副会長 玉城 信光
去る7 月20 日(火)日本医師会館において 標記会長協議会が開催された。各県より寄せら れた12 題の質問について協議が行われたので、 以下に概要を報告する。
挨 拶
原中勝征日本医師会長
原中会長より、大雨による土砂崩れ等の水害 により、各県大変な被害を被っていることに対 しお見舞いの言葉があり、次のとおり挨拶があ った。
「本日の協議会には、12 題の質問が出され ているが、それぞれ日本医師会として対応して いる内容そのものであり、進捗状況あるいは詳 しい情報を提供できると思うが、政府や悪く言 えば勝ち組病院との戦いでもあり非常に難しい 面もある。日本医師会はあくまでも国民にとっ て最善の医療を求め政府との話し合いをしてい る。最近は厚労省とも、直接核心に触れる話が 出来るようになっているので、今後もこのルー トを保ちながら私達の意見を述べていきたい。
本日の審議の中で、納得出来ない点について は引き続き、会を別としてご質問、ご提言頂け れば、私達は解決に向けて邁進していくので宜 しくお願いしたい。」
協 議
・現行の日本医師会定款施行細則第28 条第1 項において「会長の選挙においては、有効投 票の総数の3 分の1 以上の得票を得なければ ならない。」と規定されてが、当選必要得票 の規準を「投票総数の過半数以上」とすべき と考えており、どのように取り組んで行かれ るのかお聞かせいただきたい。
・医師会の活性化を図り、その活動の充実を期 するためには、「役員の定年制・任期制限導 入」も有効な手段ではないかと考えるが、今 後の検討課題とされますよう要望したい。
<回答:今村常任理事>
会長選挙については、新公益法人制度が施行 されると原則として理事は社員総会の決議にお いて選任し、代表たる会長は理事会において決 議して選定することになる。
決議には、総社員または理事全体から過半数 の出席と、出席者の過半数の賛成が必要とな る。そのようなことから、現在の日本医師会の 規程自体認められなくなる。会長選挙制度のあ り方については、定款諸規程委員会も設けられ ているので、今後細部について議論が進んで行 くと思う。
役員の定年制の導入については、平成15 年 8 月に出された定款諸規程検討委員会の報告書 において、若い会員の積極的な登用は推奨する ものの現時点では定年制を導入すべきではない とする日医の正式な見解が出されており、現在 も同じ考えである。日医のスタンスとしては今 まで変わっていないが、新公益法人制度への対 応についても議論していく中で、本日のご提言 についても議論していきたいと考えている。
1.日医は何時の間に「医療は成長産業」との 認識を定着させてしまったのか。
2.医療界に身を置くものの中でも、いかほど が医療ツーリズム、医療特区構想の持つ重大 ポイントをしっかり理解しているか、まして 直接影響を蒙る筈の地域住民はどうか。事の 重大さを彼等に如何にアナウンスしていくべ きなのか。
<回答:中川副会長>
我が国は公的医療保険制度の下で全国民に公 平、平等な医療を提供し、世界中から高い評価 を得ている。それは日本医師会が組織をあげて 混合診療の全面解禁を阻止し、株式会社の参入 を水際で跳ね返してきたからである。しかしご 指摘のように、政府内で医療を産業化しようと する動きが活発化していることに重大な懸念を もっている。
医療は成長産業と認識したのかというご質問 については、日本医師会が2000 年8 月に発表 した2015 年医療のグランドデザインにおいて、 医療・介護は21 世紀において国民経済への波 及効果の高い力強い産業として重要な位置づけ がなされるべきであると明記している。これ は、医療・介護は日本社会のお荷物では無く、 国民経済の視点から見て、公費税金を投入すべ き分野であるとの主張であると考えている。一 方日本医師会は政権交代後の昨年10 月に「日 本医師会の提言−新政権に期待する−」を政府 与党に提出し記者会見で公表した。ここでは、 税金1 兆円を医療・介護にそれぞれ投入した場 合の効果を再計算した結果を示すと共に、外来 患者一部負担割合の引き下げを提言した。具体 的には「医療・介護は他の産業に比べて大きな 雇用誘発力を持つ、又、雇用拡大のための財政 主導は将来の経済成長をもたらす可能性も高 い。先に提案した外来患者一部負担割合の引き 下げは、受診抑制を回避し、早期発見、早期治 療を通じて健康な就労人口を増加させる。医 療・介護は成長社会実現のための投資である。 経済成長は税収をもたらし、国民に充実した社 会保障給付として還元される。医療・介護こそ 日本の内需拡大を支え、日本を再生させるので ある」というものである。
また、先月6 月23 日の定例記者会見でも閣 議決定された新成長戦略に対して、同じ主旨の 見解を述べている。更に1 週間後の6 月30 日 には経済産業省が医療産業研究会報告書を公表 した。この内容は公的医療保険給付の充実とい うよりも、医療周辺の民間産業を成長させて公 的医療給付の不十分な部分を補完するというも のであり、日本医師会は公表当日これに即応し て会見で多くの問題点を厳しくかつ事細かに指 摘した。このように、医療は公費を投入すべき 分野であると一貫して主張してきた。医療に民 間資本を投入し、市場を拡大させるという意味 での成長産業であるとの認識はしておらず、む しろそういう認識を厳しく批判してきた。
なお、ご指摘のように誤解を招く可能性があ ることから、民間資本の参入を彷彿させる「産 業」という表現は数年前より使用しないように している。
2 点目は“医療ツーリズムと特区構想につい てその重大性の認識は浸透しているか”という ご質問については、医療ツーリズムに関しては 次のように重大な危惧をもっている。
現在、医療ツーリズムにより外国患者を受け 入れたいとする医療機関はPET やMRI などに よる検診が空いているところかもしれない。し かしそれらの医療機関が外国人患者に対して自 由価格を設定して収益を上げ、経営状態が好転 するようになれば最新の画像診断機器を装備し た近隣の医療機関もそれに倣うことは容易に想 定できる。そうなると画像診断の公的保険診療 による検診が混んでいる医療機関も外国人患者 の受け入れをはじめ、保険診療で受診している 多くの日本人患者は後回しにされてしまう。既 に病気で通院中のある程度の高所得者は検査に ついては全額自己負担してでも優先的に受けた いと思うようになる。このことが混合診療の全 面解禁を後押しすることになる。また、MRI な どの最新の医療機器による診断は全額自己負担 であることが一般化すると最新の医療機器によ る診断を公的保険に組み入れるインセンティブ が働きにくくなる。
更に日本人及び外国人患者を自由価格のみで 診療するようになった医療機関は診療報酬とは 関係が無くなり、公的医療保険を拡充しようと する働きが全体的に弱まり診療報酬は益々抑制 されることになる。その結果、都市部などで外 国人患者や富裕層の日本人患者を見込める地域 と、そうではない地方との格差が拡大すること になる。地方の医療機関で診療報酬が伸び悩む 中で苦戦を強いられ、最悪の場合には地域医療 が完全に崩壊してしまう。
一方、特区構想の危険性は、特区において実 施される事業は当事者が採算を度外視してでも 成功するように全力を傾ける可能性がある。そ の結果、みせかけの成功事例が一時的に示され、 国民を間違った方向へ誘導しかねない。特区だ から実験的なことが許されるということにはな らない。兵庫県神戸市のように度重なる構造改 革特区、総合特区の攻勢に対峙されている医師 会の地域医療を守る戦いには敬意を払うと共に、 重大な問題として日々学ばせていただいている。 日本医師会としても、今後とも厳しく監視し、 特区構想の重大性の認識を全国の会員と更に一 般の国民と共有するため努力を続ける。
民主党は昨年の総選挙の際に小泉・竹中ライ ンに象徴される市場原理主義を掲げる新自由主 義者が日本の地域医療を崩壊させたとする内容 のマニフェストを発表した。それを評価し、医 師の6 割が小選挙区で民主党に投票した調査も ある。医療現場に一筋の光明がさしたのだが、 民主党が政権を奪取し10 ヶ月経ったが、現与 党内には旧政権にも増して新自由主義が蔓延し ようとしている。
今回、大変時節を得た質問をしていただい た。兵庫県医師会、神戸市医師会の活動を十分 に参考にさせていただき、日本医師会はこれか らもより一層政治に翻弄されることの無い、一 貫した医療政策の提言と社会保障の理念を明確 に示していきたいと考えている。
質疑では、引き続き兵庫県の西田副会長よ り、混合診療に関する是非論等も含め日医の見 解を住民に受け止めてもらういい機会であり、 日医として更に踏み込んで対応していただきた いとの要望が出された。
それに対して原中会長から、「本日厚生労働 省と話し合いを持つことになっている」との説 明があり、更に中川副会長から、「正直な話、 医療ツーリズムに関しては、一部の病院団体に 賛成意見がある。我々が気をつけなければなら ないのは、対峙する相手が求めているのは、 我々の全面賛成では無く部分的な賛成で十分満 足する点にある。そこを突破口として攻めてく ることが考えられる。ただ、闇雲に全てがダメ であるというつもりは無いので、今後もひき続 き対応していきたい」とのコメントがあった。
診療行為に関連した死因究明制度に関して、 医療安全調査委員会設置法案大綱案が示された が、昨年政権交代により民主党案が示され、未 だ先は見えていない。
日本医師会の医療安全への死因究明制度の進 捗状況を教えていただきたい。
<回答:高杉常任理事>
医療行為の結果次第で、医師が刑事責任つま り業務上過失致死傷罪に問われることは医師及 び医療関係者にとって最大の不幸なことであ る。昨年夏までの自民党政権下において第3 次 試案大綱案が示され、日医内では医療事故と医 師責任問題検討委員会で検討し答申が出され た。民主党政権になってからは大綱案がそのま ま正案となることは無いと明言されているが、 対案として示されたもの以上に議論は進んでい ない。また、5 年前から現在まで106 例の第3 者機関での死因究明モデル事業はAI を組み入 れて新しく機構を作ったうえで継続が決めら れ、第1 回の会議が済んでいる。
一方、事件性のある死亡に対してはAI を利 用しての死因究明、あるいは薬物検査等々の刑 事事件の取り組みが進んでいる。今回医療安全 の担当責任者であろう足立参議院議員の死因究 明制度にAI 制度を導入するとの選挙後の発言、 渡辺厚労省医療安全対策室長の7 月15 日の看 護協会での発言を斟酌すればこれから議論が本 格的になるであろうと推測される。日医内では これまでと同様、プロジェクト委員会を設置す る予定である。また、AI 制度導入は積極的に 政府に働きかけ、ADR 制度等に関しても情報 を集めている。
現在のところ総論的なお答えしか出来ない状 況であるが、今後ともご理解とご指導を宜しく お願い申し上げる。
予防接種法改正案が継続審議となっていると ころであるが、一方で今シーズンのワクチン は、新型株を含めた3 価の使用が決定されたと の報道もあった。現時点においても新型ワクチ ンと季節性ワクチンの位置付けが法的に異なる 規定となっており、また、現在の予防接種法改 正案でもその問題の解決は望めそうもない。
そんな状況下において、新型を含めた3 価ワ クチンが本当に使用できるのか、ワクチンの流 通経路や価格、補償等についてはどうなるのか。
<回答:保坂常任理事>
去る6 月10 日新型インフルエンザAH1N1 対 策総括会議報告書が厚生労働大臣に提出され た。日本医師会の代表としてこの会議に第4 回 より特別ゲストとして参加し、構成委員と同等 に発言させていただき、報告書のまとめに関わ った。報告書は先の対策について様々な立場か らの反省に基づき、多くの提言を行ったもので あるが、特に医師会に関係の深い事項について も各項目ごとに触れられている。情報の共有、 迅速な情報の伝達や学校等の臨時休校につい て、医師会や医療関係者を当事者として位置づ けている他、医療従事者へのPPE(個人防護 具)の提供、休業時や医療従事者の死亡または 後遺症が生じた場合の補償についても触れられ ている。医療提供体制について医療機関側の調 整役としても、医師会を例示している。ワクチ ン接種についても予約を含めた接種体制につい て医師会との相談、調整を行うとしている。更 に、ワクチンの返品問題に関しては、返品も含 めた在庫問題の解決に向けて早急に最大限努力 すべきであるとの文言が盛り込まれた。強毒性 のインフルエンザの発生に備え、報告書の内容 を踏まえつつ、現在内閣官房で対策の策定を進 めているとしている。具体化されるものから来 年度予算の概算要求に盛り込まれていくことに なるが、今後も様々なチャンネルから意見を申 し上げていく所存である。
今期のインフルエンザについては、国会にお ける法の継続審議やワクチンの製造についてど のぐらいの量が確保されるのか、ワクチンの安 全性等を考えながら進めている。今期のインフ ルエンザワクチンはH1N1 を加えた3 価のワク チンが2,905 万本、成人接種回数換算5,400 万 回分される予定であるということになってい る。予防接種法の改正案が継続審議となってい るため、当面今期のインフルエンザワクチンは 昨年と同様臨時的措置として行われることにな り、国が主体となる接種ということになる。こ の場合、優先順位を設置しないこと、10ml で の供給はしないこと等については、既に厚生労 働省に確認済みである。流通方法については季 節性インフルエンザワクチンと同様の方法と し、価格についても従来の季節性インフルエン ザワクチンと同程度の価格となるようであると 聞いている。H1N1 を新人に接種する予防接種 法の改正案が国会で成立し、実施主体が国から 市区町村になっても現場が混乱しない対策をた てることを強く要望してきたが、厚生労働省も その方向で調整中である。
また、ワクチンの返品問題についても継続的 に厚生労働省と協議している。この問題が解決 しない限り、今シーズンのインフルエンザ対策 には協力が困難である可能性があり、更に強毒 性インフルエンザ発生時の協力は困難であとい うことを伝えている。7 月28 日に厚生労働省は 都道府県担当者会議を開催、具体策を公表する ことにしており一定の内容をお伝えすることに している。また、返品問題についても何らかの 対応についてお伝えできると思っているので、 日医からの情報提供についてご確認頂きたい。
1)ワクチンによる健康被害について
任意、定期の別なく等しく健康被害に対応 すべきではないか。
2)定期接種の見直しについて
諸外国に比しあまりにも定期接種の内容が 乏しい。Hib、肺炎球菌、HPV、ムンプス、 水痘なども早急に定期接種にすべき。4 月の 代議員会でも出ていたように、定期接種化を 求める強力なキャンペーンやTV コマーシャ ルを提供すべきではないか。
3)成人の百日咳が増加している
二期のDT ワクチンに百日咳を加えるべき と考えるが、提案はなされているのか。
<回答:保坂常任理事>
ワクチンによる健康被害については、臨時接 種と定期T類疾病、定期U類疾病については予 防接種法に基づく救済制度がある。任意接種に ついては医薬品、医療機器、医薬品医療機器総 合機構法に基づく医薬品副作用被害救済制度の 適用となっている。この2 つの補償では障害児 養育年金の額で約2 倍、死亡一時金の額で約6 倍の差がある。ワクチンによる健康被害に対す る補償については、ご意見のとおり任意接種と 定期接種の区別なく同等に行うべきと考えてい る。ご承知のとおり、現在、厚生科学審議会感 染症分科会予防接種部会においては、予防接種 法の抜本的見直しのための議論が進んでいる。 日本医師会としては、WHO が推奨するワクチ ンは原則として定期接種化すべきであると考え ている。これを実現し、実質的に多くのワクチ ンによる健康被害の救済が予防接種法に基づく ものとして、厚く行われることが現実的な対応 と考えている。ご指摘の任期・定期の区別な く、等しく健康被害に対応することは新たな法 律が必要になることから、長期的な対策として 視野にいれて検討して参りたい。
定期接種の見直しについては、ご指摘のとお り我が国の予防接種政策は他の先進諸国と比べ、 数十年遅れている。4 月の定例代議員会におい て回答したとおり、定期接種対応に向けての取 り組みについて、本会としても検討してきた。
先に申し上げた予防接種部会においてもその ことを強く主張し、部会の議論の趨勢は定期接 種により多くのワクチンが国費により無料で行 われるべきとの方向にある。一報、その実現の ために広く国民を巻き込んだ活動も必要と判断 し、日本医師会と予防接種推進専門協議会との 共催による「希望する全てのこどもに予防接種 を」という言葉をキャッチフレーズに本年8 月 末から11 月にかけて予防接種キャンペーンを 行うことにした。WHO が推奨している予防接 種で防ぐことが出来る病気、VPD のワクチン の多くが海外においては定期接種として行われ ているにも関わらず、我が国ではHib、肺炎球 菌、HPV、B 型肝炎、水痘等のワクチンは任 意接種となっている。予防接種法を改正し、地 域間や経済的格差が無く、希望する全てのこど もが公費、定期接種によりワクチン接種を受け られる制度を早急に実現させるための活動であ る。具体的なスケジュール等については、現在 調整中であり、詳細は後日正式に連絡するが、 日本医師会市民公開講座等を活用した一般市民 への意識啓発、新聞紙による意見広告や国会請 願を目指した署名活動の展開などを行うことと している。
報道にもあるように、近年成人の百日咳が増 加しており、本年はその傾向が特に強い。これ らの対策についても予防接種部会等で検討され ている。ご指摘の二期のDT ワクチンに百日咳 を追加することについては、安全性や摂取量等 を含め現在検討されているところであり、今後 の経過を報告させていただきたいと思う。
<回答:今村常任理事>
地域産業保健センター事業については、実施 体制の急激な変更により大変多くの課題がある 中で、37 の都道府県医師会において引き受け て頂いたことに対し、この場をお借りして厚く 御礼申し上げる。
ご承知のとおり本年5 月、独立行政法人に対 して事業仕分けが実施され、産業保健推進セン ターを集約化と財政支出削減という評価が下さ れた。連動して独立行政法人とは関係の無い、 地域産業保健センター事業までが査定されるこ とになった。日本医師会はこのような現場の実 態を踏まえない非常に乱暴な対応に対し、遺憾 に感じると同時に原中会長名で与党の幹事長等 に地域産業保健センターの充実強化を求める要 望書を提出した。更に都道府県医師会にお願い し地域産業保健センター事業と産業保健推進セ ンター事業に関するアンケート調査を実施し た。7 月28 日に都道府県医師会の産業保健担 当理事連絡協議会を開催することとしている が、この調査結果を踏まえ、7 月15 日、16 日 の両日、厚生労働大臣、両副大臣、政務官、労 働基準局長等に対し要望書と共に現場の切実な 声として調査結果を提出した。
ご指摘のとおり産業保健推進センターの集約 化によって産業保健の支援活動に大きな影響を 及ぼし、産業活動の後退が懸念される。日本医 師会としては、産業保健推進センターについて は、これまでと同等の役割が発揮され、支援活 動が円滑に実施されるよう今後も要望を続けて いく。
メンタルヘルス対策は住民や行政、医師会が 一体となって地域の活動として取り組むべき課 題と考えている。厚労省はメンタルヘルス対策 支援センターは元々産業保健推進センターの予 算と別立てであるということで、日医としては 産業保健推進センターの集約化を容認している わけではないが、万が一そのようなことが起こ ったとしてもメンタル対策支援センターは47 カ所確保していきたいと厚労省の考えである。 この事業は、現在でも公募で推進センターが手 を挙げて国から委託を受けているということに なるので、今後は都道府県医師会が取り組むと いうことも可能と考えているので、そのような 仕組み作りも日医として検討していきたいと考 えている。
日医では、産業保健に関わる予算を減らすこ とが無いよう、政府に対し引き続き十分な財政 措置を求めていく。また、事業運用面での改善 ということで、選択機能の充実強化を要望して いく。
今後の日本医師会の対応としては、先ず産業 保健委員会において、今回のアンケート結果を 踏まえ、両センターのあり方について早急に検討 を行い、早い時期に中間答申を頂く予定である。
また、例年9 月に産業保健活動推進全国会議 を開催しているが、これを遅らせて来年の1 月 に開催したいと考えている。先ほどの産業保健 委員会の答申、年末の平成23 年度の政府予算 案を踏まえながら、日本医師会として産業保健 活動がどうあるべきかの方針を決定したいと考 えている。
(1)個別指導全般について
(2)集団的個別指導のあり方について
(3)現行の集団的個別指導の通知に際しての改 善点について
(4)新規指定医療機関に対する個別指導のあり 方について
<回答:鈴木常任理事>
最初に個別指導全般について、指導を強化し て医療費削減を図ろうという発想が出てくる原 因は行政が医療機関は、不正を働くと考えてい ることにあると認識している。これは日医とし て是非とも払拭していきたいと考えている。そ のためには政権、行政、国民にしっかり説明す ると共に日医が自浄作用を発揮し悪いものは悪 いとこれまで以上に明確に表明報道していく必 要がある。指導はこれまで都道府県医師会と社 会保険事務局が相談してその地域独特の運用を してきたが、平成20 年に地方厚生局に直接の 権限が移管され厚生局単位で運営されるように なったので、厚生局内の各都道府県の歩み寄り が必要と考えるが、一気に全国統一するには問 題がある。官民相談しながら徐々に足並みをそ ろえて行くべきではないかと思っている。
次に集団的個別指導のあり方について、集団 的個別指導はそれまでいきなり個別指導が実施 されてしまっていたものを、まずは集団的個別 指導を実施してできるだけ個別指導に移行する のを防ぐために設定された。しかし、その選定 基準がレセプト一件当たりの点数が高いことや 翌年度も高点数の場合に個別指導の対象になる ことについて、日医としては高点数イコール悪 ではないと非常に不満を持っている。現在の指 導大綱ができた際に指導大綱、指導要綱、監査 要綱は5 年経過ごとに見直しを行い、集団的個 別指導は今後日医主催のピア・レビューとする ことを検討すると当時の厚生労働省と確認して いる。
ご指摘のとおり、集団的個別指導を医師会主 催のピア・レビューとすることで高点数の問題 は解決できると考えている。しかし、そのため には国民からみても透明で公正なピア・レビュ ーにしなければ国民の信頼は得られない。指導 の本来の目的である社会保険の適切な運用実施 は国民皆保険制度の堅持や医療の信頼性の確保 を目指すものであり、医師会と行政の目的は本 来一致しているはずである。適正な保険診療を 実施していくためには行政と地区医師会が共同 して進める必要があると考えているので厚生労 働省に対して今後とも働きかけていきたい。
次に現行の集団的個別指導の通知に際しての 改善点について、先般6 月4 日付で都道府県医 師会社会保険担当理事宛に指導の取り扱いにつ いての文書を送付した。その中で、平成20 年 に指導監査の権限が厚生局に移管されて以降、 都道府県医師会と行政の関係が悪化していると の指摘を受けているので、都道府県医師会と厚 生局の都道府県事務所の意思疎通が上手くいっ ておらず都道府県医師会は非常に距離感を感じ ている旨を伝え、今後の改善を強く申し入れ た。集団的個別指導の改善点についてご提案を いただいているが、いずれも最もなことである と考えているので厚生労働省に働きかけていき たいと思っている。
最後に、新規指定医療機関に対する個別指導 にあり方について、全てご指摘いただいたとお りと考えているが、返還については明らかに適 正を欠くレセプトに対しては指摘し、医療機関 の自主的な対応に委ねることにしては如何かと 考えている。そもそも新規開業医療機関に対す る指導は教育的なものであり、いわゆる訳あり 医療機関に対する個別指導とは全く異なるべき ものである。今回厚生労働省との間に基本的な 合意をさせていただいたが、カルテの指定につ いては実際は殆どの現場では前日になっていた ところを4 日前に押し戻したというのが実情で ある。ご指摘いただいた点については更に働き かけていきたいと考えている。
1)個別指導をカルテ30 名分行うということは 指導時間の2 時間30 分だとカルテ1 名分を5 分で指導することになり、充分な指導時間が とれず、指導する側も、される側も充分納得 する指導になりません。今迄どおり20 名と していただきたい。
2)カルテ指定において4 日前に15 名通知とし、 前日に15 名とする。とありますが、電子カ ルテ等使用医療機関の場合、原則紙媒体への 打ち出しとなっています。15 名のカルテ一 年分を一日(一晩)で打ち出すのは診療所に とって非常に困難な作業です。全てを4 日前 の通知にしていただきたい。
又、電子カルテ等を使用する医療機関に対す る個別指導の方式に対して、未だにきちんとし たルールが定まっていません。どの方式が最も 適切か国と協議決定して頂きたい。
<回答:鈴木常任理事>
個別指導については、現在の都道府県の個別 指導の実態は高点数保険医療機関等を除外すれ ば、そのほとんどが審査支払機関、保険者、被 保険者等からの情報提供によるものだと考えて いる。対象患者数は少ない所では10 名から多 い所では100 名と、都道府県によって取り扱い に大きな差があった。指導は様々な請求パター ンについて複数実施することにしていおり、外 来、入院、初診、再診について、社保、国保、 後期高齢者について各々2 名を対象としても24 名分となることや、ほぼ全国平均であること等 を勘案して30 名とさせていただいた。
指導時間については、指導の目的が果たせる 時間とし、原則として診療所は2 時間、病院は 3 時間とさせて頂いた。例えば診療所に対する 個別指導の場合、指導対象となるレセプト30 件に対し、一律に2 時間とするのでは無く、状 況に応じて長短があることになる。この主旨は 何も問題が無ければ淡々と進むことになり、2 時間以内で終了することもあり、また、何らか の問題が生じた場合は2 時間を超える場合もあ る。大事なことは双方にとって指導が有意義な ものとなることが必要であると考えている。
電子カルテについては、業者によっては患者 のデータを打ち出すのに色々な画面にいかなけ ればならず、必ずしも直ちに打ち出せるような ものでは無く、作業に時間が掛かって面倒であ るというご意見も聞いている。
そもそも紙代や保存場所の関係で電子記録し ているのに、打ち出して指導を行うのは時代に 逆行しているとも言える。特定共同指導など、 医療機関で指導を行う場合は電子カルテの画面 を見ながら実施しているので、対応を厚労省と 協議していきたいと考えている。
質疑では、集団的個別指導で医療機関の選定 ミスがあったことへの厚生局への今後の対応問 題や、高点数で医療機関が指導されるのはおか しいので指導大綱を見直していただきたいとの 要望が出された。
鈴木常任理事からは、現場の状況をお聞きし た上で厚労省と協議を進めていきたいとの意向 が示され、又、指導大綱の見直しについては、 前回の見直しが中医協の基本問題小委員会の議 論を経て決まったという経緯があることから、 改めて検討させて頂きたいとのコメントがあっ た。又、指導官の質の改善も求める意見も出さ れ、原中会長から、医療法は刑事訴訟法に基づ いて作られていることに大変不満を感じてい る。基本的に医師と官僚は国民のためにやって いるという同じ考え方をもたせるために国に働 きかけていきたいとの姿勢が示された。
施設基準は5 項目あるが、問題は、下記「1」 ならびに「2」に記載の「十分な経験を有する」 という部分に関して、研修会の開催回数(本年 度は3 回)があまりにも少い。容易に研修に参 加できる環境を全国的に整えていただくよう働 きかけをお願いしたい。
1.がんリハビリテーションに十分な経験を有 する専任の常勤医師が1 名以上配置されてい ること。
2.がんリハビリテーションに十分な経験を有 する専従の常勤理学療法士、常勤作業療法士 又は常勤言語聴覚士が2 名以上配置されてい ること。
<回答:葉梨常任理事>
がん患者リハビリテーション料は、新設の診 療報酬の点数で1 単位200 点、1 日6 単位まで とれる。これは新しくできたものでがん患者が 科学療法の治療を受ける際に合併症や機能障害 を生じることが予想され、治療前或いは治療後 早期からリハビリテーションを行うことで機能 低下を最小限に抑えることができることから、 早期回復を図る取り組みが評価され算定される ことになった。
算定については、中医協の審議の中で簡単に 取れ過ぎないようにとの意見があったようであ る。研修会の開催状況について厚生労働省に確 認した結果、主催するライフプランニングセン ター、リハビリテーション団体では、今後開催 回数を増やしていく動きがあるとのことであり、 日医でも気をつけて推移を確認していきたいと のことである。
引き続いて、追加質問で畑副会長からの要望 を受け、葉梨常任理事から日医で全国的な調査 を行い、追加の研修会の開催について要望して いきたいとのコメントがあった。
日本医師会として、各都道府県における警察 医の状況を調査し、警察庁や法医学会等の関連 団体とも協議しながら警察医活動の向上と協力 を図る必要があると思うが、日本医師会の考え をお尋ねしたい。
<回答:横倉副会長>
ご承知のとおり警察医と言っても、その名称 や業務内容等、特に監察医制度を持っていると ころと、そうでないところとでは大分差があ る。そういう現状で日本警察医会という組織に 加盟されている都道府県が20 県くらいに留ま っている。日本警察医会が真に全国的な組織と して、警察業務に関連する医療や検視、検案等 について医療界を代表する組織として機能する ことは、一方では非常に国民医療や国民生活に おいても極めて重要なことである。先ほど来、 ご議論のあった死因究明の分野においても死亡 時画像診断が導入され始め、国の施設としても 本格的な検討が開始されているが、こういう死 因究明の分野においても日本警察医会には死体 検案を担う医師の団体として積極的な関与が期 待されている。更に日本医師会しては次のよう な点からも日本警察医会の全国組織化を支援し 連携を深める意義があると考えている。
第一に、医療界の代表である日本医師会と警 察司法との連携が円滑になること。第二に、日 本医師会の活動としても極めて公益性が高いこ と。第三に、日医会員にとっても検案や死亡診 断書作成等に関する知識、技術を高める機会が 期待できるということがあげられる。特に第二 の公益性の点に関しては、死亡された方の死因 の特定や検視制度の改善に向けて日医が警察医 会と共に臨床の立場から提言をしていくこと は、生きている患者さんの生命を助けることに も劣らず価値の高い取り組みであると確信をし ている。先月、原中会長と日本警察医会の原口 会長が面談され連携の推進について改めて確認 したところである。今後日本医師会としては、 日本警察医会と有機的に連携し、全国組織化を 支援するため各都道府県医師会で警察医或いは 検案問題を担当する役員或いは事務局の分掌を 決めていただくようにお願いする予定である が、その前に全国の警察医や警察医会の現状に ついて詳細に調査行い実態を把握する必要があ る。その際には各都道府県医師会或いは郡市区 医師会の役員、事務局の方々にもご面倒をお掛 けするがご理解とご協力をいただけるようお願 いしたい。
最近、「会員の団結のため、代議員の数を増 やすなどして勤務医の声を取り上げるべきであ る」との発言がよく聞かれるようになってい る。しかしその一方、最も多数を占める一人開 業医の声が果たしてしっかりと取り上げられて いるのか?
提案として、ネットを利用した役員、いわば 「ネット常任理事」といったものを新設しては いかがか。
<回答:羽生田常任理事>
現在、日本医師会には無床診療所の役員が3 名、有床診療所が2 名。役員改選の度に一期で 辞めているということではなく、私は皆様から ご推挙いただき5 期目、司会の今村聡常任理事 が3 期目で、無床診療所でも何とか頑張ってお りご支援いただきながら会務に専念していきた いと思っている。
ご提案の「ネット常任理事」について議論は してないが、常任理事という役目柄或いはこの 度改正になる公益法人においてもネット上での 議論が結論として認められることは、恐らく不 可能であろうと考えられるので、「ネットにお ける常任理事」が実際に可能かどうかというと ころに疑問を持っている。一つの方法として、 4 月21 日に原中会長からのご提案として目安 箱を設置させていただいて多くの方々からご意 見をいただいている。また会員の多くの方から ご意見をいただくことにしており、それを会務 に反映させることが執行部としてはしなければ ならない大きな課題であり、それについては今 後とも進めていきたいと考えている。また、こ の会長協議会、代議員会、各種の委員会等々広 く診療所の先生方にもご出席もいただいてお り、ご意見も伺っているところである。今後、 そういった会議或いはインターネット等の活用 等により、様々な方法で会員から広くご意見を いただいた上で会務の執行にあたっていきたい と考えている。
さる6 月18 日に、菅内閣のもと「新成長戦 略」が閣議決定された。内容はご存知のとお り、先進医療の手続き簡素化、医療の国際化な どであり、25 日には、大阪市長から「成長戦 略拠点特区」として、外国人医師による医療行 為の規制緩和要望などが出されている。
6 月30 日には、経済産業省が、「医療産業研 究会」報告書を公表した。医療に関連する新た な市場分野の拡大、新技術の導入・IT 化によ る医療のイノベーション等の議論を行ってき て、「医療の国際化」として、国内の医療機関 が外国人患者に高度な医療サービスを提供する 「医療ツーリズム」構想を打ち出している。
また、その拡大に向け、患者受け入れを支援 する新会社を2011 年に官民出資で設立する方 針を固めたとの新聞報道があった。また、国で は、医療関連データベースいわゆる「ナショナ ルデータベース」の活用方法の検討が進んでい るようだ。
日医ではいつ頃このような話を知り、どのよ うな行動をされたのか、また今後どのような対 応をしていくのか伺いたい。
<回答:高杉常任理事>
日本は今世界一の高齢社会に突入し社会の仕 組みを大きく変える転換期にあるが、一方でか つてない大きな政権交代、首相交代の混乱期で ある。また、このような時期だからこそ日本医 師会は国民の命と生活を守る大きな使命がある と認識している。原中会長は4 月14 日の記者 会見で小泉政権下での市場原理主義に立ち返ら ないように述べ、同日の民主党の国民生活研究 会の講演では医療介護福祉の重視を指摘した。 以下、ポイントをいくつか述べていきたい。
原中会長の方針に従い、小沢一郎民主党幹事 長、枝野行政刷新担当大臣に混合診療の全面解 禁に反対する文書を提出。併せて規制制度改革 に関する分科会に日本医師会の参加を求めた。 また民主党の適切な医療費を考える議員連盟の 会合に担当役員が招かれ、混合診療の全面解禁 の問題点、医療ツーリズムの問題点を指摘し た。更に5 月初旬に原中会長が日本記者クラブ で講演し日本医師会の主張の理解を求めた。政 権与党の議員に対し規制制度改革に関する分科 会の動きを注視しながら各担当役員が直接的に ロビー活動を行ってきた。これらの働きかけに より同分科会の検討テーマが保険外併用療法 (いわゆる混合診療の原則解禁)の範囲拡大か らいわゆる混合診療の原則解禁の文言が削除さ れ、医療ツーリズムは国際医療交流に変更され たが、その内容は殆ど変わっておらず今後注意 を要する。
6 月1 日、日医執行部就任披露パーティーの 翌日に鳩山首相の辞任はご記憶のとおりであ る。6 月7 日に出された規制制度改革に関する 分科会第一次報告書(6 月15 日公表)の、段 階において規制改革の流れをある程度抑制する ことができたが、その行方は今後も予断を許さ ない。医療産業研究会報告書については、6 月 30 日公表以前に情報を入手し、経済産業省の 担当課長に対し検討を申し入れしている。
菅首相になって出された新成長戦略に対して は、当該省庁の政務三役、民主党の関係議員に 文書を通じて意見を述べている。また、IT 情 報戦略でのナショナルデータベースについて は、レセプト情報等の利用について個人情報保 護目的外利用等について注意を喚起し、第三者 審査機関の設置を求め、今後注視していきた い。民主党政権誕生の下での委員会、研究会は 日本医師会の参加を拒まれた経緯があったが、 これから委員改選期を迎え、また新たにスター トする場合は積極的な関与を求めていくことに している。
以上概要を説明したが、医療政策の作成、立 案がともすれば内閣府、財務省、経済産業省の 主導により推進され厚生労働省の意見が反映さ れないケースが数多く見られている。日本医師 会は定例記者会見を通じ国民に医療政策への日 医の見解を公表しているが、是々非々で判断し 支援していくことの会長方針に何ら変わること はない。今後政治主導の下、展開される政策の 方向を変えていくためには各都道府県医師会、 郡市医師会に送っている記者会見資料、その他 日医の資料を基に地元選出の国会議員への働き かけが大切である。全医師会の一致したご協力 をお願いしたい。
質疑では、埼玉県の金井会長から医療ツーリ ズムについて、中川副会長は先ほど全面否定す るものではないということであった。これは何 らかのルールを作らないとどんどん拡大してい くと懸念を抱くものである。保険外併用療法等 についても日本医師会でどのように対応してき たのか、また、今後の活動方針についてもお聞 かせいただきたいとの追加質問があり、原中会 長、中川副会長より次のとおり説明があった。
日医 原中会長
今の民主党政権の危険なところは、小泉政権 時代にできたことを官僚が持ち出してきている ということである。メンバーも前と全く同じメ ンバーが出て非常に危険を感じている。現実に 医療関係の問題も厚生労働省とも相談がなく、 経済的な理由ということでどんどん進められて いるが、正に医療ツーリズムのその典型である と思っている。
医療ツーリズムが及ぼす影響については、関 係省庁とも話し合いを持っている。彼らももし かしたら、この医療ツーリズムが日本の医療を 壊す危険性があるということも認識はしてい る。そのことに関して、本日中川副会長が面談 して日本医師会の賛成・反対意見について説明 することにしている。
もう一つは、日本の経済の低迷に対して政府 がものすごく焦っている。医療に対して、当然 日本は優れていると誰もが認めているが、今、 韓国が済州島に大規模な医療ツーリズムを計画 している。これは中国人の富裕層を対象にして いると思われるが、もし日本がこれに太刀打ち できる施設をもてば、中国人は日本に安心して くるであろうと、だから負けないで早く作らな ければいけないという焦りがある。ただ日本医 師会としては、あくまでも、このことが行われ ることにより、日本の国民保険の質が悪くなっ たり或いはいろんなところにほころびが出てい るということに対して、懸念と同時に現在地域 医療が崩壊する中で、医師、看護師はその勝ち 組或いはお金が入っている病院が全部そういう ところを巻き上げていいのかという問題を検証 しないといけないという基本的な態度をとって いる。
これだけではなく、例えば医科大学の新設に 関しても厚生労働省が必要だという人数を、全 然相手にも聞きもしないで勝手に文部科学省が 進めているという現実もあり、今の日本政府の あり方というのは正に危険状態だと感じてい る。近々菅総理と会う予定があり、これらの問 題点を統合して政府として行動するよう申し入 れることにしている。国民の医療制度が崩壊す ることだけは、どんな小さな穴もあけてはなら ないと思っている。
日医 中川副会長
私が全面的に反対ではないと申し上げるの は、日本の医療レベル、医療システムを高く評 価して病気になった外国人が日本で治療を受け たいということに関しては、医師の使命感とし て当然、これは診察、診療はするべきだという 環境整備はしたいということである。それから 絶対譲れない点というのは、混合診療の全面解 禁と株式会社の参入である。医療ツーリズムは 多分失敗するからそんなに深刻に考えなくてい いという人もいるが、失敗しても株式会社が医 療に参入したという実績は残る。そのことは絶 対避けたいと思っている。
又、関連して福岡県の松田会長から、個々の 医療政策について是々非々でいろんなことに対 応していくとのことであるが、今回の参議院選 挙の結果でもA1 会員一人あたり2 票も取れて ないという状況にある。医師会組織自体がかな り弱体化していると思われる。会長として今後 医師会が一体化、団結していくためにはどのよ うに考えておられるのかとの質問あり、原中会 長より次のとおり説明があった。
日医 原中会長
今回の参議院選挙では3 人支持をして、3 人 まとめて、もし30 万票集まれば医師会の力は ものすごく強くなるという感覚をもっていた。 ところが結果は3 人集めても会員一人当たりの 獲得票は、前回、前々回に比べずっと下がりっ ぱなしである。更に過去に遡って調べてみると 最高127 万票とった福島先生の選挙をみると、 出身県はA 会員一人当たり17 票獲得している。 しかし今は奥さんの票も入ってないという状況 である。これを真剣に考えないといけない。診 療費は高くしろという要求は強いが、だけど自 分は選挙にも行かない。この状態を単なる勤務 医の先生方は選挙にもいかないだろうというよ うな見方だけではいけないと思う。少なくとも 一人当たり2 票位は何とかとれるような組織に していかないといけないと思う。医師会は政治 団体ではないので、本来の仕事をやるというこ とが大切であるので、きちんとした行動はとっ ていきたい。しかし一方では政治を抜きにして 医療費のことを語ることはできない。だから一 生懸命、今回の選挙を反省して、きちんと票が 集められるような日本医師会にしていかなけれ ば益々窮地に立っていくだろうと思っている。 この選挙結果受けて私たちの要求を聞いてくれ るのか、心配しながら活動しないといけないと いうことを身にしみて感じている。具体的なこ とは、政府の交代劇が続いている中で、やっと きちんと話し合いができる体制ができつつある という状況ではある。正副会長で話し合ってい るのは、各政党に研究会を作ることを目指し、 どの政党にも共通して日本医師会の意思を提示 していくことにしている。民主党とは研究会を 作ることを合意した。それから今日、谷垣総裁 が来られてそのことも話をしたら、自民党には 医師が二人しかいない。この二人に対して日医 から働きかけて党全体として日本医師会とのパ イプを作ってくれとの要望を受けているので、 これも進めていくことにしている。それから一 方では国会議員で医師免許をもっている人で与 野党を問わず、全員参加の勉強会を開くことも 決定している。
後は、会員の先生方が政治の大切さについて の環境つくりを如何に浸透させることができる かが、役員の責務だと思っているので先生方の ご協力をお願いしたい。
日本医師会からの連絡事項
<説明:藤川常任理事>
厚生労働省の「チーム医療推進会議」に出席 しているが、今回、平成22 年度の厚生労働省 の研究事業として、「チーム医療推進のための 看護業務検討ワーキンググループ」で看護師が 行う医行為の範囲に関する研究を行うことにな っている。
特に問題になっているのが「特定看護師(仮 称)」の問題で、特定看護師制度を何とか導入 して一般看護師の業務範囲を広げようという計 画が進められている。このアンケート調査が7 月中に多くの医療機関に送られる。特定機能病 院83 施設、病院1,600 施設、診療所(有床・ 無床)は1,000 施設、訪問看護ステーション 540 施設、更に専門看護師450 名、認定看護師 1,200 名にアンケート調査を行うことになって いる。
日本医師会としては、この特定看護師の問題 を全国で認識していただいて、医療安全を損な うことがないよう独自に調査を実施することに した。
各都道府県医師会役員10 人、そこに勤務す る医療機関の看護師に10 人(47 医師会× 20 人)、また各市郡医師会役員に5 人、そこに勤 務する看護師に5 人(818 医師会× 10 人)、合 計9,120 人の結果を独自にまとめ、厚生労働省 が出すデータと日本医師会の会員と看護師の見 識を出して、国民の安全を守るために医療行 為、医師行為は原則として医師がやるというス タンスを示すことにしている。7 月中に届くも のと思うので全国のご協力をお願いしたい。
第28 回日本医学会総会への登録・参加につい て(協力依頼)
当日は、同会長協議会へ日本医学会総会矢 ア義雄会頭並びに永井良三準備委員長が出席さ れ、平成23 年4 月に開催される第28 回日本医 学会総会について、学会への登録と参加呼びか けの協力依頼があった。同学会の開催日程等は 下記のとおり。
○学術講演
会期:平成23 年4 月8 日(金) 〜 4 月10 日(日)
会場:東京国際フォーラム、丸ビルホール &コンファレンススクエア、 東京商工会議所
○博覧会
会期:平成23 年4 月2 日(土) 〜 4 月10 日(日)
会場:東京国際展示場(東京ビッグサイト)、 丸の内エリア
○学術展示
会期:平成23 年4 月7 日(木) 〜 4 月10 日(日)
会場:東京国際展示場(東京ビッグサイト)
印象記
副会長 玉城 信光
初めて出席させて頂いたが、2 時間の間に12 題もの質問があり、日医がそれに答える形で進行 された。ディスカッションをするというのではなく、代議員会の答弁と変わりはない。
1.日本医師会役員選挙における会長選出方法について
今回の会長選挙のように代議員の1/3 の得票数で会長を選出してよいのかと質問があったが、 これに関しては法人化の際に検討していくことになった。また役員の定年は現在の規定ではない が、これも法人化のなかで検討することになった。
12.医療政策への日本医師会のかかわりについて
参議院選挙の結果も踏まえ、与野党を問わず日医との勉強会をすることになっているようであ る。また医系議員の集まりを持っていきたいとのことであるが、社民党や共産党も参加するのか は今後経過を見たいとのことである。たいへん良いことである。国会議員に日本医師会の考え方 を伝え議論する場が大切である。
7.8.個別指導のあり方
全国を統一基準でやるのは良くないといわれた。集団的個別指導で高点数を指導することを改 善するように日医からも要請するように話された。また集団的個別指導の対象となった医療機関 はどのような基準で対象になったのか類型区分を示すべきであるとの意見が述べられた。そのと おりだと思う。
多岐にわたる議題であるがこれらが解決されるとすばらしいと感じられる。しかしこれまでの 経過をみていると行政側を変えることは難しいようにも思える。
それにしても暑い、熱い東京である。35 度の空気の中にすっぽりと入り、ビルの中からながれ るエアコンの風しか冷たいものはない。3 時からの会議なので美術館にでも行くかと六本木の国 立第2 美術館へいってみた。オルセー美術展をしているはずである。暑い中を歩いていくと今日 は特別招待日で一般の入場はできないとのことである。残念、それではサントリー美術館にでも 入るかと六本木のビルの中に入った。表に表示があり今日は休館日ですとのこと、祝日の翌日で あることを忘れていた。疲れの残る日を過ごした。ダメ押しがひとつ、最終便の飛行機の中で酒 でも飲んで帰るかと思ったが那覇空港の駐車場に車を置いてきてしまった。疲れに疲れた東京出 張である。