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還暦にあたり

安座間聰

いずみクリニック 安座間 聰

新年おめでとうございます。

これまで自分の干支だからといって特別に考 えたことはありませんでしたし、「還暦」とい っても昔のように祝う程のことは無いと思うの ですが、この度、機会を頂きましたので、一寸 だけ現状を見詰め、一寸だけ今後の抱負を述べ させていただきます。

私は医学部卒業後1 年間のローテート研修・ 1 年間の内科研修の後、27 年間消化器内科なかでも消化管診断学を専攻し、しかも後半の15 年間は専ら人間ドックと健診業務に従事して、 一般臨床からは離れておりました。

平成16 年に現在のクリニックに来てから、 外来患者さんは高血圧症の方がほとんどで、他 は糖尿病・脂質異常症・高尿酸血症・気管支 喘息の方や、感冒・下痢などの急性疾患の患者 さんです。久しぶりの臨床、しかも以前の専攻 とは畑違いの疾患ばかりで、研修医に戻ったよ うな緊張を感じながら、いつも手元に「今日の 治療指針」や「今日の治療薬」などを置いて診 療しています。現在は主要疾患に関してはガイ ドラインが作られているので助かりますが、 個々の患者さんの治療は必ずしもスムーズには 進みません。

ここで症例を2 例提示します。一例目は70 歳台前半の糖尿病の男性。経口薬でヘモグロビ ンA1c が一旦6.5 まで下がったものの、その後9 に上昇。インスリン導入も考えながら、再度生 活指導を強めましたが、受診の都度体調を尋ね ても「自分は病気とは思っていない」との返事ば かりで、自分の病気を理解してもらえません。 どうしたらいいものかと思案に暮れながらも毎 回しつこく指導して、最近やっとHbA1cが7.5 未満に下がってきています。この方は、飲酒の 問題で心療内科通院中であり、理解力の低下が あるため、これからも治療に難渋しそうです。

二例目は60 歳過ぎの糖尿病の女性。数年前 他院で治療を受けていましたが、採血恐怖と経 済的理由から中断。その後不安障害のため当院 心療内科に通院していますが、ヘモグロビン A1cが11 に上昇していたため当科に紹介されま した。治療と採血の必要性を説明して経口薬を 開始し、HbA1cは8.0 あたりまで下がってきて います。血圧と脂質も薬物治療の必要なレベル ですが、やはり経済的理由から薬が増えること に強く抵抗するため、降圧剤を処方するまでに 3 〜 4 ヶ月の説明・説得を要しました。次はス タチンの処方です。この方は精神面での問題が あるため、“脅し”をかけるわけにもいかず、 苦労します。また治療にあたり、経済的負担を軽くする方法がないかを考えることも必要と感 じています。

クリニックでの診療のほかに、養護および特 養老人ホームの嘱託医をしていますが、そこで 最近特に感じるのは胃瘻の増加で、ホーム入所 者140 人の一割強の方が胃瘻となっておりま す。誤嚥性肺炎を頻繁に起こす方には造設せざ るを得ないと思うのですが、口腔ケアなどでも う少し機能を維持できないものでしょうか?

また、一昨年から小学校の学校医をやらせて 頂いております。低身長にどう対応するか、検 診で脊柱側弯をどう診断するか、など一から勉 強し直しています。

取留めの無い内容になりましたが、還暦に達 した今、あと十年は現役を続けたいと思ってい ます。これからも皆様方にはいろいろお世話に なると思いますので、よろしくお願い申し上げ ます。