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九州医師会連合会平成21 年度
第2 回各種協議会

去る1 月23 日(土)、ホテル日航福岡において開催された標記協議会(医 療保険対策協議会、介護保険対策協議会、地域医療対策協議会)について、 以下のとおり報告する。

1.医療保険対策協議会

理事 平安 明

去る1 月23 日(土)、ホテル日航福岡5 階 「志賀の間」において標記協議会が開催された ので、以下のとおり報告する。

挨 拶

○福岡県医師会 池田副会長

折角お集まり頂いているので、本日は実のあ る協議をお願いしたい。

○日医・藤原常任理事

医療保険協議会へお招きいただき感謝申し上 げる。

ご存知のとおり大変厳しい状況である。中医 協の委員も外れた。

今回の協議会でも沢山のご質問を頂いてい る。改定にどう日医が関わるかが最大の関心事 だと思うが、協議会のなかでお話をしたい。

協 議

(1)中医協診療側委員と日医との連携状況 について(長崎県)

日医は、新たに中医協診療側委員になられた三氏とどの様な形で連携を取っているのか、又、 取って行かれるのか可能な範囲内でご教示頂き たい。

(2)次期診療報酬改定について(鹿児島県)

政権交代に伴い、中医協委員から日医役員が 外された。一方、マスコミは、中医協総会で公 表された「医療経済実態調査」結果をもとに、 「開業医の年収、勤務医の1.7 倍」と、相変わ らずセンセーショナルな報道を行っている。

長妻厚労大臣も報酬全体のアップを目指すと しながらも、開業医への配分を削り、勤務医へ 移す方向もにじませている。

10 年度の税収が25 年ぶりに40 兆円を下回 る見通しで、診療報酬の引き上げも厳しい状況 ではあるが、日医が主張するように病院の経営 体力を強化した上で病院勤務医への手当てを配 慮する等、病院・診療所の経営基盤を確立した 上での手厚い配分が望まれる。

今回の診療報酬改定の状況、今後の中医協へ の関与について日医の考えを伺いたい。

(3)次期診療報酬改定に対する日医の対応 について(熊本県)

診療報酬の改定は、社会保障審議会の医療部 会・医療保険部会での「基本方針」、内閣府の 予算編成過程での「改定率」とそれに沿った 「中医協」の協議で決定されてきた。しかし、 「行政刷新会議」での事業仕分け、厚労省政務 三役の「診療報酬検討チーム」の設置や「日医 抜き」の中医協など、政権交代に伴って従来と は様変りした改定作業となっている。

こうした状況の中で、日医は改定作業にどの ように関与し、どのような対応策を講じようとし ているのか、会員から説明を求める意見も多い。

日医および各県のご意見を伺いたい。

上記の3 題については一括協議された。

<各県の回答状況>

各県からは提案県と同様、政権交代による様 変わりした工程により診療報酬が決められるこ とについて、今後の日医の関わり方並びに対処 法を問う意見が出された。

<追加意見>

◆大分県:安達先生が頑張っているのは分かる。 日医はバックアップをよろしくお願いしたい。

今回の中医協委員の選出については問題があ ったと思う。日医役員が外されたことについて 診療側を代表する立場としてもっと意見を出し て欲しい。

◆熊本県:民主党への票を出さなければ診療報 酬を出さないというやり方は卑怯なやり方であ る。医療を政争の具にはしない、絶対受け付け ないということを日医は国民に理解していいた だけるよう意見を出していただきたい。

◆佐賀県:長年の自民党政治を変えたいとの考 えがあったのは確かである。逆に日本医師会の ポリシーを出すチャンス。「民主党にパイプが ないから」というみっともない話はせず、暫く の間は厳しいかもしれないが、しっかりした日 医のスタンスを作るべきである。

○日医・藤原常任理事コメント

先生方からの多くの意見は「日医外し」に対 して、なぜもっと頑張らないのかとの意味合い のものだと思う。民主党は中医協を立て直すと 言っていたが、中医協委員である日医の3 人を 外すことは少なくともないだろう、何人かは外 すにしても誰かは残るだろうと私なりに最後ま でそのように考えていたが、見事に外されたの が現状である。なぜ私がそのように強く思って いたかを申し上げると、医療に関して全国隅々 までこれだけネットワークを張り巡らしている 組織は日医以外にはない。また様々な情報につ いても日医を介していく。医会、学会等につい ても、以前に比べると分散してきてはいるが、 日医を外して物事を考えることはないと私は中 央にいて信じていた。日医委員を3 人とも外す というような暴挙には出ないと思っていたが、 これが現実なものになって驚いている。

民主党ももっと今の医療の現場が分かってい れば、このようなことにはならなかった。恐ら くこれは一部の意見によるもの、いわゆる民主 党ブレーンの方々の意見を中心に動いてしまっ たということだと思うが、今後は修正の時期に 入るのではないだろうか。先ほどもご意見があ ったが、今回の民主党のやり方は逸脱したもの であると私は思っているし、有識者もそのよう な指摘をしている。

日医と中医協委員との連携状態について、今 回新しい委員が3 人入ったわけだが、実際に連 携が取れているのは日医の診療報酬検討委員会 委員長である安達委員だけである。安達委員と は密接にコンタクトが取れている。他の2 人は 全くと言っていいほど連携は取れていない状況 である。安達委員と厚労省との距離感について は、こういう場ではなかなか申し上げにくい が、厚労省としてもかなりの部分で意見を聞い てくれているのではないだろうか。ただ、我々 がこれまで1 年半議論して積み上げてきたこと が、ほとんどゼロとなってしまったことについ ては引っ掛かるものがある。

責任の所在についてもどうなるのか不明であ る。確かに安達委員とは緊密の連携を取ってい るとは言っても組織の人間ではない。先ほどお 話にもあったが、日医の活動の原点は診療報酬 改定であったと私共も思っている。だから改定 の出来が悪ければ、執行部退任もしょうがない くらいの気持ちでこれまでもやってきたであろ うし、私もそのつもりでやっている。そういっ た意味ではだれが責任を取るのか。そのような ことを考えると、そもそも今回の有り方は根底 から間違っている。中医協は3 つのステークホ ルダーで構成し、公益側は別にして支払側と診 療側はこれまでもいろいろ衝突があった。しか し最後には妥協し、それぞれがそれぞれの団体 の責任を負ってきたわけだが、そのような形が なくなってきているというのは問題である。ま た今回の改定について逐一注文をつけてくる 等、中医協の権限を随分縮小するようになって いるので、今の形が医療側の意見を反映したも のではないと思う。このような状況は一刻も早 く元に戻さなければならないと思っているし、 こういう状況が長く続けば、恐らく日医は消滅 してもしょうがないのではとの危機感も持って いる。それに対してどのような方法を取るの か。本来なら日医の判断はいろいろとあったと 思うが、執行部は最終的に安達委員を支援する との選択をした。これは高度な判断であり、私 がとやかく言っても仕方のないことである。

(4)レセプトオンライン請求にかかる省令 改正について(大分県)

レセプトオンライン請求義務化については、 政権交代以後パブリックコメントを経て2009 年 11 月25 日に省令改正が行われたところである。

それによると、基本的には電子データでの請 求を行うことが努力義務とされ、そのデータの オンライン送信については義務化ではなくなっ たと読める。

また、手書きレセプトについては、基本的に 電子請求自体も義務化免除とされており、レセ プトオンライン請求義務化は大きな転換点を迎 えている。

このような状況下でレセプトデータの流れは 1)紙2)電子媒体3)オンライン送信と3 つのルー トが併存することになるが、医師会としてこれ らのレセプト請求の流れをどのように取り纏め ていくか、代行送信等の取り組みも含め各県の お考えを伺いたい。

また、オンライン請求に関わる助成事業の内 容について、日医に情報があればお伺いしたい。

(5)レセプトオンライン請求義務化の今後 について(長崎県)

ご承知のとおり、平成21 年11 月25 日の厚 労省令にて平成22 年7 月分からの電子請求は、 オンライン請求のほか、光ディスクなど電子媒 体による請求も可能となったが、やはり現在レ セコンによる紙レセプト提出の医療機関(常勤 医師が65 歳以上を除く)は、最長でも2014 年 度末までに電子レセプト出力可能なレセコンへの買い替えを余儀なくされる。

日医として、今回の省令改正に対する見解を 伺いたい。それから来年度以降のレセコン購入 への助成金は現時点で絶望的だが、復活の可能 性はあるのか?

また、平成18 年厚労省令のレセプトオンラ イン義務化スケジュールにのっとって、機器購 入や回線引き込み等オンライン化への準備をさ れてこられた医療機関に対する保障や助成が必 須だと考えるが日医の見解はいかがか?

(6)電子レセプト情報の今後の活用について (福岡県)

レセプトオンライン請求に関しては、昨年11 月25 日に改正省令・告示が制定され、オンラ イン請求の義務化は実質的に撤回された。

しかし、免除等の要件からみても、診療情報 の電子化については、将来的には移行していく と思われる。

電子レセプト情報については、医療費抑制の 目的のみでなく、医療提供者、患者、保険者の 共通の利益になるような措置が必要である。こ のことについて、各県医師会及び日医のご意見 を伺いたい。

上記の3 題については一括協議された。

<各県の回答状況>

省令改正後の医師会の対応として「IT 化に 対応可能な医療機関にはオンラインの導入を進 めていくよう助言する」、「医療機関から寄せら れる質問や相談に対し、その医療機関の状況に 応じて対応する」等の意見が出された。

代行送信については、宮崎県から「国保連合 会と契約し実施していたが中止とし、電子媒体 請求へ切替えた」、熊本県からは「代行送信の 計画を中止した」との報告があった。その他の 県では実施予定はなかった。

オンラインの助成制度については、予算成立 前にレセコンの買い替えやオンライン請求へ移行 した医療機関が何ら助成措置を受けられないこ とに不公平感を感じているとの意見が出された。

また電子レセプト情報の今後の活用について は「政府が医療費抑制のためにデータを利用す ることが懸念されるが日医(日医総研)として もデータの集積・分析を行い、政策提言に活か すべき」、「多くのレセプトデータが収集される ようになれば感染症サーベイランスなど、国民 や医療機関にとって有用な活用も期待できる」、 「レセプトはあくまでも請求書であり、それが 患者個人の健康情報とは等しくない。医師と患 者間で行われている診療内容が担保されない状 況でレセプトデータでの健康管理的な動きは慎 重にすべき」等の意見が出された。

<追加意見>

◆宮崎県:IT化可能なところはやはり電子化 を進めるべき。

この改正については納得できるものではないか。

◆佐賀県:電子化を何のために実施するのか。

我々は患者さんを見る役割。患者さんにメリ ットがあるのか。

◆大分県:電子カルテ・レセプトシステムによ る自動算定は絶対にだめ。

病名に対し「算定する・しない」を選択させ るシステムなら良いが、自動算定だと全て個別 指導で引っかかる。病名で自動算定を可とする なら、審査側の機械審査についても道を開くこ とになるので、注意しなくてはならない。

日医から指導ではないが、何か指針を出す必 要があるのではないか。

◆鹿児島県:現在の情報化社会においてIT 化 の波は避けらされない。

レセプトオンライン請求にこれ以上反対と言 うならば国民の理解が得られない。

◆佐賀県:電子レセプトの件で、労災保険のレ セプトも電子化しようとの動きがあるが、見積 りを出したところ莫大な保守料がかかることが 分かり、保留となった。

各医療機関と業者が契約する場合の標準的な 保守料金等の価格について、日医から情報を流 していただけないか。

◆沖縄県:電子情報の活用について営利目的は 当然だが、営利目的でない場合にも注意しなけ ればならない。例えば行政側が保険者のレセ情 報を用いて特定の対象者に訪問医療等を行うケ ース等が想定される。当事者にとって不利益を 被る場合があるので、電子情報の活用について は営利・非営利の場合も含めて日医では検討し ていただきたい。

◆福岡県:レセプトデータを匿名化するソフト がある。提出データは医療機関名、電話番号を 削除、医療機関番号、氏名、生年月日、カルテ 番号、被保険者記号番号を全て匿名化する。そ れぞれの医療機関で匿名化し、県に提出する。 県ではデータを収集・分析に当たる予定。

○日医・藤原常任理事コメント

IT 化自体については、これまでの対応によっ て一定のご了解を頂いたと思うが、これからの IT 化に向けてどうするのか。今日はIT 委員会 さながらの意見も出たのではないかと思う。こ の度の省令改正により、電子媒体での請求も可 能、現在レセコン未使用または手書きの病院・ 診療所においても免除となり引続き手書きで請 求が可能になったのはご承知のとおりである。 民主党のマニフェストには完全義務化から原則 に改めると明記されたが、日医が自民党政権下 で取り纏めた範囲を超えていない。日医が提案 した「年間レセプト件数が3,600 件以下」、「年 齢65 歳以上」これらを踏襲したものである。 今回の省令改正は先生方からのパブリックコメ ントへのご投稿や各都道府県医師会の様々な活 動、働きかけによるものである。改めて先生方 の積極的なご協力に対して感謝を申し上げる。

今回の省令改正に対する日医の見解として は、これまで我々が掲げてきた要望が概ね受け 入れられたという点では評価している。今後は IT 投資はもとより、セキュリティ対策が極め て重要だと考えている。そのためには国による 財政負担、あるいは2010 年度の診療報酬改定 において、電子化加算等への十分なインセンテ ィブを期待しているところである。また今回の 免除・猶予の措置により代行送信が不要となっ た。ご承知のとおり免除・猶予については日医 から11 月30 日、1 月5 日付で各都道府県宛周 知依頼文書を出しているところである。各々の 届出期限までに基金並びに連合会の双方に届出 をする必要があるので、繰り返しになるがお願 い申し上げる。なお、この届け出は医師会で取 り纏めて提出しても良いことになっている。

助成制度についてだが、レセコンの購入・買 い替え、ソフトの導入等などにかかる助成制度 については5 月29 日に21 年度補正予算として 290 億円が成立したが、例外措置の拡大に伴い 対象施設数の減少が見込まれることから196 億 円に減額された。当初はこの額で本当に間に合 うのか心配していたが、今のところ問題ないよ うである。助成期間については、補正予算が成 立した5 月29 日以降から適用となっているが、 それ以前にオンラインに対応した医療機関に対 する助成がないとのご意見をいろんなところか ら頂いている。

しかしながら、これはどこかで線引きをしな ければならない部分と、民主党に何の繋がりも ない現段階で助成期間を拡大するよう要望する のは大きな壁があると思っている。

2014 年末までに電子レセプト対応のレセコ ンへの買い替えが余儀なくされているという点 に関しては、今後全てのレセコンが電子レセプ トに対応できるように厚労省から業者に対して 指導しているところである。助成額については 厚労省がレセコンメーカーに対し調査を行い、 決めている。

前向きな提案としてレセプト情報をもっと活 用できないかというような話があった。もちろ ん目的外使用については厳禁である。前政権の ときには民間業者にデータが流れようとしたこ とがあったが、今後も目的外使用については 我々も厳しく監視していく。情報を前向きに検 討することを目的に日医総研の上野さんを中心 に取り組んでいるところであるが、その一環と してO R C A の活用が考えられる。現在、 ORCA ユーザーは18,000 件を超えている状況だと思う。そのユーザーに対しレセプト情報の 提供について協力依頼をしたところ、協力する とのご返事を500 件程度頂くことができたが、 厚労省と対峙できるような形に持っていくに は、もっともっと数を増やしていかなくてはな らない。厚労省にデータを独占されるのではな く、日医にある情報を集結し、地域のあるべき 姿について意見を出していきたいとの思いはあ るので、もう一段のご協力を先生方にお願いし たい。またデータ活用の関連として、日医では 約8,000 箇所で定点調査を行い、感染症に関す る分析を考えている。IT については前向きに 取り組もうとするといくらでもやることがあ る。今、一段落した形の中で、これからのIT 戦略をあらためて練っていきたい。本日頂いた 貴重なご意見は日医や日医総研に伝えて、活用 していきたいと思う。

(7)社保・国保審査委員会における審査基 準の格差是正について(福岡県)

福岡県医師会においては、社保・国保両審査 委員会での審査基準の格差の是正を目的に、両 審査委員会との懇談や、毎月、両審査委員会委 員を対象とした「社保・国保合同学術講演会」 を開催している。講演会では、両審査委員会に おける具体的な審査方法等テーマを持ち寄り協 議している。

各県におかれましても、両審査委員会での審 査基準の格差については、問題となっていると 思われるが、方策等についてご意見を伺いたい。

<各県の回答状況>

各県とも社保・国保両審査会の審査基準の格 差や相違点等の解消を図るために年に数回、連 絡会議等を開催している状況。また県によって は審査基準について両審査会で合議した部分を 「保険診療の手引」「保険診療の留意事項」等と して取り纏めて発刊している。

<追加意見>

◆大分県:審査員それぞれに裁量権があるので 全て統一することは難しい。

◆宮崎県:審査員の解釈に差があり統一するこ とは難しい。

厚生局の指導について平準化の話があるが、 同じように審査についてもバラつきがあり過ぎる と国から何か基準が示されないか危惧している。

(8)DPC レセプトの審査状況、および個別 指導時の問題の有無について(宮崎県)

DPC レセプトのコーディングに関する審査に 各県の審査委員はどのように関わっておられる か。また、支払基金や国保連合会の事務職員の 研修などは行われているか。厚生局の個別指導 の際に、DPC コーディングについて問題になっ た事例はあるか。各県の状況をお伺いしたい。

<各県の回答状況>

各県ともDPC に関する審査、指導について 特に問題は上がっていない。

DPC に関する研修の開催の有無については 県ごとに差がある状況。

<追加意見>

◆鹿児島県:審査委員の理解度はまだ低い。包 括支払制度のため画面審査がしやすいが、コー ディングデータとの比較・突合が難しい。DPC 医療機関の中にはアップコーディングを行うと ころもある。審査はまだまだ途上段階にあり、 殆どの県でも査定は行われていないと思うし、 個別指導においても何ら取り上げられていない のが現状。

◆熊本県:コーディングまで踏み込んだ査定は やっていない。

出来高払いについては出来る範囲で審査をし ている。審査員の研修等はやっていない。

◆大分県:アップコーディングを見つけるのは 難しい。審査員と職員がある程度特化してチェ ックしないと分からない。

基本的に疑義がある場合には、返戻するとな っているが、コーディングをし直すと数ヶ月のレセプト全部にかかってくるため、なかなか難 しいという結論である。

(9)平成22 年度以降の指導について(福岡県)

指導については、前回の医療保険対策協議会 においても協議し、各県の状況をお聞きしたとこ ろである。本年度については九州厚生局移管後 における指導内容等について大きな変更はなく実 施されているとのことであった。

福岡県の状況としては、個別指導の選定理由 は、内容疑義が多く、高点数による選定は殆ど ない。また、集団的個別指導については、厚生 局移管前より、5 年間で全会員が受講をするこ とで個別指導部分は行わず実施されている。ま た、新規指定個別指導については、本年度は実 施されておらず、現在、厚生局と協議中です。

また、九州各県医師会長及び歯科医師会長連 名で個別指導の通知時期についての要望書を提 出しているところであるが、現状は改善されて いない。

このような状況の中、平成22 年度に向け、 各医師会におかれても対応策をとられていると 思われるが、現況について伺いたい。

<各県の回答状況>

九州厚生局に業務移管以降、「鹿児島県では 新規指定医療機関の個別指導の実施、並びに個 別指導を病院に直接出向いて実施したいとの要 望があるが拒否している」「佐賀県では新規指 定個別指導が実施された」との報告があった。 その他の県では大きな変更はない。

<追加意見>

◆沖縄県:昨日、九州厚生局沖縄事務所より2 月中に厚労省から指導監査の平準化マニュアル が出され、22 年度以降はそれに沿った指導と なるとの話があった。具体的なものはまだ分か らないとのことであったが、日医の方で何か情 報があれば教えていただきたい。

◆熊本県:療養担当規則第17 条に「自己の専 門外にわたるものであるという理由によって、 みだりに施術業者の施術を受けさせることに同 意を与えてはならない」とあるが、患者から同 意書を求められた場合には安易に発行している ようである。柔整師に関する指導は術がないと 聞いているが、その辺りについて情報があれば お聞かせ願いたい。

(10)特養配置医師の医療提供について (大分県)

特養の入所者の重症化に伴い、平成20 年度 介護報酬改定では喀痰吸引、胃瘻などの医療ニ ーズに対応する観点から、常勤の看護師の配 置、夜勤職員の配置を評価する加算が新設され た。特養に非常勤で配置されている配置(嘱 託)医師にとっては、時間外、休日等の急な呼 び出しへの対応や、施設内での看取りの増加は 大きな負担になっているが、その評価はされて いない。

このように、特養の配置医師の診療行為に対 し診療報酬上に大きな縛りがあり、施設看護師 が行う採血、点滴等に対しても医療保険での請 求は認められず、十分な医療提供が出来ないの が現状である。

本会では、県内すべての特養配置医師を対象 に、「実態調査アンケート」を実施し、その結 果及び配置医師の意見を纏めた。

特養配置医師の医療提供について、各県のご 意見及び日医の見解をお伺いしたい。

<各県の回答状況>

各県とも概ね提案県と同様の意見である。そ の他として「介護と医療を含め体系的に改正す べき」、「医療保険による評価というより特養と の合議により嘱託費等で検討される問題」、「配 置医師の判断で限られた医療行為を行ってお り、対応できない場合はそれなりの医療機関に 転送すべき」との意見が出された。

<追加意見>

◆熊本県:特養では医療における材料、施設内 での診療における費用は施設が負担することであり、施設に対する介護報酬に含まれている部 分がある。しかし先生方がご苦労されている夜 間、突発的な対応についてはまだまだ不十分で ある。一方、老人保健施設と異なる特養の利点 は、一般の方と同じように医療機関の外来を受 診できることである。しかし重症化されると外 来に連れて行くのは施設職員の方が大変かもし れないが、その時には我々嘱託医が当然ながら 施設内で処置を行う。そしてそれは包括のなか に当然ながら入っている。制度が介護保険とな り少しは変わってきたと思っている。特養の現 状は療養病床と同じか、もしくはそれ以上の 方々が入所しておられるのが実態である。

また介護保険施設では医療的な処置がある場 合には介護度が高く出るので、施設に対する介 護報酬も高くなる。そうなると報酬が高い根拠 は医療が必要な方がいるから高くなっていると いうことなので、嘱託医としても「医療行為に 伴う諸経費は報酬から出ている」と強く施設側 の管理者に言わなくてはならない。我々嘱託医 もその辺りを充分に理解して施設の管理者とよ く打ち合わせながら医療行為を担当していかな ければならない。

○日医・藤原常任理事コメント

指導に関してはこれまで行政と医師会が相談 し、それぞれの地域で柔軟に対応してきた。し かしながら一昨年に厚生局へ業務を移行した後 から、指導の在り方について各ブロック内で違 いがあることがハッキリしてきた。行政はこれ をとらえて平準化の方向で今動いている。日医 では各厚生局と医師会との軋轢を解消するため に、これまでの実情を勘案した形で対応するよ う強く申し入れをし、昨年1 月に厚労省に内か んを出させた。各厚生局はこの内かんに基づき 動いていると思うが、本音のところは平準化に 向かって動いている。今、全国的に問題になっ ているのは診療報酬改定説明会についてであ る。指導大綱にある集団指導に同説明会が含ま れるため、行政としては医師会との共催を申し 出てきている。行政との合同説明会を拒否する ところもあるようだが、日医のスタンスとして は、行政と医師会とそれぞれ役割分担していた だき、施設基準は行政から、改正については医 師会からそれぞれ説明していただければと思っ ている。

特養の配置医師については、先ほど熊本県の 金沢先生からの話のとおりである。基本的には 介護報酬の中で一応は手当てがされているとい う認識である。配置医師と施設側との契約上の 問題があるということと、もう一点として特養 で手に負えず、医療の必要性がある場合には、 やはり医療機関に送ることが原則だろうと思 う。特養自体の重症化という点については、別 の視点で対応していかなければならない。大分 県が実施した「特養の配置医師実態調査アンケ ート」の調査結果も参考に、日医としても今後 の在り方について全国的なレベルで調査しなけ ればならないと感じた。

○総括・藤原常任理事コメント

一番の問題はやはり20 年診療報酬改定の答 申の際に附帯意見として課題が残っている初・ 再診療、外来管理加算の問題だと思う。民主党 は外来管理加算の5 分要件廃止をマニフェスト に掲げているが、この5 分要件を外すというこ とはものすごくお金のかかる話である。

妙な話ではあるが、20 日の中医協総会で前 回改定前後の外来管理加算の財政影響額は約 1,300 億円との報告があった。当初は外来管理 加算の影響額は240 億円相当であったはずだ が、その時のデータに不備があり、これを基に 改定が行われた。結局、前回改定の診療所から 病院への財源移譲は1,300 億円相当となり、特 に内科に相当しわ寄せがあった。次期改定に向 けて再診療や外来管理加算が焦点とされている が、前回と同様、今回も内科にしわ寄せがくる のではないかと危惧している。医科外来のプラ ス財源が400 億円に絞られた中で「5 分ルール」 を廃止するのは相当至難の業である。出来ない と言った方がよい。厚労省からは外来管理加算 を元に戻すのに600 億円かかるとされているが、その財源として考えられるのが「再診療の 引き下げ」ということになる。日医はこれに対 し「絶対にのめない」と反対している。

いずれにせよ医療がこれだけ政治に翻弄され ている状況である。民主党は政治主導と言って いるが、中医協が医療現場を反映せず、枠組み を決められて動くことはやはり問題が大きい。 早く中医協のあるべき姿に戻したいと痛切に思 っている。

最後に私が日医にいるから言うのではない が、日医には改革をしなければならない部分が あるとは思うが、医療界を纏めることが出来る のは日医しかないと私自身は思っている。つま り窓口はやはり日医が集約すべきであり、その 方向で一丸となって医療界は纏まっていくべき であると私は思っている。

IT 化の問題については、先ほども申し上げ たが本日の協議会で素晴らしいご意見を頂い た。今は一段落しているが、これから長期的な 戦略を早急に纏めていかなくてはならないと思 っている。

印象記

平安明

理事 平安 明

平成22 年1 月23 日、福岡県ホテル日航福岡において九医連の平成21 年度第2 回医療保険対策 協議会が開催された。10 題の協議事項が用意されたが、次期診療報酬改定に関すること、レセプ トオンライン請求に関すること、社保・国保審査委員会における審査基準の格差是正に関するこ と、個別指導に関すること等、活発に話し合いが行われた。

次期診療報酬改定関連の協議では、中医協の「日医外し」に象徴される日医と民主党政権との関係 性が医療に様々な影響を与えてしまっていることに対し、各県担当理事から様々な意見が出された。

個人的な意見であるが、先の政権時の官僚主導も駄目であったが、新政権下での政治主導もそ れ以上に駄目のように見えてきた。今回の診療報酬改定に至っては、民主党が日医に対するこれ までの恨みを晴らすかのような次元の低いレベルでの駆け引き(?)をしているようで、この国 の医療を本当に再生していく気があるのだろうかとつくづく不安にさせられる状況である。「5 分 ルール廃止」は今回の改定作業では当たり前に為されることだと誰もが認識していると思う。し かし、この会議の席上、日医・藤原常任理事が「今回の改定でプラス財源が外来部分では400 億 円割り当てられているが、厚労省は5 分ルールを廃止して元に戻すと600 億円かかると言ってお り、5 分ルールの廃止は至難の業である」と述べた。5 分ルールに変わる別の物差しをもってくる のか、再診料を引き下げるのか、どのような議論になっていくのか分からないが、どちらにして も地域医療を担っている診療所にとっては死活問題となることで、到底容認できることではない。 もともと5 分ルールの影響を試算する時点で大きな誤算があったことは国も認めており、必要以 上に引きはがしていたものを元に戻すのに、前述のような屁理屈をつけられてもたまらない話で ある。日医としては再診料引き下げには強く反対するとのことであるが、どの程度“強く”反対 行動をとるのかは明言されず、中医協に日医の代表がいない中、誰が責任を取るでもない状況で 議論が進んでいることが、さらなる医療の危機を生み出すのではないかと大きな不安を感じずにはいられなかった。

他の話題についても総じてメディファクス以上の新たな情報もなく、現在の日医の状況を象徴 しているかのようで、一抹の不安とともに、我々も日医ばかりに依存するのではなく現場の声を 様々な手段で伝えていく努力をしなければいけないと感じた。

私事ではあるが、この会議の数日前からウイルス性腸炎に罹患し、食事がほとんど取れない状 態での参加であったため、福岡で楽しみにしていたお酒やその後のラーメンが食べられないこと でかなり暗欝な気分での参加となったが、会議の内容で気持ちがさらにへこみ、治まりかけてい た腹部症状がぶり返すのではないかと思った。政府も日医も、私自身の腹も締りがない状態であ ったが、せめて中医協委員になった方々には、これ以上の医療崩壊を防ぐためにも、バランスの とれた良識的な判断での改定作業を進めていただきたいと思う。

この印象記が出る頃には少しでも明るい情報が出てきていることを願いたい。