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期待せざれば失望なし

宮良長和

宮良眼科医院 宮良 長和

文明の飛躍的進歩にも拘わらず、この世界の 現状はどうか。最近はインフルエンザで大騒ぎ している。いくらそれから逃げ回った処で逃げ おおせる訳には行くまい。石垣では感染防止の 為にラジオ体操禁止まであった。早寝早起きラ ジオ体操で身体を鍛えようとは考えずにウイル スから逃げ回る事ばかり考えている。大騒ぎし なければならないのは人間がそれだけ弱くなっ たからである。物質文明の発達で身体を動かす 事を忘れ、更に不自然な食品、公害、排気ガス 等で肉体がぼろぼろになってしまったからだろ う。外敵に対して弱くなっただけではない、糖 尿病が予備軍を含めると何千万にも達するとの 事。もう滅びるのではないか。

少し暑ければ冷房、寒ければ暖房。それほど 暑くもないそれに日向でもない、涼しい部屋の 中に居ながら、冷房を入れてくれと請求する患 者もいる。誰がそんな事を言っているか、先ず 行って顔を見てから入れると、放置しておく場 合もある。

テレビは点けっぱなし。昔テレビが出始めた 頃大宅壮一が、これで一億総白痴になると言っ たが、そろそろそうなりかけているのではない か。小学生の孫はインフルエンザで学校を休み 頭が痛いと横になって居ながら横目ではテレビ を見ている。大体親も傍で一緒に見ているのだ から祖父の出番はない。

巷には不健康な飲み物食べ物何でも売ってい る。買い物、出勤には車、畑は耕耘機、草は草 刈り機。それもこれも大量生産大量販売大量消 費の資本主義経済が元凶である。そうかと言っ て社会主義がいいと言っているのではない。尚 悪い。道路の清掃は市役所がするもの、自分の 家の前のゴミさえ拾わない。何でも機械に頼 る。手足を動かすだけ損だと思っている。

若者は1 人残らず携帯を持っている。殆ど中 毒と言っていい。一刻もそれなしでは居れない 様である。将来電磁波による脳障害が出るので はないか。家では待合室しか知らないが、旅行 すれば電車の中その他の場所でもそれを見なが ら盛んに指を動かしている。

うちの診察室には携帯はご遠慮下さいとは書 いてない。呼び出し音を聞いたら教養の程度が 解るし、話している内容にも興味のない事はな いからである。診察の途中で話す者もいるが自 由に話させて置く。外に出ないから社会見学の一端である。

その上人間はいろいろな物を作り出す。小は 生活用品、デジカメから大は航空機、ロケット まで。ロケットを打ち上げ、宇宙を開発して一 体それが人間の幸せにどの様に役に立つと言う のか。これこそ資源の浪費、地球の終末を速め るだけではないか。それを又各国が競争する。 全く限りがない。

目を世界に転ずれば中国などは広すぎて持て 余しているから10 幾つかの州に分けてそれぞ れ独立させればうまく行く筈だのに、それどこ ろか更に周辺のチベットやウイグルまでも併合 しようと躍起である。チベットは資源が豊富な 由、それならちゃんとした貿易で買えばいいの ではないか。ただで手に入れようとするからそ うなる。一体どれだけ拡げたら満足するのだろ う。今や中国は全世界を傘下に置く事を夢見て いる由。日本の攻略計画などはほんのその前哨 戦と考えているとの事。最近の国を挙げての反 日政策も、国民をその目的に向かって一致団結 させる為の手段であるらしい。ロシアも同じ。

一党独裁と彼等の権力を守る為に民主主義を 踏みにじる国家に愛想を尽かして、最近中国か ら日本に帰化した石・平さんが言っている。

動物は腹一杯にさえなれば争わない。それに 反して人間の欲望には限りがない。人類はその 強欲故にそのうち自滅するだろう。老子はいみ じくも数千年の昔、小国寡民を唱え文明から隔 離された小さな村に住むのが人間にとって一番 幸せであると喝破した。この馬鹿馬鹿しい汎世 界的資本主義の文明を捨てて各国が昔のように 自給自足の農耕社会に戻ればいい。そうすれば ウォール街の拝金亡者達と関わり合わないでも 生きられる。

もはや人類の未来に期待するものは何もな い。そうかと言って鬱鬱と日を過ごしている訳 ではない。凡てを諦めれば後は光風霽月、安ら ぎの世界が拡がっている。残された余命を自分 なりに生きるだけである。

「幸いなるかな期待せざる者、そは裏切られ る事なければなり」