「医療の質と公共性」のバラン スをとった公的医療機関の役 割を忘れることなく病院事業 局の全職員が一丸となって改 革を実行できるよう取り組み ます。
Q1.この度は、沖縄県病院事業局長就任おめ でとうございます。
ご感想と今後の抱負をお聞かせいただけま すでしょうか。
昭和49 年に県立中部病院に研修医として採 用され、以来35 年間、沖縄の県立病院一筋に 勤務してまいりました。定年退職まで後3 年を 残して中途退職して公務員医師生活に終止符を 打つことになるとは夢にも思いませんでした。 公務員医師生活最後の11 年間は日本最南端の 県立病院長として国境の島々に暮らす人々が少 しでも医療に対して安心と信頼が持てるように 微力ながら尽力してまいりました。
この度は沖縄県立病院事業管理者の職を受け るにあたり、大変迷いました。現在の厳しい状 況にある県立病院事業を再建することは生易し いことではないと十分に認識している積りでし た。しかし病院事業がこのような状況になった 責任の一端は我々現場の人間にもあるという思 いから、少しでも病院事業の改善に繋がること ができればと思い引き受けることにしました。 引き受ける決心をした以上は迷うことなく全 身、全霊を打ち込んで沖縄県立病院事業の再建 に取り組む覚悟をしております。「ピンチの裏 にチャンス」ありで、困難な状況であればある ほど希望を持つことが何よりも大切であると思 っております。男としておおいにやりがいのあ る仕事にタイミングよく巡りあえた運命に感謝 しております。
これからは病院現場との連携を密にして目標 達成に向けて頑張りたいと思っておりますので 沖縄県の医療界の皆さまにも県立病院のサポー ターになって頂いて、側面から県立病院事業へ のご支援・ご指導を賜わりますよう宜しくお願 いします。
Q2.現在、病院事業局と病院現場が一体とな って「県立病院改革プラン」に基づく改革 が実行されておりますが、現状の評価と今 後の見通しについてお聞かせ下さい。
国の医療制度改革や診療報酬改定、全国的な 医師不足等、医療を取り巻く環境が厳しさを増 す中で、県立病院においても医師の欠員で一部 の診療科の診療体制の縮小や休床を余儀なくさ れたり、過去10 年間の相次ぐ病院建設による 費用の負担増や収益減等で、経営面では多額の 不良債務や資金不足を生じるなど、経営破綻に 繋がりかねないほど極めて厳しい状況にありま した。
このような状況を受け、沖縄県病院事業局に おいては、平成21 年3 月に「沖縄県立病院改 革プラン」を策定し、県立病院が果たすべき役割・機能の方向性を示すとともに、経営の効率 化等、県立病院の改革に向けて総合的に取り組 むこととしました。
特に、経営の再建については「県立病院再建 計画」を策定し、不良債務や、100 億円の一時 借入金の解消をして平成23 年度までに経常黒 字化を達成することを目標にしております。
このうち、不良債務の解消については、平成 20 年度末に国の制度を活用して公立病院特例 債を発行するとことにより、目標達成すること ができました。
また、資金不足の解消については、平成21 年度から平成23 年度までの3 年間、県の一般 会計から病院事業特別会計へ、毎年度約85 億 円の繰り出しを行う再建支援を得ながら、病院 事業局では診療材料や薬品等の材料費、委託費 等の縮減、給与費の見直しによる費用の縮減を 行うなど、病院事業局長以下県立病院課と6 病 院16 診療所の全職員が一丸となって目標達成 に取り組んでおります。
再建計画期間の2 年目にあたる平成22 年度 は経営再建を確実なものにするための重要な年 度になると考えております。今年度の診療報酬 改定は沖縄県立病院事業局にとっては「追い 風」となるのではないかと期待しております が、この再建期間中に目標を達成し、再建期間 後も安定的な経営基盤を確立するためにも「入 るを計って出を制する」経営方針を徹底してい く必要があると考えております。
平成18 年に公営企業の全適となり、初代の 病院事業管理者として病院事業運営に尽力され た知念局長が道筋をつけられた県立病院経営再 建・改革を引き継いで、確実なものにしていく ことが私に与えられた使命であると認識してお ります。今後は「医療の質と公共性」のバラン スをとった公的医療機関の役割を忘れることな く病院事業局の全職員が一丸となって改革を実 行できるよう取り組んでいく所存であります。
Q3.島嶼県である本県では、離島における医 師確保が取り分け難題であります。病院事 業局として、今後どのような医師確保対策 を考えられておられますか。
近年の社会の医療ニーズの変化や、医師の診 療科偏在、女性医師の増加への就労環境整備の 対応の遅れ等は離島のみならず、沖縄本島の県 立病院でも医師の欠員が起こり、診療制限が行 われるようになってきており、医師の補充は喫 緊の課題となっております。
医師確保については、臨床研修による医師養 成、大学医局との協力連携による医師派遣、人 的ネットワークやホームページによる医師募 集、また平成21 年度から始まった地域・離島 医療確保モデル事業による医師招聘など、実施 可能なあらゆる手段を講じて医師の確保に努め ております。
とりわけ、今年度からは県立病院の次世代を 担う後期臨床研修医の確保を目指して民間団体 が主催する各地の研修病院合同説明会等に出展 したり、また欠員が生じている小児科の中堅・ 若手医師の確保のために、5 月に神戸で開かれ た小児救急医学会ではブースを設置して沖縄県 立病院事業の現状を広報して、これまでにない 積極的な医師確保活動に取り組んでおります。
さらに福祉保健部と連携した国庫要請補助金 で専門医派遣事業、代診医派遣事業を実施し、 離島の病院の専門医確保や、診療所医師の支援 事業を行っております。
Q4.沖縄県医師会に対してのご意見・ご要望 がございましたらお聞かせください。
県立病院はこれまで中部病院における医師卒 後臨床研修事業、そして新臨床研修制度の開始 後、南部医療センター・こども医療センター、 北部病院等で医師卒後臨床研修事業を相次いで 開始して、900 名余の研修修了者を送りだして まいりました。この結果、研修修了者の70 % 余の医師が県内にとどまって沖縄県の医療に従 事する成果を産み出し、県内の離島の中核病院 や診療所の医師確保に貢献したのみならず、県 内の他の公的医療機関や、民間医療機関にも多 くの人材を供給しました。しかしながら近年は病院勤務医師の減少で、県立病院だけではな く、離島診療所や、離島病院への人材供給が厳 しくなってきております。
昭和40 年代以来、「タライまわしのない」医 療を県民に提供してきた沖縄の医療界の総力を 上げて全国に蔓延している「医療崩壊」の予防 を図る必要があると考えます。そのためにはこ れまで以上の公的、私的を問わない医療機関の 病々連携、病診連携、人材育成・交流が必要に なると考えますので、沖縄県医師会の皆様のこ れまで以上のご支援・ご協力を賜わりますよう お願い致します。
Q5.最後に、11 年ぶりに石垣から地元に戻っ てこられた感想、日頃の健康法、趣味、座 右の銘等がございましたら、是非お聞かせ ください。
病院現場から離れて、デスクワーク主体の馴 れない県庁勤務となった日常生活に少しは戸惑 いを隠せない心境であります。しかしながら環 境は変わっても、公務員として県民のために奉 仕することには変わりはないと考えておりま す。常日頃から物事に対処する際の心構えは 「公平・公正」をモットーにしている積りです。 また県立病院事業局全体が職員全員が一丸とな って再建計画に取り組むためには「和を以って 貴しとなす」という言葉を大切にしたいと考え ております。趣味はスポーツ鑑賞、やるなら球 技、特に野球、ゴルフ、ジョギングそして登山 です。
この度は、インタビューへご回答いただき、 誠に有難うございました。
インタビューアー:広報担当理事 當銘正彦