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寅年に因んで

田中貴俊

南部徳洲会病院 田中 貴俊

「虎穴に入らずんば、虎子を得ず」生まれて 二度目の干支男となった年の正月に、今は亡き 祖父から贈られた名言です。失敗を恐れず困難 に立ち向かえ、とでも教えたかったのでしょう が、その後も時流に逆らう術を知らず、何度目 かの寅年を迎えます。

当時、実家の座敷には虎の掛け軸があり、目 玉が大きく光っていて、夕暮れ時に見ると恐怖 を覚えていました。もし、出てきたら?一休さ んだったら?等と寅年生まれの性格としては、 大変小心者でした。今なら勇気を出して、その 掛け軸を「何でも鑑定団」に出品することだろ うと思います。

「虎は死して皮を留め、人は死して名を残 す」寅年生まれで、歴史に名を残す人物を探し てみると、西洋ではコロンブス、マルコポーロ といった冒険家達が見つかります。そして日本 には、戦国の世に終止符を打った徳川家康がい ます。また、情熱の歌人と呼ばれた与謝野晶子 もあげることができます。さらに、まだ亡くな ってはいませんが、ビートたけしも寅年生まれ だそうです。

「フーテンの寅」こと車寅次郎を演じた渥美 清は、寅年生まれではありません。「男はつら いよ」最終作の舞台となった奄美大島へは、診 療応援に行っていたことがあります。いつも利 用していたビジネスホテルには、山田洋次監督 の写真が飾ってありました。個人的には、寅さ んよりもマドンナ役の女優さんの方が好きでし た。全四十八作中で最もマドンナ役が多かった のは、浅丘ルリ子です。旅回りのキャバレー歌 手という役柄で、沖縄が舞台となった第二十五 作も、そして最終作も彼女がマドンナでした。

「白虎」中国では、四神の一つです。四神と は中国神話に登場する、世界の四方向を守る聖 獣のことです。東の青龍、西の白虎、南の朱 雀、そして北の玄武がそれにあたります。そう いえば、日本史の時間に平安京は、風水師の助 言を受け、前述の四神が揃う土地に決めた、と 習った記憶があります。もっとも、最近は白虎 といえば、動物園で人気のホワイトタイガーで しょう。私の実家がある福岡県の動物園でも、 見ることができます。百獣の王ライオンほどの 力はなく、チータほどの俊足もなく、ヒョウの ように木登りもできない、何となく控えのピッ チャー的存在であった虎ですが、今や人気急上 昇中です。

「白虎加人参湯」昨年十一月には沖縄で、日 本小児東洋医学会が開催されました。沖縄では 漢方講演会・懇話会が定期的に行われているの で、可能な限り参加させていただいています。 インフルエンザに麻黄湯程度の知識しかありま せんでしたが、他に大青竜湯や、柴葛解肌湯な どの処方も知ることができ、多くの収穫を得ま した。ちなみに、白虎加人参湯の構成生薬は、 石膏、知母といった強力な静熱剤と硬米、人 参、甘草といった滋潤剤からなっており、「乾 いて熱」を目標の証とし、口渇や身体灼熱感に 使用するそうです。

「張り子の虎」で終わらないような一年にし たいと願っています。当たるも八卦当たらぬも 八卦の占い本を、本屋さんで立ち読みしまし た。それもよく読まれている十二星座占い、血 液型占い、タロット占いではなく、干支占いで す。それによると今年の寅年生まれの運勢は、 大胆な反面、運任せのところがあり五分五分、 だそうです。

やっぱり強面で、威風堂々としているように 見える虎も、所詮はネコ科の動物なので、基本 的には臆病なのかもしれません。お酒が入る と、「大虎になる」人は少なくないようですが、 ここはやはり、正真正銘の虎になりたいと年の 初めに思う私でした。最後になりましたが、医 師会会員の皆様のご健康と、ますますのご発展 を祈念しつつ、ペンを置かせていただきます。