日 時:平成21 年10 月31 日(土) 午前10 時〜
場 所:ホテル日航福岡(3 階 都久志の間)
挨 拶
九州医師会連合会長福岡県医師会横倉義武 会長より、概ね次のとおり挨拶があった。
日本医師会は10 月14 日に「日本医師会の提 言〜新政権に期待する〜」を発表されました。 唐澤会長より、政権交代に伴う様々な変化のな かで、今後の医療行政について日本医師会は、 どのような政策をどのようにして提言していく のか。また、政治と医師会のあり方など今日は 様々なお考えがお聞きできると思います。最後 まで、ご清聴宜しくお願い致します。
座長選出
慣例により、九州医師会連合会横倉義武会 長が選出された。
講 演
今回の当協議会では、予め九州各県医師会か ら質問等をあげていただいているが、それらを 喫緊の課題として受け止め、日医役員で確認 し、今後早急に取り組んでいきたいと説明され、 スライドに基づき標題による講演が行われた。
T.超高齢社会における社会保障制度
近年の医療費抑制政策により、医療崩壊は地 域医療のもろさを露呈している。その直接的要 因は診療報酬の引き下げである。また、間接的 な要因として、平均在院日数の短縮化政策、新 医師臨床研修制度による医師不足の顕在化など が挙げられる。また、これにより、救急医療の 現場に十分な医師を配置することができなくな り、救急医療における速やかな受け入れが困難 になっている。2008 年に行った「医師確保のための実態調査」では、医師不足を理由として 外来の閉鎖、休止をした病院が約2 割、病棟を 閉鎖したり病床を縮小したりした病院が約1 割 あることが明らかになった。
また、勤務医が安心して働くために必要な対 策として、1)医療訴訟への対策、2)過重労働の 緩和、3)書類の作成など、診療以外の業務の軽 減、4)患者との対応等が挙げられる。このよう に、勤務医の業務、勤務医を取り巻く環境が複 雑化していることも、勤務医の疲弊の要因であ り、診療に専念できる環境づくりが必要である。
U.医療提供機能と医療機能連携
日本医師会は、「地域で医師を育てる」とい う理念の下、初期臨床研修医を「地域医療ネッ トワーク」単位で行うことを提案する。
研修医は初期研修の1 年間、出身大学が所在 する都道府県単位で設置される地域医療研修ネ ットワークに所属し、都道府県内で大学病院と 大学病院以外の病院をローテーションして、地 域医療の全体像を経験する。地域医療研修ネッ トワークは、都道府県医師会、大学、臨床研修 病院、行政、住民代表で構成される。都道府県 地域医療研修ネットワークの定員は卒業生数に 一致するように調整する。
新人看護師等の臨床研修については、まず改 正された保助看法にて医療機関の開設者等に努 力義務化されたので、必要な配慮を行うことと なる。
看護を魅力ある職種とするために、現在の看護 職員養成数を確保するにあたっても、養成所に対 する行政の補助金が足りないという現実がある。 また、看護職員の養成、及び看護職員の業務を 適正に評価し、待遇を改善するための財源の確保 が必要である。さらに、教育年限の延長ではな く、待遇を改善するなど、看護を魅力ある職種に することが、少子社会において若い人が看護職員 を目指す動機付けにつながると考える。
V.医療保険制度の課題と展望
日本医師会は、国民皆保険を守るため、消費 税などの新たな財源の検討、国の支出の見直し の継続、一般医療保険における保険料格差の是 正を同時に検討する必要があると考える。ま た、一般医療保険においては、保険料率に上限 があるため、高所得者のほうが有利な仕組みに なっている。被用者保険においては、協会けん ぽで保険料が最も高くなっている。このような 被保険者、保険者間の格差の是正を提案する。
協会けんぽの保険料率は82.01 %(都道府県 別保険料率の単純平均)である。これに対し て、組合健保の保険料率は74.12 %である。共 済組合の保険料率は、国家公務員、私学教職員 等は60 %である。共済組合は、休業給付、災 害給付も行っており、他の保険者とは異なる が、ここでは医療給付部分の保険料だけを示し ている。
組合健保、共催組合の保険料率を協会けんぽ と同じ水準に公平化し、保険者間の財政調整財 源とすることを提案する。
W.疾病予防と保健事業の推進
生涯保健事業と地域保健事業、がん・生活習 慣病など予防医療の推進、健診・保健指導・母 子保健・乳幼児保健、小児・就学児童・現役 世代、中高年齢者・高齢者に対する地域的取り 組みが必要である。
日本医師会の医療政策として、現況把握、分 析、数値化、予測値、ビジョン、グランドデザ インの策定等を提言し、実現に向けて取り組む。
身近な医療機関が健全に存続し、国民が経済 的負担を心配することなく、いつでも医療機関 にかかれる社会に戻さなくてはならない。日本 医師会は、以下の緊急提言を行う。
国民皆保険を守るための日本医師会緊急提言
1.診療報酬の大幅かつ全体的な引き上げによ り、地域医療の崩壊を食い止める
長期にわたる医療費抑制政策によって、医 療機関の経営健全性は大きく損なわれた。そ の結果、医療現場が疲弊しただけでなく、安 全で質の高い医療の提供が難しくなった。
2.患者一部負担割合を引き下げ、経済的理由 による受診抑制を起こさない
産科・小児科・救急医療の充実、病院勤務 医の過重労働緩和は最優先課題である。同時 に、地域医療全体の底上げが必要である。医 療は、病院と診療所の連携の下、切れ目なく 提供されなければならない。身近な診療所か ら病院への紹介、病院での急性期医療、回復 期医療、退院後の診療所への通院、在宅医 療、すべてが健全化してこそ、安心の医療が もたらされる。