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「世界エイズデー(12/1)」に因んで

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
嘉数 光一郎

平成20(2008)年エイズ発生動向 −概 要−によると、沖縄県は人口10 万人当たりの 患者数がHIV 感染者全国3 位(1.17)、エイズ 患者全国4 位(0.51)であり憂慮される。全国 では新規発生件数は1,557 件(HIV 感染者 1,126 件、エイズ患者431 件)と増加し、最近 5 ヶ年の増加が著しい(図1、図2、図3)。感 染経路は、男性の同性間性的接触が多い(図 4、図10)。報告数の上位10 位はHIV 感染者で は東京都、大阪府、神奈川県、愛知県、福岡 県、兵庫県、埼玉県、千葉県、静岡県、京都府 で、エイズ患者では東京都、大阪府、愛知県、 千葉県、神奈川県、埼玉県、兵庫県、北海道、福岡県、栃木県(図17)であった。

図1.
図2.
図3.
図4.
図10.
図17.

HIV/AIDS は約25 年前発見されてから今日 まで全世界で多数の患者、死亡者が発生し今尚 増加を続けている。この間HIV/AIDS の治療成 績は大きく改善し、1994 年以前はAZT 単独療 法であったが、現在は抗ウィルス薬の種類も増 え、より有効なHAART 療法が行えるようにな り、最近は1 日1 回投与法を選択する症例が増え つつある。「治療ガイドライン」は毎年のように 改定され、いまではAIDS 指標疾患のみならず 非指標疾患(心血管系疾患や悪性腫瘍など)を も含めた合併症を予防して、「非感染者に近い予 後を実現できる治療」を実現するにはどうする のがベストかという時期にきている。チーム医療 も推進され医師、看護師、薬剤師、ソーシャル ワーカー、カウンセラー、歯科医師、理学療法 士、栄養士など関係者が協力し合って診療に当 たっている。県内でも特にここ5 年間の患者数 の増加が著しく、エイズ拠点病院として琉大病 院、中部病院、当院の3 カ所が指定されていて お互い情報交換をしながら診療に当たっている。

当院の症例: 1986 年〜 2009 年10 月の24 年 間に県立那覇病院及び県立南部医療センター・ こども医療センターで診療したHIV/AIDS 患 者はのべ57 人(男54 名、女3 名)であった。 感染経路は男性同性間感染33 例、異性間感染 8 例(夫婦間感染2 例)、同性間・異性間感染2 例、血液製剤3 例、母子感染1 例、不明10 例 であった。最近3 年は年間新規患者数がそれぞ れ11 人と急増している。死亡は計7 例で2004 年以降は悪性リンパ腫合併例の1 例のみで生命予後は著しく改善している(図5)。

図5

(図5)

一方新規感染者を増やさないためにはどうす ればいいか?難しい問題である。世界エイズデ ーには様々なキャンペーンが行われ注意喚起を 促すムードが高まるが、その時限りにならぬよ う、普段から気をつけたいものだ。今年の厚生 労働省及びエイズ予防財団のテーマは以下の通 りである。

Living Together
〜いま、何をすれば良いのか聴かせて?〜

サブテーマについて

コミュニケーションをとろうという姿勢を強 く感じられるメッセージであり、HIV 陽性者と 暮らす人、セックスのパートナーがHIV 陽性 者である人、何かしらのボランティア活動をし ようとしている人、といったHIV に関わろうと する人たちも共感できうるとの思いから、本サ ブテーマが選定されました。

HIV 感染の増加が継続しているものの、身近 な問題として捉えられる状況にまで至っていな い中で、「HIV に感染している人も感染してい ない人も」HIV の問題に携わろうとする姿勢を 表現しています。

また、HIV 陽性者だけでなく、その周辺の 人々(パートナー、友人、家族、同僚等)から の相談ニーズも増えている状況の中で、HIV 陽 性者及びその周辺の人々に対する思いやりの気 持ちも込められています。

このような姿勢や思いをもつことでHIV を 身近に感じることができ、ひいてはHIV 予防 やHIV 検査体制の充実につながるというメッ セージを発信します。