いしたい。

第28 回日本医学会総会のご案内

永井良三第28 回日本医学会総会準備委員会準 備委員長より、概ね以下のとおり案内があった。

第28 回日本医学会総会は、「いのちと地球の 未来をひらく医学・医療−理解・信頼そして発 展−」のメインテーマのもとで、医療従事者の みならず一般市民にも開かれた議論の場とし て、開催する。各都道府県医師会においても、 登録推進と周知をお願いしたい。

議 事

(1)生涯教育関連事項報告

三上裕司日本医師会常任理事より、概ね以下 のとおり報告があった。

平成22 年度日本医師会生涯教育制度実施要 綱については、栃木県医師会より抗議文・日本 医師会に対する要望、日本医師会医師の団結を 目指す委員会より「日本医師会生涯教育制度」 改正についての意見、近畿医師会連合より日本 医師会生涯教育制度実施要項見直しについて要 望があり、平成22 年4 月20 日の第2 回日本医 師会理事会において議題として取り上げられ、 4 月27 日に開催した第3 回日本医師会常任理事 会において、その検討のため生涯教育制度検討 会を設置した。当検討会において、手続きが拙 速である、国等が目途とする総合医認定制度と のリンクへの懸念が払拭できない、眼科・耳鼻 科・皮膚科等専門性の高い医師や専門医を目指 す勤務医が取得しにくい、等との指摘がある一 方、日本医学会分科会のいくつかが4 月に開催 されている等、既に多くの会員が実施要綱に基 づき単位・カリキュラムコードを取得している 等との意見があった。これらを踏まえて検討し た結果、1)日本医師会生涯教育制度と、いわゆ る総合医認定制度は全く異なるものであること について、周知を図ること。2)専門性の高い医 師や専門医を目指す勤務医も取得できるよう認 定証の発行要件を、「30 単位・30 カリキュラ ムコードの取得」から、「単位数とカリキュラ ムコード数の合計で60 の取得」とすること。 3)医師の自己研鑽を支援するための日本医師会 生涯教育制度であること。の3 点について合意 のうえ、平成22 年度日本医師会生涯教育制度 実施要綱改正案を作成した。今後、本改正案に ついては、理事会で協議を行い、実施要綱を改 正したい。

e-ラーニングについては、3 月末にリニュー アルした生涯教育on-line において、e-ラーニ ング教材を提供しており、日本医師会雑誌読後 回答等で単位を取得できる。また、カリキュラ ム、日本医師会雑誌もPDF 形式で全文掲載し ている。さらに、セミナー開催状況等も情報提 供している。< http://www.med.or.jp/cme/>

指導医のための教育ワークショップについて は、平成21 年4 月より、研修医5 人に対して、 指導医1 人が必置となっている。日医開催のワ ークショップは定員をはるかに超える応募があ り、今後ますます受講者が増加されると見込ま れる。都道府県医師会においても積極的に開催 していただきたい。

日医生涯教育協力講座については、今年度 は、1.「肺の生活習慣病: COPD <慢性気管 支炎・肺気腫>」−中高年のせき・たん・息切 れをどう治療するか−グラクソ・スミスクライ ン株式会社および日本ベーリンガーインゲルハ イム株式会社との共催、2.「感染症の予防と治 療〜呼吸器感染症を中心として」第一三共株式 会社との共催、3.「女性のがん〜最新の治療か らワクチンによるがん予防まで」グラクソ・ス ミスクライン株式会社との共催を予定している。

報 告

(1)岐阜県医師会における生涯教育制度へ の取り組み「申請システム」

川出靖彦岐阜県医師会副会長より、概ね以下 のとおり報告があった。

岐阜県医師会では、2002 年からシステムを 開発し、2003 年から運用を開始している。当 システムは、事務負担軽減、医師申告率向上に 役立っている。具体的には、1)講演会申請・登 録の管理、2)会報・インターネットによる広報 の管理、3)参加予約と出欠管理、4)受講料の管 理、5)講演会の受講歴の把握、6)取得単位の管 理、7)生涯教育申告の代行等である。また、新 日本医師会生涯教育制度に対応するために要し た費用は約500 万円であった。当システムは、 他県にも提供可能である。

協 議

【福島県】: 3 年間で単位とカリキュラムコー ド数の合計が60 以上ということは、1 時間の講 習を受けた時に、1 単位2 カリキュラムコード 取得できるので、カリキュラムコードが同一の ものであれば、3 年間で20 時間の講習が認定さ れるのか。

日本医師会雑誌の生涯教育「読後回答」問題 でも、カリキュラムコード「84 <その他>」が 多く同一になってしまうので、「84 <その他>」 は何回もカウントできるようにしてほしい。

日医雑誌において、「臨床遺伝学」がテーマ に取り上げられているが、もっと日常診療に密 着したテーマを取り上げ、カリキュラムコード を広く取得できるようにしていただきたい。

【日本医師会】:ご指摘のとおり20 単位40 カ リキュラムコードの取得によって、認定証が発 行される。

「84 <その他>」のコードに関しては、ご 指摘のようなご意見がありますが、一方で制度 改正によって単位数とカリキュラムコードの合 計であれば、「84 <その他>」は不要ではない かとの意見もある。また、「84 <その他>」を 何回もカウントするということは、申告方法等 の事務的に集計が困難になることなど、ご要望 を踏まえて生涯教育推進委員会で、さらに検討 させていただく。

日医雑誌のテーマについては、今回、学術企 画委員会において検討しており、ご要望にお答 えできるような対応をしていきたい。

【栃木県】:生涯教育単位取得証にて連続した 3 年間に取得した単位数とカリキュラムコード 数の合計数が60 以上の者に、日医生涯教育認 定証を交付するということは、少しのカリキュ ラムコードを取得するだけでも良いということ になる。少しのカリキュラムコードでよいので あれば、従前の単位管理に戻し、1 年間に20 単 位といった、管理もしやすいすっきりとした形 のほうがよいのではないか。カリキュラムコー ドの見直しを含め、やはり、1 年間は見直し期 間とするべきではないか。

日医開発の一括申告支援ソフトウェアを活用 しているが、マニュアルだけで対応するのでは なく、各都道府県医師会の生涯教育担当理事並 びに事務局に対し、ソフトウェアの活用方法な どの説明があってもよいのではないか。

【日本医師会】:カリキュラムコードは、学習 内容を示すために必要である。連続した3 年間 に取得した単位数とカリキュラムコード数の合 計数が60 以上の者に、日医生涯教育認定証を 交付する点ついては、疾病、留学、出産、育児 等のため、連続した3 年間において、単位・カ リキュラムコードが取得できない場合であって も、1 年間で単位数とカリキュラムコード数の 合計数が60 取得できるようにしている。ご理 解いただきたい。

ソフトウェアの活用方法については、地域の 実情によりソフトを取捨選択して使用している ため、説明会を開催することは現在考えていな い。しかし、要望があれば説明に伺うことは可 能である。

【埼玉県】:都道府県医師会等が主催する講演 会等に参加した際、日本医師会の会員証にIC チップ等を埋め込み、そのカードの提示によ り、参加履歴が残るようなシステムを構築して もらいたいとのご意見があった。現在、日本医 師会の会員証については、会員の身分証明及び 図書利用等の役割しか機能していないと聞いて いる。そのような観点から、日本医師会の会員 証を現代に沿った付加機能を追加し、新たに構 築していただきたい。

【日本医師会】:平成21 年度都道府県医師会生 涯教育担当理事連絡協議会において、要望をう けて本会でも生涯教育制度における会員証の活 用について検討した。予算の関係もあり、今 後、継続的に検討は必要である。今期の日医 IT 化検討委員会においても当問題は議論する 予定になっている。なお、当面の対応として QR コードを一括申告支援ソフトに追加した。 必要に応じて活用していただきたい。

【東京都】:日本医師会生涯教育カリキュラ ム< 2009 >の一般目標は「適切な初期対応と 必要に応じた継続医療を全人的視点から提供で きる医師」である。これらの達成に必要な学習 方略として、30 単位、30 カリキュラムコード の取得が求められたと理解している。

学習時間である「単位」と、学習分野である 「カリキュラムコード」は、本来異なる次元の問 題である。今回、両者合わせて60 とすること は、ごく限られたカリキュラムコードでの認定 証取得を可とするものに他ならない。そうなれ ば、学習目標と学習方略の間に齟齬が生じ、そ れに伴い学習評価にも齟齬が生じると考える。

【日本医師会】:今回の制度改正については、 先ほども説明したとおり、国等が目途とする総 合医認定制度とのリンクへの懸念が払拭できな い。眼科・耳鼻科・皮膚科等専門性の高い医師 や専門医を目指す勤務医が取得しにくい。事務 手続きが煩雑である。等の指摘を受け、生涯教 育制度検討会を設置した。一方、日本医学会分 科会のいくつかが4 月に開催されている等、既 に多くの会員が実施要綱に基づき単位・カリキ ュラムコードを取得している等との意見があっ た。これらを踏まえて検討した結果、日本医師 会生涯教育制度と、いわゆる総合医認定制度は 全く異なるものであることについて、周知を図 ること、専門性の高い医師や専門医を目指す勤 務医も取得できるよう日本医師会生涯教育認定 証の発行要件を、「30 単位・30 カリキュラム コードの取得」から、「単位数とカリキュラム コード数の合計で60 の取得」とすること、医 師の自己研鑽を支援するための日本医師会生涯 教育制度であることの3 点について合意のう え、改正案を作成した。今後、本改正案につい ては、理事会で協議を行い、実施要綱を改正し たい。

【山口県】:単位とカリキュラムコードの記録 は、郡市医師会や県医師会主催の講演会等に関 するものについては医師会でコントロール可能 だが、それ以外のものについては個人が主体的 に関与せざるを得ないところがどうしても残 る。多くの一般医師会員にまだ制度が十分周知 や理解されていない現在、個人の記録・管理の 手帳などといったものを申請の時期である今年 度末前ぐらいに、再周知の意味もあわせて、ぜ ひ配布されることを強く望む。

【日本医師会】:手帳については、前期の生涯 教育推進委員会においても議論されている。手 帳を作成すべきであるとの意見もある一方で、 手帳等を作成し、それを埋めていくことは、い わゆる総合医のような認定制度につながると懸 念される。また、各都道府県医師会において は、一括申告を勧めているというところもあ り、手帳を作成するのではなく、一括申告をさ らに推進すべきであるとの意見もあった。した がって、当問題については、生涯教育推進委員 会で検討していくこととしている。なお、イン ターネット上での自己入力のうえ、管理できる システムについて、今般、提供を始めたので活 用していただきたい。

【佐賀県】:日々研鑽し続けることは、医師と して責任を持って患者に対応するうえで必須で あり、当然各自それなりに研修をしていると思 われる。患者から選ばれる時代であり、充分な 対応が出来なければ自然淘汰されると思われる。

開業医の場合、10 年又はそれ以上開業して いる皮膚科、眼科、耳鼻科等の医師にとって は、積極的に参加する意欲も弱まり、参加率も 低下することが予想される。勤務医の場合、カ リキュラムコードの内容が基本的知識であるこ とは理解できるが、大学病院等の大病院にて専 門的に働いている医師にとって、今更という感 は否めない。これも参加率の低下に繋がるので はないか。また、日医生涯教育認定証について は、決して開業の際の必要条件になってはなら ない。

【日本医師会】:日医生涯教育制度は、医師と しての姿勢を自ら利するというプロフェッショ ナルの理念のもと、医師の生涯教育が幅広く効 果的に行われるための新体制の整備を目的とし ている。医師が不断に学習する姿をより明確な かたちで国民にみていただき、質の高い医療を 提供し、国民の健康に貢献することを目的とし ている。今回の制度改正は、眼科・耳鼻科・皮 膚科等専門性の高い医師や専門医を目指す勤務 医が単位を取得しにくいとの指摘があったこと から改正したものである。開業の際の必須条件 にするということは、全く主旨の違うものであ り、考えていない。生涯教育制度は、医師の自 立的な取り組みである。万が一そのような動き があれば、全力で対応していく。

【千葉県】:「国民から見えるかたちでの評価」 とあるが、国民に対しては、当生涯教育制度等 は周知するのか。

【日本医師会】:来週に記者会見をひらく予定 である。また、国民にわかりやすくするため、 認定証に取得した「単位」、「カリキュラムコー ド」の数字を明記する。

【群馬県】:今後も、生涯教育推進委員会等で 検討していくとしているが、郡市医師会に対 し、説明をしなければならない。本日の変更事 項等は、具体的にどれくらいの期間変更しない のか。

【日本医師会】: 2 年間は変わらない。




印象記

當銘正彦

理事 當銘 正彦

去る7 月16 日、東京駒込の日医会館にて平成22 年度都道府県医師会生涯教育担当理事連絡協 議会が行われた。担当理事である須加原一博先生が不都合の理由もあり、今回は広報委員会担当 である小生が代理出席した。基調報告にもあるように、今回の主要議題は、今年の4 月から新し い制度として発布されたが、全国的に喧しい議論が沸騰している日医の生涯教育における単位取 得の大幅な変更に関する問題である。その波及を受けて当県医師会報における「生涯教育コーナ ー」の単位取得の問題も混乱しており、小生にそのお鉢が回って来た訳である。

事の発端は、2009 年9 月に公表された「平成22 年度日本医師会生涯教育制度実施要項につい て」である。生涯教育における単位登録制度の大幅な改定内容が盛り込まれた新しい「実施要項」 が2010 年4 月から実施されるという通達に、全国各地から抗議と反対の表明が相次いだのであ る。従来の生涯教育単位取得の方法と、「実施要項」の目玉である「生涯教育カリキュラム< 2009 >」を基本とした改訂の内容の違いについては報告書本文で確認を頂きたいが、問題の根本 的な震源は、現在、厚労省が政策的に推進している総合医認定制度とのリンクが最も大きな懸念 の様である。専門医には縁遠い84 項目に列挙された新「カリキュラムコード」の内容がやり玉に 挙げられており、その他にも、これまでは1 年単位の「修了証」の発行を3 年間の長期スパンに 切り替えること、申告に使うソフトウェアの問題等により一括申告制から自己申告へ変更せざる をえない都道府県があるなど問題点が列挙されている。そして、この様な医師の生涯教育に関わ る重要な問題を、生涯教育推進委員会からの答申を受けた日医執行部が十分な検討もせずに強行 に実施したことが、紛糾に一層の拍車をかけた模様である。

こうした全国からの抗議を受けて、日医執行部は単位取得方法のマイナーチェンジ、即ち「30 単位・30 カリキュラムコードの取得」から、「単位数とカリキュラムコード数の合計で60 の取 得」に変更することで(詳しくは本文参照)、兎にも角にも、新しい方法を先ずは試行して貰いた いという趣旨伝達を為されたのが、今回の連絡会議であった。

会議では色々と抗議や反論もみられたが、最終的には執行部の提案が了承されるかたちで閉会 となった。聞き覚えのある“professional autonomy”、連絡会議の中で繰り返し使われた言葉であ るが、調べると1987 年のマドリード宣言におけるキーワードで、その趣旨は、「professional autonomy =医師の自由裁量権は、医師自身の厳しい自己規律に裏打ちされたものでなければな らない」との意である。日医の生涯教育に取り組む委員の皆さんの誇り高い格調に触れる思いで 感動した。また、唐澤前会長は、「生涯教育カリキュラム< 2009 >」の刊行にあたり、冒頭で 「学ぶとは誠実を胸に刻むこと、教えるとは共に希望を語ること」というフランスの詩人の言葉を 紹介している。この様な崇高な精神の堅持を、我々は大切にしたいものである。

最後に、今回の日医の単位取得の改訂を受け、これまで行ってきた当県医師会報の「生涯教育 コーナー」の単位取得の取り扱いについても、日医の事務局と相談しながら改訂の是非を検討し て行く予定である。