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女性医師等相談事業連絡協議会

沖縄県医師会女性医師部会委員
仁井田 りち

去る9 月30(水)日本医師会に於いて、標 記連絡協議会が開催された。

協議会では、本年7 月1 日に公布された育 児・介護休業法の改正について概要の説明が行 われた。続いて、女性医師等相談事業の取り組 みを行なっている7 県医師会(1)青森県、2)岩 手県、3)秋田県、4)茨城県、5)徳島県、6)山口 県、7)宮崎県)より各種支援状況などについて 事例発表が行われた。本会より玉城副会長、依 光部会長と私、事務局職員2 名が参加したので 概要について報告する。

挨 拶

唐澤人日本医師会長

昨年度は、女性医師支援を更に具体的かつ実 効性のあるものにすべく、女性勤務医に対する 初めての全国規模アンケート調査を実施した。 その調査結果から、女性医師が就業を継続して いくためには出産、子育て等の時期における幅 広い支援が求められており、とりわけ保育支援 は欠かすことが出来ない最も重要なポイントで あることが分かった。多種多様なニーズが求め られる現状においては、現存する地域の保育サ ービス等の全てを効率的に利用することが現実 的な対応であると考えている。

それらを円滑に行うために、医師会がサポー トする仕組みとして、本会では昨年11 月保育 システム相談員講習会を実施し、地域の保育サ ービスを把握し、医師の相談を受ける人材を各 都道府県に配置いただきたい旨協力を要請した ところである。

また、国に対しても予算措置の要請を行なっ てきたが、本年度は女性医師等復職支援研修 相談事業が国で予算化され、一部の都道府県 においては、具体的な取り組みを始めたと聞い ている。

本日は、保育システム及び各種の女性医師か らの相談を受け付ける相談窓口の今後の普及を めざし、本協議会を開催する運びとなった。特 に当事業が進んでいる7 つの医師会より事例発表が行なわれるので、未だ実施されていない県 においては是非参考にしていただき、行政への 働きかけをお願いしたい。女性医師の活動は医 療の望ましい発展に欠かせない重要な問題であ り、日医としても真摯に取り組みを進めていく 所存であるので、今後より一層のご協力をお願 いしたい。

育児・介護休業法の改正について (日医事務局)

本年6 月24 日の参院本会議で可決成立し、7 月1 日に公布された育児・介護休業法の改正に ついて説明があった。

今般、国においては、少子化対策の観点か ら、喫緊の課題となっている仕事と子育ての両 立支援等を一層進めるため、男女ともに子育て 等をしながら働き続けることができる雇用環境 を整備している。

改正内容の概要は以下のとおりでる。

1.子育て期間中の働き方の見直し

○短時間勤務制度の義務化(新設)

事業主は、3 歳までの子を養育する労働者が 希望すれば、所定労働時間の短時間措置(1 日 6 時間等)を講じなければならない。

○ 所定外労働の免除の義務化(新設)

3 歳までの子を養育する労働者の請求によ り、所定外労働の免除を義務化する。

○ 子の看護休暇制度の拡充(改正)

小学校就学前の子が、1 人であれば年5 日 (現行どおり)、2 人以上であれば年10 日の休暇 の取得に拡充する。

2.父親も子育てができる働き方の実現

○パパ・ママ育休プラス

父母がともに育児休業を取得する場合、育児 休業取得可能期間を、子が1 歳から1 歳2 ヶ月 に達するまでに延長する。(父母1 人ずつが取 得できる休業期間は1 年)

○出産後8 週間以内の父親の育児休業取得促進

妻の出産後8 週間以内に父親が育児休業を取 得した場合、特例として育児休業の再度の取得 を認める。

○専業主婦(夫)除外規定の廃止

配偶者が専業主婦(夫)であれば、育児休業の 取得を不可とすることができる制度を廃止する。

3.仕事と介護の両立支援

○介護のための短期の休暇制度の創設

要介護状態にある家族が、1 人であれば年5 日、2 人以上であれば年10 日、介護休暇を取 得できるようになる。

4.法の実効性の確保

○紛争解決の援助及び調停制度の創設

育児休業の取得等に伴う苦情・紛争につい て、都道府県労働局長による紛争解決の援助及 び調停委員による調停制度を設ける。

○公表制度及び過料の創設

勧告に従わない場合の公表制度や、報告を求 めた際に虚偽の報告をした者に対する過料の規 定を設ける。

【施行期日】

公布日から1 年(常時100 人以下の労働者を 雇用する事業主について3 年)以内の政令で定 める日。4 のうち、調停については平成22 年4 月1 日、その他は公布日から3 月以内の政令で 定める日。

その他、上記法改正の国会審議の中で、「育 休切り」の防止措置について付帯決議された。 育児休業を申し出た従業員の職場復帰を確実な ものにするため、事業主は育休期間を明示した 書面を本人に交付するよう厚労省令で定めるこ とになった。

最後に、今後の課題として、1)「仕事と子育 ての両立」ができる勤務環境をつくるために は、法改正の理念を経営者、職場の上司、同僚 がしっかり受け止め、育休を取得する従業員を 支援する体制が必要である。2)パート、アル バイト、派遣・契約社員等の非正規雇用で働いている労働者への対応が求められる。

事例発表

(1)青森県医師会女性医師活躍推進事業  村岡真理常任理事

女性医師相談窓口業務については、本年4 月 から準備に取り掛かり、7 月15 日付、相談受 付を開始した。開設までの主な作業として、1) 相談員の確保と研修、2)保育施設、各種保育 サービス等の資料収集(地区別)、3)保育連合 会や自治体との連絡、4)相談受付ツールの整 備(専用電話、専用アドレスの取得等)、5)各 種フォーム作成(受付票、相談員日誌等、6) 広報(会報、HP、ML 等)を行った。

相談体制は、1)保育相談員(2 名):青森県 医師会事務局員が対応、2)保育以外の女性医師 相談員(2 名)は、役員が対応している。保育 相談は専用のフリーダイヤルで受付し、電話で 聴取のうえ、必要に応じ地域の保育施設名等の 情報(パンフレット等)を提供している。開始 から2 ヶ月半で事業実績は、保育相談3 件のみ となっている。

今後の課題としては、1)情報網の整備(周知 活動、病院や大学の医局等との情報交換、ML の普及)、2)相談員の資質向上(さまざまな制 度の変化にも対応し、多様なニーズにも応えら れる人材の育成)、3)評価(常に存在意義を確 認する)である。

(2)岩手県および岩手県医師会女性医師支 援事業 増田友之常任理事

岩手県では、女性医師就業支援事業として1) 育児支援事業(保育事業者の紹介で費用は利用 者負担)、2)復帰支援事業(総合研修コースと 専門研修コース)の紹介を前者は岩手県医師 会、後者は岩手医科大学医師会が行っている。 これまでの実績は、平成19 年1 月よりスタート しているが、育児支援は7 名の女性医師、1 名 の男性医師が計64 回利用。復帰研修は8 名の 女性医師が利用し、うち5 名が1 年間研修を行 い現場復帰、3 名が現在も研修中である。

育児支援事業については、事前に行なったア ンケート調査の結果から、多様な要望があがっ たため、事業所リストの整備(日常時/緊急・ 臨時)を行なった。(保育園リスト・NPO 法人 いわて子育てネット等のリスト等)

問題点と今後の展望として、支援を必要とす る女性医師が休職中のため、医師会員でないこ とが多く情報が届かない。同門会等を通じて広 報活動を行ったり、配偶者が医師であることも 多いため医師会活動を通じて呼びかけを行なっ ている。また、現在、岩手医科大学医師会が行 っている女性医師復帰支援事業を県内県立病院 へも広げていきたい。

女性医師等相談事業については、本年から県 医師会において事務職員が担当し、相談内容に 応じ事業者を紹介している。また、事務局で判 断出来ないケースについては、女性医師部会長 に連絡を取り対処している。

(3)秋田県における女性医師支援相談窓ロ 事業小笠原真澄理事

本年8 月1 日より秋田県から委託(補助金約 710 万)を受け、相談窓口の運用を開始した。

具体的な内容としては、1)地域の保育システ ム・サービスに関する相談、2)勤務環境に関わ る相談、3)再就業・再教育システムに関わる相 談、4)その他、様々な相談を想定し、会員・非 会員を問わず、女性医師(研修医を含む)、女 子医学生からの各種相談を受け付ける。相談員 は、医師会事務局スタッフ兼務(1 名)と女性 医師委員会委員(5 名)で構成している。

相談業務の流れは、保育・勤務環境等の相談 については、相談者から電話、メールで相談窓 口の事務局スタッフが対応し、医師の相談員に 報告を行ったうえで、アドバイス・情報を提供 する。また、内容によっては、医師の相談員が 直接アドバイスを行なうことも考えている。

再就業・再教育システムに関する相談につい ては、事務局が内容確認のうえ、医師の相談員 が直接、就業に向けた調整や面談を行なう予定 である。

広報活動は、1)ホームページの作成(あきた 女医ネット)、2)県内の自治体広報紙、地元の 新聞を通じて紹介・周知を図った。

8 月10 日の運用開始後、利用実績がゼロで、 現在、広報戦略について再考している。広報す るタイミングにも配意をしたほうが良い。地元 新聞に取り上げられるも、県知事選挙や衆院選 挙の影響でPR が薄れた感がある。自治体の広 報紙も、市町村間で広報に温度差があり一律掲 載に至らなかった。そのため、独自に告知用の チラシを作成し、県内医療機関や臨床研修医協 議会、各研修会へ配布しており、今後の成果を 期待したい。

(4)茨城県医師会医師就業サポート事業  諸岡信裕副会長

本事業はこれから年末にかけてスタートす る。目的は、医師の就業支援を図るため、保育 支援にかかる相談・紹介や技術研修を実施した 病院へ支援すると共に、相談等を行い、茨城県 内の医師定着促進を図ることである。

事業内容は、保育等支援で茨城県から県医師 会へ委託(H21 年度予算額約770 万)を受け る。相談窓口は県医師会内に開設し、1)育児 (保育サポーター、保育所)、2)勤務時間(短時 間勤務希望等)、3)復職への不安(講習会、技 術研修の希望)、4)キャリアアップなどの相談 を受ける。

事務局体制は、事務職員1 名(専門嘱託を雇 用)、アドバイザー医師3 名(男女共同参画委 員会委員等)で構成している。相談者への対応 手段は、事務局窓口、対面、出張相談、電話、 インターネット等を予定している。

広報活動については、1)県医師会報、県医 師会HP による広報、2)ポスター、チラシ作 成、3)ミニコミ誌での広報を予定している。 また、県や大学の支援事業との連携、地方自治 体広報誌等、様々な広報活動にあたる。秋田県 医師会と県合同で事業開始に伴うプレスリリー スを考えている。

また、筑波大学附属病院では、女性医師、看 護師キャリアアップ支援システムが構築されて いるので連携を図っていく。

(5)徳島県医師会保育支援事業と若い医師 への広報の課題 松永慶子常任理事

徳島県では、女性医師の出産後の離職を予防 し、勤務医不足を緩和するためには、1)保育施 設の充実、2)女性医師のモチベーションの維持 の2 点が重要である事が認識され、平成19 年度 に保育支援の事業開始に向けた保育支援委員会 が設置された。その後、保育支援に関する様々 なニーズ調査を経て、県医師会主催による託児 所のコンペを開催し、契約託児所を選定した。 広報活動については、徳島市医師会で女性医師 のためのネットジョイというHP が既に立ち上 がっていたため、これを通じてアンケート調査 や契約託児所の決定等の広報を逐一行なった。

また、支援事業を広く周知していくため、オ リジナル版のポケットティッシュ(HP とメル アド明記)を製作し、研修医の集い等若い医師 が参加する会合で配布した。

保育支援委員会は、子育て中の委員が多く、 子供が寝た後から行えるメール会議が有用であ った。また、若い委員の意見が我々の保育支援 事業をより現場に近いものにしてくれた。

保育支援に関する入会・申込みは、徳島県医 師会HP から入会することが可能であり、現 在、医師20 名の子供27 名が利用している。

徳島県医師会では、全国に先駆けて会員向け の保育支援事業を開始した。情報収集や広報に 関して、会員以外の若い医師に対するHP や電 子メール等lT を利用した広報や、子育て中の 委員に対するML 利用の討論が有益であった。 一方、IT 利用に慣れた委員間での情報が早す ぎ、利用に慣れてない委員を含めた意見の集約 が不十分になる事があり、今後従来の委員会決 議や郵送等の方法との共用が重要であると思わ れた。

今後、保育支援ネットワークの活用によっ て、保育支援相談事業を開始し、保育支援地域 枠の拡大や病児病後児保育の支援、年長児への支援、ヘルパー利用への支援などの情報を提供 していきたい。

また、本年10 月には女性医師等復職研修・ 相談事業に向けてHP を活用した相談窓口を設 置する。寄せられた相談内容について、保育支 援委員会、男女共同参画委員会、医師バンク等 が回答を分担して行う予定である。

(6)山口県医師会女性医師保育等支援事業  小田悦郎常任理事

山口県では、出産・育児に不安を抱える女性 医師等に対して、育児支援のニーズに沿った保 育サポーターの情報提供・紹介、また、育児と 勤務の両立を支援するための相談応対等を行う 女性医師育児相談員1 名を山口県医師会内に配 置し、県内女性医師の離職防止を図っている。

主な業務として、1)保育サポーターの登録・ 養成、2)保育サポーター等に関する情報提供、 3)女子医師と育児サポーター等との面接日時・ 場所の連絡調整及び面接同席、4)県内保育施設 等の状況把握、5)本事業及び相談窓口の広報、 6)女性医師の育児と勤務の両立支援の相談対応 等を行っている。委託料は300 万円である。広 報活動は他県同様、チラシを作成し配布。

また、標記支援事業の一環として、山口県医 師会保育サポーターバンクを設置し運営を行な っている。保育サポーターが行う支援の内容と しては、1)子どもの預かり保育(サポーター 宅又は女性医師宅)、2)子どもの送迎(保育施 設などへ)、3)その他女性医師が仕事と家庭を 両立するために必要な支援等である。

今後の課題としては、(1)女性医師への広 報、(2)バンク登録者の増員を図る、(3)サポ ーターの資質向上のための研修会の開催である。

(7)宮崎県における女性医師支援  荒木早苗常任理事

宮崎県では平成16 年度より女性医師フォー ラム等の活動を行っている。

平成18 年度には、女性医師の勤務実態・職 場環境の把握、及び子育て環境の実態把握に向 けアンケート調査を実施した。アンケートの結 果から出産育児で離職した若い女性医師の多く は復職を望んでいるものの、休職期間が長くな ればなるほど次第に自信を失い復職し辛くなる という状況があることがわかった。そこで女性 医師委員会では、現在、復職支援プログラムの 作成に取り組んでいる。復職プログラムを行な う施設については、県内の全医療機関を対象に 協力してもらえる医療機関を募った。その結 果、県内各地より25 病院、17 医院の合計42 医療機関が復職支援の協力に手を挙げた。今後 これらの医療機関との連携を取りつつプログラ ムの作成を進めていく予定である。

今年度、本会に2 つの新規事業が委託され た。1)保育等支援事業(国・県)で相談窓口の 設置をする。2)女性医師支援検討事業(県単独 事業)で女性医師の復職に向けての支援や働き やすい環境づくり等、各種の支援策を検討する ものである。

相談窓口については、平成21 年10 月1 日よ りオープンする。平日日中は県医師会事務局職 員(女性医師担当者)が受付し、必要に応じ て、コーディネーターに報告する体制をとる が、女性医師コーディネーターも週に半日以上 は相談業務に就く。また、面談による相談は予 約制とし、相談者の都合に合わせて夜間の面談 にも応じる予定である。県医師会館内に相談ル ームを確保した。また、会館内に研修・講習会 時託児サービス(利用者無料、医師会負担、会 員非会員不問、業者からの派遣保育士が対応) を開始した。これらも要望が多いサービスで、 昼間は保育園や学童保育に預けていても夜、子 供を見てくれる人がいないと研修会に参加でき ないという声を聞いてきた。

また、宮崎大学医学部では来年度地域医療学 講座を開講するため準備を進めており、そのプ ロジェクトの中に出産育児後の女性医師の復職 支援についても取り入れて欲しいと医学部長に お願いし、了承を得た。今後、医師会でも大学 病院と連携しつつ、女性医師の支援を行なって いく予定である。

最後に、女性医師支援事業を開始するに当た り、子育て中の女性医師等に意見を伺ってきた が、直に会って話をすると、紙のアンケート調 査では出てこない問題についても実に多くの情 報を得る事が出来た。ただ問題として訴えるだ けでなく、課題の解決に向けた多くのヒントや アイディアを得る事が出来た。女性医師相談 は、単に就職先や保育施設を紹介するだけのた めの窓口ではなく、じっくりと話を聞いて相談 者の問題を解決するところとして、多くの女性 医師が無理なく仕事を続けられる環境づくりに 生かしていきたいと考えている。

来年度の事業の見込みについて

保坂シゲリ女性医師支援センターマネージャ ーより来年度の事業の見込みについて説明があ った。

8 月末、厚労省から出された来年度の概算要 求では、当初女性医師等就労支援事業の予算が 大幅に増額される事になっており、その中に保 育についての直接の補助ということも入ってい たが、政権が交代したため、予算を全て白紙に 戻し15 日までに予算を作り直す事になってし まった。非常につらい状況である。しかし、新 政権においても女性医師の支援という事に関し ては配慮いただけると思う。各県においては来 年度予算が付くという前提で、行政と話し合っ ていただきたい。

もう一つの心配は我々が受けている女性医師 支援センター事業の予算だが、どの様なことが あろうとも継続していきたいと考えている。

質疑応答

保坂シゲリ女性医師支援センターマネージャ ーの進行のもと、事例発表を行った県に対し質 疑応答が行われた。主な意見は次のとおり。

Q :1)山口県が実施している保育サポーターバ ンクの登録者について、資格取得の条件 はあるのか。2)登録されたサポーターを 紹介している訳だが事故が発生した場合 の対応は。(保坂マネージャー)

A :1)特に定めてはいないが育児経験者かどう かは見ている。現在37 名の登録者がいる が、その殆どが21 世紀職業財団に登録さ れている方である。2)傷害保険(最高1 億 円)を掛けており、サポーターへの損害賠 償請求があった際に備えた保険となって いる。(小田悦郎山口県医師会常任理事)

Q :徳島県医師会では、託児所の委託契約につ いて医師会主催のコンペを実施したようだ が、そこまでする必要があるか疑問である。 収集した情報を提供することではこと足り ないのか。(櫻井芳明宮城県医師会副会長)

A :徳島県医師会は、通常の保育所が対応して いない部分のサービスを県医師会あげて特 別に交渉し、利用される先生方の希望に沿 った託児所を設ける調整をされた。宮城県 医師会でも是非参考にご検討いただけると ありがたい。(保坂マネージャー)

Q :筑波大学に設置されている「ゆりのき保育 所」について、具体的な事柄(定員、利用 可能な職種、費用、延長保育の有無等)に ついて教えていただきたい。(鈴木ゆめ横浜 市医師会常任理事)

A :病院に従事している医師や看護師が利用で きると伺っているが詳細は把握していない ため、直接伺って頂ければありがたいが、 分からなければ茨城県医師会を通じて回答 したい。(諸岡信裕茨城県医師会副会長)

A :当センターでも院内保育所等のことについ て様々なデータを収集しているので、問い 合わせ頂ければ情報提供できるかと思う。 (保坂マネージャー)

印象記

仁井田りち

沖縄県医師会女性医師部会委員
仁井田 りち

9 月30 日、日本医師会館で「女性医師等相談事業連絡協議会」が開かれました。小雨の中、全国 各都道府県より118 人の担当理事、担当事務局員が参加され、事例発表と討論が行われました。も う少し討論、質疑応答の時間を頂きたいと思うほど具体的かつ実践的な充実した内容となりました。 特に印象に残った各県の取り組みを御紹介します。

1.青森県医師会女性医師活躍推進事業

まずはアンケート調査を実地して一番要望の多かった「保育相談窓口」から開始しています。 出産を機に医療現場を離れる女性医師が多い中、保育情報の提供などによって復職が進めば、医 師不足の改善に繋がると期待され立ち上がりました。具体的には県医師会の事務局の中に相談窓 口があり、担当の保育相談員(職員)が2 名おり情報を提供、「保育以外の女性医師相談」は医師 会の女性医師相談員(医師)2 名が担当しています。広報には配布用ちらしとホームページを活 用していました。

2.岩手県および岩手県医師会女性医師支援事業

医師不足顕著な東北地方の一つ岩手県はまず県が動きました。H19 年県の委託を受け、岩手県 医師会に女性医師育児支援事業が実地されています。具体的には「保育事業者の紹介」です。日 常の保育施設の紹介だけでなく、医師の不規則勤務を配慮し、たとえば当直、急患、学会出席な ど、臨時、緊急時に利用者の自宅にヘルパーを派遣する事業の、斡旋紹介をしていました。その 育児制度を7 名の女性医師のみでなく、1 名の男性医師も利用していました。

3.秋田県における女性医師支援相談窓口事業

「表題どおり」こちらは各県の中でも取り組みが先に始まりました。まず女性医師支援プロジ ェクト会議として県、医師会、大学の3 者合同の活動がH18 年に立ち上がりました。そして保育 相談のみでなく女性医師の再研修、再就職支援も含めての「総合相談窓口」を県の女性医師部会 に引き継ぎ運営しています。「あきた女医ネット」とネーミングされたホームページがあり、ホー ムページを開くとわかりやすく、まとまった支援窓口ネットワークとなっています。

4.茨城県医師会医師就業サポート事業

茨城県の取り組みで特に印象に残ったのは、「子育て支援奨励金」としてH18 年より茨城県か ら予算が下り、県内の医療機関(公的医療機関は除く)で育児休業短期間勤務の医師がその病院 に勤務している場合(3 ヶ月以上)、医療機関に一人60 万〜 80 万の支給をしているとのことでし た。この4 年で茨城の6 病院が奨励金制度を利用しています。つまり子育て中の女医さんを雇う ことで民間医療機関に助成するという制度です。(残念ながら沖縄県は予算の関係でこの制度はな いそうです)

さらに、茨城県は筑波大学附属病院内の「女性医師看護師キャリアアップ支援システム」が充 実しており、(全国の大学病院の中でも上位クラスの充実システム)常勤職員でありながら勤務時 間を週20 〜 30 時間とする「パートタイム常勤制度」がすでに導入され、「大学保育所」は保育時 間7 〜 21 時まで利用ができ、病児保育も受け入れが可能で、そのときは別室の保健室で看護師が常駐対応、母乳育児支援として搾乳室も整備されていました。フロアーからは「どうしたらこの ようなシステムを立ち上げ運営できるのですか?」という羨望の質問がありました。

5.徳島県医師会保育支援事業と若い医師への広報の課題

この県も保育支援の先進県でした。県医師会主催のコンペで契約託児所を3 社決定。「トワイラ イト保育」と称して、送迎サービスのある緊急延長保育をできるだけ安い時給で対応するサービ スを実現させました。すでに27 人のお子さんが利用。そしてその広報には、メールの徳島女医ネ ットを使い、メルアド明記のポケットティッシュも配布。発表の先生の「宣伝の為、初めてティ ッシュ配りを体験しました。街頭のティッシュ配りの方の気持ちがわかりました」の感想にフロ アは大爆笑。地道な御努力を楽しそうに語ってくれた徳島の先生のお人柄に惹かれました。

6.山口県医師会女性医師保育等支援事業

山口県医師会の保育事業の特徴は「保育サポーターバンク登録者募集」と称して、保育サポー ター(ベビーシッター)の個人斡旋の斡旋システムです。ただこちらは、フロアから「保障の問 題は?」等の意見が出ており、これからの運営に課題がありそうです。

7.宮崎県における女性医師支援

宮崎大学医学部入学者のうち女性医師の割合は、昭和63 年度以降毎年約30 人、そしてH9 年以 後は約40 人以上という女性の多い大学です。そして、宮崎県内出身の医学部入学者がH11 年には 僅か3 人しかいないという深刻な事態を受け、県を挙げて熱心な取り組みが始まりました。宮崎 県の女性医師で住所を把握できた328 名に詳細なアンケートを実施する等して実態を把握すると 共に、宮崎県医師会内に女性医師相談窓口を設け、休職中の女性医師の復職支援等について、面 接聞き取り等丁寧に対応していました。「顔の見える連携」を強調され、フロアからの共感を得て いました。

今回の協議会のキーワードは「相談窓口」と「ホームページ」でした。北海道から順番に席が 設けられていたため、沖縄県は会場の一番後ろでした。一緒に出席した依光たみ枝先生(女性医 師部会会長)と「この県の取り組みは使えますね」と「このホームページは参考にしましょう」と ひそひそおしゃべりが可能なよい席配置に感謝し、さっそく具体案を相談してきました。

沖縄県医師会では10 月に相談窓口が立ち上がりました。保育支援事業も具体的に動き始めまし た。これからホームページです。今後の問題点としては「ほんとに支援を必要とする女性医師が 休職中であったり、研修医で医師会員でないために女性医師に情報が届かない」ことがあり、情 報網の整備も同時進行で必要です。女性医師の配偶者の7 割は男性医師であるというデータが今 年の女医バンク調査で発表されています。この文章を読まれた男性医師の先生方も広報活動を含 めて御協力よろしくお願いいたします。