那覇市立病院耳鼻咽喉科
嘉数 光雄
アレルギー性鼻炎は、鼻粘膜の�T型アレルギ ー性疾患で原則的には発作性反復性のくしゃ み、水性鼻漏、鼻閉を3 主徴とする体質的な疾 患であり、薬や手術によって体質そのものを変 えることはできません。よって「手術でアレル ギー性鼻炎が治る」という表現は適切ではあり ませんが、様々な手術方法によって鼻粘膜をア レルギー反応が起こりにくい粘膜に変える、あ るいはアレルギー反応が起こっても鼻づまりや 鼻水、くしゃみが起こりにくい粘膜に変えるこ とは可能になってきています。内服薬、あるい は点鼻薬などの治療で症状の改善が思わしくな い場合に、どのような手術(表1)があるのか について述べたいと思います。
表1 アレルギー性鼻炎に対する手術法
【外科的治療法】
1)レーザー治療法
一般的には、鼻閉型の難治性通年性アレルギ ー性鼻炎がよい適応とされています。季節性で 保存的治療が有効な症例は原則的に適応外です が、外科的治療を熱望する症例には行うことも あります。局所麻酔下手術で多少の疼痛を伴う ため、鼻処置に耐えられることが条件となり、 年齢としては、一般的に小学校高学年くらいか ら可能となります。
レーザーの種類としては、1980 年代より使 用されているCO2(炭酸ガス)、Nd : YAG や 1 9 9 0 年以降普及したK T P 、H o : Y A G 、 GaAIAs 半導体などがあります1)。
CO2レーザー光の特徴は非接触型の照射を行 っても照射エネルギーの大部分が表面から0.1 〜 0.2 �oの部位で吸収され、深部組織に障害を 与えないことです。この特徴によりCO2レーザ ーメスは他のレーザーメスより良好な切開能を 持つが創部に形成される凝固層が薄いため、止 血能は弱くなります2)。
KTP レーザーはK(カリウム)とT(チタ ン)とP(リン)よりなる合剤の結晶にNd- YAG 光を通して得られる波長532nm の緑色可 視光です。赤色色素、すなわちヘモグロビンに よく吸収され、このため切開・蒸散と凝固のバ ランスに優れたレーザーであり、周囲組織への 散乱や障害の程度はCO2レーザーとNd-YAG レーザーの中間的なレベルにあり、熱変性は照 射部位に比較的限定されます3)。
Ho : YAG(ホロニウム・ヤグ)レーザーは YAG 母材の中にHo の3 価のイオンを注入した 個体レーザーで発振波長は2.1 μ m です。特徴 的な生体作用は硬組織の破砕や切開が可能な点 であり、眼球への副作用がないことです4)。
GaAIAs 半導体は、レーザーの発振源として 出力はGa,Al,As(ガリウム、アルミニウム、 ヒ素)の半導体素子が用いられています。波長 は780 〜 865nm(中心波長805nm)の範囲の 近赤外領域で、軟部組織への切開、凝固、蒸散 能を兼ね備えていて、接触、非接触使用が可能ですが、防護メガネ装着によりやや視野が悪く なります5)。
その他、高周波電気メスやアルゴンプラズマ 凝固装置を用いる場合などもあります。
いずれにしても術者が使い慣れているレーザ ー、機種を使用し、その特性を生かした手術を 行うことが肝要です。手術方法は、下鼻甲介粘 膜蒸散(凝固)術と下鼻甲介粘膜切除術に大別 されます。
A. 下鼻甲介粘膜蒸散(凝固)術
麻酔は4 %塩酸リドカインと1,000 〜 5,000 倍希釈エプネフリンを浸したガーゼによる鼻腔 内表面麻酔(15 〜 30 分)で座位あるいは半座 位で行います。レーザーの導光にはハンドピー スを用い、下鼻甲介粘膜に照射し広範囲を蒸散 あるいは凝固させます。手術時間は一側につい て約10 分程度です。
B.下鼻甲介粘膜切除術
麻酔は、前述の鼻腔内表面麻酔に加えて、 10 万倍エピネフリン含有0.5 〜 1.0 %塩酸リド カイン(片側2 〜 3ml)の下鼻甲介粘膜下への 局所侵潤麻酔も行います。鼻科手術用のハンド ピースの中に通した導光用ファイバーの先端を 下鼻甲介粘膜に接触させて照斜し、前端から後 端にかえて切除することで、下鼻甲介容積の減 量をはかります。手術時間は一側について約 10 〜 15 分程度です。下鼻甲介粘膜蒸散術に比 べて、上皮化が多少遷延することがあります。 上記で期待される効果は施設ごとに多少の違い がありますが、有効率は鼻閉90%、鼻汁85%、 くしゃみ70 %、2 年以上の効果持続は75 %程 度といわれています1)。
2)鼻腔整復術
固有鼻腔形態異常がある場合は、当然、粘膜 のみを対象にする術式では、効果の持続時間が 短く不十分で再発が生じるので、鼻中隔矯正と 鼻腔側壁の整復を同時に行うのがよいです。
3)後鼻神経切除術
水様性鼻漏は薬物療法でコントロールできな い場合、鼻副鼻腔の副交感神経であるビディア ン神経の切除術、後鼻神経切除術などが適応と なります。涙腺分泌抑制や軟口蓋の味覚障害を 伴うビディアン神経切除術は、ハーモニックス カルペルなどの手術機器の進歩によって鼻内操 作で神経の末梢を切除または凝固、焼灼が可能 となった現在ではあまり行われない傾向にあり ます。粘膜固有層に対する手術操作は副交感神 経終末を傷害すれば、水様鼻漏にも有効です。 高周波で下鼻甲介後端付近の凝固または焼灼も 神経切除術類似の効果を得られます6)。
以上、アレルギー性鼻炎の主な外科的治療に ついて述べましたが、単独の手術操作ですべて を解決できない場合もあり、鼻腔整復術のよう に複数の操作の組み合わせが効果的であり、必 要となることもあります。内服での加療で症状 が改善しない難治なアレルギー性鼻炎は、外科 的治療が有効な場合もあり、耳鼻科専門医へ相 談していただければと思います。
参考文献
1)田部哲也:アレルギー性鼻炎のレーザー療法、神崎仁
編集、耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療のコツと落とし穴
2)鼻・副鼻腔疾患、中山書店; 2006 年、54 〜 55
2)福武知重: CO2 レーザー、池田勝久ら編集、耳鼻咽
喉科診療プラクティス1.鼻科手術支援機器のUp To
Date、文光堂、2000 年、98 〜 101
3)中之坊学・北原哲: KTP/532 レーザー、池田勝久ら
編集、耳鼻咽喉科診療プラクティス1.鼻科手術支援
機器のUp To Date、文光堂、2000 年、102 〜 105
4)池田勝久: Ho:YAG レーザー、池田勝久ら編集、耳鼻
咽喉科診療プラクティス1.鼻科手術支援機器のUp
To Date、文光堂、2000 年、110 〜 113
5)古田 茂:半導体レーザー、池田勝久ら編集、耳鼻咽
喉科診療プラクティス1.鼻科手術支援機器のUp To
Date、文光堂、2000 年、106 〜 109
6)久松建一:アレルギー性鼻炎の外科的治療戦略、神崎
仁編集、耳鼻咽喉科・頭頸部外科診療のコツと落とし
穴2)鼻・副鼻腔疾患、中山書店; 2006 年、56 〜 57
7)鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会:鼻アレル
ギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症― 2005
年版、奥田稔ら編集、ライフサイエンス、2006 年