北部地区医師会病院 仲村 究
新年明けましておめでとうございます。小生 の様な若輩者に新春干支随筆の執筆ご依頼が あり、大変驚いてしまいました。現在、北部地 区医師会病院にて呼吸器内科医として勤務さ せて頂いています。昨年は愛娘にも恵まれまし て、喜びとともに新しい年を迎えている所であ ります。
私は平成13 年に琉球大学医学部を卒業後、 同大学の感染病態制御学講座・分子病態感染 症学分野(旧内科学講座第一)へと入局し研修を開始しました。3 年目まで臨床研修をした 後に、4 年目より大学院へと進学しました。大 学院時代は、感染免疫系の研究分野を選択しま した。その動機としては医師になって3 年目に 経験させて頂いた初診のHIV の患者様の存在 が大きかったと思います。それまで免疫にはリ ンパ球が大事で、それがHIV 感染で破壊され ると免疫不全状態になってAIDS を発症する、 といった事は漠然とイメージ出来たのですが、 HIV 感染についての詳細な本を読んでいるとす ぐに、ヘルパーT 細胞や細胞性免疫不全など、 大学生時代に聞いて正直“それよく分からん な”と思って挫折した単語が、頻回に出てきま した。この程度の疾患への知識・理解度で将 来、抗生剤や抗ウイルス薬などが本当に処方で きるのだろうか、と不安に思いました。そこ で、大学院に入ると改めて免疫系の本を読んで いく事としました。血液検査でよく提出してい たCRP が、細菌感染においてオプソニン化や 補体の活性化を行う事を知った時などは一人で 感動していました。PCR 法の原理なども核酸 の模式図を絵に書いたりしながら、自分の中で 本当に理解できるまで7 日くらいかかったりし ていました。この理解のおそさには周りの先生 から笑われたりしましたが、現在臨床検査をオ ーダーする際に、どういった検査で、どの程度 の時間がかかり、どういった部分に偽陽性、偽 陰性が生じてくるという事がある程度予測出来 るようになり、大変良い経験が出来たと思って います。大学院の2 年生の時に研究上の都合も あり、東北大学大学院感染制御検査診断学分野 の賀来満夫教授の御教室へ2 年間国内留学を させて頂きました。そこでは以前に琉球大学内 科学講座第一の助教授であられました東北大学 医学部保健学科病原検査学分野の川上和義教 授のご指導の下、最終的にクリプトコッカス・ ネオフォルマンスという真菌と宿主との免疫反 応に関する論文で学位を頂きました。そして、 指導教官でありました藤田次郎教授のご推薦 を頂いて、第61 回日本呼吸器学会・日本結核 病学会・九州支部秋季学術講演会において奨励 賞を受賞させて頂きました。
現在の呼吸器内科医としての仕事を楽しみな がら行う事が出来るのは、大学院時代があった からだと思っています。何故こういった病態に なるのか、どう解決すれば最善がつくせるの か、といった事を思いながら仕事にあたる事が 少しずつ出来るようになってきたのではないか と思っています。今年は、疾患や病態への知識 と理解をさらに深め、一つ一つの症例について より細かな点にまで目を向ける事が出来る事を 目指しています。
プライベートな目標としましては、何か体を 動かす趣味を始める事が出来ればと考えていま す。元々どちらかといいますと出不精な性格も たたって運動不足が進行しておりまして、北部 地区医師会病院の階段を2 階から5 階まで歩い て昇るとやや息が上がる自分を反省し、鍛え直 したいと思っています。新年早々取り留めの無 い文章で大変恐縮ですが、これまでお世話にな りました先輩や同僚の先生方へ改めて感謝の念 を持ちつつ、年始のご挨拶とさせて頂きます。 本年度も何卒宜しくお願い申し上げます。