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平成21 年度(第24 回)九州学校検診協議会専門委員会・
九州各県医師会学校保健担当理事者会連絡会

理事 宮里 善次

去る11 月28 日(土)、福岡県にて標記会議 が開催されたので報告する。

T.平成21 年度(第24 回)九州学校検診協 議会専門委員会

心臓部門・腎臓部門・小児生活習慣病部門の 3 専門委員会別に分かれて意見交換を行った。 各部門の協議題は、心臓部門2 題、腎臓部門は 5 題、小児生活習慣病部門は2 題であった。

専門委員会別の協議終了後には、全体協議会 が開催され、各部門での協議内容について報告 がなされるとともに、次年度の開催について協 議された。協議の結果、次年度は、九州学校検 診協議会(幹事会)及び年次大会を平成22 年 8 月7 日(土)〜 8 月8 日(日)に、鹿児島県 において開催すること、九州学校検診協議会 (専門委員会)を平成22 年11 月27 日(土)に 福岡県にて開催することに決定した。

1)心臓部門

1)学校管理下でのAED の使用状況調査につ いて(鹿児島県)

AED は高校ではほとんど設置されつつあり、 中学校、小学校でも6 〜 8 割は設置されてい る。AED の果たしている役割は高いと思う。

来年度、九州各県でAED の使用調査を実施 することとした。どこを対象にするかというこ とを話し合ったが、各県教育委員会にお願いす るとともに、学校医部会がほとんどの県に設置 されているので、学校医部会にも調査を行うこ ととした。また、救急隊員のデータがあれば完 全になるので、各県で救急隊員のデータも調査 することになった。

2)本協議会における学校心臓病調査票及び 検診成績表(報告書)の内容・形式の整 理・統一化(福岡県)

腎臓部門においては、九州で統一したデータ が出つつあるが、心臓はまだそれがない。

福岡県から、調査票と検診成績表について、 各県のご意見を伺いながら、データを全県統一 できれば経済的にも良くなるのではないかとの 提案をいただいた。

各県に持ち帰り、出来るところから始めてい くことになった。

2)腎臓部門

1)九州学校検診協議会によるウェブ上での 学校検尿精密検査後の診断名登録につい て(福岡県)

学校検尿精密検査後の診断名をWEB 上に登 録するためのソフトの開発が行われ、ソフトの 使い勝手について各県事務担当者の会が14 時 から開かれた。その結果いくつかの改善点等が 示されている。それら改善点等の修正を行った 上で、22 年度からの検尿結果をWEB 上で登録 ができるということが報告され、そのように進 めていくことになった。

2)九州腎臓病検診マニュアルのシステム修 正について(宮崎県)

前年度に3 次検尿を受け決定診断を受けた子 供が、次年度に1 次、2 次で異常があった場合 に、前年度に診断を受けて治療ないし経過を見 ている子供の場合は、その年は精密検査を省い てはどうかとの提案であった。

これついては、各県で検尿のやり方が違うの で、大きなマニュアルやシステムの変更となる ため、1 年間各県で検討していただき、次年度 に再度このシステムの修正について検討を行う ことになった。

3)九州学校腎臓病検診マニュアル「保護者 向けのQ&A」について(鹿児島県)

当事案については昨年度提案され、幹事会で ご承認いただいている。今般、「保護者向けの Q&A」として11 項目のQ&A が出来た。各腎 臓専門員にこのQ&A が配布されており、各自 でもう少し確認していただいた上で、来年度の 幹事会でご協議いただき、来年度の九州学校検 尿マニュアルの改訂の時に、この保護者向けの Q&A も入れるということで作業を進めること になった。

また検診のQ&A や、マニュアルの中に診断 について箇所があり、それについての修正も行 うということと、検査の項目についても改訂を 行うということも入れ、これら3 つを含め来年 度の幹事会にて協議していただき、平成23 年 度からの検尿マニュアル第3 版にしたいという ことが決定した。

4)潜血、蛋白のカットオフ値(+)の採用 状況について(熊本県)

現在、九州学校検尿マニュアルでは、潜血、 蛋白ともにプラス値をもって陽性とするという ことで各県にお願いしているが、熊本県で調べ たところ、郡市医師会の60 %、実際の小学校、 中学校の生徒数の80 %の子供達は、潜血、蛋 白をワンプラスでカットオフ値が決められてい るが、残りの40 %の郡市医師会、20 %の子供 達は、プラスマイナスでとったりと様々な取り 方をしているという状況にあることが分かっ た。精密検査上の問題とも関わるため、各県の 状況を伺った。

各県においては、100 %プラス値をとってい るところもあるが、そうでないところもあった。

できるだけ、各県医師会からご指導いただ き、九州学校検尿マニュアルの陽性の潜血、蛋 白のカットオフ値をプラス異常にするというこ とで検尿を進められるようお願いしたいという ことに決まった。

5)腎臓手帳の改訂、活用の推進(福岡県)

日本学校保健会編の腎臓手帳第2 版の管理 指導表が古くなってきているので、これを改訂 してはどうかという問題と、手帳が実際に九州 各県で使われているのかどうかという提案があ った。

管理指導表は、学校側が医療の指導に当たる 際のマニュアル的なものなので、医療側がこれ に縛られるものではないことから、現時点にお いては、この管理指導表はそのままで良いので はないかということと、これを作ったのは日本 学校保健会であるため、改訂はなかなか難しい のではないかということが議論された。また、この管理指導表は、学校での運動の管理をどの ようにすればよいかということが主体的に示さ れているが、腎臓部門については、どのレベル での運動処方が良いのかという設定が未だされ ていないことからも、現時点ではこのままで良 いということになった。

次に、手帳を使用することは非常に良いとい うことが各県の意見であったが、必ずしも各県 で使用されている状態ではなく、今後、なるべ く使うようにご指導いただくことになった。

3)小児生活習慣病部門

1)現在行われている生活習慣病健診に関す る問題点と対応(佐賀県)

小児生活習慣病検診はそれぞれの地区でいろ いろな形で取り組まれているが、それを一般の 人にどのように示していくかということに関し ては、まだまだ問題となっており、各県におい ても引き続き一般の方への啓発活動等に取り組 んでいくことになった。

2)学校検尿尿糖陽性者の疾患分類と経年集 計及び事後措置の確立について(福岡県)

学校検尿の尿糖陽性者に関しては、それぞ れの県が陽性者の集計は可能だが、診断に関 してはやや疑問となる部分があるとの意見が示 された。しかし、腎臓検診はどんどん先に進ん でいるため、早急に検討を加え、来年度はもう 少しデータを出せるように努力していくことに なった。

U.九州各県医師会学校保健担当理事者会

協議を開催するに当たって、鹿児島県医師会 池田副会長より次のとおり挨拶があった。

「去った8 月、佐賀県で開催された第53 回 九州ブロック学校保健・学校医大会で、第54 回九州ブロック学校保健・学校医大会並びに平 成22 年度九州学校検診協議会を担当すること が決定した。来年の大会に向けて鋭意準備して いるところであり、本日、同大会等の開催要項 案を提出させていただくので、ご検討をお願い したい。また、現在子どもたちを中心に新型イ ンフルエンザが猛威を振るっており、学校での 対応が地域で問題になっているものと思われ る。ご協議をお願いしたい。」

「日本医師会学校保健委員会委員の大分県医 師会常任理事の藤本先生に、日医の協議内容に ついてご説明をお願いしている。初めての試み ではあるが、藤本先生には、ご多忙のところお 引き受けいただき感謝申しあげる。」

続いて、佐賀県医師会池田副会長より、「去 った8 月8 日〜 9 日に開催された第53 回九州ブ ロック学校保健・学校医大会並びに平成21 年 度九州学校検診協議会には多くの会員にご参加 いただき感謝申しあげる。」とお礼の言葉があ った。

鹿児島県池田副会長を座長として協議を開始 した。提案議題は2 点で、提案要旨・各県回答 の概要は次のとおり。

協 議

1.第54 回九州ブロック学校保健・学校医 大会並びに平成22 年度九州学校検診協議 会(年次大会)について(鹿児島県)

〔提案要旨〕

本県では、別紙開催要項(案)のとおり、標 記大会並びに協議会を企画している。内容につ いてご意見、ご要望等がございましたらご教示 いただきたい。

開催日は、平成22 年8 月7 日(土)〜 8 日 (日)、城山観光ホテルで開催する。メインテー マを「未来を担う子どもたちの心と体〜見つめ 直そう、もう一度〜」とした。参加費等は例年 通りである。また、日医生涯教育講座や専門分 科会の単位を取得する予定である。

午前中は、心臓部門・腎臓部門・小児生活習 慣病部門の3 部門の教育講演を行う。分科会 は、従来から実施している眼科部門と耳鼻咽喉 科部門に加え、運動器部門を新たに設けた。運 動器部門については、整形外科の先生方の協力 をいただくことにしている。また、宮崎県医師 会から「運動器検診をスムーズに行うための健 診体制のあり方について講演いただきたい」との提案があったので、ご意見も踏まえ検討して いきたい。午後は、「子どもたちの抱える心の 悩みと学校医の役割〜地域の関係機関との連携 について〜」をテーマにシンポジウムを行う。

〔各県回答〕

協議の結果、各県とも鹿児島県の提案に異議 なく承認された。

2.学校における新型インフルエンザ対策に ついて(鹿児島県)

〔提案要旨〕

学校を中心に感染が拡大している新型インフ ルエンザについて、出席停止や臨時休業(学級 閉鎖等)を行う際など、学校医には多くの相談 が寄せられていることと思う。

本会では、学校現場・教育委員会の考えと、 学校医の考えの整合性を取るため、学校医の判 断基準となるよう「鹿児島県医師会学校での新 型インフルエンザ対策」をまとめ、学校医に案 内している。各県で新型インフルエンザ対策を 纏めたもの、研修会等の実施(予定を含む)な ど、学校医向けの取組みがあればご教示いただ きたい。

また、都道府県の「臨時休業の基準や目安」 は、日医から平成21 年10 月16 日付・地145 で、文科省が取り纏めたもの(9 月18 日現在、 11 月変更あり)の情報提供があったが、その 後、各県で見直しがなされていれば併せてご協 議いただきたい。

〔各県回答〕

◇大分県

・大分県新型インフルエンザ対策専門会議で検 討している。

・季節性のインフルエンザは、2 割休みになる と学級閉鎖だが、新型については10 %休み で4 日間学級閉鎖と決定している。複数の学 級で学年閉鎖とし、複数の学年が閉鎖になっ たら学校閉鎖にすることにしている。

◇福岡県

・県に対策本部があり、医師会も参加している。

・教育現場を対象に学校での対応について研修 会を開催している。また、当会学校保健・学 校医大会においても、学校医・養護教諭向け に講演することにしている。

・同一学級で2 割程度の患者発生で学級閉鎖、 学級を超えて感染拡大の状況であったら、学 年閉鎖・学校閉鎖をする。

◇沖縄県

・既に第2 波が始まっている。

・第1 波が始まる前に県対策本部と話し合っ た。なんでもかんでも医師会に仕事が回って きそうな状況だったので、医師会の仕事とし てやるべきことを4 つ確認していただいた。 1)診断・治療・予防接種の医療提供体制の確 立、2)策定事業計画の見直し、3)院内感染を 防ぐ努力をする、4)外国人にサービスをしな い、の4 つである。

・今回の議題については、対策本部に一任し た。対策本部が教育現場に指示を出している が、現場では教育委員会によって対応が統一 されておらず、学校(校長)によって判断が 違っている。会員から医師会にクレームがき た中でも一番多かったのは、学校によって基 準が違うので困っているのとのことであっ た。また、治癒証明書をもらってくるように と指示する学校があり、現場がただでさえ忙 しいのにとのクレームもあったので、対策本 部に要望した。早速対策本部が教育委員会と 調整を持って、教育長に治癒証明書はいらな いように指導していただいた。マスコミでの 広報も行った。

・教育委員会では、県教育長から対策本部の通 達を見ていない校長もあると思われたので、 校長・教育委員会を集めて休校の基準を説明 し、納得していただいた。

◇長崎県

・新型について、県医療政策課を中心にして対 策している。

・6 月16 日最初の患者が発生、7 月23 日頃多 くの地域で多発した。その頃、PCR 検査確 定は30 例であった。7/24 からはクラスサー ベイランスが開始され、学校等で集団発生の場合、PCR で1 人確定したらA 型であれば みなし患者とした。

・学校では、A 型陽性の患者が出たら解熱後 48 時間まで出席停止にしている。15 %程度 が欠席になると学級閉鎖と部活の停止を行っ ている。複数学級の閉鎖で学年閉鎖、拡大し そうな状況があれば学校閉鎖を行う。

◇宮崎県

・県の対策本部と県医師会で、自宅療養期間に ついて協議を行った。その結果を受けて、県 対策室長から教育長に対し、自宅療養期間 は、「発症した日の翌日から7 日間又は解熱 後2 日間」とされているが、現場が混乱して いたので「・・・7 日間かつ解熱後2 日間」 とする旨、児童・生徒・保護者に周知するよ う指導していただいた。また、治癒証明書に ついても、今シーズンは医療機関では発行し ない旨周知をお願いした。おかげでだいぶ混 乱は治まった。

◇熊本県

・11/10 現在、休園・学校閉鎖等は205 件で ある。

・新型のウィルス排出パターンについても様々 な情報があり混乱している。また、学校現場 でも、度重なる学校閉鎖で授業時間が不足 し、現場は混乱が起きている。

・休業基準については、少し考え方が変わっ た。11/13 の通達でこれまで2 名以上10 % だったが、クラス内に2 名以上、その割合が 20 %程度になった時、ただし小1 〜 3 年は2 名以上かつ10 %、学年閉鎖や休校について も「複数学級・複数学年」とかではなく、 「学年全体に蔓延の恐れがある時」との文言 に変わった。休校についても同様である。

・医療関係者向けの研修会は3 回実施している が、学校医や学校関係者向けの研修会は実施 していない。

◇佐賀県

・医師会として学校医に対する特別な取り組み はしていない。

・県新型インフルエンザ対策推進会議で対応指 針を出しており、学校版として運用してい る。専門家会議には県医師会から感染症担当 理事等が出席して専門的なコメントを出して おり、臨時休業の目安を決めている。

・鹿児島県・大分県は学校医に対してすばらし い対応をされているので、参考にしてと組ん でいきたい。

◇座長

・各県の対応は少しずつ異なっているが、参考 にして来年に向けて統一できたらよい。

・現在ワクチンが大変に不足しており、集団接 種にならざるを得ないところも出ている。学 校・行政・医師会との連携がうまく行かない ところや、料金の徴収など国が投げっぱなし で地域は混乱している。来年に向けて集団接 種をどうしていくのか、対象者はどうするの か、今後問題になってくると考えている。

・集団接種をされている県があればご意見いた だきたい。鹿児島県は離島があり小児科医が 不在のところもあるので、一部、集団接種で きるよう調整を進めている。小児科は、ワク チン接種+患者の治療と厳しい状況にある。

◇宮崎県

集団接種をできるだけしていただきたいと依 頼している。ただし、小児科医には頼まないよ うにとの条件をつけている。もし、予約が重複 したとしても小児科が実施する分が減るので助 かるが、どのくらいうまくいくのかわからない。

◇福岡県

ワクチンの副反応に関して断片的に報道され ている。質問もたくさん来るが、私どもは厚労 省の国立病院の2 万人と一般医療機関100 万人 の副反応の調査結果で、季節性と新型は差がな い。福岡では、リスクの高い喘息のある子は接 種したほうがよいと勧めているが、各県で問題 となることがあったか。

◇鹿児島県

副反応は出ておらず、死亡に至った例はない。

◇大分県

ワクチン接種48 時間で70 歳の方が亡くなっ たが、主治医が因果関係はないと早めに表明したので、混乱はなく接種は進んでいる。

(3)その他

座長より「学校保健委員会は大事なポジショ ンにあると考えている。医師会の役割を原点に 戻って見直さなくてはならない。政権交代にな り足元がぐらぐらしている。そういう中で学校 保健・健診・予防接種等、医師会の役割を原点 に返って学術団体として考え直す必要があるの ではないか、そういう時期が来たと思う。そう いう意味では、学校保健や新型インフルエンザ についても医師会の役割は非常に大きいと考え ているので、ご指導をお願いしたい。」との提 案があった。

報 告

日本医師会学校保健委員会委員(大分県医師 会常任理事)の藤本保先生から、報告があった。

以下、報告の概要。

・昨年より九医連からご推薦いただいて委員に 選任された。これまでに7 回開催された。

・第1 回目は、学校保健法が学校保健安全法に 改正されたことについて、文科省より説明が あった。委員会では、その時々の学校保健に 関しての行政報告や中央情勢報告が行われて いる。

・会長からの諮問事項についても検討を行って いる。会長からの諮問は、「学校健康教育の 新しい展開」についてで、これまで検討・協 議を行ってきており、12 月に仕上げて翌年2 月開催の会議で最終の答申を決定する予定で ある。

・学校保健法は、法律名を「学校保健安全法」 に改称された。国・地方公共団体の責務、学 校の設置者の責務を明記している。

・学校給食法の一部改正も行われ、学校給食を 活用した食に関する指導の充実として、食育 の観点から学校給食の目標を改定、栄養教諭 による学校給食を活用した食に関する指導の 推進を行うことになっている。また、学校給 食の水準及び衛生管理を確保するための全国 基準の法制化が行われている。

・学校保健分野21 年度概算要求について

21 年度要求額は728,100 千円で、前年度 の予算396,393 千円に対し約2 倍になって いる。

新規の追加は、「学校環境衛生管理マニュ アルの作成・配布」と「保健主事の実務ハン ドブックの作成・配布」の2 件。

また、「子どもの健康を守る地域専門家総 合連携事業」もかなり増額している。「スク ールヘルスリーダー派遣事業」は、退職した 養護教諭を学校に派遣し、助言を行うもので あるが、昨年の倍額になっている。その他、 「薬物乱用防止教育推進事業」はほぼ倍額、 「心のケア対策推進事業」はほぼ同額に、「児 童生徒の心と体を守るための啓発教材の作成 (微増)、児童生徒の現代的健康課題への学校 における取組みに関する調査研究(約2 割 減)」「「性に関する教育」普及推進事業(ほ ぼ同額)」となっている。

・学校におけるアレルギー疾患に対する取組み について、文科省は、東部と西部に分けて講 習会を行っている。

・ガイドラインに関して、近畿医師会連合から 「アナフィラキシーの現場に居合わせた教職 員が、エピペンを自ら注射できない状況にあ る児童に代わって注射することは、医師法違 反にならない、医師法以外の刑事・民事の責 任についても人命救助の観点からやむを得ず 行った行為であると認められる場合には関係 法令の規定によりその責任が問われない」と の表現について、【1)判断の責任の所在も不 明であり、法的効力はないと思われるがどう か 2)エピペンを登校時に毎日持たせるこ と、また、学校で預かる場合の保管の問題、 紛失などの責任は学校に帰属するのか3)ア ナフィラキシーの現場に居合わせた教職員が 即座にアナフィラキシーかどうかの判断は非 常に難しい。エピペンの使用は、処方する医 師に対しても講習を義務づけており、医師が 直接患児や保護者に十分な説明をしていたとしてもとっさの使用は困難を極め、正確に使 用できるか疑問である。死亡した場合の責任 はどうなるのか、見解を教えていただきた い】との要望がある。

・これについて、日医の内田常任理事の回答 は、文科省・厚労省・法務省の見解を得て述 べている。「学校で使った場合、法的には担 保される問題ではない。エピペンの学校での 管理は問題ない。拒否した場合は責任を問わ れるだろう。学校がエピペンを常備してい て、現場の教職員が使用を躊躇した場合は責 任を問われるのかどうかは、Yes ・No は言 えない。アナフィラキシーかどうか判断でき ない。一時的な救命処置がなされたかが重要 である。ただし、充分わかっていてためらっ たら問題になる。」

・内田常任理事は、「日医として診断書料を設 定できないが、責任を伴うのでそれぞれの医 療機関で設定していただきたい」とした。委 員会でも無料という意見はあったが、反対の 意見が多く出された。

・「学校すこやかプラン」の充実のための予算 が査定されているが、事業仕分けによりどう なっているか把握していない。

・子どもの健康を守る地域専門家総合連携事業 の実績の報告書が出ている。

・諮問「学校健康教育の新しい展開」(答申骨 子案)について説明。

・新型インフルエンザに関する対応について は、文科省より、全ての疾患において、治癒 証明書はいらない旨、各県に通知してあると 説明があった。

<質疑>

Q.学校におけるアレルギー疾患に対するガイ ドラインはよくできていると思う。Q & A を 出す予定はあるか?(福岡県)

A.必ず出すことにしているが、まだ作業が終 わっていない。(藤本先生)

Q.心と体の健康アドバイザー事業は、これま で年2 回の予算があったが、今年から年1 回 になっている。しかし、概算要求では減って いないのでどうなっているのか(福岡県)

A.大分県では学校への派遣する専門医が対象 校が増えており、予算が増えた分反映されて いる。(藤本先生)

A.熊本県では、予算は同じ。回数は減ってい ないと思う。

A.鹿児島県では、前年とほぼ同一。モデル事 業に予算を少し取られたが、総額は変わって いない。

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

平成21 年11 月28 日、福岡県医師会館において「九州各県医師会学校保健担当理事者会」が開催 された。

例年通りに心臓部門、腎臓部門、生活習慣病部門に別れて専門医による協議が行われた。昨年 は心臓部門に参加させて頂いたが、今回は生活習慣病部門に参加した。

今回新たに「検尿で尿糖陽性患児の最終診断名はどうなっているのか」と云う提案事項がテーマ として取り上げられた。各県とも下記の1 〜 3 の事情により、詳細は把握してない現状である。

1,診断基準が一致していない

2,小児医が診察しているとは限らない

3,診断結果を報告する義務がない

沖縄県の場合は検査委託業者が4 社で、問い合わせれば尿糖陽性患児は把握可能である。また 幸いにも腎臓部門の検査結果だけは県教育委員会に報告されている。医療機関に学校での尿糖陽 性患児の結果をアンケートすれば最終診断名を把握するのは、現時点でも可能と思われると申し 上げた。

しかしながら、診断基準のところで正しい結果とは言い難いとの意見があった。

協議の結果、症例がそれほど多くはないので、今後各県とも詳細を把握する方向で活動するこ とになった。

担当理事者会議では鹿児島県から「新型インフルエンザ流行時の学級閉鎖の目安について」、学 校医として意見を求められた場合の対応が議題として提案された。

各県とも9 月18 日に文科省がまとめたものや、日本医師会が10 月16 日付で出されたものを使 用しており、特に問題はないが地域性を考慮して工夫を施しても良いとの意見が多数であった。

沖縄県の意見を聞かれたので、新型インフルエンザに関しては、感染症としての特性上医師会 に振られることが多いが、基本的に国が策定した対策ガイドラインでは、医師会側がしなければ ならない事は次の4 点である。

1,医療提供体制の確立

2,継続的事業策定

3,院内感染防止

4,診療にあたって外国人差別をしない

他は、学校でのインフルエンザ対策も含めて、本来は各県対策本部の仕事であり、医師会はア ドバイザーの立場にあり、学校医もその立場にあると申し上げた。

その上で学級閉鎖の目安は文科省や日本医師会を参考にしており、県庁ホームページに掲載し ている。また治癒証明書の必要がないことも掲載しており、県教育庁から学校管理者を集めて説 明会が行われたことを報告した。

沖縄県に比べると他県では対策本部の動きが十分ではなく、医師会や学校医が補足している印 象を受けた。