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同姓同名

玉城信光

那覇西クリニックまかび 玉城 信光

「ネ、ネ、聞いてくれる!!大変なことがあ ったの」家に帰るなり我が妻が興奮して話しか けてきたのです。

年金確認メールが妻に届いたのです。年金事 務所に赴き記載されている職歴を確認したとこ ろ、事務職員曰く「あなたは19 才頃大阪で働 いていますね。その分を年金に追加しましょう」

「ちょっと待って。私は19 才の時は学生で 沖縄にいました。仕事はしていないのですが」

「おかしいですね。里見さんですよね。生年 月日は昭和○○年○月○日ですよね」

「私はずっと沖縄にいるので外に里見という 人がいるのですか。生年月日も同じですか」

「そうです。あなたでなければ同じ生年月日 で同じ名前の人がもう一人大阪にいることにな りますね」

これは大変なことです。妻は思いました。妻 はときどき高島易断を見て自分の運勢を確かめ ていることがあるのです。生命判断は何年何月 何日生まれで運勢を見ます。ちなみに妻は徳川 家康と同じ運勢をもっているのです。

妻は思ったようです。「同じ年の同じ日に生 まれた人は同じ運命にあるはずだ」その上に名 前まで同じであれば、姓名学的にも全くおなじ 運命になるはずだと考えたのです。

妻はおばたちにつれられてときどき“サンジ ンソウ”や“ユタ”を訪ねることがあるので す。家族のことを訪ねても“サンジンソウ”や “ユタ”が言うことが違っているので余り“サ ンジンソウ”や“ユタ”は当らないと思ってい るのですが運勢は信じることがあるのです。

あるとき東京の街角で占い師の前に座ってみ たのです。「あなたのご主人は料理人ですね、 包丁さばきが上手だと出ていますよ」「うん、 違っているわけでもないな、メスさばきが上手 だからね」と思ったのでした。

年金事務所から帰るなり、インターネットの 検索をはじめたのです。最近のインターネット 社会は怖いものです。里見の検索をかけると出 てきました。出てきました。『里見という人は 私と同じ運命を生きているのだろうか?』しか し検索された里見は、どうも妻より若いようで す。その他には誰も出てきません。本人も出て きません。本人さえも検索にかからないのはお かしいと思ったようです。しかし、それもその はずです。その名前は『現在では使われていま せん!』でした。

私が帰るなり妻は興奮した様子で上記のこと を話したのです。「本当にもう一人私と同じ運 命をもっている人がいるのだろうか、会ってみ たい。もし同じ運命を辿るのであれば占いを信 じてもよい」と話すのです。

私はそっけなく「40 年前の年金記録でしょう。 社会保険事務所の人が里見の記録を右になぞっ ていったときにその下の里見 ×子の記録を間 違って登録しただけじゃないの。いい加減な社 会保険事務所だからそれだけのことだろう」

つまらないことを言ってしまった。