沖縄県医師会勤務医部会会長 城間 寛
平成21 年度全国医師会勤務医部会連絡協議 会(日医主催、島根県医師会担当)が、「今こ そ目指そう医療崩壊から医療再生へ」をメイン テーマに、去る11 月28 日(土)島根県松江市 で開催されたので、その概要を報告する。全国 から307 名の参加者があった。
開会式
佐藤充男島根県医師会副会長より開会の挨拶 があり、続いて、主催者を代表し唐澤人日本 医師会長から、「本協議会は、病院勤務医と診 療所医師の大同団結を目指し、病院勤務医の組 織・役割・生涯教育・機能分化、さらには過重 労働や女性医師の就労に関する諸問題など多岐 にわたる重要課題に取り組み、着実に成果を上 げてきた。また、近年では、埼玉宣言、沖縄宣 言、そして昨年度の千葉宣言といったメッセー ジが関係各方面にも発信され、本協議会が政府 に対して政策提言を行う際の大きな力になって いる。また、医療が直面している重大局面にお いては、それぞれの立場を超えて十分に議論を 重ね、互いに共通の認識を醸成し、医師会を中 心に一丸となって対処することが不可欠であ る」と述べた。
続いて、田代收島根県医師会長から、「本協 議会のメインテーマ『今こそ目指そう医療崩 壊から医療再生へ』は、今まで語り尽くされて きた勤務医の厳しい現状を踏まえ、勤務医にと って明るい光りの見える協議会とすべく企画し た。本協議会が、勤務医の明るい未来を示唆す ることのできる有益な協議会になることを期待 している」と挨拶した。
続いて、来賓祝辞として溝口善兵衛島根県知 事と松浦正敬松江市長より歓迎の挨拶があった。
特別講演
医療崩壊のあらましについては、「直接的要 因」として、医療費削減政策と医師数の絶対的不足であり、「間接的要因」として、1)平均在 院日数の短縮化、2)オーダリング入力等の周辺 業務、3)インフォームドコンセント等による診 療時間の増加、4)医療技術の高度・専門化等の 仕事量の増加である。また、最近では雇用・生 活環境の変化による受診抑制も要因の一つであ る。さらに「顕在化要因」としては、2004 年 に導入された新医師臨床研修制度(指導医の引 き上げ等)や女性医師の増加に対する労働環境 の未整備等が悪循環を生み、勤務医の負担増や 処遇の悪化に一層の拍車をかけ、結果として勤 務医の立ち去りや不足を招いた。
日本医師会が国民皆保険を守っていくために は、医師数増加に向けての前提条件として、1) 財源の確保、2)医学部教育から臨床研修制度 までの一貫した教育制度の確立、3)医師養成 数の継続的な見直し(遅くとも医師数が現状の 1.1 倍になる以前に抜本的な見直し)が必要で ある。
これから先、日本医師会は医療政策を作り提 言していく。実現のための戦略として、(1)診 療報酬の大幅かつ全体的な引き上げにより、地 域医療の崩壊を食い止める。とりわけ、勤務医 の過重労働緩和を最優先課題であると考えてい る。(2)患者一部負担割合を引き下げ、経済的 理由による受診抑制を起こさないことである。 身近な医療機関が健全に存続し、国民が経済的 負担を心配することなく、いつでも医療機関に かかれる社会に戻さなくてはならないと考えて いる。
また、次期診療報酬改定に向けては、病院勤 務医の負担軽減をはかるべく、「入院時医学管 理加算の算定要件」並びに「医師事務作業補助 体制加算の施設基準」を見直すべきであると考 えている。
医療訴訟問題については、大野病院の判決以 降、医療刑事事件は激減し、これに伴い、医療 過誤を理由とする行政処分数も激減しているも のの、いつまでもこの謙抑的な姿勢が続くとは 限らない。善意の医療提供者が不当に刑事罰を 受けないためにも、現場の医師の意見をより多 く取り入れるオープンな形で、医師の診療上の 医療安全、医療事故への適切な対応が行われる よう、公平で公正な調査委員会の設置と医療安 全を推進するシステム作りが必要だと認識して いる。
また、医師の団結のために取り組むべき課題 としては、(1)病院勤務医と診療所医師の接点 をそれぞれの医師会で強化し、勤務医の医師会 への参加を促すとともに、医療が直面している 共通の課題解決のために、協働して取り組める ようなフレキシブルな会務の運営に努める。ま た、日医の活動をより透明化し、すべての国民 に理解されるよう努力を継続する。(2)すべて の医師、とりわけ女性医師を含む病院勤務医の 労働環境の改善に最善の努力をはらい、働きや すい職場環境を構築するとともに、国民の医療 への信頼を確保する。
コンプライアンスについては、単なる法令遵 守ではなく、社会的要請に適応することである との観点から、組織に向けられた社会的要請 (sensitivity)にしなやかに鋭敏に反応し、目 的を実現していくことであり、人や組織が目的 実現に向けて協働関係(collaboration)を構 築していくことが必要である。加えて、組織内 で共通認識が生まれることが重要である。
また、コンプライアンスの具体的手法とし て、1)方針の明確化、2)組織の構築、3) 予防的コンプライアンス、4) 治療的コンプラ イアンス、5)環境整備コンプライアンスの5 つの要素がある。
その上で、複雑化、多様化する社会の要請に 応えていくためには、医師を始めとする専門職 が、共通の目標に向かい、コラボレーションす ることであり、それが大きな「チームの力」と なる。その「チームの力」によって、医療をめ ぐる危機的な状況を救うことに繋がる。
次期担当県挨拶 栃木県医師会長 島三喜
来年度の開催期日は、平成22 年10 月9 日 (土)宇都宮市内において開催するので多くの 先生方の参加をお待ちしている。
メインテーマは「地域医療再生、地域の力、 医師の団結」と題し、シンポジウムは(1)「医 療再生への新しい取り組み」、(2)「今勤務医に 求められる病診連携とは」としてディスカッシ ョンを行いたい。
報 告
本委員会の主な役割は、1)会長諮問事項につ いての討議と答申の作成、2)日医ニュース「勤 務医のページ」の企画編集、3)全国勤務医部会 連絡協議会への意見答申、4)都道府県医師会勤 務医部会連絡協議会の企画・立案、5)勤務医会 員数・勤務医部会設立状況等調査、6)勤務医 座談会の実施等である。
日本医師会の組織率の推移は、2000 年の 60.4 %を機に減少し、2008 年には57.9 %にな っている。
平成21 年8 月1 日現在における勤務医会員 数・勤務医部会設立状況調査では、全医師数は 27 万7,927 人、日医会員16 万5,622 人、うち 勤務医が7 万7,698 人(46.9 %)と前年と同じ 割合である。また、勤務医の医師会活動の参画 状況については、日医代議員数354 人の内、勤 務医が35 人(9.9 %)となり全体の約1 割にな った。都道府県医師会勤務医部会の設立状況に ついては、29 県で設立済、設置予定なしが17 県、設立予定が1 県であったが設置年度は未定 とのことである。
会長からの諮問は「医師不足、偏在の是正を 図るための方策−勤務医の労働環境(過重労 働)を改善するために−」なっており、答申の 骨格は1)医師数の問題、2)医師不足(現状、 原因、対策)、3)医師偏在(現状、原因、対 策)、4)勤務医の労働環境(過重労働の実態、 原因、改善等)、5)国民とともに考える視点か ら、6)社会保障の視座としており、これから 詰めの段階に入る。
団結しやすい求心力のある医師会にしていく ためには、「共生」が必要であり、互いに違いを 認め合い、危機意識を共有し、強く、固く、団 結し、医療の未来を切り拓くことが必要である。
また、社会も患者もすべて変化してきたが、 医師会だけがイノベーションをしなくても良い とは思っていない。何らかのチェンジが必要で あり、新しい価値観で組織を作るイノベーショ ンが必要である。
本年6 月より7 月にかけて、県内56 の病院 の勤務医に対してアンケート調査を行った。 1,223 名中、742 名の回答を得たが、有効回答 は726 名で、回答率(59.4 %)であった。
本調査は、これまで各県で継続して調査され てきた項目に加え、本県独自の項目を追加し、 島根県内の病院に勤務している勤務医の勤務状 況、労働環境などについて現状を伺った。
医療と教育は、日本の2 大基幹産業である。 しかし、その中心的存在である大学病院が、今 国の政策により崩壊の危機に瀕し、大学病院の 研修医離れが加速している。
22 年間病院長を務めた赤穂市民病院での、市 民参加型の写真展や演奏会を開いた経験を紹介 する。医療が立ち直るためには、市民との共生 が必要であり、開かれた病院づくりを目指さな ければない。良い医療を効率的に、地域住民と 共にの視点で、医療を行うことが必要である。
また、日医執行部への提言として、1)代議 員に勤務医シェアを反映、2)キャビネット制 の再考、3)会長任期を3 年又は4 年に(診療 報酬改定に必ずリンクすることは良くない)、 4)Skype-TV 会議-の導入(地方の意見を取り入れる)、5)医療政策への積極的参加(先義後 利)、6)自浄作用、7)開かれた医師会(会館 も含む)の7 項目を求める。
シンポジウム
シンポジウムでは、「勤務医をめぐる諸問題」 と題して(1)地域医療の立場から(2)医育機 関の立場から(3)女性医師の立場から(4)県 行政の立場からと各分野から発表が行われた。
勤務医が改善を求める主要課題として、1) 医療の進歩・社会の変化に対応した医療制度の 見直しとそれに伴う医師数増員と定員の見直 し、2)待遇改善とそのための診療報酬改善、 3)医療者・患者関係の改善(相互理解のため の説明努力。医療事故対応のコンセンサス作 り)と考えている。また、病院管理者がとった 勤務条件改善については、複数担当医制や医師 短時間労働勤務医制度の導入、子育て支援、専 門医資格を取得するための支援が必要である。
また、島根県西部の医師激減地域では、その 地域の医療機関が医師支援のために、診療及び 生活の条件を良くする努力を行いながら、地域 及び医療機関が医師を大切にしている。また、 医師も人口も減少する地域で、良い医師を確保 し、高い診療レベルを維持するためには、良い 勤務医を獲得しなければならない。
そのためには、大学の人事に依存するところ が大半であり、地域医療に理解のある医師を育 てることが肝要だと考えている。また、地域の 医療レベルを上げることも必要であり、研修や 学会に出席できる環境作りも工夫していく必要 がある。また、一人医長制や科長制も解消して いく必要がある。
平成16 年度に導入された新臨床研修制度に よって、大学への帰学率(H14 年73.3 %→ H19 年29.8 %)が激減している。地域に根ざした医 師の育成をめざし、平成18 年度から「地域枠 推薦入学制度(10 名以内)」を実施した。島根 県内の僻地出身で、県内の僻地医療に貢献した いという強い使命感を持った意欲ある学生を発 掘・選抜することを目的としている。そのため、 従来の推薦入学とは異なり、その強い意志を確 認するために試験前に僻地医療機関等での適正 評価を受けるとともに、出身地の市町村長等に よる面接評価を受けることとしている。
また、僻地医療人育成で最も成功している WWAMI プログラム(卒業生の61 %が各州に 残り地域医療に従事。また、卒業生のほぼ 50 %が職業としてプライマリケアを選択)を 参考に、1)地域に愛着・愛情のある者の発掘 と選抜、2)地域に密着した実践的な地域医療 教育、3)地域と大学・都市を結ぶ通信システ ムの構築が必要だと考えている。
さらに、平成20 年度より「大学病院連携型 高度医療人養成推進事業(文科省)」に選定さ れ、本大学・神戸大学・鳥取大学・兵庫医科大 学との4 大学連携よる「山陰と阪神を結ぶ医療 人養成プログラム(地域医療と高度先進医療の 融合による新たな教育システムの構築)」及び、 東京医科歯科大学・本大学・秋田大学の3 大学 が連携する「都会と地方の協調連携による高度 医療人養成プログラム」を開始し、地域医療を 発生・発展させる医育機関の取り組みが進行し つつある。
島根大学医学部附属病院の女性医師の割合 が、全国の勤務医の実態に比べ高い(全医師中 の女性割合が27%、研修医中女性割合は36%、医学科学生中の女子学生割合は40 〜 50 %で推 移)ことから、女性医師や看護師、女性職員が 働きやすい環境に努めるべく、平成19 年に大 学病院としては初めて、特定非営利活動法人 ejnet が行う「働きやすい病院評価」の認証を 取得した。さらに、平成19 年度に文部科学省 の新しいキャリア継続モデル事業として、「女 性医師・看護師の臨床現場定着および復帰支援 策−しなやかな女性医療職をめざして−」とい う企画がgoodpractice として採択された。主 な取り組みとしては、(1)女性スタッフ支援室 の開設、(2)キャリア教育・相談窓口事業、 (3)院内保育所と連携した育児支援事業、(4) スキルアップ・看護師復帰トレーニング支援事 業、(5)在宅学習・在宅就労支援事業、(6) 外部評価委員会の開催など、女性医師・看護師 における就業環境の改善、臨床現場への定着等 に向けて支援を行なっている。
離島、中山間地を有する島根県では、医師不 足や様々な診療科の医師不足が深刻さを増して きたことを背景に、2006 年県の組織として医 師確保対策室を設置し、現役の医師の招聘の強 化と、将来の地域医療を担う医師を育てるた め、これまで以上に大学と協力・連携する取り 組みを開始した。
本県では地域医療を支える医師を「呼ぶ」 「育てる」「助ける」を3 本柱に医師確保対策に 取り組んでいる。
「呼ぶ」では、インターネット等を利用した 募集広告や全国どこへでも出かけていく医師出 張面談、実際に家族とともに県内医療機関や住 環境等を視察してもらうツアーを実施してい る。過去3 年間で28 名の県外医師が着任して いる。
「育てる」では、県内地域勤務を返還免除条 件とした医学生(一部大学院生)向けの奨学金 を3 種類準備し、これまで92 名の方に借りて いただいている。5 年後には、このうち約80 名 が医師となる見込みであり、医師不足解消への 一助となるものと考えている。また、医学生及 び研修医の県内病院での研修促進の取り組みと して、地域医療実習や若手医師ステップアップ 研修等を島根大学と協力して実施している。高 校生への医学部進学の動機付けの取り組みとし ては、医療現場体験セミナー等も定期的に開催 している。
「助ける」では、僻地にある小病院や診療所 の医師の学会、研修、休暇などによる不在時 に、県立病院から医師を派遣する「代診医派遣 制度」を実施している。また、離島である隠岐 島を対象として、1996 年から県の防災ヘリコ プターに松江赤十字病院や県立中央病院の医師 が同乗し、隠岐島の救急患者を迎えに行く取り 組みを実施している。また、IT を活用した画 像診断システムも構築し、離島における医療の 質の向上に努めている。
医師確保対策により一定の成果は得られてい るものの、依然、医師不足が深刻な状況にある ことから、今年度から5 年間で実施される「地 域医療再生計画」を活用し、(1)医師確保対 策、(2)医療用ヘリコプター、(3)IT を活用 した地域医療の支援、(4)看護職員確保対策、 (5)がん予防・検診対策等を計画している。県 内の地域医療の充実に向けて、今後もたゆまぬ 努力を続けていきたいと述べた。
各分野からの発表の後、三上裕司日本医師会 常任理事よりコメントがあり、その後、行われ たディスカッションでは、医師不足における根 本的な問題や女性医師に関する問題等について 活発な質疑応答が行なわれた。
島根宣言採択
全国医師会勤務医部会連絡協議会の総意の 下、勤務医に対する施策を緊急に求めた「島根 宣言」が満場一致で採択された。
印象記
沖縄県医師会勤務医部会長
城間 寛平成21 年11 月28 日、島根県の松江市で全国医師会勤務医部会連絡協議会が開催され、参加し てきた。朝10 時から夕方6 時まで、みっちりスケジュールが組まれ、夜は懇親会の予定となって いた。スケジュールの内容は、毎年大体同じ体裁で、内容は、県ごとにその県の抱えている問題 をクローズアップするように形作られていた。全国共通の問題点と、島根県の問題、そしてその 解決策などである。今回の協議会の中で、全般的な印象として感じたことは、3 年前に埼玉県で開 かれた勤務医部会で病院勤務医の労働環境は大変厳しいと言うだけでなく、医療崩壊と呼ぶべき 段階まで来ている悲痛な叫びの様な印象があったのだが、今回の島根での協議会は、あまり切羽 詰った感じはなく、どちらかと言うと一部では改善の方向に向かっている様な印象さえ感じられ た。その様な印象を受けた島根での協議会のプログラムの中からいくつかの内容を紹介してみた いと思う。順番は前後するが、「勤務医をめぐる諸問題」としたシンポジウムでは、特に女性医師 の立場として、島根大学医学部放射線医学講座の内田伸恵先生が発表された女性勤務医の現状と 問題点、支援策など、島根大学での取り組みが紹介された。今後勤務医不足の解決のキーワード になるのではないかと思われるので、詳しく知りたい方は、島根大学医学部附属病院の『女性ス タッフ支援室』のホームページを参考にされたい。
また、今回興味を持って聞いたのは、郷原信郎先生の「社会が医療に求めるもの」というタイ トルの特別講演であった。郷原信郎先生の経歴を少し紹介すると、東京大学理学部を卒業後、三 井鉱山に入社するが1 年半で退社。1980 年、司法試験に合格。その後、検事に任官。「コンプラ イアンスとは、単なる法令遵守ではなく、社会的要請に適応することである」という「フルセッ ト・コンプライアンス論」を提唱している。桐蔭横浜大学コンプライアンス研究センター長のほ か、ビジネスコンプライアンス検定の監修者など、多くの役職に就任している。2006 年に検事退 官。弁護士登録。2009 年4 月には名城大学教授・コンプライアンス研究センター長就任。2009 年 10 月総務省顧問就任となっている。また著書には、『「法令遵守」が日本を滅ぼす』(新潮社〈新 潮新書〉、2007 年)。『社会が医療に求めるもの』(ロングフィールドジャパン、2008 年)『思考停 止社会〜「遵守」に蝕まれる日本』などがある。私も著書を全部読んだわけではないが、今後読 んでみたい。その様な事を参考に講演を解釈してみた。
以下は講演の内容になるわけだが、社会的要請と法令遵守とは時代によって変わって行き、特 に変化の激しい時代では問題が起こってくる。法令遵守していれば社会の役に立っていると考え るのは間違いであり、社会の要請に的確に応えるように組織が変化していくことが大事である。た とえば、昭和の初期頃まで、医者に診てもらえず死んでいくことも多い時代には、資格を持った 医師に診てもらうことがそのときの要望であった。しかし現在では、いろいろな面で、客観的に一 定以上のレベルの医療、あるいはさらに高度の医療が要求される。その医療に対する社会の要請 とは何か?
コンプライアンスとは、「組織に向けられた社会的要請にしなやかに鋭敏に反応し目的を実現し ていく事」と言える。すなわち1)社会的要請に対する鋭敏さであり、2)目的実現に向けての協働作業である。
それでは社会的要請にどのように適応していくかというと、5 つの要素に分けられる様である。 分かり易いように簡単に個条書きに整理してみると
- ア)方針の明確化---(その病院の社会的要請とは何か)
- イ)組織の構築----その実現のための組織体制
- ウ)予防的コンプライアンス-----たとえば勤務医の加重労働の回避
- エ)治療的コンプライアンス-----医療事故に関する情報提供(方法など)
- オ)環境整備コンプライアンス-----組織の機能を高める(=チーム力)
という様に理解される。結論から導き出せることは、今後はチーム医療が必要な時代であり、い ろんな事に対応できるチーム力を高めることが組織に求められている事だと考えられた。
ところで医療に対する社会の要請を的確に感じ取ることは、言うは易しだが、なかなか困難な ことでは無かろうか。それぞれの病院が、どういう理念でそれぞれの組織の方針を決めていくか、 根本的なところが問われていると思う。本土でよく報道される救急患者さんの受け入れ拒否(不 可能で断る場合も多く問題のある言葉)も、社会の要請からしたら絶対あってはならないことだ が、マスコミ報道されるように起こっていることである。沖縄県では幸いなことに、救急患者さん の受け入れ拒否という報道を目にしたことはない。社会の要望に応えた救急体制を維持してきた ことは誇れる事だと思う。しかし最近の新聞報道によると県立病院の現行維持が困難な状況と言 われている。その中で、沖縄の医療界がどの様に社会の要請に応えていくか現実に問われている 問題が目の前にある。