会長 宮城 信雄
去る1 月19(水)日本医師会に於いて、標 記会長協議会が開催された。
協議会では、7 県から予め寄せられた質問や 要望等について協議(意見交換)を行った。以 下に会議の概要を報告する。
会長挨拶
唐澤人日本医師会長
ご承知のとおり、昨日より通常国会が開催さ れコンクリートから人への理念で誕生した新政権 に期待するところが大きい。医療制度も今年は 診療報酬改定、財源手当てということで希望を 持っている。診療報酬の若干の増額もあったが 全く不十分で、財政中立という表現は少し言い 過ぎかもしれないが、そのように感じてしまう。
現場の医療は既に崩壊に瀕している。再生の ためには大きな財源が必要である。今年から再 来年まで改定の年を迎える。再来年は介護報酬 と同時改定が控えている。ここ数年に渡り医療 や介護、社会保障の全てをしっかりと立て直 し、築いていく時代になると考えている。一刻 も早く国会も正常化して、新しい時代を迎えて 欲しい。
日医もそう言う時代を迎え、役員会その他に おいても刷新を図ることを考えている。その為 には先生方の大きな支援が必要である。地域医 療の立て直しに向けて、皆で一致団結し邁進し ていきたい。
協 議
今村定臣常任理事より次のとおり回答があ った。
有床診は、地域医療における重要な拠点であ り、積極的な活用を図るべきとの指摘は全くその通りである。
先ず1 点目、有床診の一般業種を入院患者に 対する処方箋交付の通知の弾力的な運用、また は、柔軟な対応については、指摘の通知に置い て、昭和31 年、医務局長や薬務局長通知によ ると、入院患者については、通常診断、治療全 般について、入院した病院または診療所で行な われる事を承諾し、薬剤調剤も、その病院、ま たは診療所で行って貰う医師を有するものと推 定されるので、特に、患者またはその看護に当 たる者の申し出が無い限り、処方箋を交付する 必要は無い物と認められる事とされている。ま た、昭和50 年、保険局医療課長通知もこれに 従ったものになっている。一方で指摘の通り小 規模でもあるにも関わらず、常に薬剤を置いて おかなければならない経営上の問題も十分に理 解できる。昨年、全国4 道県14 カ所の有床診 療所を視察した中で、時間外処方が出来ず、時 間外診療を辞めた診療所も多い、有床診療所に は薬があるので、夜間の救急診療を行なう上 で、地域医療に置いて不可欠な存在になってい るとの意見も頂いたところである。この問題に ついては、会内にある有床診療所に関する検討 委員会に置いて議論した事は無い、有床診の先 生方の意見を十分に伺った上で、委員会で検討 し対応して参りたいと思う。
次に、有床診療所の診療報酬の引き上げにつ いては、11 月25 日の見解以外にも、12 月24 日の定例会見で公表させて頂いた診療報酬改定 に向けての日医の見解、入院料について、その 2 において、有床診入院基本料の全体的な引き 上げの要望について説明をし、理解を求めたと ころである。また、既に案内の通り、厚労省の 担当官と共に有床診の視察を行ない、理解を深 めて貰う努力をしている。先週の12 日有床診 に関する検討委員会報告書が唐澤会長に答申さ れたので、厚労省の担当課にも渡してある。出 来る限りの努力しているところであり、引き続 き中医協での答申に向けて、対応して参るので ご理解賜りたい。
石井正三常任理事より次のとおり回答があ った。
昨年、救急患者の搬送受け入れの円滑な実施 を図るため、医療サイドと消防サイドの連携を 推進するための消防法改正が行われた。この法 改正は消防法を厚生労働省と消防庁が、共同で 所管するという画期的なものである。
日医では、救急医療と救急搬送は、患者の救 命、社会復帰のため、車の両輪となって機能す べきであるという観点から、適切なMC 体制の 下で、医療と消防の連携を推進することを国に 求めてきた。厚労省や消防庁の関係会議への参 画はもとより、これまで6 回にわたりMC 協議 会の全国連絡会を共催し、この2 つの官庁と共 に日医が共催することとともに、今回の消防法 改正の布石となった厚労省、消防庁共催による 平成20 年3 月の全国会議に於いては、私より 特別発言を行った。
法改正に直接関わるものとして、昨年2 月当 時の総務大臣を訪ね、厚労省、消防庁の継続的 で密接な連携、搬送受け入れの実施基準作りへ の地域実情の反映、医学的知見に基づき、かつ 医療計画と調和を保った実施基準作り、都道府 県医師会の重要性、全国MC 協議会連絡会の充 実、発展などを要望した。
また、指摘のとおりMC は医療サイドが主導 すべきものであり、都道府県医師会には、医療 提供者の代表として、全国MC 協議会連絡会の 中心的な役割を引き続きになって頂きたいと考 えている。
その趣旨から、法改正を受けて、各県で行わ れる救急患者の搬送受け入れの実施基準の作成 協議への参画を各県医師会にお願いしてきたと ころである。また、今回の法改正により、MC 協議会の内、救急患者の搬送、受け入れの実施 基準に関する協議の部分が法制化された。これ に対して、MC 協議会の当初の目的、すなわち 医学的観点からの医師による救急救命士の行為 の質の確保については、協議会自体は、行政組織という位置付けであったとしても、協議の場 では行政の意向のみに左右されない専門的第三 者的な視点での検討が担保されていることが必 要であると考えている。
何れにしても、今回の法改正の周知徹底と共 にMC 協議会の今後のあり方や全国連絡会の充 実と日医の関わり方について、各県の担当役員 の先生方と意見交換会をする機会が重要である と考えている。都道府県医師会救急担当理事連 絡協議会の開催の提案を頂いたが、各県の実施 基準の作成や施行の状況を踏まえ、全国連絡会 の方向性も勘案しながらこれから検討したいと 考えている。
回答後の質疑等
● 岡山県井戸俊夫会長から、1)MC 協議会を始 め、消防関係のものが総務省の主導になって しまい、厚労省や医療側からの提言や発言が 弱くなってきていることを危惧する。2)救急 救命士の業務が次第に拡大しつつあり、医療 側の意見を無視して進められていく可能性が 今後あるのではないか危惧する。日医から積 極的な発言をして貰いたいと要請があった。
● 石井常任理事は、救命士の業務は、総務省が 主体となり業務拡大の一方向に進んできた嫌 いがあるのはその通りである。その中で、業 務の拡大が、行為の拡大だけに留まらず、診 断、治療に踏み込む部分がこの先に見えてき ているのは事実である。責任体制や質の管理 等も含め、もう一度議論を戻すためにはMC 体制の強化、その中でしっかりと議論するこ とが必要だと考えている。厚労省でも、この 為の検討会が立ち上がると聞いているので、 今後、今の意見を踏まえながら適切な意見を 出していきたいと回答した。
● 京都府上原春男副会長から、救急医療体制に ついて、府内ではそれぞれ医療圏毎に独自の システムを組み、医療と消防との連携が図ら れている。しかし、今回の医療法改正では、 都道府県単位で搬送に関する体制を作ること になっており、逆に縛りを受ける地域が出て くる事を危惧し、非常に困惑している。この 事について助言頂ければとのお願いがあった。
● 石井常任理事から、非常に上手く行っている ものは、何も統一して上手くいかないものに する必要は全くない。何かこうあるべしと言 うものを押し付けるつもりは全くない。議論 の過程でもそうならない様に随分申し上げた ので、地域の実情に合った方法で進めていた だきたいと回答があった。
中川俊男常任理事より次のとおり回答があ った。
社会保障、特に医療を社会的共通資本と位置 付け、また、平時の国家安全保障として見据え た時に、財源の確保無くしては、国民の幸せを 守ることは出来ないものと考え、日医は敢えて 財源論に踏み込み、安定財源確保の必要性を積 極的に主張して参った。社会保障費の削減が続 く中で、小泉政権の終盤には、日医は特別会計 の毎年数10 兆単位で生じる剰余金や、それを 原資とする積立金の中に社会保障費として活用 できる財源があると指摘した。グランドデザイ ン2007 では国家財政の全体像を示し、特別会 計の剰余金、積立金に明確に言及した。その 後、2007 年11 月に「埋蔵金」という言葉が登 場したが、日医が指摘したこの財源は、皮肉に も自公政権末期には、政治的・政策的に有効に 活用され、また民主党はマニフェストで一般会 計だけでなく、特別会計を含む総予算として取 り上げ、特別会計の透明性を高めると共に、財 源として活用される道を開くことになった。更 に2008 年7 月には、日本の医療が公的医療保 険である以上、高所得者が優遇され、大企業が 有利になっている保険料格差を見直すこと、国 家財政に於いては、特別会計に加え、独立行政 法人の支出も含めて、見直すべきであるとその 主張を進化させた。
それまで日医は、国民負担増の衝撃が大きい 消費税率の引き上げについては、最後の手段としていた。しかし、その頃、年金は全額税金で 負担しては如何かとの議論が浮上し、消費税率 が引き上げられても年金財源に優先される恐れ が高まってきた。そこで日医は、2008 年5 月 の定例記者会見で、今後の新たな財源に対応す るため、公的保険料やその支出の見直しと同時 に、消費税などの財源の見直しを進めるべきで あると、消費税の優先順位について、明確な方 向転換を図った。最近では、グランドデザイン 2009 で示した通り、1)消費税などの新たな財 源の検討、2)特別会計などの支出の見直し、3) 公的保険の保険料の見直しの3 本柱を同時進行 すべきだと主張している。公的保険料の格差、 国の予算の無駄遣いは、徹底的に見直さなけれ ばならいが、恒久的な安定財源となると消費税 収が期待される。
民主党は、そのマニフェスト、正確には民主 党の「政策集INDEX2009」で消費税率の維持 を明記している。
即ち、4 年間は消費税を引き上げないという ことである。また、管直人財務大臣は、消費税 率引き上げの議論を2011 年度以降に行うとの 見通を示した。
日医は消費税に関する議論を更に前倒しで進 めるべきと考える。何故なら議論に入る前に、 国民的合意を得なければならない点があるから である。その第1 は、消費税収の内の国の収入 分については、現在も年金、高齢者医療、介護 の国庫負担に充てることが予算総則で決められ ている。しかし、この国庫負担の割合は、年金 は給付費の1/2、高齢者医療の約1/3、介護は 居宅が1/4 で、施設では1/5 である。こういっ た違いを国民に認識して貰う必要があり、同じ 社会保障として国がどう責任を負うのかを議論 しなければならない。このままでは新たな財源 は、年金の国庫負担に優先的に投入されてしま う恐れがある。第2 に、消費税は現在予算総則 で目的化され使い道が決められている。現在 10 兆円近くにもなるこの消費税の不足分は、 一般会計の他の財源から充当されているが、消 費税を目的化に留まらず目的税化すべきとの提 案もある。目的税と言うのは、その税収と費用 を一致させることである。不足した場合でも他 の財源からの充当は出来なくなり、社会保障費 が増えた場合は、税率を引き上げるか、あるい は税収に併せた社会保障費にしなければならな い。この事についても時間をかけた議論が必要 である。第3 に、医療界にとっては、控除対象 外消費税の解決も切実な問題である。
この様に消費税については、現状は国民的理 解、認識が十分ではない。その為日医では先ず 消費税について、しっかり分析し国民に情報を 提供していかなければならないと考える。消費 税を財源とした場合の社会保障費のあり方につ いても、更に踏み込んでいかなければならな い。国民が安心できる医療のための財源を確保 するため、しっかりとした理論構築を行い、消 費税だけでなく、社会保障費の財源論につい て、分析力と政策提言力を更に高めていきたい と考えている。
回答後の質疑等
● 山口県木下敬介会長は、一時凌ぎの財源であ れば如何にかなるだろうが、安定した財源の 確保には消費税しかないと考えている。国民 の理解を得ながら実行していくと考えると、 今直ぐにでも実行に移さなければならない。 日医の懸命な取り組みに期待すると述べた。
● また、愛媛県大橋勝英副会長は、我々は消費 税のことを良く勉強しなければいけない。欧 米の消費税(17.5 %〜 25 %)は、教育や医 療、住宅取得に絡む土地、金融関係には掛っ ていない。日本の消費税と全く質が違う。日 本の消費税は、広く薄くということで、かな りの分野に入っている。消費税5 %のうち国 税に入るのが4 %で、残り1 %は地方に入 る。日本の実質4 %という消費税は、国税に 換算すると22.1 %である。スウェーデンの 消費税は2 5 % であり、国税に対しては 22.1 %と日本の国税に占める税源と同じパー セントである。日本の4 %はスウェーデンの 消費税25 %と同じである。日本の消費税は、医療や教育などにも掛っているため、そこの 是正をしない限り、同じ土俵で消費税を言っ てはいけない。ワーキングプワーや失業者が いる中で、消費税を上げると、財政的に危な くなると思う。税収が停滞し、GDP 費が下 がり国領が低下すると指摘した。
● また、鹿児島県池田琢哉副会長から、現在の 経済状況では難しい面もあるが、たばこ税や 社会保険料、企業税など、検討する項目があ る。そこへの切り込みを期待したい。また、 消費税の増税は国民の理解が得られなければ 絶対無理な話だと思う。一人一人の医師が地 域の人を巻き込み、医療財源の必要性を説い て欲しいと述べた。
● これを受け、中川常任理事から、医療を提供 する側の我々が、財源の消費税を上げて欲し いと言うことの難しさは、身にしみて感じて いる。分析力や政策提言力、一般の国民に分 かるような表現力を高めていきたい。消費税 の性格がヨーロッパと違うという意見もあっ たが、全くその通りである。慎重にただ上げ れば良いと、社会保障国民会議の時に、消費 税が何パーセントに相当すると言う議論があ ったが、あれは消費税を全て国が取ると言う 前提の非常に大ざっぱな試算であった。いろ いろ誤解もあるかと思う。そういうことも含 めて、国民に理解を得る努力を早急に着手し たいと回答があった。
● また、税制担当の今村常任理事から、たばこ 税の医療財源について、日医では国民の健康 のために、喫煙者を減らす目的で、たばこ税 の税率を上げて欲しいとの要望を例年行って きた。今回、健康のためにと鳩山総理の話で 3 円50 銭あがった。税収を増やすことの目的 ではなく、国民の健康のための引き上げだと 国も話しており、日医も従来からその様に主 張しているところもあるので、医療の財源と してたばこ税をと、建前として主張していく ことは難しいとの説明があった。
竹嶋康弘副会長より次のとおり回答があった。
政権交代後、日医執行部では、非常事態であ ると捉え対策室を設置し、インフルエンザワク チンに関する問題やその他様々な問題への対応 策について、担当理事を交えた検討を行い、そ の都度厚労省と協議行なっている。その中で、 地域への情報発信が足りないとの指摘もある が、混乱を招かないよう配慮してきた事実もあ ることを理解頂きたい。
本会は従来から我が国の脆弱な国産ワクチン 供給システムを見直す必要性について、担当常 任理事から執拗に申し入れ、その結果、昨年末 厚生科学審議会感染症分科会のもとに、予防接 種部会が新政権の下に発足した。既に2 回会議 が開かれ担当常任理事が参画している。アメリ カの予防接種諮問委員会の様な組織をわが国に も創設する検討を行っている。
日医の政策は、広報であると考えている。広 報には、会員向けの広報、国民向けの広報、メ ディア向けの広報と3 つの広報がある。それら をしっかりやっていく事が極めて大事である。 会員向け広報は、毎週水曜日に、宝住副会長と 中川常任理事を中心に、毎回様々な広報活動を 行い、白クマニュース等の配信で対内的には十 分活動している。国民向けには、間接的にはセ ミナーやシンポジウム、審議会等に努めて参加 している。メディア向けには、日医の活動、地 域医療のあり方、今後の課題についてメディア に認識・理解して貰う事が極めて大事だと考え ており、それが間接的に国民に繋がるものと考 えている。
また、現在、新聞による広報についても検討 を行っているが、政治が変わり政策のプロセス が見えないこともあり、静観している。2 社に 一面広告を掲載して3,500 万から4,000 万の費 用が発生する。
政権交代後、中医協の日医執行部外しや社会 保障審議会の医療部会医療保険部会からも外す 動きもあり、また、事業仕分けに関する問題など、その都度、記者会見で見解を述べている。 これらの活動が少しずつではあるが民主党議員 にも理解を頂けるようになり、折衝できる場に なりつつある。
回答後の質疑等
● 埼玉県吉原忠男会長は、竹嶋副会長や中川常 任理事が、メディファックスや日医ファック スニュース等で発言している事は正しいと思 うが、その声が相手のトップに届いているか 如何かが問題である。しっかりキーパソンに 意見が届くようにしているのか。インフルエ ンザの通達については、日医の意見があまり 見えてこない。政府の然るべき人と話をする ルートを作って欲しいと述べた。
● 竹嶋副会長から、我々は何もしていない訳で はない。新政権になってからも常に働きかけ を行なっている。民主党の医療政策で期待し ている部分もある。昨年末、平成22 年度予 算案が公表されたが、財務省主導での予算編 成となり、診療報酬の改定率もあまり増額に ならなかった。そう言う意味では民主党政権 しっかりしてくれという気持ちでいる。しか し、民主党は地域の医師会は尊重すると言っ ている。今回我々は随分助けられた。診療報 酬改定においても地域医師会からの働き掛け があったのは間違いない。正に今回は各地域 医療で頑張って頂いた。日医が上手く行かな い部分を随分助けてもらったことは認識して いる。これを生かして橋渡しを是非して貰い たいと説明があった。
● 説明を受け吉原会長は、どの政党が政権を執 っても是々非々で医療を守る為に活動してい くことが本筋であると考える。日医が地域医 師会を助けるということであれば、我々はそ の手配となり政府に物を言いに行くことを実 行していきたいと述べた。
● 飯沼常任理事から、集団接種は法的には存在 しないので、集団的接種と呼んでいる。厚労 省へは個別だけでは対応出来ないことは随分 申し上げている。各地で行なわれている集団 的接種については、厚労省は認めている。そ の他、インフルエンザに関する活動として、 完治証明の要求を控える通達を要請したり、 2 回目のワクチンの配布について、真夜中ま で担当課の職員共々、厚労省と調整を行って いることはご理解頂きたいと説明があった。
飯沼雅朗常任理事より次のとおり回答があ った。
都道府県医師会生涯教育担当理事連絡協議 会における協議については、会議名称に「協議 会」とあるものの、実際は協議をするについて は、唐澤会長は著書「医師の主張」の中で、 「医師自らが「かかりつけ医」と呼ばれるよう になるため、研鑽して欲しい。我々は日医の生 涯カリキュラムを履修した者ならば、地域住民 が安心して受診できると言う、信頼に繋がる生 涯教育制度を築くことを目指している」と述べ ている。これまで私が生涯教育担当になってか ら、数度の生涯教育担当理事連絡協議会におい て、協議を重ねてきた。そこで様々な議論要望 があったが、生涯教育制度を底上げして欲しい と言うことでは、コンセンサスを頂いている。 また、それについて、日医に指導力を発揮せよ との仰せであった。本制度は、本会生涯教育推 進委員会に於いて、全会一致で提言され、常任 理事会・理事会での協議を経て、機関決定され たものである。連絡協議会は、議決機関ではな いため、賛否を問うことは馴染まないと思う。 一方、連絡協議会で協議の間に、沢山の要望を 頂き、制度改正に対応した事務手続きを軽減化 したい、その為にソフトを開発中で、今月中に 各県に配布できる見通しになっている。更に、 今回の改定が会員の負担にならないよう、あら ゆる手段で、あらゆる角度から準備検討を進め ている。日進月歩の医療に対応するため、また 国民の期待に応えるため一日も早い実施が望ま れるので、ご協力賜りたい。
また、新制度に対応できない都道府県医師会があった場合の対応については、今回の改定で は、講習会等に参加できない会員のために、自 己学習による単位、カリキュラムコードの取得 方法を拡充させており、また、新制度による日 医雑誌の読後回答が4 月から始まる。これまで 日医雑誌読後回答のみでは、修了証の要件は満 たせていなかったが、今回の改定により、日医 雑誌読後回答だけでも、認定証の発行要件を満 たすことが可能になる。地域に於いては、会員 に不利が及ぶことが無いよう、また、都道府県 医師会事務局への協力も含め、対応頂くよう改 めて協力をお願いしたい。
実施時期については、今回の改定はあくまで も生涯教育制度の底上げであり、日本プライマ リ・ケア学会や連合学会の発足、総合診療医制 度とは全く関係はない。機関決定したとおり、 4 月1 日から開始したいと思う。なお、総合診 療医制度については、合併する3 学会との関 係、本会学術新会員に議論を委ね検討を頂いて いる。報告書が出来た段階で、また改めて執行 部で検討することにしている。
回答後の質疑等
● 滋賀県浅野定弘会長から、生涯学習の実施に ついて異論はない。準備できる保証が無いと 担当理事が申していた。担当理事が心もとな い指導では実践できないことを危惧してお り、全員がスムースに出来るかどうかの疑念 を持っていると説明があった。
● また、埼玉県吉原忠男会長は、カリキュラム 構造は良く出来ているが、開業医が診療の合 間に出来る代物ではない。滋賀県浅野会長の 指摘の通りである。また、何故4 月1 日の実 施なのか。飯沼常任理事は先程、機関決定し たとの説明があったが、皆のコンセンサスが 得られるまで、半年1 年なり委員会で揉んで 実施すべきではないかと質問した。
● 飯沼常任理事は、生涯教育推進委員会で議論 し、常任理事会で説明、理事会で承認を経て 4 月1 日の実施となった。国民もそれを望ん でいると回答した。
● また、羽生田常任理事から以前、生涯教育シ ステムを変更した際、理事会で決定し、制度 を変更したため、今回も同様の取り扱いをし た経緯があると補足説明があった。
● 吉原会長は、機関決定した件はやむを得ない が、準備不足の点やカリキュラムの複雑すぎ る点は、実施しながら変更して頂かないと、 途中で潰れる可能性が大きい。その辺の配慮 をお願いしたいと要望し、羽生田常任理事か ら十分配慮しながら進めていくとの返答があ った。
● 岡山県井戸俊夫会長から、日本プライマリ・ ケア学会との関係についてどの様に考えてい るか質問があり、飯沼常任理事から、同学会 と我々とは全く無関係である。今後、如何接 していくか学術推進会議で議論しており、間 もなく答申書が出るため、それをもとに執行 部で検討したいと回答した。
● 石川県小森貴会長は、日医生涯教育制度の制 度設計について、大学病院等に勤務する先生 方から不安の声があがっている。これらについ ての見解と対処について伺いたいと質問した。
● 飯沼常任理事から、不安を払拭できるようあ らゆる手立てを施していきたい。結局、生涯 教育を如何考えるかの根本的な問題にあるか と思うが、日進月歩してく中、高度先進医療 を限られた高度に細分化された領域だけを満 たしていくのではなく、基礎部分も毎年進歩 しているため、その部分も補強して頂くこと が理想である。本件について順次ご理解が得 られるように我々も努力したいと回答した。
藤原淳常任理事より次のとおり回答があった。
禁煙率を見ると、OECD のヘルスデータ 2009 では世界的には、徐々に低下傾向にある が、2008 年わが国の喫煙率は25.9 %であり、 G7 の中では最も高く、諸外国と比べまだ見劣 りしているのが現状である。今回、質問にもあ るとおり、ニコチン依存症管理料は、2006 年の診療報酬改定で新設されたものだが、これに かかる医療費は平成20 年6 月の社会医療診療 行為別調査結果から推計すると約8 億円となっ ている。また2009 年11 月の中医協診療報酬改 定結果検証部会の調査結果によると、禁煙指導 5 回を終了した者の、9 カ月後の禁煙継続率は、 49.1 %と約5 割であることが報告されている。 一定の効果があったと考えられる。禁煙は本来 自己責任で取り組むものであり、公的保険の範 囲では無いという意見もある。一定の効果が出 ており、日本の禁煙対策が遅れていると言うこ となどから、当分の間ニコチン依存症管理料は 必要であると認識している。指摘のニコチン依 存症管理料に関する要件緩和についても、最も な要望であると思うが、支払い側は常に廃止し たい項目の一つであり、特に今回改定財源は外 来400 億円の規制があるので、緩和拡大は正直 なところ難しい状況にあると考えているが、要 望であるので働きかけていきたい。
回答後の質疑等
● 愛媛県大橋勝英副会長は、禁煙外来を行って いる医療機関は全国で9 千以上ある。今回提 案した要望事項については、共通して上がっ ている事項なので是非対応して頂きたい。公 衆衛生の向上と言う観点、また、ニコチン依 存症という疾病に対しての医療と言うことで は、支払者側を説得できると考えているの で、理論的折衝を行なって頂きたい。特に若 年層への禁煙対策が急務である。日本禁煙学 会や禁煙外来を実施している施設と相談し、 理論的対応をお願いしたいと要請した。
今村聡常任理事より次のとおり回答があった。
先ず、単年度6,000 万円の増収効果の根拠に ついては、平成22 年度に80 歳に到達するA1 会員の先生が1,000 名、医賠責を除く日医の会 費が6 万円であるので計6,000 万円、A2(B) 会員、B 会員がそれぞれ350 名で併せて700 名、 それぞれ会費が28,000 円で、併せて1,960 万 円、全て併せて7,960 万円になり、ほぼ8 千万 円弱になるが、本来、高齢減免の適応になって いても、申請をされていない先生方が今回の制 度改正に伴って、新たに申請されるケースもあ るかと思うが、それらを踏まえ25 %程純粋な計 算から減として、6,000 万円という数値を出し た。日医の会員構成からすると、少なくとも数 年間はこの位の財政効果があると考えている。
次に、各都道府県別の減免未申請会員数等に ついて事前に調査を実施したかについては、ア ンケート等の丁寧な準備はしていない。日医の 全会員における未申請者を総数で把握した。平 成20 年度対象者のうち、高齢減免申請を行わ なかった割合は大凡12 %程度であった。申請 には20 年会員であることが要件にあるため、 適応の権利が無い人も含んだ数値である。過 去、平成6 年に77 歳から80 歳に適応年齢を引 き上げた時も、特に引き上げに伴い、未申請だ った会員が一気に申請される駆け込みが無かっ たため、この度も制度改正を行うにあたって、 その数値を大きく見込んではいない。但し、何 かあっても大丈夫な様に25 %程の余裕は見て いる。本来、適応年齢になっても元気で仕事を され会費を納入されている先生方が多数いるこ とは大変ありがたいことだと考えている。
宮崎県医師会の未申請率が全国的に見て高い か如何かについては、全国的平均より少し高 い。今回この様な会員の先生方、特に高齢で一 生懸命頑張って頂いた先生方に負担をお掛けす るような改正を取らせて頂いた理由は、今後、 高齢減免対象者が非常に多数増えることが予測 され、将来5 年間で3 億円程度の収入減になる ことが想定されている。例えば、日医広報で出 費している支出の1/2 位に相当するような大き な額となる。日医の支出で全く無駄が無いかと 言うと、色々あるかと思うが収入支出検討委員 会や財務委員会等で種々ご意見を頂きながら、 少しずつ減らしていきたいと考えているので、 制度改正についてはご理解いただきたい。
回答後の質疑等
● 宮崎県稲倉正孝会長は、昔に比べ先輩高齢会 員の経済状況は、余裕の無い状況にあると認 識している。今回の改正は、高齢会員に対す る尊厳や敬意、思いやりに欠けた非常にイジ ーな改定である。会費賦課徴収規程改正の重 要な問題の変更に関しては、都道府県医師会 の事情を前もって調査する必要があり手落ち がある。情報収集及び情報分析が非常に不十 分である。この様な重要な問題は慎重に対応 頂きたいと要請した。
● 今村常任理事は、大変拙速であったという指 摘については、各県の事情が様々にあること を伺い準備不足であった点は真摯に受け止め たい。この問題については、取り敢えず手続 き的には代議員会にも諮り、事前に情報収集 した上で、代議員の総意として承認頂いたと 思っているが、地域の事情についてはこれか らも配慮し注意していきたいと説明した。
● 埼玉県吉原邦男会長は、代議員会で決議され ことは認めるが、反対した者の一人として、 入会した若い先生が恩恵を受け、減免申請を 楽しみにしていた先生方が地方には多く存在 する。今回の改正は非常に思いやりに欠けた 拙速な対応であった。しかし、率直に今村常 任理事も認めて頂いているので、柔軟な対応 策が取れるようになれば良いと思うと述べた。
● 今村常任理事から、医療関係や経営環境の悪 化などを踏まえ、年齢だけではなく元々存在 する「疾病減免等」の部分において、収入が 減っている高齢の先生方への対応について、 当該規程の範囲で可能だと思う。具体的には ある一定のハードルを設けたうえで、年齢だ けではない収入面での検討が出来るよう、出 来るだけ配慮していきたいとの回答があった。
羽生田俊常任理事より協力依頼があった。
日本医師会では毎年、全国大学医学部・医科 大学の全卒業生を対象に、日医雑誌の特別号等 を中心とした冊子やパンフレットなどを進呈し ているが、今後、各都道府県医師会が地域の大 学医学部・医科大学との連携をより一層強めて もらう観点から、各都道府県医師会事務局から 直接贈呈本の発送をお願いしたく、先生方の配 慮をお願いしたい。
静岡県鈴木勝彦会長から、入会申込書を是 非併せて同封頂ければありがたいとの要請があ った。