常任理事 安里 哲好
去る11 月27 日(金)、県庁3 階第1 会議室 において標記連絡会議が行われたので以下のと おり報告する。
議 題
<提案要旨>
県立病院事業改革の進捗状況について、医療 機能の見直し等についての進捗状況等、6 月に 出された県立病院のあり方に関する基本構想に 沿った説明をいただきたい。
また、事業局では、7 対1 看護に向けた取り組 みを実施していると伺っているので、事業局の 現在向いている方向性を提示していただきたい。
<医務課の回答>
6 月に策定した「県立病院のあり方に関する 基本構想」に関し、福祉保健部が現在取り組ん でいる主な事項及びその進捗状況並びに今後の 対応については、次のとおりである。
1.独立行政法人化の移行に向けた準備
地方独立行政法人沖縄県立病院機構の制度 設計の概要(試案)及び地方独立行政法人化の メリットを策定し、12 月から1 月にかけて病院 現場への説明、意見交換を行い、地方独立行政 法人制度への理解を深めるための取り組みを行 うこととしている。
2.市町村の県立病院運営への参画
7 月から9 月にかけて各市町村を回り、首長 及び議長等に対し「県立病院のあり方に関する 基本構想」、「県及び市町村による協議会を設置 することの必要性」等について説明を行った。
その後、10 月から11 月にかけて、「県立病 院の役割と本県医療提供体制のあり方」及び 「市町村の県立病院運営への参画」をテーマと した協議会を立ち上げ、市町村との間で意見交 換を行い、運営参画の方策の具体案を提示し、 検討を要望したところである。
来年の2 月上旬には第2 回協議会を開催し、 県の具体策に関する市町村の基本的考え方を聴取し、次年度以降の協議の継続に繋げていきた いと考えている。
3.県立病院の医療機能の見直し
「県立病院の医療機能の見直し(試案)」を 策定し、病院現場に情報提供したところであ る。今後、病院現場を始めとする関係機関との 意見交換を行い、次年度末までには県としての 案を策定したいと考えている。
<主な意見等>
□市町村との協議会は定期的に開かれるのか (県医師会)。
■ 1 回目の協議会が終わって、県の方から運営 参画部門として、1)市町村振興宝くじの収益 金の一部を県の研修・研究費等に活用させて いただけないか、2)今後県立病院を建設する 際の市町村負担、3)仮に県立病院事業が独立 行政法人に移行する場合の共同参画を提案し ている(福祉保健部)。
□離島の診療所が市町村立だと補助がたくさん 出るという話はしているのか(県医師会)。
■独立行政法人化する場合、市町村立診療所、 へき地・離島診療所に関しては、1)一つの離 島医療組合にする事、2)市町村が独立行政法 人に参画すれば県立の附属診療所として位置 づけた方がいいのではないかといった事を検 討していこうと申している(福祉保健部)。
□県立病院の医療機能の見直しに関して、南部 医療センターと精和病院の部分の議論が大き いわけである。離島病院に関しては、本島の 責任で行わなければならない。事業局はどう 考えているのか(県医師会)。
■事業局は現段階での報告は出来ない状況であ る。先日のマスコミ報道は、福祉保健部の試 案である。本来、機能に関しては経営形態の 如何に捉われるべきではなく、県民が求める 機能は時代や社会背景に応じて変化していく であろうと考えられる。変化に応じた機能案 を示したところであり、その案を現場の医師 に提示し意見を求め、県の案を作成していき たいと考えている(福祉保健部)。
□最終的には議会での承認となるのか(県医 師会)。
■病院事業を開設(設置)している場合、県知 事の判断となるので議会の承認は不要。た だ、仮に独立行政法人に移行した場合、医療 機能の見直しがベースとなり法人に対する中 期目標となる。その中期目標となる段階まで は議会の承認が必要となる(福祉保健部)。
■仮に全適となった場合は条例との絡みがある ので条例改正が必要(福祉保健部)。
□現場での説明は、制度設計とは関係なく機能 についての説明を行っていたのか(県医師会)。
■一つは、今話し合われている独法化という制 度やメリットの説明、もう一つは地域の医療 状況に合わせた県の果たす役割という二本立 てで説明を行った(福祉保健部)。
□この案はあくまで試案の段階で県の案ではな いと考えて良いか(県医師会)。
■機能に関してはそうである。独法化のメリッ トは事実関係の整理である(福祉保健部)。
□前回より良い議論が出来るのではないか。医 局現場からの意見が出るような会議にすれば 本当の議論になる。議論を誘導するのではな く幅広い意見を吸い上げられれば改革も上手 くいくはずである(県医師会)。
<病院事業局の考え>
県立病院のうち、急性期の5 病院における7 対1 看護体制については、県民への適切な医療 の提供とともに、看護師確保の観点からも重要 な課題であると認識している。
また、議会等でも議論がされており、去る二 月議会では、「県立病院の看護師体制を7 対1 看護配置とし、医師・看護師の確保に努め」る よう全会一致で決議されたところである。
これらのことを踏まえ、病院事業局では、遅 くとも平成22 年4 月からは南部医療センタ ー・こども医療センターで7 対1 看護体制の試 験実施を行い、その状況を踏まえながら、経営 再建と両立する形での急性期5 病院での7 対1 看護体制実施を検討したいと考えている。その際、必要であれば来る二月議会に定数条例の改 正を提案するよう検討している。
<主な意見等>
□今の給与のままで7 対1 看護体制を実施する と赤字になるのは事業局が一番知っているは ずである。給与の調整をしなければ7 対1 の メリットは無い。定数条例を改正云々ではな く給与を調整するべきである。また、県立病 院が7 対1 看護体制をとると民間は厳しくな る。看護需給計画との整合性を図りながら上 手く調整いただきたい(県医師会)。
■シミュレーションは既に行っている。全病院 を7 対1 看護体制にする事は今のところ考え ていない(福祉保健部)。
□看護師が長く働けば固定費がどんどん上がっ てくるので、給与のレベルをある程度考える 必要がある。県立浦添看護学校がなくなるに も関わらず県立看護大学から看護師を供給し ていない。よそで供給した看護師を県立病院 だけが採用して行くパターンを念頭に進めて いく必要がある。看護需給計画との整合性を 県が図るべきである(県医師会)。
□南部地区医師会では、南部地区において 10 %の看護師不足が出ていると報告された。 13 %は派遣会社による県外からの派遣で宿 泊施設や手数料等も多額に発生しているとの 事。県は看護師を確保する際にその辺を考慮 しているのか(県医師会)。
■採用に関しては、年齢制限の撤廃やキャラバ ン活動などを実施しており、県内に限らず募 集をかけているところである(福祉保健部)。
<提案要旨>
以前に、南部保健医療圏における小児救急ネ ットワークの実現化に向けての提案をしたが、 南部地区救急医療協議会や県救急医療協議会 で検討するとの回答であった(平成20 年度第 3 回連絡会議)。その後、県救急医療協議会の 意見も踏まえ、平成21 年度は「小児救急医療 啓発事業」に力を入れて取り組んでおられる が、その現状について報告いただきたい。
また、日本医師会が平成20 年10 月に施行し た「医師確保のための実態調査」によると、小 児救急医療電話相談事業(#8000)についての 効果は、47 都道府県中、「かなりあった」が 26.2 %、「ややあった」が38.1 %、「今後期待 できる」が14.3 %との報告で、他府県では活 用され評価されている現状が示された。昨年度 県立N 病院にて、電話による相談は1 年間で 5,798 件中4,192 件(72 %)が子供に関する相 談であったと報告している。中央保健所が行っ た650 人の保育園児の保護者へのアンケート調 査では、子供の急性疾患について76 %の親が 「電話で専門家に聞ける体制づくり」を求めて いる。また、全国において、#8000 の未実施県 は本県のみとなり、その実現が望まれている。 かような背景のもとに、平成22 年度において、 小児救急医療電話相談事業(#8000)の実施を 要望したい。
<医務課の回答>
小児救急医療啓発事業は、社団法人沖縄県小 児保健協会を契約相手方として、平成21 年9 月30 日付けで業務委託をおこなっている。
委託している業務内容は、小児救急医療啓発 に関するガイドブック等の作成・配布や講習会 等の開催であり、平成21 年10 月5 日には沖縄 小児保健センターで開催した「平成21 年度第 2 回母子保健推進員研修会」において母子保健 推進員を対象に「子どもの時間外救急」と題し て講習を実施した。
現在、検討協議会の立ち上げに関して関係者 と日程調整を進めており、今後、ガイドブック の内容等について検討を行い、小児救急医療の 効果的な啓発を計っていくことにしている。
<参考>
委託している業務内容
1)検討協議会の設置
小児科医・救急医・県・地区医師会等の関 係機関の有識者から構成する協議会において 効果的なガイドブックや講習会の内容等を検 討する。
2)ガイドブック等の作成・配布
小児救急医療について、乳幼児保護者等が 理解し易い資料を提供することで小児救急医 療の理解を深める。
3)講習会の開催
乳幼児保護者等を対象に講習会を開催し、 小児救急医療についての理解を深める。ま た、アンケートを実施して講習会参加者の意 見を集約する。
4)事業の検証
開催した講習会等について、検討協議会で 検証し次年度以降の事業実施に反映させる。
小児救急医療電話相談事業# 8000 の実施 については、地域医療再生基金を活用して平 成22 年度からの実施を検討している。
<主な意見等>
□前回も要望したのは、コンビニ化を防ぐため の啓発をやっていただきたいということであ った。こういう講習会に来た方は認識が十分 あるので、むしろ対象は県民すべてである。 あらゆる広報を通じて、コンビニ診療がなく なるようにしていただきたい。ガイドブック を作って医療機関の窓口においたとしてもあ まり効果は出ない。盛りだくさんの企画で単 発に実施するのではなく、新聞広報とか新聞 に継続して載せるという方向が欲しい。
# 8000 は、沖縄県が最後の実施になった。 4 年前の救急医療協議会でも、県立中部病院 では必要ないと考えていたが、県立南部医療 センターがやはり必要だとの意見が出てお り、内部での調整がうまくいっていないと思 われる。
#8000 は、当初責任の所在がどうかという ことが言われたが、現在では全国で定着し、 効果があると評価されている。
地域医療再生計画の予算を当てるとのこと だが、#8000 で国から予算が出ているのでそ れを使うとよい(県医師会)。
■小児救急啓発は単発で終わるつもりはない。 救急の中で継続して続けていくことにしてい る。100 %救急事業なので、1/2 補助事業であ る。例えば、コールセンターへ繋げば、うちの 救急医療体制から見ればあまり変わらない。
地域医療再生計画の中で医師確保(産婦人 科医・小児科医)が不足しているとの観点や、 子育てのお母さんたちの支援という視点も含 めて再生計画に位置づけたいと考えている。 今後専門的な方の意見を伺っていきたいので、 アドバイスいただきたい(福祉保健部)。
□今回のインフルエンザの予防接種のように、 かかりつけ医ではなく、園医が接種の受け入 れを調整をすることになっている。このネッ トワークを活かすとよい。それぞれの保育園 がかかりつけ医ではなく、近くの園医や医療 機関に相談に行くようになっている。保育園 をベースに情報伝達したらかなりうまくいく と思われる。
保育園で怪我をすると保育園が医療機関に すぐに連れて行く。しかし、熱発したときは お母さんたちが来るのを待って、どういうわ けか南部医療センターにつれていく。怪我の ときの対応で同じにしたらよい(県医師会)。
<医務課より報告>
(1)県保健医療協議会での意見聴取
当計画については、前回までに趣旨や計画 (案)の作成に係る経過等を報告してきたとこ ろである。県では、沖縄県保健医療協議会にお いて、限度額が125 億円の計画の案(1)と、 限度額が50 億円の計画の案(2)の両方につい て意見を聴取し、了承された。
(2)執行停止の影響と再生計画(案)の決定
厚生労働省のこれまでの通知に基づき、両方 を案として決定し、厚労省へ提出する事務処理 を進めていたところ、国において補正予算の執行停止の措置がとられることになった。地域医 療再生計画については、全国10 ヶ所に予定さ れていた限度額100 億円の計画は、次期診療報 酬改定において、地域医療に資する対応を行う ことを前提に、補正予算の執行停止対象とな り、各都道府県は限度額50 億円の計画の案を 提出することになった。それを受けて、限度額 50 億円の計画を「沖縄県 地域医療再生計画 (案)」として決定し、平成21 年10 月16 日に 厚労省へ送付した。
(3)今後の予定
次のとおり。
<主な意見等>
□ 50 億が限度となっているが、どれぐらい削 られるかという情報はあるのか(県医師会)。
■細かい事務的な問い合わせはあるが、特に事 業削減等の話はない(福祉保健部)
<医務課より報告>
沖縄県がん対策推進計画アクションプラン (案)を纏めた。委員の意見も踏まえ、前回の 内容とは構成的にも変更して見直した。がん医 療・がん検診・たばこ対策の3 つについて、具 体的な対処方針を決めることにしている。
がん医療対策としては、実施主体毎に連携を とり、取り組むことを明確にし、連携していく ことで計画を作ることになっている。
県では、医療機関の実施状況の把握、情報の 提供、がん診療医療機関の充実・強化、医療従 事者の研修の充実をすることになっている。北 部・中部・南部・宮古・八重山の各地区に地域 連携協議会を設置することになっている。
医療機関をはじめ関係機関では、がん診療の 提供体制の強化・医療従事者の研修、各地区の 連携協議会への参加をお願いした。
がん検診としては、県は検診の普及啓発・検 診を受けやすい環境づくりの支援・未受診者へ の受診勧奨等を行うこととしている。また、医 療関係には、検診実施機関として検診体制の推 進をお願いする他、その他の医療機関には、検 診への協力・受診勧奨等をお願いしたい。
たばこ対策としては、県は未成年者に対する 喫煙防止活動・学校敷地内全面禁煙の推進・ たばこ自販機の適正な運用の働きかけ等を行う こととしている。また、関係団体には、未成年 者に対する喫煙防止活動・喫煙者に対する禁煙 支援・禁煙支援をする人材の育成等をお願いし たい。
医師会をはじめ医療関係者に是非ご協力をお 願いしたい。
<主な意見等>
□せっかく検診しても受診率アップに繋がって いない。最近実施している女性特有のがん検 診を見ても、那覇の場合受診率あがっている ような印象受けない(県医師会)。
□今回のクーポン券は100 %なので、もしかし たら受診率あがるのではないかと期待されて いる。各県での受診率上がっているのかわか らない。国が今回の効果を見て5 年間やれば 全女性に行きわたる。また、沖縄は50 %く らいは受診していると思われるが、一度きち んと調査してはどうか。検診団体ならデータ を持っていると思う。次年度学会があり、マンモグラフィー検診の受診率を調査する予定 であり、これから各施設に調査票を送ること にしている。3 年調べて発表できればと考え ている(県医師会)
<その他>医療施設の耐震化事業について (医務課より報告)
救急病院と精神科の病院、4 医療機関から申 し出があり、4 医療機関とも11 月の議会に提出 しているので報告する。
印象記
常任理事 安里 哲好
連絡会議の議題は1 〜 2 週間前に提案しており、議題1 の「県立病院事業改革について」もそう である。会議の前日(11 月26 日)、「県立病院の医療機能の見直し(試案)」の一部が新聞紙上で 報道され、それまで、県医師会には全く知らされていない状況であったが、試案の一部は県公務 員医師会や県議会の文教厚生委員に説明されたと記していた。
「県立病院の機能見直し(試案)」は新聞紙上によると、かなり大胆な発想であるが、5 〜 6 年 前の高度多機能病院(現南部医療センター・こども医療センター)に関する意見を、當山護元副 会長(当時、県立病院のあり方に関する委員会のメンバー)が県医師会理事者に求めた際の、小 生の提案に比較的近似している印象を感じた。平成21 年度は経営上黒字の県立病院もあり、キャ ッシュ・フローはかなりの歩留まりがあるも、そのほとんどが経営的に厳しい県立病院に応用さ れていると伝え聞く。平成22 年度は、離島・へき地医療の中心的役割を担っている県立病院の医 療機能の維持・向上に資するためにも、健全医療経営が望まれると同時に、経営再建の正念場に なろうと思われる。
「小児救急医療啓発事業の現状と小児救急医療電話相談事業#8000 について」は、小児救急医 療啓発事業は沖縄県小児保健協会に依頼して、10 月から活動を始めたばかりであるとの事。一 方、#8000 事業は地域医療再生基金を活用して平成22 年度からの実施を検討していると述べてい た。全国的に概観して、以下のような対策が取られているようだ。1)重症患者の救急医療に支障 を来さないよう、夜間・深夜の小児救急外来受診を控えるよう、県民・地域住民に啓発して行く。 2)#8000 の利用。3)地域の診療所や中小病院との連携(診療時間帯の工夫)や、救急救命センタ ー内に地域の小児科医が中心となる夜間外来をつくる。4)それでも厳しいなら、内科の先生に小 児プライマリ・ケアを集中的に勉強してもらい協力してもらう。県外は日々の小児救急医療の崩 壊・消失を阻止しようと必死になって知恵を出し、少ない数の小児科医等で協力し合って、小児 救急医療を維持している現状がある。何度も連絡会議に出たテーマだが、どこが中心となって、 小児救急医療の連携を推進していくかが大きな課題と思われる。
「地域医療再生計画(案)の決定について」は案2(宮古・八重山保健医療圏: 25 億円及び北 部保健医療圏: 25 億円)が予算案として概ね成立する見込みである。次年度より始まる事業は今 後、地域で活用され地域医療再生に寄与し、5 年後以降も継続してもらいたいものだ。
「沖縄県がん対策推進アクションプラン(案)について」はがん医療・がん検診・たばこ対策 について具体的な対処方針を決めたと述べていた。県医師会は次年度も4 疾病(+慢性腎臓病: CKD)と5 事業(+新型インフルエンザ)を中心に、県福祉保健部と密なる連携を取りながら、 諸課題の改善に邁進して行きたいものだ。