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沖縄での初期医療研修

沖縄医療生協協同病院研修医1年目
目々澤 遥

私と私の選んだ病院について振り返ってみ ます。

沖縄の市中病院での研修が今盛り上がって いるとは聞いておりました。全国津々浦々から 研修医が集まり、教鞭をとる先生方も熱く活 気があると。5 年生のころ大学病院での研修し か考えたことのなかった私にはその話はとても 新鮮で、一度ぜひ目の当たりしてみたいと思い 見学願いをたどたどしくも書いておりました。 そんなに違うものなのか?とは思っていました が実際に飛行機を使い暖かい気候の沖縄へ行 くと、内科ではなりたてほやほやの研修医一年 目が主治医となり治療方針をたて患者さんに病 状説明をしている。救急でも救急車で到着した 患者さんを一人で対応している姿をみる。ここ は一体…??

もちろん方針をたてた後には指導医の先生方 に確認や相談している姿はみましたが、私の印 象としては研修医の研修が研修主体であるとい う現実をみたという感想でした。

変なことを申し上げているかもしれないです が、私がそれまでに拝見してきた研修医の研修 というのは研修が主体ではなくその科ごとの先 生が検査や治療でやる雑務が主体であったよう に思います。石の上にも3 年という言葉があ り、雑務自体がとても大事な礎になると枕詞の ように聞かされておりそれが当たり前のように 思っていた私としてはひどくショックな目の前 の風景でした。自分が主治医となり、自ら考え た検査でやるべき手技は自分で行い、その結果 をふまえ診断し、自分で出した薬で治療をし、 経過をみながら自ら調節する。それは正に実践 ありきの研修医の研修主体の研修でした。

その上、病院ごとに勉強会や講習・教育回診 まで充実している上、それに参加するように仕 事も上級医の方が考慮してくれる。また、ロー テートに関してもある程度自分の未来に合わせ た自分の周りたい科を優先していただけ、もう その現状を前にして、沖縄での研修しか私には 考えることができなくなっておりました。

そしてその研修に紛れて早半年以上の月日が 経ち、どうなったか申しますと…。

実際主治医となり第一線で患者さんに接し、 流れはつかんできたように思いますが、検査の出 す項目が足りない・多すぎる、疾患に関する知 識の浅はかさ、患者さんを診きれていないおろか さ、時間の有効な使い方・優先順位の付け方の 甘さなど、まだまだ至らない点が節々で出てきて おります。しかし、以前と違うのは分らないこと が何か分かるようになってきたように思います。 研修医なりたての頃、患者さんを担当させて頂 き、さぁ検査・治療といった時、どこから手をつ けたらいいのか分らない、まるで大海原に投げ出 されたようなそんな気持ちでした。今になってみ ると、慣れてくるにしたがい、さながら作りたて の船にのり、オールを持ち漕ぎ方を知り、自分の 体力の限界と力加減を知り、地図をみつけ目的 地が分かり、コンパスを得て道筋を辿ることはで きるようになっていったと思います。上級医のよ うな頑丈なターボエンジン搭載のGPS 付きの船 に乗るまでにはまだ長い長い道のりかもしれませ んが、分らないことを振り返り・調べ・諸先生 方から教わり少しずつ成長する実感を感じなが ら、自分なりにこの大海原を渡る最適な手段を 日々精進しているような気分です。

沖縄での研修は私にとってこの医療の大海へ の旅路の舵取りの方法を教えてくれる大役を担 っていると言っても過言ではありません。発展 途上の私ですが、自分の病院をみつけ、選び、 そして優しい人々に囲まれながら日々研修がで きていることがとても嬉しく感じております。 残りあと一年と少しになりましたが、ここ沖縄 での研修が自分の医療人生において追い風とな るようにこれからも努力していく次第です。