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平成21 年度都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会

理事 宮里 善次

去る12 月4 日(木)日本医師会に於いて、 標記連絡協議会が開催されたので、その概要を 報告する。

挨 拶

唐澤人日本医師会長(代読 竹嶋康弘)

本協議会は、日医勤務医委員会、全国医師会 勤務医部会連絡協議会と併せて、日本医師会が 勤務医の抱える諸問題への取り組みを検討して いくための重要な会議であると考えている。ま た、一方、医師の団結をめざす委員会、勤務医 の健康支援に関するプロジェクト委員会も昨年 度に引き続き、医師会の組織力強化に向けた勤 務医師や女性医師の意見が会務に反映される体 制づくりの検討や勤務医師の心身の健康を幅広 くサポートするE メール相談等、具体的推進に ご尽力いただいている。さらに、新たに勤務医 委員会の中に、臨床研修医部会を設置し、医療 の現場で働いている臨床研修医の皆様方に臨床 研修医制度の改善点や医療現場の問題点につい て討議したいと考えている。

ご存知のとおり、新たに誕生した民主党政権 では、来年度診療報酬改定については、全体の 底上げではなく、勤務医と開業医の配分の見直 し、診療科間の給与格差の平準化等が新たに示 され憂慮する状況にある。医療のあるべき姿に ついては、勤務医と開業医、病院と診療所が一 体となって成り立つものと考えている。そのた め、我々は先生方の意見をしっかり伺いなが ら、円滑な地域医療を推進する為に、一層強力 な政策提言をしていかなければならないと決意 している。

報 告

(1)全国医師会勤務医部会連絡協議会につ いて

1)平成21 年度報告(島根県医師会)

島根県医師会錦織優常任理事より報告があ った。

「今こそ目指そう医療崩壊から医療再生へ」をメインテーマに、平成21 年11 月28 日(土) 島根県松江市ホテル一畑に於いて標記連絡協 議会を開催した。全国より多数の先生方にご参 加いただきこの場を借りて感謝申し上げる。

2)平成22 年度担当医師会挨拶(栃木県医師会)

次期担当県である栃木県医師会福田健常任理 事より、来年の開催期日について説明があった。

  • 期日:平成22 年10 月9 日(土)10 : 00
  • 場所:宇都宮市ホテル東日本宇都宮
  • メインテーマ:(仮称)「地域医療再生、地域 の力、医師の団結」
  • シンポジウム:(1)「医療再生への新しい取 り組み」
  • シンポジウム:(2)「今勤務医に求められる 病診連携とは」
(2)勤務医の健康支援に関するプロジェク ト委員会活動報告

日本医師会今村聡常任理事より報告があった。

平成20 年度、勤務医対策の一環として、会 内に「勤務医の健康支援に関するプロジェクト 委員会」を設置した。(H20 年度: 3 回開催、 H21 年度: 4 回開催予定)

委員会の最初の課題として、現在の勤務医の ストレス状況や健康状態を把握すべく、「勤務 医の健康に関するアンケート調査」を実施した。

調査は、平成21 年2 月20 日から3 月6 日に かけ、日本医師会に所属する勤務医1 万人を対 象(無作為抽出)に、アンケート調査票を送付 し、4,055 人から有効回答を得た。(回答率 40.6 %)

調査結果

● 休日に関しては、2 人に1 人が月に4 日以下 であった。

● 平均睡眠時間が、6 時間未満が41 %であっ た。

● 自宅待機は、月に8 回以上20 %であった。

● 患者からのクレームが、2 人に1 人は半年以 内に月1 回以上のクレームの経験があり、2 人に1 人が自身の体調不良を他人に相談しな いという傾向が窺えた。

● メンタル面のサポートとしては、9 %の回答 者が必要で、7 %の回答者が自身を否定的に 見ており、6 %が1 週間に数回以上、死や自 殺について考えると答えた。

● 勤務医の健康支援のために必要と思われる改 善策(半数以上回答のあった項目)について は、「医師が必要な休日(少なくとも週1 日) と年次有給休暇が取れるようにする」、「医師 が必要な休憩時間・仮眠時間を取れる体制を 整える」、「医療事故に関する訴えがあった際 には必ず組織的に対応し、関係者が参加して 医師個人の責任に固執しない再発防止策を進 める」、「記録や書類作成の簡素化、診療補助 者の導入等を進め、医師が診療に専念できる ようにする」、「院内で発生する患者・利用者 による暴言・暴力の防止対策を進める」、「女 性医師が働き続けられるように産休・育休の 保障や代替医師を確保し、時短勤務制度の導 入、妊娠・育児中の勤務軽減、育休明けの研 修等を充実させる」

日本医師会では、今回の調査結果を踏まえ、 1)病院に対して「勤務医の健康を守る病院7 カ 条」を提案すると共に、2)医師に対して「医師 が元気に働くための7 カ条」を提案し、ポスタ ーやリーフレットを作成した。勤務医の就業環 境や生活習慣には改善の余地があり、医師自身 の意識改革も必要であるが、医療機関としての 組織的な取り組みが求められる。医療機関にお いて、産業医活動を活性化させる必要がある。 健康支援策の一つとして、平成21 年10 月15 日〜平成22 年1 月15 日までの間、E-メール相 談と電話による健康相談を行っている。また、 平成22 年3 月6 日(土) 日本医師会館に於い て13 時から「医師の職場環境改善ワークショ ップ研修」を開催する。(産業医生涯研修単 位/定員42 名)。当研修会では、医療機関の産 業医等を対象に、グループワークによるケース スタディを通して、病院における産業保健の役 割、医師のメンタルヘルス支援等について研修を行なって貰う。

協 議

テーマ:医療再生へ進むべき道

(1)都道府県医師会からの勤務医活動報告

1)神奈川県医師会 増沢成幸理事

神奈川県では、先般「宿日直勤務環境現状調 査報告書」を纏めた。

本調査の目的は、医師の宿直勤務が通常の業 務を行うことを前提とした診療形態でなけれ ば、現在の医療を維持できない状況にあること を危惧し、このような長時間の連続勤務は、医 師の身体的な負担を更に増大させるばかりでな く、診療自体に悪影響を与える可能性があり、 今回、医師の宿直勤務の現状について把握すべ く、アンケート調査を実施した。調査は、平成 21 年6 月1 日(月)午前0 時の時点(日曜日夜 から月曜日朝まで)で勤務している宿直医の勤 務についてアンケート調査を行い、317 医療機 関中201 施設から有効回答を得た。(回答率 63.4 %) また、有効宿直医回答人数は、330 人であった。

調査結果

● 当直時間は、16 時間、24 時間、40 時間に3 つのピークがあり、24 時間以上の勤務は全 体の54.8 %、36 時間以上の勤務は全体の 23.3 %であり、休日の医療が勤務医各位の長 時間にわたる宿直の上で、県内の医療が成り 立っている事を示した。

● 長時間勤務は、勤務医の身体的負担になって いるが、現状の医師不足が早急に改善する事 は不可能である。その為に、当直医の負担軽 減の為には、当直医が本来の使命である入院 患者の治療に専念する必要がある。

● 救急対応については、別の医師を配置できる 体制が病院には必要である。

● 勤務医の負担軽減の為には、更なる病院への 手厚い診療報酬体系が不可欠である。

● 宿直勤務の年齢分布では、30歳代(45.3%)、 40 歳代(21.9 %)、20 歳代(18.5 %)の順 であった。

● 20 歳代の宿直医の1/3 を女性医師が占めて いる事から、勤務環境整備も急務である。

2)山口県医師会 内田正志勤務医部会企画委員

昨年12 月1 日、周南市の徳山中央病院内に、 「周南地域休日・夜間こども急病センター(愛 称:周南こどもQQ)」を開設した。休日夜間 診療所の機能を基幹病院内に持ってくる新たな 試みで地域医療再生への進むべき道と成り得る か今後注目されている。

周南地域は山口県の東部に位置する3 つの市 (周南市、下松市、光市)で構成される二次医 療圏で人口26 万人(小児人口3,5 万人)の地 域である。病院小児科が少ないことから、周南 小児科医会では約10 年前から小児救急医療の システム化に積極的に取り組んできた。これま で小児の一次救急は周南市休日夜間急病診療 所、二次救急は徳山中央病院とシステム化され ていたが、今回、一次と二次を一本化させた。 公立公営の夜間診療所を基幹病院内に移設し、 広域を対象とした民設民営のこども急病センタ ーにチェンジ、勤務医師の負担軽減と患者の利 便性向上が図られている。こども急病センター 開設に伴う変化については、(1)10 ケ月間で 患者数は夜間が4 人、休日昼間は10 人増加し、 二次への紹介も2 〜 3 倍に増加した。(2)二次 への紹介率は夜間で4 %、休日昼間で3 %であ る。(3)小児科当直医が午後10 時までは1 次 救急患者の診察に 呼ばれることはなくなり、 入院患者や紹介患者の診療に集中できるように なった。(4)勤務医の負担の軽減になってい る。(小児科医は午後10 時まで、内科医は全体 を通じて軽減)、(6)初期研修医が当直の時に 小児の一次救急患者を診る機会が減っているた め、今後はこども急病センターを活用した初期 研修を考えている。

周南地域の小児救急の取り組みの教訓とし て、1)小児科医会が「こどもは社会の宝」とい う視点を明確にし、先頭に立って積極的に取り 組んだこと。2)開業医と勤務医が協力して、小 児の一次救急を担うことと、二次の受け入れを明確にしたこと。3)医師会が小児科医会の活動 を理解し、全面的に支持したこと。4)自治体、 病院が小児科医会の活動に理解を示し、英断を してくれたこと。5)山口県の一地方の小児救急 の取り組みにとどまらず、全国のモデルになり えるものであり、成人の救急にも通じる。

3)福岡県医師会 家守千鶴子理事

福岡県では、昭和53 年に勤務医部会が設立 された。過去10 年間の県医師会理事(18 名) に占める勤務医(B 会員)の理事数は、ここ数 年で増加傾向(H10 〜 17 年: 0 〜 1 名、H18 〜 19 年は2 名、H20 〜 21 年で5 名)にあるが、 若い医師の参画ではなく、県立病院の院長クラ スの医師である。

本部会の具体的な活動内容については、「県 下4 大学の医学科学生」に対して、大学医学部 の「地域医療」の講義で学生に講義(H21 〜)を 行なっている。また、医師会、医学部長・病院 長との懇談会を開催している。「新規臨床研修 医」に対しては、2 大学で「医の倫理」と題して 講演(H21 〜)を行なっている。何れの講演も 原則会長が務めている。「勤務医」に対しては、 (1)「勤務医のつどい」を年に2 回発行し、全会 員に配布している。また、(2)「医師会のご案 内」パンフレットを作成し、各種講演会等で配 布している。(3)臨床研修指定病院巡り(主に 福岡市)を担当理事が出向し、医局会議などの 席上で20 分前後講演を行なっている。(4)郡 市医師会へ働きかけ、県内の会員異動を簡略す べく、各大学に医師会を作り、会費を分かりや すくする等の働きかけを行なっている。現在進 行中である。その他、全体的な活動としては、 年に1 回勤務医部会講演会を開催、また、昨年 から福岡県医学会が設立されている。

諸活動における問題点として、各種講演会を 企画しても参加者が少ない。十分な広報ができ ない。メーリングリストを作成するもなかなか 登録件数が増えていない。また、理解者は増え るも医師会へ加入に繋がっていない。その理由 として、加入手続きの煩雑さや会費の高さ等が ネックになっているのではないかと思う。しか しながら、今後の希望としては、1)少しずつで はあるが医師会を理解する者が増加している。 2)各大学医学部が協力的になってきている。3) 県下各大学医師会を設立(予定も含む)。また、 県下で会費の統一を図ることによって会員増が 見込めると考えている。4)福岡県医学会で開業 医と勤務医が一堂に会すことにより今後効果が 生まれると見込んでいる。

● 岡山県医師会から、入退会手続きの煩雑化を 避けるための方策として、県レベルの広域会 員(県に所属していれば郡市の手続き不要) が創設できないか質問があり、福岡県家守理 事から、福岡では大学を一つの郡市医師会の 組織として統一化させることを進めていると 回答があった。また、日医羽生田常任理事か ら、広域会員については、都道府県医師会の 定款に、「郡市区医師会の会員であること」 の記載があるかと思うので、そこを変えなけ れば直接県の会員になることは不可能だと説 明があった。

● 奈良県の岩井誠理事から未加入の医師に対し てメリットを感じさせるような方策があるか 質問があり、福岡県家守理事から、医賠責保 険制度の充実と日医総研の機能の重要性につ いて説明していると回答があった。これに対 して、奈良県岩井理事から、学会の医賠責保 険もあり、医師会だけに特化したものでな い。また、茨城県伊東良則常任理事からも 「学会の保険は免責部分が無く」、日医の保険 には盲点があると説明した。

● 日医木下勝之常任理事は、免責(100 万以 下)についての対応は各県医師会でお願いし たい。その以上のレベルの問題については、 一般の損保会社は出来るだけ金額を抑える処 理を進めている。日医の医賠責は会員のため の制度であり、決していい加減なことをして いる訳ではない。20 名近くの審査委員会で、その中には弁護士も入り保険会社も入る。一 般的なレベルに併せ、何とか会員を救ってい こうという視点である。民間の損保会社とは 違うことを強調しておきたいと説明があった。

● 宮城県橋本省理事は、日医医賠責のメリット について、学会や一般損保会社は、事が起き ても助けてくれない。負けた時にお金を支払 うということだけである。しかし、日医の医 賠責は、会員が訴えられた時から、担当理事 や顧問弁護士がその対策にあたるため、本人 に対するプレッシャーを考えると、全く異な るものであると説明した。また、埼玉県谷本 秀司常任理事からは、本県では100 万以下の 免責部分について、地元損保会社と相談のう え、独自に免責部分をカバーする保険(年間 約8 千円程度)を作っていることを紹介し た。また、兵庫県豊田俊常任理事からも、県 下郡市医師会では、有責の場合でも、自己負 担が発生した際には、それに対して補助をす る医事共済を作っていると説明があった。

(2)協議(意見交換)

日医勤務医委員会池田俊彦委員長の進行のも と、本日のテーマである医療再生へ進むべき道 について、予め沖縄県、栃木県、奈良県、岐阜 県医師会より寄せられた質問や意見についてそ れぞれ説明があり、協議(意見交換)を行った。

1)病院勤務医師の疲弊を解消できるのは診療 所医師である(沖縄県)

宮里善次理事:第1 に、勤務医の疲弊の大き な要因は救急医療であると考える。国民の大病 院志向や病児の診察を日中に行えないシステム に間違いがある。病児保育を考える前に父親や 母親が日中に診療所に行けるような社会システ ムを構築して、病院へ軽症の患者が殺到する状 況を改める必要がある。第2 に、日常診療をし て救急当番をし、翌日勤務をする状況を改める ためには、内科、外科等と並び、救急科として の人的要因を多く揃えて救急部門を独立させる 必要がある。第3 に、救急を含め地域医療の再 生は病院、診療所、介護施設、訪問診療所、看 護ステーション等の地域連携が重要になる。保 健医療計画で策定された連携についてIT を使 ったネットワークで確立することが大切であ る。そのためにも安価で利用できるネットワー クシステムの構築が必要になる。現状はネット ワーク業者の収益を上げるシステムしかないと 考えている。是非、ORCA の様な日医標準シ ステムのIT ネットワークを構築して頂きたい。

● 日医三上裕司常任理事:1)の社会システムの 問題は日医のマターではないかもしれない。 2)の救急の問題は、全くそのとおりだと思う が、それには財源が必要になってくる。3)の ORCA の様な日医標準システムについては、 連携パスをどの様に地域で動かすかというこ とだと思うが、完全に動かすには社会保険保 証番号、或いは国民が全て背番号を付けて電 子カルテを共有するところまで進まなければ ならないので、現在のところは要望として伺 っておくのでご理解いただきたい。

2)地域医療の建て直し(栃木県)

福田健常任理事:現在の崩壊しつつある医療 を再生させるためには、根本的には医師数を増 加させなければならない。それには時間がかか る。取り敢えずは、出来る事からの視点で、今 ある医療資源を有効活用できるシステムを構築 することが必要だと考えている。1)開業医と勤 務医が各々の役割を認識し、医療の機能分化と 棲み分けを明確にする。2)基幹病院や診療科目 の集約化を図る。3)医師派遣機能の能力を持つ 大学病院の役割を再考する。4)他の誰よりも医 療崩壊を実感している地域の医師会の行動を活 性化させる。5)行政、大学、市民、医師会、政 治家等との協働の下、医療の将来ビジョンを明 確にした医師派遣システムの構築が必要である。

● フロアーから質問や見解など特に無かった。

3)日本医師会のあり方について(栃木県)

福田健常任理事:勤務医と開業医が団結して 日本の医療供給体制をさらに強固なものに構築 していくためには日医を足場にするしかない。 勤務医がなかなか日医に加入して活動し難い状 況にある。理由として、1)会費に見合ったメリ ットが無い、2)入会等手続きの複雑化・煩雑 化、3)勤務医から見る日医は開業医の団体であ る。4)医療費削減政策を推し進めてきた自民党 を支持してきた。そういうことから、勤務医が 日医を足場として活動し難い状況を生んだと考 えている。

これらを抜本的に見直していかない限り、勤 務医と開業医の一致団結は難しいものと考えて いる。

● フロアーから質問や見解など特に無かったが、 日医勤務医委員会池田委員長から、医師の団 結を図る委員会でも、医師会のチェンジ、あ るべき姿に直すということについては非常に 多くの意見があがったと説明があった。

4)勤務医と医師会医を隔てることなく共に将 来に向けた有効な改善策を考える(奈良県)

岩井誠理事:勤務医の立ち去りがた減少を抑 制するために短期的かつ有効的解決策として、 前回診療報酬改定時に策定された種々の加算点 数による病院の増収は残念ながら運営面に吸収 されて勤務医の給与等待遇に直結して反映され ていないのが現状である。その解決策として は、勤務医の所得税減税や学会図書に関する必 要経費を認める等の実感できる税制の改訂を望 むが、その様なことが可能か伺いたい。

● 日医今村聡常任理事から、先般11 月に都道 府県税制担当理事連絡協議会を開き、日医の 税制要望について説明を行なったが、正直言 って所得税の様なものを、ある業種に限り減 税するという措置は極めて難しい話である。 しかし、日医はここ数年、我々の税制要望事 項として、勤務医の所得税減税を要望し続け ている。また、その他に、医療機関に対して も勤務医の交代制を引いた施設については減 税措置が講じられるよう要望している。引き 続き、要望していきたい。また、経費につい ては、日医医業税制検討委員会でも検討を行 ったが、所得控除がベースにあり実額積み上 げていった際にそこを超えるだけの経費にな らないことがあった。しかし、実際に実態な る裏づけのデータあり、必要が認められるよ うであれば本件についても要望していきた い。残念ながら民主党政権では、これまで医 療が優遇されていた優遇措置を全て見直す方 向にある。これは我々も徹底して守る努力を していると回答があった。

● 奈良県の岩井誠理事から、仮に事業税控除が 廃止された場合、その部分を勤務医の部分に 充てる要望が出来るか質問があり、日医今村 聡常任理事から、税を何処から何処かへと振 分ける話は実質難しい。そもそも日医として は優遇措置と思っていない。元来診療報酬が 低い設定で税制が優遇されているため、本来 的には適正な診療報酬があり、その中で出て きた収入に対して、税をしっかり納めるかた ちが、あるべき姿である。また、ご指摘の事 業税の問題については、医療機関の存亡にか かわる大変重要な問題であり、今年は見送り になったが、今後は先生方の力が必要となる のでご協力賜りたいとお願いがあった。

● 宮城県の橋本常任理事から、勤務医の会費の 問題について勤務医委員会等で議論したこと があるか質問があり、日医勤務医委員会渡辺 憲副委員長から、会費の平準化について、数 年前に勤務委員会でも、勤務医の入会促進の 観点から会費の平準化や入会しやすい設置等 について、日医総研のデータも踏まえ議論し たが、最終的は、県医師会や郡市区医師会も それぞれ法人格を持っているため、強制力が なく出来るだけ極端な会費を設けず、入りや すい仕組みを検討するよう活動をした事があ る。今後、地域間の諸会費に関する格差是正が課題であると回答した。

5)医師供給体制の改善(岐阜県)

臼井正明常任理事:へき地医療を担う病院を 苦しめているのは医師不足であり、その主な原 因の一つが医師供給体制の崩壊である。去る 11 月28 日島根県で開催された全国医師会勤務 医部会連絡協議会で、行政の取り組みが非常に 良かった。地域医療を支える医師を「呼ぶ」 「育てる」「助ける」の3 つ柱で医師確保対策に 取り組んでいる事例が報告されたが、本県でも 同様な取り組みが出来ないか検討していくこと としているが。

大学医局制度の崩壊が地方医療の過疎化を招 いたと考えているが、大学医局制度の復活と新 臨床研修制度に関する日医の見解を伺いたい。

● 日医三上裕司常任理事から、新臨床研修制度 については、「2 年を1 年にする」案が出て、 中間のような形で決着している状態である が、基本的には大学医局の人材派遣機能があ る程度復活しない事には医師不足や医師の偏 在は是正することは出来ないと考えている。 また、本来は各都道府県に地域医療対策協議 会が設置され、その機関が人材の偏在や医師 の派遣等についても、調整する事になってい るが、インセンティブの問題等もあり、機能 しておらず強制力が持てない現状がある。今 後は、我々も出来る限り、大学医局の復権を 考えていかなければいけないと回答した。

最後に、宝住副会長から「今日の意見を踏ま えて日医執行部としても十分対応していきた い」と閉会の言葉があり終了した。

島根宣言

この度、政権交代が実現したが、新政権の今後の 医療福祉政策は未だ不明である。これまでの医療制 度改革により、地方では地域の基幹病院ですら医師 不足が進行し、勤務医に対する負担が増大し、地域 医療の崩壊が目前に迫っている。

従って、勤務医に対する施策が緊急に必要であり、 我々は次のことを宣言する。

一、今までの医療費抑制政策を転換し、医療福祉へ の予算の増額を行うことを求める。

一、OECD 平均水準になるまで医師の増員を行うこ とを求める。

一、これから増えてくる女性医師が働き続けられるよ うな支援体制の整備を求める。

一、勤務医の待遇改善をはかり、勤務医を増やすこ とによって、地域医療を存続させることを求める。

一、大学病院と地域医療を担う病院、診療所等が連 携し、良き地域医療医を育てる。

一、地域住民との充分な相互理解のもとに、安全で 安心な医療を提供する。

平成21 年11 月28 日

全国医師会勤務医部会連絡協議会・島根

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

平成21 年12 月4 日、日本医師会館において都道府県医師会勤務医担当理事連絡協議会が行わ れた。

唐澤会長が公務出張のため、竹嶋副会長による挨拶が行われた後、報告と「医療再生へ進むべき 道」をテーマに協議が行われた。

報告では、まず島根県医師会から11 月28 日に島根県で行われた「平成21 年度全国医師会勤務 医部会連絡協議会」の内容と「島根宣言」が報告された。

次に神奈川県医師から「宿日直勤務環境現状調査報告」がなされた。

詳細な内容は本文を参考にして頂きたい。30 代をピークに20 代と40 代が当直勤務の主たるメ ンバーであるが、60 代、70 代でも当直をしている現状である。

しかも、年齢分布をみると女性医師が20 代で32.8 %、30 代で16.8 %と高い比率を占めてい る。当直時間で一番多かったのが16 時間(40.9 %)、2 番目が24 時間(29.4 %)で、平均宿直 時間は23 時間23 分、最長64 時間にも及んでいる。

こうしてみると一般社会の宿直勤務の業務内容と医師の宿直勤務の業務内容には大きな隔たり があることは一目瞭然だ。とは云え、現在の医療環境と診療報酬では医師の宿直勤務が通常の業 務を行うことを前提にした診療形態でなければ、現在の医療を維持できないことも事実である。

勤務医のこうした過酷な実態を、医師会もアピールしなければならないが、新たに発足した政 権もこうした点に目配りが欲しいところである。

2 番目に山口県から夜間こども急病センターの一年間の実績が報告された。

徳山中央病院内に地域の「休日、夜間こども急病センター」を立ち上げ、地域の開業医や大学医 局、近隣の小児科医を擁する病院などの協力で運営を行い、入院の必要があれば徳山中央病院小 児科が引き受けるシステムとなっている。休日は9 〜 17 時、夜間は19 〜 22 時で、患者数は前年 度の2 倍となったが、連携がうまく運んだことで、病院側は病棟業務に専念でき、救急車対応に も余裕をもってあたれるとの報告であった。

コンビニ受診を促すのではないかと云う質問があったが、前後の入院率(重症度)が変わって ないので、その心配はないとの返事であった。

小児科医が偏在した所では参考になると思われた。

最後に福岡県から「研修医の医師会加入」について、特に県下4 大学にアプローチを行ったが、 理解はしてもらっても加入率の向上には至ってない現状が報告された。メリット、デメリット論 で加入を促すには限界があると思われる。

さて、協議事項では4 県から5 つ提案がなされた。

沖縄県から「病院勤務医の疲弊を解消できるのは診療所医師である」をテーマに下記の3 つの提 案がなされた。

1,疲弊の要因となっている時間外受診、救急をなくすような、日中でも診療所に受診できるよう な社会システムの構築。

2,日常診療をして救急当番をし、翌日勤務をする状況を打破するため、人的要因を多くそろえて 救急部門を独立させる。

3,地域連携をスムースにするためにはIT を使ったネットワークを確立することが大切である。

そのためにORCA のような日医標準システムの構築を求める。

しかしながら、協議のために残された時間はわずか15 分しかなく、他県の提案も読み上げるに とどまり、協議されたとは言い難く、問題提起にとどまった。