琉球大学医学部小児科
長崎 拓
寅年をキーワードにパソコンで少し調べる と、「寅年は西暦年を12 でわって6 余る年であ る」「寅年は戦争(1914 年 1950 年)と火山 噴火(1962 年 1986 年)が起こりやすい」 「寅年生まれは衣食住には不自由しないが、引 っ越しも多い云々」いろんなことが書いてあ る。その中に「寅年現象」という政治に関する 記載があった。寅年に行われる参議院選挙の投 票率が例年に比べ上昇する現象のことである。 命名は朝日新聞記者の石川真澄さんによるらし いが、具体的には以下のようである。「1947 年 に参議院選挙と統一地方選挙が同年に行われて 以降、4 年に1 回の統一地方選挙と3 年に1 回 の参議院選挙の最小公倍数である12 年毎に2つの選挙が同年に行われそれが寅年にあたる。 寅年の参議院選挙は翌年に統一地方選挙を控え ており、地方政治家たちは自分と距離が近い人 物が参議院議員になることができれば、来年の 統一地方選挙で自分たちが勝利しやすくなるた め、参議院選挙で力を入れて運動をするように なる。地方政治家たちが参議院選挙に力を入れ ることによって、参議院選挙の投票率が上昇す るとされる。」昨年夏の政権交代という歴史的 事実が記憶に新しいが、今みんなは新しい政権 に閉塞感漂う現状打開、オバマ大統領で言う 「Change」を期待している。今年の参議院選挙 の「寅年現象」がより顕著になると思われる。
さて私自身は2000 年(平成12 年)に琉球大 学を卒業し小児科医として今年で数え11 年目 にさしかかり、職場では一般的にいう中堅辺り に足を踏み入れようとしている。自身の卒業時 点の研修体制が不変であれば、後に続く後輩が 多少なりとも期待できていた(現状はとても寂 しい)。しかし平成14 年から導入された新研修 制度に飲み込まれ、その期待は裏切られ、現在 も所属組織においてキャリアは下から数えた方 が早い。絶えず新人が加わり成長を続ける組織 が懐かしくまた憧れにさえなっている。人間は 動物であり嫌なことから逃げるものだが、学生 が逃げる嫌な要因がおそらく大学には他の病院 に比較して多いのだろう。臨床・研究・教育の うち他の病院と異なる最大の特徴は研究の存在 だがそれが主要な原因だろうか?いやそうは思 わない。自身もそうであったが、卒業間もない 頃は一日でも早く多領域にわたる臨床能力の習 得が優先され正直研究は全く頭になかった。だ が当初の目標がある程度達成されると、疑問に 思うことへの明確な解を求める知的好奇心が芽 生えていることに気づく。卒業時点で明確な研 究目的を持って即座に研究開始ができる人はす ばらしいが少数派と思われる。初めから臨床・ 研究・教育に全力を挙げる必要に駆られること なく、時間経過のなかで順次可能な時期に挑戦 するくらいの気構えが大切だと思う。
昨年4 月から自身は琉球大学大学院医学研究 博士課程(社会人枠)に入学しているが、強い 希望というより先輩に勧められてといったほう が正直な所だ。その誘いに最終的に従ったのは 自身の中に知的好奇心の存在を自覚していたか らだ。その対象は「未熟児網膜症の発症機序」 である。当教室教授の専門領域が小児における 生活習慣病・肥満・高脂血症であり、興味ある テーマと癒合する形で「未熟児における体重変 化と網膜症の発症」が現在のテーマである。分 子生物学的知識や技術を持っておらず、専ら 日々の診療で得られる生体情報を研究材料とし た臨床研究である。昨日ある先輩と酒を飲みな がら近況について話をする機会があったが、 「夢を持ちそしてそれを語ること。夢に魅せら れて学生は動く」という話にヒントを見たよう な気がする。
火山噴火や戦争が起こりやすく、「寅年現象」 なる政治現象も見られる寅年。共通するのは蓄 積したエネルギーが一気に爆発することであ る。寅年生まれの自身も漫然とした閉塞感漂う 現状の変化につながる形でエネルギーを爆発さ せていきたいと思う。