稲福 全三
「寅」は百獣の王ライオンと並んで強い動物 です。今年は寅年にあたりますのでその強さに 肖って、プライマリケア医のスキルアップに努 めたいと思います。先人達の言によりますと
1)病気があって医学が生まれ、病人の為に医 療がある、病人がいて医師がいる決してその 逆であってはならない。医療は公共性の高い 仕事であり、医療資源は公共の資源である、 公平に、適正に、人、金を配置すべきであ る。(大島伸一先生)
2)病人を生物学的に診るだけでなく、社会生 活をしている人間として診る「人間の医学」 を育て、病人を全人的、総合的に診ることはプライマリケアの基本であリ、大きい柱であ る、医療のための学会、病人と人間の安全の ための学会であるべきである(永井友三郎先 生)
3)「プライマリケア医の課題」として、1.日常 病の診療、2.医療相談、紹介、連携、3.専門 医療の補完、4.在宅重視の高齢者、障害者の 地域ケア(在宅医療)、5.地域作りを基盤と した予防活動等があげられます。(前沢政次 先生)
4)医学の進歩は、1.予防医学、2.治療医学、 3.延命医学の三つに分類される。1 がかなえ られなくとも、2 の治療医学で人の健康を元 に戻すことはしばしばである。しかし成人病 の多くは治癒は望めなくとも、悪化をおくら せ、延命処置で死期を先に追いやることは可 能であることが多い。血液透析、心臓ペース メーカー、臓器移植などはその最たるもので ある、今までの医学は人間全体の命よりも体 の病気を中心に扱い、病んでいても、生きて いる間の命の質又は生活の質をできる限り豊 かにすることを考えなかった。この「QOL」 を高める第四の医学がやっと今日出現してき たのである。(日野原重明先生)
上記の1)、2)、3)、4)の先人達の言を踏ま えながら地域住民の保健、医療、福祉に関わる 総合的なニーズに答えられる様にプライマリケ アのスキルアップに努め、且つ専門医に送るべ き適切な臨床判断ができる能力を涵養し、紹介 のタイミングを的確に判断できるようにトレー ニングする、下記の七つのカテゴリー、1.医療 専門職としての使命、2.全人的視点、3.医療の 制度、管理、4.予防、保健、5.地域医療、福 祉、6.臨床問題への対応、7.継続的ケア、以上 のカテゴリーを講義、実習を通じてマスターす る必要があります。プライマリケア医の資質向 上のため沖縄県プライマリケア研究会を発足さ せ、90 名余の先生方が入会され、去年の8 月 8 日に県医師会会館で創立総会が行われまし た。未入会の先生方には是非ご入会頂き、共に 切磋琢磨してプライマリケアの臨床能力の向上 に努めて頂きたいと思います。
沖縄県プライマリケア研究会と日本プライマ リケア学会九州支部が共同主催で、今年の2 月 13 日、14 日の二日間に亘って、第5 回日本プ ライマリケア学会九州支部総会・講習会が県医 師会館で開催されます。
多くの先生方のご参加を歓迎申し上げます。 これを契機に、デモクラシーに徹して議論し、 地域住民に売れる医療を準備し、提供すれば、 患者は安心、安全の医療が受けられ、納得し、 「有難う」と感謝される状況がかもし出されま す。その結果として障害のない高齢社会が構築 され且つ沖縄県が世界一長寿地域が維持できれ ば、沖縄から世界へ、核のない平和宣言のエー ルが送れる今年の初夢が現実のものとなるよう に頑張りたいと思います。一羽の蝶の羽ばたき のエネルギーは微少で微風であるがそれが共振 し合って次から次へと渦を巻き起こし予期して なかった大きなハリケーン並みのエネルギーに 成長する、プライマリケアの必要性に気がつ き、行動し、共鳴、誘発、爆発への良循環の元 にプライマリケアのスキルアップにつとめまし ょう。