専門職能団体としての社会的 役割を果たすために、看護職 自身が明るく元気にそれぞれ の職場で、やりがいを持って 業務が遂行出来るようにした いと考えています。
Q1.昨年6 月に看護協会長に就任されまして 早7 ケ月になるかと存じますが、ご感想と今 後の抱負をお聞かせください。
先輩達が築きあげてきた、沖縄県看護協会の 58 年間の歴史と7,677 名の会員の限りない可 能性を信じて、看護職能団体としての発展と使 命を果たすために、会長に就任いたしました。
予想以上の過密な会長スケジュールを精力的 にこなすため、日々奔走しています。組織を代 表する者の一言の重みと、決裁する文書の押印 責任の重大さを実感しています。私の課題は以 下の4 つです。
1)看護職のワークライフバランスの実現、2) 看護の質向上のための継続教育プログラムの充 実、3)新看護研修センターの建設に向けた計画 的な取り組み、4)新公益法人化への移行を見据 え組織の強化と事業の再編等です。
Q2.貴会は看護師、准看護師、保健師、助産 師で構成されていると思いますが、それぞ れの会員数と各職能の活動内容についてお 聞かせ下さい。
会員の活動理念は、「創造的に行動し、責務 を果たし、共に生きる」です。
会員総数は、7,677 名で、その内訳は、看護 師6,191 名、准看護師880 名、保健師249 名、 助産師357 名です。
それぞれの職能の活動内容については、
1)看護師職能(准看護師を含む)は、@中堅 看護師の離職防止の支援と定着促進、A准看 護師の進学サポートです。
その背景には、看護現場で働いている看護 師のメンタルヘルスについての調査結果で は、中堅看護師がメンタルヘルスの問題を抱 えて、疲弊して離職している。また准看護師 の進学サポートについては、正看護師になる ための通信制や進学課程は、県内に養成校が ないため、県外の学校について情報提供をし ており、年間約50 名の准看護師が県外の通 信教育を受けている。
2)保健師職能は生活習慣病予防を目指した効 果的な保健指導の拡充、保健師の活動基盤に 関する実態調査、保健師のコアの継承活動、 昨年作成した事例集をもとに保健師の専門性 を後輩に伝えながら、現任教育のあり方を模 索しつつ、職能団体に帰属する意義を交流会 を通して伝えている。
3)助産師職能は、地域の周産期医療体制の危 機が叫ばれている中、より専門的で自律した 役割を担い、安全安心な出産環境を地域住民 に提供していくため、助産師外来や院内助産 システム普及促進活動・「国際助産師の日」記念事業(イベント)の実施・又中高生を対 象に、性の健康教育の出前授業等を積極的に 実施している。
平成21 年は、看護職にとって60 年ぶりの 保健師・助産師・看護師法の一部改正と看護 師等の人材確保の促進に関する法律の一部改 正が行われた記念すべき年になりました。
Q3.貴会の会館を新しく建設するとお聞きし ておりますが、その進捗状況についてお話 できる範囲でお聞かせ下さい。
沖縄県看護協会の将来構想は、協会組織及び 事業拡大等に伴う施設の狭隘から、看護職の資 質向上のため県内唯一の卒後研修機関として拡 充する。近未来に県医療福祉ゾーンに「新看護 研修センター」を新築し、活動拠点を現在地か ら移転いたします。恒久的な活動基盤の整備を 計るために、平成19 年より将来構想委員会を 立ち上げ、前期計画(平成22 年土地購入)と 後期計画(平成26 年建物の竣工)に分けて、 活動を開始し資金造成を計っています。前期計 画である土地の購入は、会員1 人々の協力負担 金をお願いして、去った10 月22 日に登記を完 了することが出来ました。先輩諸姉の後輩に対 する熱い期待と後輩の皆様の夢が実現しつつあ り、感謝しています。
基本構想では、看護協会の社会的使命を果た すための建物として、コンセプトは、1)看護専 門職としての自己啓発と能力拡大を支援する生 涯教育を推進する。2)看護協会の事業運営が効 率的に出来る。3)看護のネットワークの推進。 4)他機関との連携が計れる。5)県民に開かれた 施設。5)省エネ、エコ、癒しに配慮等が検討さ れており、次年度の基本設計に繋げたいと考え ています。
Q4.沖縄県看護協会として、現在特に力を入 れている取り組み等がありましたら教えて 下さい。
1)看護職の働きやすい職場環境.労働環境の改 善に向けた取り組みの第一段階として会員を 対象に時間外勤務の実態調査を11 月に実施 しました。現在は集計・分析作業に入ってい ます。来年早々には、結果が報告出来るもの と思います。その結果を活用し、改善に繋げ たいと考えています。
2)看護の質向上を目的とする研修事業です。新 人研修やリーダーの養成研修等を含めて年間 40 コースの研修を企画実施しています。会 員だけでなく、非会員にも参加をして貰って おり、各コースとも定員を上回り年間約 5,000 名の看護職が受講しています
3)組織強化への取り組みです。現在、組織率が 50 %ですので、5 年間で65 %を目途に特別 委員会を立ち上げて、会員増に向けた活動を 展開しています。
4)新看護研修センター建設の推進では、建設委 員会を中心に、アンケート調査による会員か ら意見の収集をし、基本構想へ反映させると 同時に、現在、協会が実施している事業の評 価と今後の方向性についても、議論を深めて います。
5)新公益法人化に向けた取り組みとして、平成 23 年度の申請を目標に事業の再点検と公益 性のある事業の拡大を模索しています。
Q5.病院現場における深刻な看護師不足が恒 常化していますが、看護師の離職対策や潜 在看護師の再就職にどのような取り組みを なされているのでしょうか。
2008 年に日本看護協会が実施した離職状況 の調査によると、沖縄県は常勤看護職の離職率 は15.3 %(全国平均12.6 %)、新人看護師の 離職率15.1 %(全国平均9.2 %)と東京・大阪 に継ぎ全国平均を上回っている。
沖縄県ナースセンターが実施した調査では、 20 代・30 代の離職者が全体の67.8 %を占めて いる。退職理由の第1 位は再就業の23.5 %で、 看護師が直面する職場環境への不満が退職に繋 がっている。
現在の看護師不足は、平成18 年度の診療報 酬改正で7 : 1 の看護職配置が出てきたために、需給のアンバランスが生じています。多額 の収益が見込まれるため、柔軟に対応できる民 間医療機関は、いち早く看護職の確保が出来、 シフト毎の勤務者数が増加したため、ゆとりの ある勤務が出来ています。
看護協会としては、ナースセンターを中心に 相談事業を通して、離職予防や再就職のために 本人や施設側の調整支援を行っています。また 潜在看護職の復職支援では、育児等で長期に現 場を離れていて、再就業に不安を持つ方を対象 に知識や技術の研修を実施し、各職場の実地研 修を取り入れて、再就業に繋げています。
離職の多い新人看護師やリーダー看護師を対 象に研修会を実施し、演習を通して、それぞれ が現在抱えている問題解決に努めています。ま た看護部長等会員施設代表者を対象に、研修会 や会議等を開催し、子育て支援で院内保育所の 設置、働き続けられる職場・選ばれる病院づく りについて、情報提供と日本看護協会が作成し た、「職場サポートブック」の配布で看護管理 者の支援をしています。
根本的には、退職しないように定着促進を計 ることだと考えます。そのためには、ワークラ イフバランスを実現出来る職場環境の整備で す。各職場で管理者は、多様な勤務形態の導入 や短時間正規職員制度の導入等で子育て・介護 支援体制の充実に積極的に取り組むべきだと考 えています。
Q6.全国的にナースプラクティショナーの是 非が論議されていますが、どのようにお考 えですか
ナースプラクティショナー(NP)とは、生 活者の視点に立ち、対象者のQOL の向上を目 指し、「ケア」と「キュア」を同時に提供できる 看護職で、現在の裁量範囲を拡大し、症状が安 定している高血圧症や糖尿病などの慢性疾患の 患者に対し、一定の教育を受けたNP が医師と 連携を図り、ケアと同時にキュアの一端を担い、 チーム医療を提供しようとするものである。
患者の医療に対する満足感や利便性にも繋が り、医療の高度化・専門化の推進、医療従事者 が疲弊している医療現場の改善にも繋がるので あれば、前向きに検討の余地があると考える。 この制度に40 年以上の実績を持つアメリカや イギリスに比べると、我が国日本は、看護職の 養成コースも複雑で整理がつかないままなの で、医療法や保助看法を改正して制度化に持っ ていくには、ハードルが高い。しかし看護職の 専門性を拡大する視点からは、現在NP を養成 して臨床現場に出ているNP の実績を評価しな がら、推進して行くべきだと考える。沖縄は看 護の歴史的背景からすると、NP の導入は容易 に可能になるのではと今後の動きに期待してい ます。
Q7.本会に対してのご意見・ご要望がござい ましたらお聞かせ下さい。
沖縄県保健医療の主導的役割を担う医師会 は、医療チームのリーダー的存在として、地域 住民からの信頼も厚く期待をされています。各 職場でチーム医療の推進にあたっては、大変ご 苦労もあるかと思いますが、これまで以上にリ ーダーシップを発揮することを期待します。各 職種が横断的連携が出来れば県民が期待する、 より効果的な医療サービスの提供が可能になる と信じています。
Q8.最後に日頃の健康法、趣味、座右の銘等 がございましたら、是非お聞かせ下さい。
日頃の健康法は、97 歳の母を見本にしてい ます。それは、「ポジティブな発想でストレス を貯めない・時間を見つけてウォーキング」
趣味は、あまり大きい声では言えませんが 「ヘタの横好きでゴルフ」と「映画鑑賞(主人 公に成りきる)」
座右の銘は、「率先垂範」リーダーの具備す べき条件だと考えます。
この度は、インタビューへご回答いただき、 誠にありがとうございました。
インタビューアー:広報担当理事 當銘正彦