会長 宮城 信雄
去る10 月23 日(金)、熊本市において標記合 同会議が開催あされたのでその概要を報告する。
開 会
司会の熊本県健康福祉部健康福祉政策課小 森課長より開会が宣言され会が進行された。
挨 拶
1)熊本県副知事 村田 信一
現在、構造的変化が二つの局面から進んでい る。一つは少子高齢化の進展の中で、構造的に 社会保障の仕組みを変える必要がり、そう言う 意味で保健、医療、福祉は転換期にあると言え る。もう一つは政権交代による政治上の変化で ある
新政権になって補正予算3 兆円が凍結され、 また、来年度の予算編成に向けた仕分け作業が はじまり、各自治体とも予算がどうなるのか不 安を感じているところである。そのような中 で、九州各県の医師会長、保健医療福祉の主管 部長が一堂に会し議論を行うことは例年以上に 大きな意味があると思うので、忌憚のない意見 交換をお願いする。
2)九州医師会連合会長 横倉 義武
各県においては、日頃から行政と医師会が膝 を突き合わせ諸問題の解決に向け種々努力され ていると思うがこのように一堂に会することは 有意義であると考える。
現在、全国で新型インフルエンザが猛威を奮 っている。今週から治療に当たる医療従事者に 対しワクチン接種が開始されたところであるが、 死者、重傷者が増えないことを願っている。
新政権が発足し、いろいろ手法が変わって行 政もご苦労が多いと思うが、医療分野において も先の見えない状況である。急性期病院に特化 した診療報酬引き上げ、医業税制特例措置の見 直し等が取り沙汰され、会員は自身の医療機関 経営に不安を抱いているのが実情である。
政権が変わっても、地域医療をしっかり守る ために行政と医師会が連携を密にすることが大 切であり、今後とも九州各県が協力して頑張っ ていきたい。
来賓挨拶
九州厚生局長 南野 肇
地域医療充実のため日夜活動されている医師会の先生方に感謝申しあげる。特に、直近の課 題であるインフルエンザワクチン接種事業につ いては、短い準備期間の中でご協力いただいた ことに改めて感謝申しあげる。
また、昨年10 月から地方厚生局が担ってい る保険医療機関の監督、指導業務についても各 県医師会のご協力のお陰で業務が円滑に推進さ れている。
中央情勢については、ご承知のとおり補正予 算の一部執行停止や、来年度予算概算要求の見 直し等が生じ各県行政や医師会にも種々ご迷惑 をかけている。来年度の診療報酬改定について は、金額は示さず事項要求となっているが、事 項要求は厳しく査定するとの情報もあり、実情 はよくわからないところである。
最後になるが、私どもは九州地区の保健、医 療、福祉行政の実施機関として、適切な行政サ ービスを提供するよう努力するので、ご協力を お願い申しあげる。
座長選出
座長に、熊本県健康福祉部森枝部長を選出 し、森枝部長の進行で議事が進められた。
議 事
提案要旨
1.現在、九州管内では、ほとんどの市町村に おいて、14 回の妊婦健診公費負担が実施さ れている。また、多くの県では、その総額、 検査内容や検査単価等も県内市町村において は統一されているが、他県との整合性はとれ ていないのが現状である。そこで、妊婦さん が里帰り等で他県の医療機関を受診した場 合、大変混乱を来している。
1)一部地域同士では委託契約は結ばれてい るが、検査内容、検査単価等、地域格差が 大きいため対応に反って苦慮しているのが 現状である。
2)これらへの対応として、全て償還払いに 統一出来ないか。
3)補助券(助成券)等の記載要領の簡略化を。 (受診者の殆どがこれら受診券使用のた め、カルテ、母子手帳、受診券等記載が煩 雑となり、外来診療に支障を来している。 また当日結果の判明しないものもあり、対 応に苦慮している。)
2.本事業は、国が少子化対策の一環として力 を入れている施策の一つでもある。
国(厚労省、総務省)は、妊婦一人当たり 112,450 円を財政措置しているところであ り、地方行政の実質負担はないと聞いてい る。妊産婦の自己負担軽減のため、是非ご協 力をお願い致します。
因に、現在の各県の妊婦一人当たり公費負 担額は、
福岡県:93,800 円 佐賀県: 92,500 円
長崎県:98,000 円 熊本県: 93,600 円
大分県:72,440 円 宮崎県: 80,808 円
鹿児島県: 94,300 円 沖縄県: 94,710 円
妊婦健康診査については、公費負担による健 診回数が拡充され、飛び込み出産が抑制され安 全な出産に繋がり喜ばしいことではあるが、医 療現場では様々な問題が生じているということ で提案された。
標記提案に対する各県行政の見解は概ね以下 のとおり。
1)料金、検査内容、検査単価等統一について
当該事業は市町村事業であり、県内の統一は 可能であるが、他県も含めてと言うのは難しい。
2)償還払いの統一化について
制度の趣旨は、妊婦の経済的負担の軽減であ り、医療機関においては面倒をかけるが理解し て欲しい。
3)補助券(助成券)等の記載要領の簡略化
補助券の記載内容等については、簡略化の方 向に向け努力する。
4)予算措置について
当該事業の予算は、5 回目までと6 回目から 14 回目までの1/2 は地方交付税、6 回目から 14 回目までの1/2 は基金を活用しているが、 基金は平成22 年度までの措置となっている。 このように将来的予算の裏付けがない状況では 市町村も動きづらいので、国へ予算措置を働き かける必要がある。
また、地方交付税はひも付きではなく、かつ、諸々の事業を交付税で賄おうとしても総額 は不足する。国が言っているようには出来ない のが実情である。
九州厚生局長コメント
本件は我々としても重要な事項として認識し ている。財源の問題は、100 %補助金であれば 使途は限定されるが、地方交付税の場合はそう いうことはできない。当該事業は一部地方交付 税となっていることから各自治体の腕の見せ所 と言ったところも事実である。また、基金が無 くなった後はどうなるのかということである が、その件は本省の担当部局にその旨伝える。
提案要旨
医療従事者の疲弊や地域医療の綻びは今大き な問題となっている。
その原因の一端は、県民の受療行動にもある のではないかと、一部の県では、「地域医療は 地域の住民が守る」という意気込みで、受診の ルールやマナーを守ろうという呼びかけをし て、県民一人一人の意識を高めようとする取り 組みを始めている。
一方、奈良県においては、行政や医療提供者 の責任とともに県民の義務を明確にし、これを 条例として交付した。同様の取り組みが、延岡 市でも進行中である。
九州各県においても、このような取り組みや 運動を実施していくことは大いに意義があると 思われる。
ご協議頂ければ幸いである。
現在、医療の現場において、患者や家族のモ ンスター化、治療費の未払い、救急医療の不適 正受診などにより、医療現場が疲弊し地域医療 が崩壊する事態が起っている。
かかる状況の中、大阪、広島では暴力や迷惑 行為をしないよう啓発するポスターを作成。香 川県は「地域医療を守るための宣言」、又、昨 年8 月宮崎県延岡市では「地域医療を守る条 例」を制定、その他全国各地でも同様な動きが あるとして、九州各県でも検討して欲しいとし て提案された。
九州各県行政、医師会とも、特に救急医療 (小児)の対策が必要として、提案の趣旨に賛 同する意見が多かった。
なお、主な県の取組状況について次のとおり 紹介があった。
1)宮崎県医師会
延岡市「地域医療を守る条例」の概要
市民、医療機関、市行政の三者で地域医療を 守ることが趣旨となっており、それぞれの責務 を明文化している。
1)市民の責務:かかりつけ医を持つ、安易な夜 間・休日の受診を控える、健康診査の積極的 受診。
2)医療機関の責務:患者の立場に立ち信頼関係 を醸成する。医療機能の分担及び連携、医師 等医療の担い手の確保、市の検診、健康診査 への協力
3)市の責務:医療が効率的に提供され、地域医 療を守るための施策を推進する。まず、初期 救急医療体制の整備、県、大学、医師会、関 係団体が連携を取り、市民へ適正受診の啓発 及び地域医療に関する積極的な情報提供に努 め、保健医療福祉の充実と推進のための財政 上の措置を講じる。
特に、延岡市では開業医が高齢化し、救急医 療や時間外診療に応じられなくなったこともあ り、市による以下の補助事業が行われている。
・新規開業奨励金: 500 万円(市外の医療機関 の勤務医が開業した場合)
・一般診療時間内奨励金: 100 万円(午後6 時 まで診療することが条件)
・雇用促進奨励金: 1 人につき年額20 万円を 2 年間支給(市民を5 人以上雇用した場合)
・夜間急病センター深夜診療奨励金: 200 万円 (2 週間に一度急病センターの夜間診療に従事)
・補助金の対象期間は、平成24 年3 月迄。
2)宮崎県行政
宮崎県でも昨年度から救急医療の適正受診の 強化に努め、昨年度は、ビラ作成・配布(10 万部)、新聞広告、県広報誌掲載、県政テレビ、ラジオ広報(県医師会委託)等を実施した。
今年度は新規事業(救急医療利用適正化推進 事業)として、1)テレビCM(500 万円)、2)訪 問救急室の実施(210 万円、医師や看護師等を 幼稚園、保育所等へ派遣し、保護者へ小児救急 医療の知識や受診のあり方を指導)、3)オピニ オンリーダー対策(300 万円、適正受診に際し 地域住民の自主的、自立的な活動促すべく NPO 法人や任意団体へ助成)を策定した。
3)鹿児島県医師会
鹿屋地域で、全国の救急のモデルケースとし て平成13 年にスタートした鹿屋方式の救急医 療体制(時間外は開業医が輪番で担当し、入院 の必要な重症患者は県立鹿屋医療センターを対 応することによって、地域で24 時間対応が可 能とした)は、たらい回しがなくなったとし て、脚光を浴びていたが、制度が定着するにつ れ、開業医の当番医は夜間診療化し、患者は導 入前の2 倍(この内小児は5 倍)に増えた。一 方、当番医は高齢化すると共に、恒常的な医師 不足と相まって医師の負担が増え、当該制度の 維持が困難となっており、救急医療の適正な受 診の市民啓発活動、夜間急病センターの設置 等、行政、医師会、市民が一体となって救急医 療のあり方を考える必要がある。
4)佐賀県医師会
県警の協力を得て「医療従事者に対する暴力 防止」の啓発ポスターを作成した。
なお、沖縄県では小児救急啓発事業の一環と して保護者を対象に講習会を開催し、適切な受 療行動の啓発を計画しているとのことである。
本合同会議(毎年秋)に合わせ開催している 「九州各県保健医療福祉主管部長会議」につい ては、予算要求の都合上、5 月又は、6 月頃の 開催が望ましいことから、本合同会議を春期に 変更することをお願いしたいとの提案があり、 原案通り了承された。
次年度は、沖縄県で開催することとし、沖縄 県医師会が担当することに決定した。決定に際 し、宮城会長から来年5 月又は、6 月に沖縄県 において開催する旨の挨拶があった。
その他
新型インフルエンザワクチンについて以下の とおり質疑が行われた。
■医師会:ワクチン接種が始まったが、県民に 助成をしている県はあるのか。
□行政:生活保護世帯、低所得世帯は助成する が、一般世帯にはない。
■医師会:世界的に見た場合、アメリカ、オー ストラリア等は無料となっている。日本はワク チン製造も遅いが、全てに対応が悪い。政府は 国民の安心な生活と言いながら実行が伴わな い。ワクチン接種も高齢者や高校生までは無料 にすべきではないか。
□行政:今回の新型インフルエンザに関して は、時間的制約のある中で政治的な動きもあり 難しかったのではないかと思う。助成について どうするか市町村に確認したところ、間に合わ ないので国に合わせるとのことであった。
この件は、今年だけの問題ではなく、次年度 以降どうするのか、又、季節性インフルエンザ との関係はどうするべきか、国の検討事項とな っているようである。
■医師会:インカ帝国は天然痘で滅びたという 事実がある。それと同等ではないが、危機意識 も持って対応するのが一流国家であり、行政は よく考えて欲しい。
□九州厚生局:担当部局へしっかり伝えたい。
■医師会:今般、医療機関に医療従事者用のワ クチンが配布されたが、希望者の4 割分しか配 布されていない。配布はもう終わりか。耳鼻 科、眼科、整形外科等は配布がない。
□行政:国は、全国の医療従事者分として100 万人分用意し、各都道府県へ比例配分してい る。基本的な考え方としては、新型インフルエ ンザの治療に直接携わる方を対象としている。