沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 3月号

九州医師会連合会平成21 年度
第2 回各種協議会

3.地域医療対策協議会
(産業保健、新型インフルエンザ、高齢者対策含む)

副会長 玉城 信光
理 事 金城 忠雄
理 事 宮里 善次

去る1 月23 日(土)、ホテル日航福岡におい て福岡県医師会の山岡春夫常任理事の司会によ り、標記協議会が開催されたので、以下のとお り報告する。

挨 拶

はじめに、開催担当県を代表して福岡県医師 会の松田峻一良専務理事より挨拶が述べられた 後、日本医師会内田健夫常任理事より挨拶が述 べられた。

慣例により、担当県である福岡県医師会から 松田峻一良専務理事が座長に選出され議事に移 った。

協 議

(1)新型インフルエンザワクチン接種費用 について(佐賀県)

<提案要旨>

新型インフルエンザワクチン接種は国の危機 管理のために実施するものであることから、本 来であれば、全額公費負担で接種すべきである。

また、新型インフルエンザワクチン接種に関 しては、国と受託医療機関の契約において接種 料金等に様々な制限があり、予診を行った結 果、接種が不可と判断された方に対しては、診 察料等は請求できないことになっている。

一方で、季節性インフルエンザワクチン接種 (65 歳以上を除く)においては、自由診療であ るため、予診の結果、接種が不可の場合であっ ても、診察料等の請求は可能である。また、法 定の季節性インフルエンザワクチン接種においては、実施主体である市町村により請求の可否 が異なる。

ワクチン接種に当たっては、法定、任意に拘 らず、不可と判断された方においても、技術料 である診察に係る料金は請求できるようにすべ きである。

各県のご意見並びに日医の見解について、お 伺いしたい。

<各県回答>

各県ともに、予防接種の予診結果で不可と判 断された場合も、診察料として料金を徴収でき るようにすべきであり、ワクチンの接種費用に ついても全額公費負担にするべきであると回答 があった。

また、日本医師会は、厚生労働省としっかり 協議、連携の上、ワクチンに限らず、新型イン フルエンザ対策全般への取り組みをお願いした いとの意見があった。

<各県その他意見>

今回の新型インフルエンザワクチンは、国が ワクチン配布に際して、流通を効率化し一気に 接種できるように、従来の1ml バイアルワクチ ンに加え、昨季までなかった10ml バイアルワ クチンを製造して配布した。しかし、容量が大 きすぎて使い勝手が悪いことから、各自治体や 医療機関が、余ってしまうワクチンの扱いに苦 慮している。日本医師会は、余った分のワクチ ンを国に買い取ってもらう等対応を検討してい ただきたい。

<日本医師会コメント>

各県の意見、要望等をしっかりと担当者に伝 え、新型インフルエンザ対策について検討をし ていかなくてはならない。

協議事項(2)、(3)は一括協議。

(2)新型インフルエンザワクチンの集団接 種体制に対する各県の取組み状況について(鹿児島県)

<提案要旨>

新型インフルエンザは本格的な流行期に入っ ており、厚生労働省によると特に小児の間で感 染が拡がり、基礎疾患の有無にかかわらず小児 での重症化例が多く見られ、この傾向は今後も 続くようである。

このような中、ワクチン接種のあり方につい て本県では、地域医療の混乱を最小限に抑え、 適切な接種体制が確保できるよう、保健センタ ー等の施設を活用した集団接種や休日を利用し た接種について市町村と地区医師会が協議、検 討することになった。その結果、離島を含む一 部の市町村で集団接種を実施する方向である が、実施にあたっては、接種医やワクチンの確 保、接種場所、地域住民への広報啓発、接種過 誤対策などクリアしなければならない点も多い。

また、今回のワクチン接種で集団接種を推奨 するのであれば、学童期を中心に接種できるよ う日医から国(厚生労働省・文部科学省)に対 し積極的な申し入れを行って欲しい。

さらに、接種体制について来年度へ向けた取 り組みを今年の反省点も含め、ご意見をいただ きたい。

(3)小児の新型インフルエンザワクチン接 種を効率よく行うために、集団接種など をおこなっているかどうか(長崎県)

<提案要旨>

小児の流行を抑えることが社会全体の流行拡 大防止のキーポイントと言われている。しかし 厚生労働省による小児のワクチン接種の唐突な 前倒しにより、小児科医は診療とワクチン接種 に忙殺されて疲弊し、ワクチン接種ははかどっ ていないようだ。より多くの小児のワクチン接 種を短時間に行うには、集団接種や他科診療所 における接種が必要である。本県においては、 接種場所や応援医などの問題があり、集団接種 が実現していない。

<各県回答>

鹿児島県:県内45 市町村うち19 市町村で集団 接種を実施又は計画しているが、ワクチンの確保 や接種医の協力体制など難渋を強いられている。

集団接種が開始できた地域は、多くの課題を 抱える中で、自治体と郡市医師会が何度も協議 を重ねた結果である。なかには、郡市医師会が 管内の全医療機関のワクチン在庫や納入見込量 を調査し、集団接種できるよう調整を行った地 域もある。

また、集団接種を行った地域の多くで、ワク チンの確保、接種場所の選定、地域住民への広 報・啓発などを自治体が担い、接種医や医療従 事者を医師会が確保するなど両者間の役割分担 がうまくなされていた。

なお、集団接種の対象は、概ね幼児や小学生 であった。高校3 年生については、集団接種を 行う場合に限り接種スケジュールを前倒しし、 可能な学校(私立、公立含む全体の半数程度) は12 月26 日以降から年内に集団接種を予定し ている。接種場所はほとんどが校医の医療機関 であるが、学校(保健室等)での実施を予定し ているところもある。

佐賀県:「1 歳未満児等の保護者」、「小学校4 年生〜 6 年生」、「中学生・高校生」について は、当初予定から前倒し、12 月17 日から接種 を開始している。

中学生、高校生については、保護者等からの 要望やワクチンの10ml バイアルワクチンの有 効活用などの観点から、12 月17 日より個別接 種に加え関係機関の調整により実施可能な地域 においては集団接種も実施することとしてお り、集団接種の実施にあたっては、ワクチンの 確保、学校医の関与や出動医師・医療従事者の 確保、器材の準備・確保、医療法上の巡回診療 所の届出などの事務手続きなど種々の課題があ り、各地域の実状により対応も異なることか ら、行政・教育機関から郡市医師会に対して説 明、相談いただき、郡市医師会の判断に委ねる こととした。

集団接種の実施にあたっては、ワクチンの確 保、学校医の関与や出動医師・医療従事者の確 保、器材の準備・確保、医療法上の巡回診療所 の届出などの事務手続きなど種々の課題があ り、各地域の実状により対応も異なることか ら、行政・教育機関から郡市医師会に対して説 明、相談いただき、郡市医師会の判断に委ねる こととした。集団接種の対象は、中学生、高校 生の全生徒であるが、特に受験等を控えている 中学3 年生、高校3 年生を優先的に実施いただ くよう依頼している。

なお、小学生の集団接種については、保護者 の同伴が必要なことから、学校での集団接種は 行わず、原則個別接種で実施することとした。

高齢者(65 歳以上)の接種開始時期の前倒 しも現在(12 月25 日現在)検討されている。

宮崎県:小児を中心に感染が拡大しているな か、小児科に患者が集中しており、時間外診 療、休日診療等により小児科医への負担が増大 している。

各地区で協議が行われており、宮崎市では医 師の雇い上げ方式による休日を利用した集団接 種を実施している。美郷町においては、公立病 院を利用した効率的な接種も行われている。ま た、県立高校では、受験を控えた3 年生を対象 とした学校医による高校での集団接種も予定さ れている。

来年度へ向けては、同様な接種が行われるの であれば、充分なワクチンの製造と、当初より 学校、幼稚園・保育園等における集団接種等の 対応を検討すべきである。

沖縄県:二次医療圏(7 地区医師会)ごとに流 行のパターン、医療資源等異なるため、予防接 種体制は、二次医療圏(7 地区医師会)ごとで 異なる。5 地区医師会では集団接種が行われて おり、残り2 地区医師会では集団接種を行われ ていない。

大分県:集団接種体制については、11 月6 日の 厚生労働省の通達においても、医療機関外の接 種場所の確保の検討を県、市に要望しているが 県、市とも動きがなく、当医師会への協議、検 討要請はない。集団接種においては、小児のワクチン接種において、県から納入される10ml バイアルワクチンを使用するのは大変であり、 小児科の場合50名集めなければならない。 10ml バイアルワクチンを使用する効率的な接種 を行う為には、行政が集団接種をすることも選 択肢の一つだと考える。

長崎県:12月初旬にある医師会が小児の集団 接種を行った。最大の障壁は行政の協力がなか なか得られなかったことである。また、中学3 年、高校3 年の受験生の学校での集団接種を県 教育委員会に申し込んだが、断られた経緯があ る。行政や保健所の協力が得られるかどうかが キーポイントと思われる。

熊本県:現在、子供たちへの接種を想定し、県 主催による市町村への説明会が開かれ、本会か らは郡市医師会へその概要を文書にて通知し た。現在、各圏域での話し合いが持たれ、現 在、1 市での実施決定し、計画を策定している 市町村も複数出てきている。

地域特性もあり、集団接種が不要である地域 もあると考えるため、今後の集団接種体制を注 視していきたい。

今回の接種体制では、1)ワクチン不足によ り、医療機関へ電話予約が殺到していること。 2)患者や国民が接種カテゴリー等を理解してい ないこと。3)市町村との連携が明確でないこと などから、医療機関の負担が増大している。

これ以上、医療機関の負担が増えないように 各地域での自治体を含めた連携体制が構築出来 るよう国からの自治体への指導を希望する。

福岡県:北九州市の1 病院において、毎週木曜 日に集団接種が実施されている。厚生労働省か らは、10ml バイアルワクチンの有効活用のた めにも集団接種を検討するよう各都道府県に通 知が出ているが、医療機関側からの働きかけだ けでは集団接種の実施は困難であり、例えば学 校においては、学校と校医の連携により集団接 種の実施を検討するよう文部科学省から通知を 出すなどの対応を、早い時期に行う必要があっ たと考える。10ml バイアルワクチンは、針を 刺して1 日で使い切ることとされている。10ml バイアルワクチンで供給がある以上、それを購 入して接種を実施せざるを得なかったが、集団 接種の実施が困難な状況の中、購入しても無駄 が出る可能性もあり、医療機関においてはかな り苦慮することとなった。来年度については、 新型インフルエンザウイルスの動向によるが、 ワクチン種が必要な状況となれば、集団接種の 実施についてしっかり検討の上、体制の確保、 10ml バイアルワクチンの製造等について検討 を行っていただきたい。また今年度は、輸入ワ クチンによるワクチン確保に予算が割り当てら れたが、細胞培養法等の国産ワクチンによる十 分な生産・供給体制の確立を強く望む。

<各県その他意見>

長崎県:中学3 年生、高校3 年生(受験生)を 対象とする学校での集団接種を教育委員会に要 請したが断られた。インフルエンンザワクチン の予防接種だけではなく、定期の予防接種も学 校での集団接種は行われていない。国を防衛す る危機管理上、学校での集団接種は検討すべき である。日本医師会で協議のうえ、国に要望し てほしい。

鹿児島県:平成6 年に予防接種法の改正によ り、集団接種が廃止されている。もう一度見な おすべきと考える。

熊本県:日本医師会は、来年に向けて今回の 様々な問題点を反省、検討を行い、国に要望す る等検討していただきたい。

(4)パンデミック期の診療所の診療体制について(長崎県)

<提案要旨>

本県では、各診療所が患者の受診状況に応じ て診療時間を延長することにしている。ただし 時間延長の公表は控えた方が良いとの意見が多 い。その他、休日当番医や急患診療所の出動医 の増員で対応する医師会が多いようである。診 療所医師による病院外来の応援などの積極的な 対応を計画している医師会はない。各県の状況 を伺いたい。

<各県回答>

鹿児島県:休日(年末年始を含む)の診療体制 について、郡市医師会に照会したところ、中核 市である鹿児島市は、「1)中学生以上の患者は、 内科休日在宅医に事前に協力依頼を行い、対応 できる医療機関を小児科当番医に伝える」、「2) 夜間急病センター小児科の診療開始時間の繰上 げ」を非公表で行うことにしている。さらに、 年末年始(12 月30 日〜 1 月3 日)は、これに 加え小児科当番医を1 か所増やし、夜間急病セ ンター準夜帯を2 名で対応することにしてい る。この他、当番医の後方支援医療機関を設け た地域が1 か所、当番医が内科・外科1 か所ず つの地域で小児科当番医を新たに設けた地域が 1 か所あった。

佐賀県:全県的な診療時間の延長等は行ってい ない。医療圏や郡市医師会毎に対応を委ねてお り、土曜午後の在宅当番医新設、休日当番医の 診療時間延長や急患センター等の医師の増員等 の対応を行っている郡市医師会もある。

宮崎県:各医療機関が診療時間の延長等によ り個別に対応しており、各地区医師会では休日 当番医の件数の増員、夜間急病センターの医師 の増員等で対応しているが、診療所医師による 病院外来の応援の事例はない。

沖縄県:第1 波の経験から、1)二次医療圏ごと に流行のパターンが異なる、2)二次医療圏ごと に医療資源が異なる、3)本県は二次医療圏ごと に県立病院、保健所、地区医師会と云う共通の 3 点セットがあり、他県に比べ機能的かつ役割 分担が行いやすい、4)定点報告が30 人台レベ ルであれば、夜間祝祭日の対応は救急病院で可 能、5)定点報告が40 人台レベルだと、夜間祝 祭日の対応は困難で応援が必要、6)那覇・南部 地区では2 救急病院以外は混雑していなかった、 7)北部地区では会員が北部地区医師会病院に応 援することで対応可能、8)宮古地区でも夜間は 県立病院で対応可能、ということが分かった。 今後、流行が長期化および患者数が増加した場 合の救急病院への応援態勢や時間外診療のあり 方も、県全体で画一化して動くよりも、二次医 療圏ごとに動く方がより効果的だと考える。

大分県:二次医療圏ごとに対応が異なる。国東 市では、パンデミック期となった場合には、診 療所医師が交代で地元市民病院の夜間救急患者 の診療にあたるような体制づくりを検討してい る(19 時から23 時頃)。大分市では、県及び 市からの医療体制の強化要請に基づいて休日当 番医の増設を行うことになった。基本的に、定 点での発生率50 を超えた2 週間後から通常の 当番医以外に、一般診療所等、休日当番医を 「鶴崎・明野地域」及び「稙田・大南地域」で それぞれ1 医療機関ずつ増やすことで対応して いる。これにより、当医師会エリアでは、通常 の当番医+2か所の増設で休日当番医は計4 か 所となった。また、小児科に関しても、大分市 全体で通常の当番医以外に休日当番医を1 か所 増設して対応している。大分市では診療所医師 が、病院外来応援をすることについて協議が行 われたが、請求作業、カルテの作成方法等細か い点で合意に至らず行われていない。日田市で は、輪番制内科当番医に集中して混乱する際に は外科当番医、救急告示病院への協力依頼を医 師会より行っている。また、かかりつけ医には 時間外の応召に対応するように医師会より通達 依頼している。津久見市では、保健所からの要 請もあって、蔓延期には体制強化するよう検討 し、市内のインフルエンザ発生状況調査を継続 している。具体的強化策は、診療時間の延長と 休日当番医の複数化を予定している。

熊本県:まん延時に診療時間を延長する医療機 関については、医療機関の判断に任せている。 公表を希望する医療機関は公表し、圏域によっ ては、地域の中核病院が夜間に診療時間を延長 し、地域の会員が応援する等その対応は様々で ある。

問題点としては、小児の罹患が多いことか ら、小児科への受診が集中し、折角ご協力を頂 いている他科の医療機関への受診があまりない ともお聞きしており、地域への情報提供のあり 方について、検討する必要性を感じている。

福岡県:各医療機関の判断で診療時間の延長等の対応をとっているが、公表は行われていない。 休日・夜間については、特に福岡市、北九州市 において、急患センターに患者が集中する状況 が続き、福岡市の急患センターでは、最大で1 日の患者1,053 名、待ち時間6 時間という日も あった。そのため、福岡市医師会より、各大 学、内科医会、小児科医会に協力を要請し、医 師を増員して対応した結果、待ち時間の問題に ついては大幅に解消されている。

<各県その他意見>

長崎県:今回は、弱毒性で各郡市医師会での対 応で十分であったが、強毒性とされている鳥イ ンフルエンンザ(H5N1)がパンデミックにな った場合は、国レベルでの対応が必要であると 考える。日本医師会で最悪のシナリオを想定 し、対応の構築をしていただきたい。

沖縄県:今回の経験から、一番効果的なのは、 ワクチンの予防接種であると考える。国民も予 防接種のあり方について意識の変化が見られ る。日本医師会は国に対し、集団接種のあり方 をもう一度検討するよう要望していただきた い。集団接種が確立されれば、強毒性とされて いる鳥インフルエンンザ(H5N1)の対応も軽 くなるのではないかと考える。

<日本医師会コメント>

一番重要なのは、今回のインフルエンザの対 応、問題点等を評価、総括し、今後に向けて対 応を確立する必要があると考える。

国は、アメリカの予防接種諮問委員会に習 い、このような委員会を立ち上げる動きがあ る。当委員会のなかで、現場の意見を熟知して いる本会の考えを主張していく。

(5)認定産業医の処遇について(大分県)

<要 旨>

本県では、新たな認定産業医が増えてきたこ とから、各認定産業医宛にアンケート調査を行 った。その結果、処遇に関して、事業所側と産 業医側との間にミスマッチがあることが判明し た。(調査結果は別掲のとおり)

1)報酬額・・・

平成8 年に基準額設定。(各県一覧表)
 事業所との関わりの濃淡で報酬額に高低あり。

2)職場巡視・訪問・・・

法定の月1 回巡視が守られてない事例多々。
 報酬額との絡みで事業所側の非協力的意向。

3)産業医活動の希望・・・

活動の場が一部の産業医に集中している事例あり。
 認定産業医を取得しても活動希望しないケースあり。

以上について、解決策を講じている県があれ ば、ご教示願いたい。

また、産業医報酬は一般的に少ない傾向があ る。日医或いは国の取り纏めによる公定報酬の ようなものを設定できないか。医師が単独で事 業所と交渉するのは非常に負担になる。間に郡 市区医師会が入って交渉していただくこともあ るが、公定報酬のようなものが可能なら是非お 願いしたい。さらに、事業所を指導する形で、 産業医活動のリーダーシップを医師会がとれる ような政策を、日本医師会に要望したい。

<各県の回答状況>

1)報酬額については、各県からも提案県と同 様の意見が挙げられた。佐賀県以外は、「産 業医標準報酬(月額)」を設定しており、基 準額に沿った形で契約を結んでいる。事業所 の規模により、産業医の指導内容もかわり、 報酬額に高低がある。基準額を下回る額の契 約も多数あるとの回答があった。

沖縄県は、契約書を交わす時、事業主、産 業医と地区医師会が仲立ちし条件等の調整を するよう指導している。しかし、本県は小規 模の企業が多く、基準を参考にしてはいるが 事業所の状況にあわせ、独自の手法でも契約 している。低い金額で契約するのもある。

2)職場巡視・訪問については、各県とも概ね 提案県と同様の意見である。研修内容に職場 巡視を盛り込むなどしているが、法定の月1回巡視が守られてない事例が見受けられると の回答があった。

又、事業所側の非協力的意向もあると思う が、実際の産業医活動の場で、具体的にどう 活動すればよいか分からないで活動を控える ケースもあると思われる。今後は、産業医に 対しての活動をサポートする体制が必要と思 われるとの意見が出された。

3)産業医活動の希望については、各県とも提 案県と同様の意見であり、活動の場が一部の 産業医に集中する傾向はある。産業医活動は 健診業務と関連したり、長期の契約が温存さ れる傾向などがあって、簡単に解決できない 問題として残っている。又、新規の産業医の 選定については、一部の産業医に集中しない よう各郡市区医師会を通した契約を行ってい るが、実際の活動を行っていない産業医も多 い。その理由の一つは、事業所との契約を希 望しても事業場がないためであるとの回答が あった。

沖縄県では、産業医活動の希望について調 査した結果、産業医活動をしていない理由の 多くは、認定産業医になっても、自分の診療 が忙しく産業医活動の余裕がないなどの回答 があった。

解決策として、事業所から産業医の照会が あった場合は、産業医名簿を提供し、事業所 側から産業医に直接交渉頂いているが、郡市 区医師会(地域産業保健センター)によって は、事前に産業医活動希望の有無を調査し、 事業所側から照会があった場合、活動希望の 産業医を紹介しているところもある。さら に、産業医名簿をホームページに掲載し、事 業所に産業医を紹介しているなどの回答があ った。

<意 見>

熊本県:日医への要望事項「公定報酬の設定」 については、公正取引法に引っかかる話であ り、標準という形での設定はできるが、これを 統一するのは不可能と考える。

(6)地域産業保健センター事業について(福岡県)

<要 旨>

地域産業保健センターは、平成5 年度に、全 国の郡市区医師会が委託を受ける形で労働基準 監督署管轄区域に合わせて設置されたが、行政 改革の流れの中、公共調達を適正に行い、競争 性及び透明性を確保するため、本事業について も随意契約の見直しが行われ、平成19 年度か ら都道府県労働局の一般公募による指定へ変更 となった。

福岡県内には、12 の地域産業保健センター が設置されており、現在のところ全て地域医師 会が指定を受け運営している。

本県では、郡市医師会からの要望もあり、地 域産業保健推進センターの運営をより円滑に行 うために、郡市医師会、労働局、本会で今年度3 回の協議を行った。1)本事業の運営に際しては、 事務的なマンパワーが必要となり郡市医師会職 員の負担が大きいが、事務委託費の設定がない、 2)大企業の支店についても地域産業保健センタ ー事業の対象となるが、限られた予算内でそこ までカバーできない地域がある等が主な問題点 としてあげられ、1)については、本会から労働 局に対して、事務委託費の設定を要望した。

本件について、各県の状況をお伺いしたい。

また、昨日(1/22)、日本医師会より追加資 料の「地域産業保健センター事業に関する調査 の協力依頼について」の文書が各都道府県医師 会宛、届いていると思うので、各県のご意見を 伺いたい。

<地域産業保健センター事業についての各県回答状況>

鹿児島県:本県には、7 地域産業保健センター が設置されており、全て地域医師会が指定を受 け運営している。地産保の職員については、委 託費が少ないために身分を医師会職員との兼務 でカバーしていることころもある。

佐賀県:4地域産業保健センターが設置されており、全て地域医師会が指定を受け運営してい る。4 センターとも、「予算額は十分」と回答し ている。一方で、運営委託費の用途には制限が 多く、十分な活動ができないなどの問題が一部 の地域産業保健センターにはあるようである。

宮崎県:4地域産業保健センターが設置されて おり、全て地域医師会が指定を受け運営してい る。各センターともに、郡市医師会職員でな く、それぞれに専任のコーディネーターが業務 を行っているため、郡市医師会の負担はない。

沖縄県:5地域産業保健センターが設置されて おり、全て地域医師会が指定を受け運営してい る。運営は委託費でまかなっており、予算不足 によって業務運営に支障の出ることは今のとこ ろ報告されていない。マンパワーは地区医師会 の事情により異なるが、若干名の専任スタッフ と医師会事務局の兼任スタッフとで業務運営を 行い、おおむね順調に運営されている。又、大 企業に対する地域産業保健センターの事業は円 滑に運営され、ニーズを満たしているものと思 われる。

なお、沖縄県における問題として挙げられる のは、産業医専任の義務を負わない零細な事業 所が多く、そこには多くの労働者が産業保健の 充分な介入がなされず放置されている現実があ る。地域産業保健センターの今後のあり方とし て、この様な零細企業に対する産業保健の積極 的なアプローチをどの様に実践していくかが大 きな課題になると思われる。

大分県:本県においても同様であり、平成20 年度に1)事務委託費の設定方と委託費の早期振 込方を要望。2)全委託ではなく、業務実績に応 じての請求方式の採用方を要望した。

長崎県: 6 地域産業保健センターが設置されて おり、全て地域医師会が指定を受け運営してい る。ご指摘のとおり、郡市医師会事務局の協力 なくして本事業の運営は成り立たないため、事 務委託費として計上できるよう評価すべきであ る。大企業の支店取り扱いについては、公には 遠慮願っているが相談あれば実情に合わせ対応 しているようである。

熊本県:事業の随意契約については、実際には 他の応募がなく従来どおりに、全て地域医師会 が指定を受け運営している。事務委託費として の設定の要望は行っていない。又、大企業の支 店についての問題は業務多忙で応じられないと いう県の方針を伝えており、その傾向は少なく なっている。

<日医:地域産業保健センター事業に関する調 査の協力依頼について>

福岡県医師会の松田座長から、「地域産業保 健センター事業に関する調査の協力依頼につい て」内容説明があった。

日本医師会から、昨日急ぎの調査依頼があっ た。「この度の政権交代により、地域産業保健 センターについても見直しが行われ、これまで 指摘された課題などを踏まえ、厚生労働省や日 本医師会の産業保健委員会においてもそのあり 方について検討を行っているところである。

厚生労働省では、見直し項目の一つとして、 委託先を「都道府県単位に集約させ一体的に実 施したい」としている。又、日本医師会の産業 保健委員会答申案においても、「都道府県単位 の共同運営方式」を提言する予定である。

これまで、地域産業保健センター事業が地区 医師会の献身的な取組みにより支えられてきた ことを踏まえると、具体的実施に向けた詳細か つ十分な検討が必要であり、厚生労働省に対し て見直しに当たっては、都道県医師会や地区医 師会等の意見や意向を十分踏まえたものとなる よう要望を行ってきている。

ついては、急遽、現時点で考えられる地域産 業保健センター事業の見直し案とともに、その 実現可能性について、アンケート調査によりご 意見をいただくことにした。調査結果について は、来る1 月28 日(木)開催の産業保健委員 会で検討させていただく予定であるので、回答 は1 月27 日(水)までにお願いしたい」との 内容である。

なお、この件で、福岡県から提案した「(6) 地域産業保健センター事業について」の協議が、あまり意味をなさないということもある が、本件について、基本的には、競争入札は変 わらないが、郡市医師会と労働局の契約がなく なり、都道府県医師会と労働局の契約による運 営体制をとってはどうかという案である。しか もこれについての意見を来る1 月27 日(水) までに日医に報告いただきたいという趣旨であ る。具体的な部分で不明な点が多く、今この場 で、協議するのは難しいとは思われるが、各県 の先生方でご意見をお持ちならいただきたい。

日本医師会の産業保健委員会委員である熊本 県医師会の坂本先生からも、同様の説明が行わ れた後、熊本県から意見があり、「元々、労災 保険の恩恵というものが極めて大きな企業には 多くいくが、小規模事業所にはいかないという ところからスタートした発想だと考えている。 従って、小規模事業所について、医師会が大い に、協力するということについては、全然やぶ さかではない。しかし、医師会の方としてみれ ば、ボランティアで実施しているものに対し て、国から普通の事業並みに予算を出しなさ い、或いは民間に渡して良いとかいう話をする こと事態間違っていると思う。入札しなくても 良いなど出てきても当然である。これに対して 県医師会並びに郡市医師会は迷惑であると考え ている」との意見があった。

なお、本件に関する各県の対応について、意 見は挙げられなかった。

福岡県医師会の松田座長から、できれば、こ の意見をアンケートに書いて出していただきた い。基本的には、やはり、いろんな民間団体が 選べるのを、医師会がやっていかないと大変な 問題になると説明をされた。

(7)医療機関に対する事業税非課税の特例 措置の継続について(長崎県)

<要 旨>

2009 年11 月の最新報道によると、政府税制 調査会は医療機関に対する事業税の非課税措置 を2010 年度はそのまま継続する方針とのこと。 しかし、特例措置の継続は予断を許さず、もし、 廃止されると多くの医療機関が廃院に追い込ま れると思われる。本県においても今後、民主党 代議士や知事に働きかけを行う予定である。

現時点における事業税非課税に関する情勢 と、日医の対応について伺いたい。

<各県の回答状況>

各県からも提案県と同様の意見が挙げられた。

○日医・内田常任理事コメント

事業税非課税に関しては、そもそもは、診療 報酬で十分手当できないところを事業税を非課 税にすることによって、地域医療の確保或いは医 療機関の経営を担保するということがスタート地 点であったが、その話は全くなくなり、公平性の 観点からの話になって来ているようである。

日医がこの見直しを1 年かけてじっくり議論 をして行こうという話になっているが、この場 でもしっかり働きかけていきたいと思う。もし 万が一、非課税の程度を幅を小さくするとか、 或いは撤退するとかいう話になった場合でもし っかりそれを凌いで、或いは何らかの手だてで 担保するようなものがなければ、地域医療の崩 壊に繋がるということをしっかり伝えていきた いと思う。

それに当たっては、やはり都道府県選出の代 議士、或いは都道府県の民主党の県連の方にし っかりと働きかけていただきたいと思う。民主 党の政策に反映する上では極めて重要であり、 これは間違いのない事実である。そこのところ の働きかけも宜しくお願いしたい。

機会があれば、特に直接担当されている先生 方には、日医担当理事の今村常任理事が直接お 目にかかり、お話をさせていただくということ もしている。これも都道府県医師会から、そう いう機会を作っていただければ、是非顔を出し てご説明させていただきたいと思っているの で、宜しくお願いしたい。

(8)高齢者医療制度について(熊本県)

<提案要旨>

国民皆保険制度の堅持は日本医師会が長年主 張してきたことであり、国民に支持されている 事である。しかし、少子高齢化の速度が速いた めに国の対応が十分ではなかった。そのために 日医は高齢者医療と介護を一体化した新たな制 度を提唱した。然るに、旧政権下で法案化され 2008 年4 月よりスタートした高齢者医療制度 は、日医の提唱しているものとは大きく異なっ て対象者である後期高齢者にとっても、医療を 担当する医師にとっても利用しにくく、負担の 大きな制度となった。

一方、新たに政権を担うこととなった民主党 政権は、マニフェストで後期高齢者医療制度の 廃止を挙げている。しかし医療の現実から、廃 止は困難という見解を出している。最近試算さ れた保険料の試算値は短期間で変動しており、 患者の負担増を示している。

高齢者医療のあり方について、スタートして いる後期高齢者医療制度に対して日医が従来主 張してきた制度を今後どのように実現していく のか、更に高齢者医療制度に限らず、崩壊に瀕 している医療制度全体のあるべき姿や見通しに ついて日医および各県の見解についてご教示願 いたい。

(参考:後期高齢者医療制度の保険料について、 10 月下旬の厚生労働省による試算では2010 年 4 月改定では2009 年に比べて約10.4 %増とし ていた保険料の増加を、11 月の試算によると全 国平均で約13.8 %の増加となるとしている。)

<時間の都合上、紙面回答のみ>

<各県回答>

鹿児島県:民主党は、マニフェストで掲げてい た後期高齢者医療制度の廃止を先送りし、高齢 者医療制度改革会議(第1 回11 月30 日開催) を設置し、平成25 年4 月に新たな制度に移行 するとしている。日本医師会からも同会議に三 上常任理事が参画しているようであるが、より 良い制度設計へ日医の見解をお伺いしたい。

佐賀県:日医がグランドデザイン2009 で提言す るように「保険」ではなく「保障」の理念の下、 医療費の9 割は公費負担、保険料と患者一部負 担を合わせて1 割とすることが望ましいと考え る。今後の議論を注視したい。

宮崎県:政権交代により、三党連立政権合意及 び民主党マニフェストを踏まえ、後期高齢者医 療制度廃止後の新たな制度の具体的なあり方に ついて検討を行うため、厚生労働大臣の主宰に より、関係団体の代表、高齢者の代表、学識経 験者からなる「高齢者医療制度改革会議」で検 討されており、検討に当たっての基本的な考え 方として、1)後期高齢者医療制度は廃止する、 2)マニフェストで掲げている「地域保険として の一元的運用」の第一段階として、高齢者のた めの新たな制度を構築する、3)後期高齢者医療 制度の年齢で区分するという問題を解消する制 度とする、4)市町村国保などの負担増に十分配 慮する、5)高齢者の保険料が急に増加したり、 不公平なものにならないようにする、6)市町村 国保の広域化につながる見直しを行う、6 項目 を基本として進められており、平成23 年春の法 案成立、平成25 年4 月から新しい高齢者医療 制度を施行しようとしている。国は財源が不足 している部分を財政基盤の弱い国民健康保険や 協会けんぽに負担させて、そのため国保等は疲 弊しているので、その分は国が早急に財政負担 をするべきである。いずれにせよ、我が国の国 民皆保険制度を堅持するために、日医は財源を 獲得する具体的な方法を明示するべきである。

沖縄県:「保険」より「保障」という日医の考 え方が良いと考える。これまで日本国のために 一生懸命働いて来られた高齢者が安心して生活 して頂ける様な制度設計がよいと思う。日医及 び各県のご意見を拝聴したい。

大分県:高齢者にとって必要とする医療と介護 が調和よく提供され、住み慣れた地域で在宅生 活を継続していくという理念と保険料負担や自 己負担を軽減するために我々は別立ての制度を提案したはずである。ところが診療報酬改定 で、厚生労働省の役人や族議員が、財務省寄り の考えで、操作した結果、高齢者いじめの内容 となってしまった。本来の制度設計が高齢者に 対する明確な優遇する制度である事を皆に理解 できるよう慎重に説明し、今後の手直しをすす める必要がある。

長崎県:厚生労働省は、貯蓄が比較的多いと言 われる高齢者に応分の負担を課すのも止むを得 ないと被保険者に1 割負担を課した。また各保 険者には、後期高齢者支援金として4 割負担を 課し、残り5 割を公費負担とした。一方日医は 保証の理念の下、75 歳以上の高齢者を手厚く 支えるとして、その医療費(12.4 兆円)の9 割 を国庫を含めた公費で賄う様主張したが、日医 の理念は採り入れられなかった。今回の政権交 代の後、長妻厚生労働省大臣は同制度の廃止を 明言し、13 年度に新制度を創設としている。 どのような制度になるかは見当もつかないが、 現制度の問題点を挙げると、1)保険料は2010 年度には現行比13.8 %増と言われていること から、このままでは後期高齢者の保険料の増額 を余儀なくされるか医療の質の低下が懸念され る。2)広域連合には、2 年毎に保険料見直しが 義務付けられているため、都道府県によって異 なる診療報酬体系となる可能性がある。3)厚生 労働省は後期高齢者医療制度を足がかり「かか りつけ医」の導入をはかる算段ではないか。ま たフリーアクセスの制限につながる恐れがあ る。4)75歳で区切った理由は、慢性疾患や認 知症、更に看取り(死亡)が多くなるので、本 人、家族が安心して医療を受けられるためとし ているが、反対に不安を煽っている。5)折角定 着したかに見えた制度廃止により、システム改 修等医療現場がまた混乱する。日医は以上の事 柄を含めて、問題点を整理検討し、次期改定に つなげるよう厚生労働省に提言して頂きたい。

福岡県:日本は他の先進国と比べ、高齢化率が 20.1 %とどこの国よりも高く、社会保障の国民 負担率はまだ38.3 %で先進国より低い状態で ある。このような現実をとらえ、今後の医療制 度や新しい高齢者医療制度をどのように考える のか。厚生労働大臣主宰で「高齢者医療制度改 革会議」が設置された。今年の夏までに基本的 方向を中間的にまとめ、年末を目処に最終的に 取りまとめ、そして23 年の通常国会に法案を 提出し、25 年4 月に新制度施行というスケジュ ールで考えられているようである。新政権は、 新制度について地域保険との一元的運用を図 り、年齢区分は解消すると云っている。まず財 源と保険者、市町村国保のあり方などが重要な 問題であるが、保険料負担や保険料の徴収、資 格証明、健康診査、診療報酬等、今まで問題と なっていた解決しなければならない課題にどう 対処するのか。2007 年に後期高齢者医療制度 に対する日本医師会の考え方が具体的に示され ていたが、今回、新制度発足までのプロセスの 中にいかに日本医師会が介入し、その中で日本 医師会の考えを反映させることができるか。そ のためには国民が納得する確りとした案と説明 が重要と考える。

<日本医師会コメント>

高齢者のための医療制度については、1)保障 理念の下、75 歳以上の高齢者を手厚く支える。 2)若者から高齢者まで、急性期から慢性期ま で、切れ目のない医療を提供する。3)医療費の 9 割は公費(主として国庫)負担とする。4)保 険料と患者一部負担は合わせて医療費の1 割と し、患者の一部負担割合は所得によらず一律と する。5)運営主体は都道府県とする基本的スキ ームを提案してきた。これらを踏まえ、新たな 高齢者制度を検討する会議の中で、本会の考え を主張していく。また、合わせて地道なロビー 活動や定例記者会見、新聞意見広告等を通じて 本会の主張を訴えていくことが肝要と考えてい る。各県医師会においても、地元選出議員への 働きかけをお願いしたいと回答があった。

印象記

玉城信光

副会長 玉城 信光

地域医療に関して報告されている通りに今回のテーマもインフルエンザに関することがほとん どであった。

私が担当した事業税非課税に関して議論はなく、日医のコメントは事業税非課税は、そもそも 診療報酬がアップせず、医療機関の収入を十分確保できないので事業税を非課税にすることによ って、医療機関の収入を安定させ、地域医療の確保或いは医療機関の経営を保障するのが始まり であったが、現在その話は全くなくなっていると述べられた。各地区でも民主党など政権与党へ の働きかけをする様にとの話しであった。

高齢者医療制度についても議論はなく、紙上回答に対して、日医のコメントが述べられた。保 険料と患者一部負担は合わせて医療費の1 割とし、患者の一部負担割合は所得によらず一律とす ることなどを中心に提案してきた。今後の高齢者制度を検討する会議の中で、日医の考えを主張 していくと述べられた。

政権が変わったので日医も今後どこへいくのか、まだ行く先が定まらないようである。

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

平成21 年度第2 回各種協議会が、平成22 年1 月23 日ホテル日航福岡で行われた。

地域医療対策協議会(産業保健、新型インフルエンザ、高齢者対策)の予定時間は2 時間であ ったが、1 時間30 分が新型インフルエンザの協議に費やされ、関心の高さを伺わせた。

新型インフルエンザに関するテーマは、1)新型インフルエンザワクチン接種費用について、2) ワクチンの集団接種体制に対する各県の取り組みについて、3)パンデミック期の診療所の診療体 制についての3 題である。回答は各県の意見は本文を参照していただきたい。各県の回答をふま えた上で、白熱した議論がおこなわれた。特にワクチン行政における厚生労働省の混迷に批判が 集中した。

曰く、1)国の危機管理のために実施するのであれば、全額国庫負担とすべし。2)低額料金設定 は広く接種を促す意味で理解できるが、診察後接種不可能となった場合、判断料がとれないのは おかしい。3)接種回数をめぐって混乱した。4)優先順位にこだわるあまり、接種が遅くなった。 5)国と事業所との直接契約であったため、残余ワクチンが廃棄となった。今後は季節型と同様に 回収すべき。6)任意の個別接種では時間がかかりすぎる。7)臨時接種で病院などに集めて集団接種的な方法も考慮すべき。8)保健所などを利用した集団接種では、契約する代表医療機関に負担 がかかる(余ったワクチンやハイレベルな副作用がでた場合など)。9)メキシコ発生から神戸まで わずか17 日である。鶏卵法によるワクチン製造では限界。細胞法などのスピーディーな方法と生 産ラインを確保すべき。10)パンデミック時の対応を検討するより、Vaccine preventable disease なので、迅速で効果的な接種方法を検討すべき。それができればパンデミックのレベルと対応も 小さくなるのでは。などの意見がでた。11)新型インフルエンザをきっかけに、国民のワクチンに 対する考え方に変化がでている。沖縄県では第二波の終盤からワクチンが始まったが、本土は第 一波の終盤で開始されている。本土の第一、二波と沖縄県の第一、二波の形状からワクチンの関 与が推定される。

集団接種は小学校〜高校では教育委員会の壁が強く、実行できていないのが現状である。沖縄 県では保育園児は病院でまとめて、集団接種的な方法をとったが、あくまでも任意個別接種を集 団でやったに過ぎないことを報告した。

パンデミック期における診療所の役割も、受診時間の延長や救急病院への応援を行うなどの意 見がでたが、実際にそれをやったのは沖縄県だけである。

出席された日本医師会の理事は持ち帰って、本日の議論された内容を厚生労働省に要求する旨 の発言があった。