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九州医師会連合会平成21 年度
第2 回各種協議会

2.介護保険対策協議会

副会長 小渡 敬

去る1 月23 日(土)、ホテル日航福岡におい て福岡県医師会の山内孝常任理事の司会によ り、標記協議会が開かれたので報告する。

挨 拶

福岡県医師会の川波壽副会長より、概ね以下 のとおり挨拶があった。

少子高齢化と言われて久しいが、昨年の統計 では、高齢者と言われる方が22 %を超え2025 年には約30 %近くになるだろうと言われる時 代になっている。そういう中で、先生方におい ては、地域の実情に応じた介護事業をなされ、しかもその指導的な役割を果たしておられるこ とに対し敬意を表するものである。

本日は、第1 回の各種協議会で行われた介護 認定審査について、昨年の10 月に見直しが行 われ、その実態はどうかという検証が行われた ところである。また、主治医意見書に係る様々 な問題、介護と医療の連携の問題、職員の処遇 の問題等々、ディスカッションをいただく予定 である。よろしくお願いしたい。

日本医師会の三上裕司常任理事より、概ね以 下のとおり挨拶があった。

介護報酬改定、要介護認定の見直しから10 カ月、また経過措置を排除してからも4 カ月と いうことで制度も落ち着いてきたかと思う。

今日は9 題の議題が出ており、その中で先生 方のご意見を伺わせていただきたい。24 年の 同時改定に向けては、これから医療と介護の合 同の検討会が立ち上げられるという機運があ る。これからは介護についても医療の面から見 るということが大切だということで、そういっ た面からも先生方のご意見を伺いたい。よろし くお願いしたい。

協 議

(1)基本調査の定義見直しにより要介護認 定審査は改善されたのか(大分県)

<提案要旨>

基本調査の定義見直しによる認定審査が始ま った。

本県の別杵速見広域圏でのデータは下表のと おりで、今後、例数を増やしより詳細な検討を 行う予定である。

<提案要旨追加発言>

提案の時点では384 例だったが、その後、例 数を増やし1,500 例となり、一応分析できる数 字になっている。

見直し以前の1 年間を対照群として、4 月か らの分、10 月からの分がどのように変わった かをみた。

一次判定をみると、非該当が10 月からの見 直しでかなり減ってはいるが、まだ以前の倍位 となっている。地域によって差はあると思う が、全体としては、要支援2 以降は、見直し後 も見直し前とパターンが変わっていないという ことで、非該当だけが改善されたという印象で ある。一言でいえば、一段階最初に下げておい て半段階戻した。これで納得してくれというこ とで結果的には厚労省は半段階下げることに成 功したのではないかという印象を持っている。

(2)要介護認定制度について(熊本県)

<提案要旨>

9 月の介護保険対策協議会において介護認定 制度について提起し、「10 月1 日より2006 年 度版に近づけるように再改定がなされた」と説 明された。

しかし、介護認定審査会の現場では、その後 も殆ど改善されていないことが問題となってい る。審査委員はモチベーションが下がったまま で、審査会に出席する意欲が湧かないと訴えて いる。また介護の現場でも介護度と実際の状態 との乖離に戸惑いがある。

○協議事項(1)(2)は一括協議

<各県回答>

10 月1 日から見直された要介護認定方法の 影響については、福岡県以外の各県において未 だ具体的な調査は行われていないため、今後、 県行政等に働き掛け検証していく必要があると 意見された。

福岡県より、福岡県介護保険広域連合の調査 結果について報告があり、「平成19 年度で非該 当17.6 %(9,008 例)が、平成21 年4 月見直 し後23.1 %(1,571 例)、平成21 年10 月見直 し後10.4 %(825 例)と、非該当は減る形に なっている。要支援1 に関しては若干減り、要 介護1、2、3 に関してはあまり大きな変動はな い」と説明があった。

宮崎県より、宮崎県では全体的には大きな変動はないと説明があり、その理由として、宮崎 方式という認定審査員への研修プログラムの内 容について報告があった。

審査会のモチベーションの問題については、 福岡県より、審査会の先生方等々にアンケート を行った結果、少なくとも昨年度の経過措置の 時よりはモチベーションは上がっていると報告 があった。

<日本医師会コメント>

認定見直しに関する検証検討会が1 月15 日に 開催され、これで終結するということになった。

検証検討会では、n 数が16 万から17 万例位 の検証を行っている。

18 年の10 月11 月、19 年の10 月11 月、20 年の10 月11 月、21 年の4 月5 月のデータと、 今回の経過措置を解除した後の21 年の10 月 11 月のデータを見ている。

一次判定では、20 年10 月11 月が非該当 3.3 %、21 年4 月5 月に7.3 %に増え、21 年10 月11 月の経過措置後4 %に戻っている。要支 援も同じような形。重度の方も大体そのような 形になっている。ほぼ戻ったのではないかと考 えている。20 年以前に近いデータになったと いうことで、検証検討会の目的が概ね達成でき たとして今回で終了することとなった。

二次判定では、20 年の10 月11 月が非該当 0.8 %、21 年4 月5 月に2.3 %に増え、21 年10 月11 月の経過措置後1.1 %に戻っている。

宮崎方式ということがあったが、二次判定結 果については、認定調査員あるいは審査会委員 に研修を十分に行えば行う程、非該当の率が低 くなっている。宮崎方式のようにしっかり研修 していただくと、そういったものが良くなるの ではないかという結果が出ている。

認定審査会の審査員のモチベーションが下が っているという問題については、経過措置の導 入がそういうことを起こしたということである が、利用者が軽度判定されサービスが利用出来 なくなるのではないか、という不安を解消する 観点から経過措置が設けられたということでご 理解いただきたいが、基本的には要介護認定の 見直しが突如行われたということで、審査会の 現場あるいは患者さん、利用者のご家族、そう いったところに混乱が生じたということは事実 であり、要介護認定は本来ケアマネジメントと リンクさせなければならないが、仮に見直すと いうことがあっても慎重にしなければならな い。今回の検証検討会の報告の最後にも、今後 見直しを行う場合には、公開の場で関係者が入 った中できちっと検討するということを書いて いただいた。

今回、認定調査員テキストの特記事項に係る 留意点として例示をいくつか出している。後で 出てくる主治医意見書の方も理解が不十分であ るということなので、医師会として、主治医意 見書の特記すべき事項等の書き方についても、 こういう例示ができないかと考えている。

大分県:特記事項を重視するという形はできれ ばやめていただきたい。主治医意見書にしても 基本チェックができていれば大体見当がつく。 主治医意見書はあくまでもプラス抜けがないか、 更に医療的な部分でケアプランを立てるときに 必要な内容を書いていただくべきと考える。

日本医師会:認定の方法を検討する委員会で十 分検討しないといけない。どの程度チェック項 目を作れば特記事項はあまり書かなくても状態 が分かるのか、そういう問題がある。

基本的には、今はそれが十分でないので、な るべく一目で見て分かるようなシンプルな形の 特記事項の書き方として、状態が分かるように と事例が出されているということでご理解いた だきたい。

(3)主治医意見書講習会の充実に向けた取 り組みについて(宮崎県)

<提案要旨>

各都道府県単位で主治医意見書の講習会の開 催が義務付けられているが、医師側には講習会 への出席は義務付けられていないため、一度講習会に出席すると翌年からほとんど出席しなく なる。そのため、年を追う毎に講習会の出席者 が減少しており、行政側から医師の介護保険へ の関心の低さを指摘されかねない状況に陥って いる。

一方、主治医意見書の記載内容の貧弱さが問 題になっており、講習会への出席の義務化が議 論される可能性がある。その前に、魅力ある講 習会を実現する努力が必要である。

<各県回答>

各県ともに、主治医意見書の記載に係る研修 会への参加者が年々減少傾向にあり、参加者の 確保が課題として挙げられていると報告があっ た。また研修会に参加されない医師が記載する 主治医意見書の内容が十分でないケースが多々 あるとして、研修会内容の充実と研修会参加を 呼び掛けるアプローチの方策について種々検討 していく必要があるとして回答があった。

熊本県からは、勤務医の先生方をどうやって 介護保険に向けさせるかということが一つの課 題であるとして、主治医意見書作成料を、書い た先生本人に渡すような仕組みを今後検討して はどうかと発言があった。

鹿児島県では、研修会において、認定審査会 で実際に役立った意見書事例や改善が必要な事 例を実際に示すとともに、主治医意見書の記載 ポイントをまとめた資料を会場で配布し、また 研修会の開催案内についても、医師会だけでな く県や各地区介護保険組合からも二重三重と通 知していると報告があった。

福岡県では、北九州市において、年に5 〜 6 回程、主治医意見書の記載方法に係る研修会を 開催していると報告があり、本研修会に1 回で も出ていただいた方には「北九州市医師会介護 保険かかりつけ医」というステッカーを配布 し、本ステッカーを診療所の窓口に置いていた だくことで、この医療機関は介護保険に理解の ある先生がおられる医療機関だということが分 かるような取り組みを行っていると説明があっ た。また、この取り組みを実施してからは、若 干、講習会を受ける方の比率が上がってきてい ると報告があった。

<日本医師会コメント>

主治医意見書の書き方を十分に理解していた だくため、講習会の内容をいろいろと考えるこ とは可能だが、そこに参加していただけるよう なインセンティブ、動機付けをすることが非常 に難しいということで、それぞれの医師会の先 生方がご苦労されていることに感謝したい。日 医としても検討していきたいと考える。

主治医意見書の重要性として、基本的には二 次判定における要介護度を変更する際に、特記 すべき事項が65 %位その理由になっている。 40 %強は傷病に関する意見の部分となってい る。この2 つが非常に大事だということだが、 その書き方については、18 年度に主治医意見 書記入マニュアルというものが厚労省から出さ れているが、小さい字で書いてあり分かり難い ということで、もう少し分かり易い形に出来な いかということで、厚労省と日医でモデル事業 という形で主治医見書の問題について取り組ん でいきたいと考えている。

熊本県:主治医意見書記載の研修会に出席され る方とされない方では、出席されない方の主治 医意見書の方が比較的内容が悪い。

介護保険かかりつけ医認定制度というものを 作ってはどうかという意見もあり、熊本県で は、研修会に出席された方に証明書を発行して いる。

各県がバラバラに取り組むのではなく、出来 れば日本医師会においてそういうものを積極的 に取り組んでいただきたい。

大分県:介護保険の中で我々医師がある程度も のが言えるのは主治医意見書なので、真剣に考 えて取り組んでいく方向を考えないといけない と思う。

(4)認知症支援体制における「かかりつけ 医」の役割と「専門医療機関」の定義に ついて(福岡県)

<提案要旨>

今般、本会では、全会員医療機関を対象に 「認知症に関する実態調査」を実施した。調査 結果によると、「認知症患者またはその家族から の相談に応じている」医療機関は全体の55.3 % であった。診療科別にみると、脳外科、神経内 科、精神科等いわゆる専門医療機関は8 割以上 が、内科は8 割近く、外科においても6 割以上 が相談に応じていることが明らかになった。

また、昨今の中医協の診療報酬基本問題小委 員会において、平成22 年度診療報酬改定の検 討項目「認知症対策」では、「専門医療機関と かかりつけ医の連携」に対する診療報酬上の対 応が論点となっている。

厚労省が現場にそぐわない形で専門医療機関 を定義づけることのないように、認知症の専門 医療機関について各県と議論の上、日医を通じ て厚労省へ提言したい。

<提案要旨追加発言>

地域のネットワークの中心として、かかりつ け医を支援してくれる実態のある病院こそが専 門医療機関になっていただき、診療報酬の対象 になっていただきたいと考える。

<各県回答>

各県ともに、かかりつけ医と専門医、専門施 設との連携を緊密にすることが今後より重要に なると意見され、認知症早期発見を担うかかり つけ医のバックアップ体制を整備していただく よう日医に対して意見された。

<日本医師会コメント>

昨年4 月の介護報酬改定で、老健施設におい て認知症患者を専門医療機関に紹介し確定診断 されればそこに評価がなされることになってい る。これと同様のことが今回の診療報酬改定で もされるということである。

専門医療機関の定義は介護保険と同様で、認 知症疾患医療センターということである。地域 でMRI を持ったいわゆる精神科医や専門医に おいて確定診断ができるということになる。介 護保険については、MRI は近隣のところと共同 で利用できる所であれば、それで良いというこ ともある。

何らかの基準がなければ診療報酬や介護報酬 を付けるという区分けができないので、現在の ところは全国150 か所ある認知症疾患医療セン ターを中心にということになる。

かかりつけ医が、認知症疾患医療センターと 関連を持ちながら、認知症の患者さんを診てい く際の評価もあり、また認知症疾患医療センタ ーで確定診断をする際の評価もあるという方向 でやっているところである。

鹿児島県:認知症疾患医療センターの設置につ いて県に働き掛け、600 万円の予算を付けてい ただいた。県内医療機関を募集したところ、精 神科病院5 か所が手を挙げていただいた。最終 的には4 か所を決定している。

宮崎県:BPSD 等がひどい時に緊急避難的に 受け入れてくれるバックアップ病院が宮崎県の 場合非常に少ないので、結局そういった患者さ んに関わると、本来の医療以外のところで主治 医がすごく時間を取られてしまう。それで敬遠 してしまうところがある。バックアップ等を充 実するような施策を国にお願いしたい。

日本医師会:認知症については、地域全体で医 療資源を上手く使っていくということが大事で あり、我々としては、かかりつけ医だけでなく 認知症サポート医が中心となり、認知症疾患医 療センターや地域包括支援センター等を有機的 に利用しながら、様々な状況に応じた適切な医 療施設が紹介され、患者さんがそこで十分な治 療を受けるという形を地域でとっていただきた いと考えている。

(5)介護保険関係職種との連携について (大分県)

<提案要旨>

「地域包括ケアシステム」が地域において円 滑に機能するためには、かかりつけ医・訪問看 護師・介護福祉士・介護支援専門員等の在宅療 養に関わる職能団体が、地域包括支援センター を核として協議の場を作ることが必要と考える。

<各県回答>

各県ともに、利用者が住み慣れた場所にいな がら、医療や介護等必要なサービスを包括的に 受けられるよう、地域包括ケアの仕組みを拡充 することは、今後更に重要になるとの回答であ った。

熊本県より、医療・保健・福祉連携学会を組 織し、医師会、看護協会、歯科医師会、老健協 等いろいろな団体と共に学会を開催し、各関係 職種間での協力体制を作っていると報告があ り、医師会が中心になって行うと、他職種がど んどん参加してくるという状況があると説明が あった。

福岡県より、地域包括支援センターの運営協 議会は非常に重要な役割があるが、実態はなか なかうまく機能していないため、今後は、関係 職種団体、特に医師会が中心となり運営協議会 をリードしていくことが非常に大事ではないか と意見があった。また、福岡県では、主に緩和 ケアの患者さんを地域で支える体制づくりとい うことで福岡県在宅医療推進協議会の設置が決 まっており、地域毎に24 時間の訪問看護ステ ーションの整備拡充や地域在宅医療ネットワー クの構築等について取り組むことにしていると 報告があった。

本県より、沖縄県でも実際には連携はうまく 取れていないが、要はどのようなシステムを作 っても医師に関心がなければ意味がないと考え ると発言し、24 年度の改正で、介護と医療と の関係をどうするのか、医療のない介護はない という点から、診断書だけではない介入の仕組 みを根本的に考えていくべきだと意見した。ま た、認知症を医療から外そうという考えが厚労 省にあり、認知症を介護でやるのか医療でやる のかという根本的な部分をはっきりさせないと いけないと意見した。

<日本医師会コメント>

今後、医療と介護の連携を考える上でも、介 護保険関係職種との連携は非常に大切なこと で、今後そういったことは評価をされていくと 考える。

本来、地域包括支援センター運営協議会は、 必ず地区の医師会が入っているということで、 その中で医師会が主導的に連携を取っていくべ きであるが、なかなか上手くいっていない現状 である。なぜうまく活用できていないかについ ては、これから検証していきたいと考えている。

在宅医療、在宅介護、在宅ケアの推進協議会 が各地で作られているが、そのことについては 非常に有効な手段ではないかと考えている。

認知症の問題については、今回の診療報酬改 定の中では認知症は医療の中で評価がされる方 向である。医療から完全に切り離すのではな く、医療と介護の両方で認知症は関係している という形である。24 年の同時改定に向けては その辺の兼ね合いをもう一度検討し直すことに なると思う。

(6)介護職員処遇改善交付金について (鹿児島県)

<提案要旨>

前回の本協議会でも議論したところである が、職種を限定した交付金という形では介護サ ービスを運営する上での抜本的な改革にはなら ず、やはり介護報酬で評価していただくよう、 日医には厚労省に対し要望していただきたい。

(7)政府は4 万円の介護職員の報酬アップを 必ず実行し、それとは別に8 %程度の介護 報酬をアップすること(宮崎県)

<提案要旨>

長妻厚労大臣は、参院予算委員会で「介護職員の報酬を順次引き上げ、最終的に1 か月で4 万円の上昇を行う」と言っている。このことは 任期中に必ず実行してもらいたい。

4 万円の介護職員の報酬アップは当然とし て、さらに介護現場の疲弊を改善するために は、このほかに8 %程度の介護報酬アップが必 要である。

○協議事項(6)(7)は一括協議

<各県回答>

各県ともに、前回の本協議会でも確認された 通り、職種限定の交付金では介護サービスの抜 本的改善には至らないとして、良質な介護サー ビスを確保するためには介護報酬のアップとい う形で評価すべきであると意見された。

大分県より、施設や職種の限定ではなく、介 護報酬に転換し全体の底上げという形がベスト だが、今回はセカンドベストということで、こ れを何とか運用で改善していこうと考えている と発言があった。

佐賀県より、介護施設には様々な職種の方が 働いており、その辺りに一貫性がないと発言が あった。

福岡県より、全体として介護報酬で評価する ということが筋だと思うが、全体の底上げをし た上でそれを議論しないといけないとして、二 段構えでやっていただきたいと考えると発言が あった。また交付金に係る職種間の軋轢の問題 として、施設が直接職員に払うというやり方に 非常に問題があると意見され、施設で働いてい るということを個人と施設が証明すれば、行政 の窓口で直接支払っていただく等の工夫を行っ てはどうかと提案された。

<日本医師会コメント>

交付金ではなく介護報酬アップで処遇改善と いうことは当然のことで、4 月の介護報酬改定 も、処遇改善を目的とした3 %のプラス改定で あった。その検証が現在されているところであ る。ただ、それまでのマイナス改定があるた め、3 %のアップ分は介護職員の処遇改善に使 えないという話もあり、直接全てが介護職員に いくという形で交付金が交付されている。

交付金ではなく介護報酬ということは当然筋 論であるが、一つの問題として、介護報酬アッ プには介護財源が必要となり、介護保険料を上 げなければならないということがある。それに ついて、保険者である市町村がどう考えるか、 協力できるのかどうか、保険料が上がることに 非常に抵抗があり、いくら介護職員の処遇改善 といっても、保険料が上がることについては市 町村の協力はなかなかハードルが高い部分があ ると考える。

また、交付金についてはいつまで続くのかと いう不安があるとのことだが、基本的には24 年度まで続くと思うが、その場合にはそれを検 証し、その後、交付金を無くす場合は、介護報 酬の中でどのように吸収するのかということを 考える必要がある。

処遇改善交付金の支給対象が介護事業所で働 いている介護従事者だけということだが、これ が全職種に拡大することが可能ということであ れば、保険料も増えず利用者の負担も増えない ということで理想的ではあるが、それは非常に 難しいことではないかと考える。

手段の弾力化ということで、行政に勤務の証 明書を持って交付金を貰いに行くということ も、逆に言えば事業所の裁量権が無くなってし まう。事業所に裁量を持っていただき、できる 限り弾力的な運用していただくよう事業所にお いて工夫していただいた方が上手くいくのでは ないかと考える。

24 年の改定において、日医としては、交付 金ではなく介護報酬アップで8 〜 10 %のアッ プを勝ち取れればと考えている。長妻大臣も4 万円の報酬アップが見込めるくらいの介護職の 処遇改善ができるような形にしたいということ なので、そうなれば相当のアップ率を取らない とできないということで、一度口に出せばこち らとしても攻めやすいと考えている。

なお、3 %アップの介護報酬改定の影響については、現在、検証検討会にて検証が行われて いるが、平均すると1 万円も上がっていないと いうことが分かっている。

(8)介護職員の人材育成について(福岡県)

<提案要旨>

雇用促進のため、政府による支援策が実施さ れているが、現時点でも介護職員の確保は困難 な状況である。

<提案要旨追加発言>

福岡県医師会理事で福岡県議会議員の秋田章 二先生より、以下の通り追加発言があった。

福岡県では、緊急雇用対策として、平成21 年度、派遣会社に委託し、申し込みのあった各 介護保険施設に約400 人を派遣し、そこでホー ムヘルパー2 級程度を取得していただき、その まま正規雇用に結び付けたいということで、約 4 億9,000 万円の予算を付け、月に一人当たり 14 万円、それを6 か月支給するということを行 った。半年近くで425 人派遣しており、緊急で 後1 億3,000 万円補正予算を組み、今年度は 500 人を派遣するということを行っている。半 年間で150 人が終了しており、その内77 人が 正規職員として介護職に就いている。あとの半 分が施設とのマッチング等の問題で、正規職員 とはなっていないが、非正規職員として働いて いる状況である。

また、介護職員のスキルアップや社会的な地 位も必要だということで、今年度は8,500 万円 の予算を付け、介護職員がスキルアップするた め支援等を行っている。21 年度はこういう事 業を取り組んでいる。

<日本医師会コメント>

緊急雇用対策として政府はかなりの予算を付 けている。2010 年の予算で、介護労働者の雇 用管理改善に関連した施策は248 億円が計上さ れている。介護未経験者の確保と助成金につい ては、6 か月以上定着した場合は1 人25 万円、 更に6 カ月以上定着した場合は更に25 万円、 最大で年間50 万円の助成金が出る。更に年長 フリーターと言われる25 歳から40 歳の方の場 合はその倍が助成されることになっている。

また、昨年10 月に策定された緊急雇用対策 の中で、働きながら資格を取る介護雇用プログ ラムというものがあり、働きながら給与を貰い ながら授業料を払ってもらいながら介護資格を 取得するというものである。ヘルパーの場合は 1 年、介護福祉士の場合は2 年ということで、 その間にキャリアアップをしていくことが可能 となる。

国は、全体として4,500 億円の基金を積み、 介護分野にはその10 分の1 位450 億位を使う としている。21 年度、22 年度は1 万5,000 人、 20 年度を含め33,000 人位を養成するというこ とである。

様々な形で雇用対策を打っているということ で、これを是非積極的に活用していただきたい と考える。

(9)介護サービス情報公表制度について (長崎県)

<提案要旨>

介護サービス情報公表制度の価格決定につい て、各県の事情を伺いたい。

<各県回答>

九州各県では、本県が39,000 円と一番高く、 次いで、鹿児島県37,818 円、長崎県36,500 円、大分県35,000 円、宮崎県34,620 円、熊本 県34,000 円、福岡県31,000 円、佐賀県25,800 円という状況であった。

<日本医師会コメント>

宮崎県医師会が本事業を請け負っているとい うことだが、医師会が請け負っているというと ころはそれ程多くないと考える。

この制度自体、私もおかしいと考える。行政 が負担すべきと考えている。本制度は18 年か ら始まっているが、この手数料をどうするかと いう議論は本格的に行われたことはない。21年6 月に開かれた介護給付費分科会において、 この情報公表制度について、どこで検討するの か、いつ検討するのかということを質問した が、介護給付分科会か介護保険部会それぞれの 座長と相談したいということであった。

医療については、基本的には行政負担で、都 道府県のホームページに情報が公表されるよう になっているので、是非早急に行政負担にして いただきたいと考えている。

どれ位アクセス数があるかというと、20 年1 月のアクセス数は26 万件となっている。利用 者自身が情報を得て事業所を選ぶということで はなく、ほとんどケアマネが使っているという 状況である。

本協議会の総括として、日本医師会の三上常 任理事より、以下の通り発言があった。

医療と介護を同時に考える検討会が3 月まで に立ち上がるということになっている。その検 討会のメンバーがどういう方々で、どういう方 向で検討されるかということで立ち位置が変わ ってくると考える。もう一つは、私が出ている 高齢者医療制度改革会議で、高齢者医療につい てのあり方あるいは保険のあり方について、ど うも制度が変わる。これは25 年に施行される ようである。その辺も含め大きく変わる。今後 は利用者の負担が大きくならないよう、利用者 の方が年をとっても安心して暮らせる社会とな るよう、そういう制度設計をしていきたい。

印象記

小渡敬

副会長 小渡 敬

去った1 月23 日、ホテル日航福岡で介護保険対策協議会が開催されました。今回は各県より9 題の議題が挙げられました。主に要介護認定審査に関することと、介護職員の処遇改善交付金に ついて、さらには主治医意見書の充実などについて活発に議論がなされました。

その中で介護職員の処遇改善については、各県より交付金ではなく介護報酬の引き上げで行う ことが望ましいという意見が多くありました。これについては日医の三上常任理事も同様な考え であると述べていました。

要介護認定審査については、昨年の介護報酬の改定で要介護認定審査が厳しくなり、全国から不 満が相次ついだことを受け、厚生労働省は昨年10 月にこれを見直し大方は改善されているが、そ の後の各県の調査では介護度が低い方では前回よりやや厳しい結果になっているようであります。

医師の意見書の記載については、記載が不十分であると毎回議題に挙がるが、これについては 各県とも研修会等により説明しているが、なかなか成果が上がらず各県ともに苦慮しています。

介護サービス情報公開制度については、医療のそれとは異なり、その費用を各施設が負担して いるが、各県とも不満が多く、行政が費用を負担するか廃止にすべきであるという意見が多くあ りました。日医の三上常任理事も、強制加入である以上行政が費用を負担すべきと強調していま した。今後は2012 年の介護保険・医療保険の同時改定に向けて大きな改正が行われるとされて いるので、介護保険の分野でもしっかりと将来を見据えて、今後議論していくことが必要である と思われます。