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英語を考えてみませんか?

小嶺幸弘

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
神経内科 小嶺 幸弘

業績をめざすだけでなく「無事これ名馬な り」も判る年になりました。課題は当科医師の 増員と病院全体で退院要約の質向上と思います が、以下の話の方が面白いと思いますのでしば しお付き合い願います。

我が子が某中学に入りました。これには楽し く勉強させてくれたH 塾の先生方の力が大きい ですが、そこを見つけた家内やその友人のおか げでもあります(そのせいか「岡山は東京から 行くのか」と聞いていた家内が強くなりまし た)。英語の参考書を買ってあげようと書店に 行くと良いものがなく、東京などの大書店でも ありませんでした。This is a pen.の私の頃よ り教科書は良くなっていますが、文法を小出し にすると指導要領のように3 年かかりまとまり に欠けます。一方、従来の文法参考書は初心者 が1 ページから勉強できません。名詞・冠詞ま でなら簡単ですが、初めの例文でさえ代名詞・ be 動詞・文型を含んでいます。5 文型紹介の例 文に過去形が顔を出しかねません。「未知の文 法事項を含まない例文と章立て」が可能か、無 ければ作ろうと考えたのが2006 年3 月でした。

工夫してプリントを作り4 〜 9 月で我が子に させました。進学校で2 年を待たず追い越され ましたが、説明に無理が無いことは確認できま した。「神経診察ビジュアルテキスト」を2002 年に医学書院から出版できた勢いで、共著者を 求めましたが体調などで断られ足踏みしていま す。専門家であるほど難しさを知るせいか、沖 縄には文法系参考書を書く人はいないようです。 ある副校長の力添えもあり、高校参考書で有名 なK 書店の担当者からは「力作ですね。」と言 われましたが、ある社は売れている従来の本を 否定するので系列になじまないと言い、ある社は指導要領が改訂期にあり参考書はそれに合わ せるつもりとのこと。ある厚い英文法書の序文 に、「いまどきの学生は文法を読まないから」と 出版社から断られ続け自費出版になったとのこ と。K 書店も解説を多く求め、本書の良い例文 があれば説明は最少でと違いがありました。

ただでさえ落ちこぼれがいるのに、半年や1 年でできるはずがないと思う人は多いでしょ う。しかし、教師の意見*に、「入門期からや さしいが内容に乏しい英文に慣らされた生徒 は、1 年も終わりごろになると、英語を通して 内容に興味を示すことがしだいに薄らいでい く。英語を読んで未知の情報、知識に触れる喜 びがなくて(略)」とあります。3 年でやっと関 係代名詞では面白い話ができるはずありませ ん。また、ある塾のホームページに「英文法が 理解できない生徒などいません。英文法ができ ないのは、新しい文法を習うたびに前に習った 文法を忘れていくから(要旨)」とあります。 難しいのは間延びしすぎるのも要因です。ある 教室ホームページに、「生徒の年齢に合った内 容の文章を読み書きするに必要な文法にたどり 着くまでに3 年かかるので初めのころ英語が退 屈。5 ヶ月という短期間で少数の英単語を用い て中学英文法の概要は身につけられます(要 旨)」と言っています。いちいち辞典を引かな くてすむ整理された教材を与えれば基本英文法 はわけありません。

この作成と同時に県立病院勤務になったので 暇はなく、年のせいか夜半に目覚める時間や歩 きながら資料を見ています(後者は前頭葉賦活 のためかとても良い)。google で例文を検索し、 米国人の義兄のチェックを受け、オーディオ CD ではだめなので2010 年に広がりが予想さ れるandroid 携帯に乗せようと勉強中です。幸 運の女神が、専門家だけでなく、内・外の無理 解(内の前に家をつけたい気分)に耐えて、捕 らわれのない目で見る凡夫にも微笑むと信じて います。本書が出版されると英語教育を揺るが すでしょうが、貴重な紙面をつかわせてもらっ て、ここで言いたいのは私が本を書いているということでなく、読者や知人の子達が非効率な 英語教育を受けていませんかということです。 共著者をお願いできそうな知人がいれば紹介い ただけると幸いです。

*下村勇三郎、英語教育 生徒との巡り合い、 東京書籍、1998