琉球大学附属病院放射線科 戸板 孝文
明けましておめでとうございます。
今年で私は48 才になります。このごろ確実 に肉体の老化を感じます。気がつくと字の細か い印刷物は手をのばして読んでいるし、反面、 学会場ではスライドの文字がまるで見えず、最 近は前方座席が指定席です。次男はまだ4 才、 仮面ライダーごっこはかなり堪えます。仕事と 育児の両立は大変です。休日は朝寝できずに起 きてしまいます。ますます人の名前が思い出せ ません。
ここに来て、自分が放射線治療を仕事として 選んだことを、つくづく正解であったと噛み締 めています。50 を目の前にした中年(初老?) が、年甲斐も無く毎日わくわくしながら充実感 を感じているのは、単に私が馬鹿なだけかもし れませんが、すごいことだと思いもします。厚 労省の研究班など中央の活動に参加する機会が とても増えました。そこで同じ世代の放射線治 療医が同じく「生き生きしている」のを見て苦 笑いをしてしまいます(皆も○○なのか)。
そもそも自分が放射線治療に興味を持った のは、「メジャー」の外科や内科の先生に上か ら目線で見られながらも(私が研修医当時の印 象です。今は全然違いますので誤解なきよう)、 こっちでもちゃんと完治してしまう患者さんが いる、面白さ(痛快さ)でした。しんどい思い をしなくても(自分も、患者さんも)、結果が 同じで良ければよし。もともとへそ曲がりの自 分にぴったりでした。ニッチ産業という言葉を 聞いたとき、ああ、今の自分はニッチなのだ、 と目からうろこでした。こんな自分が重宝され るのもニッチのおかげだと。人が少ないから競 争がないんでしょ、と陰口をたたく人もいるで しょうが、本人は十分に楽しく、またその結果 よい仕事ができて(?)社会貢献できて(??)、 患者さんにも満足してもらえるのであれば、大 成功だと思っています。ニッチ市場には、「だ れも気がつかなかったけど、実は市場規模はと てつもなく大きい」ものが潜在しているといい ます。放射線治療はまさにこのタイプのニッチ だと密かに確信しています。患者さんの高齢 化、情報の開示と啓蒙、治療技術の急激な進歩 とエビデンスの集積、形態と機能温存による高 いQOL、そして高いコストパフォーマンス (患者さんにも病院にも)、今後「メジャー」の 診療に化ける高い可能性を秘めています。
今後自分に与えられた大きな目標は、この放 射線治療の面白さを学生や研修医に伝え沖縄県 の放射線治療専門医を一人でも多く増やすこ と、そして更に良質な治療を患者さんに提供し ていくことだと、自分にいいきかせています。 これから還暦まで、ますます年甲斐もなく、仕 事馬鹿でばたばたやっていきたいと思います。 これからも引き続きのご指導をよろしくお願い 申し上げます。