糖尿病を克服し、長寿県に！
琉球大学名誉教授 髙須 信行
【要旨】
沖縄では糖尿病が増加している。車社会、大 型店舗（スーパー）の増加は沖縄の糖尿病を増 加させた。人間は買い物をする動物だ。車で、 大型店舗（スーパー）で買い物をする。運動量 は減少した。沖縄県人はファースト・フード好 きだ。運動量減少と沖縄の食生活は糖尿病を増 加させる。
沖縄県人は長寿だ。114 歳沖縄女性は長寿 世界一だ。100 歳以上は928 人いる。女性の 平均寿命は日本全国で1 位だ。しかし、男性 の平均寿命は25 位。糖尿病は平均寿命を10 歳下げる。
運動と食事療法は糖尿病を予防する。運動と 食事療法で糖尿病を克服し、沖縄を長寿県に！ 糖尿病早期発見、早期治療で沖縄を長寿県に！
はじめに
日本人は長寿だ。沖縄県人は長寿だ。沖縄の 114 歳女性は長寿世界一だ。そして、沖縄では 100 歳以上は928 人いる。女性の平均寿命は日 本全国で1 位だ。しかし、男性の平均寿命は25 位だ。糖尿病は平均寿命を10 歳低下させる。 沖縄では糖尿病が増加している。沖縄は車社会 に移行した。大型店舗（スーパー）が増加した。 人間は買い物をする動物だ。車で移動し、大型 店舗で買い物する。運動量は減少した。食事は 西欧化した。糖尿病は増加している。運動量の 減少と食事の欧米化は糖尿病増加を促進する。 運動と食事療法は糖尿病を予防する。運動と食 事療法で糖尿病を克服し、沖縄を長寿県に！糖 尿病早期発見、早期治療で沖縄を長寿県に！
1．長寿県沖縄
日本人は長寿だ。沖縄県人は長寿だ。
2009 年8 月11 日現在、長寿世界一はガート ルード・ベインズさんだ。1894 年4 月6 日生ま れの米国人女性。115 歳。第2 位は1895 年5 月10 日生まれの沖縄女性。114 歳。彼女は現 在長寿日本一だ。長寿日本一は沖縄の女性だ。
しかし、ベインズさんは9 月1 1 日死去。 2009 年10 月7 日現在、長寿世界一は沖縄の 114 歳女性だ。
1）日本では100 歳以上の人口が多い。沖縄で は100 歳以上の人口が多い。
100 歳以上の高齢者を百寿者（100 歳老人 Centenarians）という（図1）。沖縄では百寿 者が多い。
1963 年には100 歳以上の日本人人口は153 人だ。1981 年には100 歳以上の日本人人口は 1 万人を、2 0 0 3 年には2 万人を突破した。 2009 年9 月1 日の100 歳以上の日本人人口は4 万399 人だ。87 ％は女性だ。
沖縄県人は長寿だ。1995 年には世界一の長 寿地域宣言をした。沖縄では100 歳以上の人口 は多い。2009 年9 月1 日の時点で沖縄県には百 歳以上が928 人いる。沖縄県の人口は138 万 1,961 人（2009 年6 月1 日現在）。人口10 万に 対して百歳以上は67 人だ。全国平均は人口10 万に対して32 人だ。100 歳以上の人口は連続 37 年トップを記録している。これは世界的にみ ても記録的な数字だ。米国では人口10 万に対 して100 歳以上は17 人だ。
沖縄には百歳以上が928 人いる。このことは 1907 年以前に生まれた928 人の沖縄県人が 100 歳以上になったことを意味する。1907 年 以前に生まれた928 人が長生きしている。この ことは現在沖縄に住んでいる沖縄県人が長生き することを意味するわけではない。沖縄では 100 歳以上の人口が多い。928 人いる。90 ％は 女性だ。
2）日本人は長寿、沖縄県人は長寿
2008 年の日本人女性の平均寿命は86.05 歳 だ。長寿だ。24 年間連続長寿世界一を記録し ている。日本人男性の平均寿命は79.29 歳だ。 4 位だ。日本人の平均寿命は延びている。
2000 年沖縄女性平均寿命は86.01 歳。日本 全国1 位だ（図2）。2000 年沖縄男性平均寿命 は77.64 歳。26 位に急落した。女性では沖縄県 は1 位を維持している。しかし、男性は26 位に 急落した。これを26 位ショックという。沖縄 では大騒ぎだ。長寿県沖縄の未来は明るいの か。2005 年沖縄女性平均寿命は86.66 歳。日 本全国で1 位だった。2005 年沖縄男性平均寿命は77.68 歳。25 位だ。女性では沖縄県は1 位 を維持している。しかし、男性は25 位だ。
2．増加する2 型糖尿病
2007 年の調査では日本全国で890 万人が糖 尿病だ（図3）。日本人の6.8 ％が糖尿病だ。 2006 年の調査では日本全国で820 万人が糖尿 病だった。2006 年から2007 年の1 年間で糖尿 病は820 万人から890 万人に増加した。一年で 70 万人増加した。
1997 年の調査では日本全国で690 万人（総 人口の5.3 ％）が糖尿病。2002 年740 万人 （5.7 ％）、2006 年820 万人（6.3 ％）、2007 年 890 万人（6.8 ％）が糖尿病だ。
1997 年から2002 年の5 年間で糖尿病の人は 690 万人から740 万人に増加した。5 年間で糖 尿病の人は50 万人増加した。1 年で10 万人増 加した。
2002 年から2006 年の4 年間で糖尿病の人は 740 万人から820 万人に増加した。4 年間で糖尿 病は80 万人増加した。1 年で20 万人増加した。
2006 年には820 万人、2007 年には890 万人 が糖尿病だった。1 年間で70 万人糖尿病が増 加した。
1997 年から2002 年の5 年間で50 万人、1 年 で10 万人増加した。
2002 年から2006 年の4 年間で80 万人、1 年 で20 万人増加した。
2006 年から2007 年の1 年間で70 万人増加 した。
糖尿病は増加している。
3．増加する沖縄の2 型糖尿病
沖縄は糖尿病が多い1）。糖尿病患者が増加し ている。肥満が多い。高脂血症が多い。
日本人の糖尿病は増加している。そして、沖 縄でも糖尿病患者数は増加している。1991 年 に調査を始めたころは沖縄の糖尿病は4.7 ％だ った。しかし、糖尿病は増加し、2004 年では 8.4 ％が糖尿病だ。沖縄では糖尿病が増加して いる。
沖縄では糖尿病が増加した。増加は男性で著 しい。
日本人糖尿病は増加している。沖縄でも増加 している。沖縄では2 人に1 台の割合で自家用 車を持っている。沖縄は車社会だ。沖縄では糖 尿病は増加している。1991 年に調査を始めた ころは沖縄の糖尿病は4.7 ％だった。しかし、 糖尿病は増加し、2004 年では8.4 ％が糖尿病 だ。2009 年ではもっと増加している。沖縄で は糖尿病が増加している。なぜ沖縄では糖尿病 が増加しているのか？
4．沖縄の2 型糖尿病患者増加と肥満、高脂 血症
沖縄では肥満が多い。BMI（body mass index ：体重（kg）/身長(m)2 ）平均値が高い。 BMI 25 以上のヒトの割合が多い。高脂血症が 多い。肥満と高脂血症が糖尿病増加に関与する。
20、30、40、50 代どの世代をとっても、沖 縄では肥満が多い。高脂血症が多い。沖縄が長 寿であるのも時間の問題だ。「沖縄は長寿」と 言われるが、コホートで考えると、「沖縄の 1920 年以前に生まれた人は長寿」ということ ができる。現在20、30、40、50 代の沖縄県人 が長寿かどうかは分からない。
5．沖縄県で糖尿病、肥満、高脂血症が多い のはなぜか？
沖縄の肥満、高脂血症は沖縄県人のlifestyle 生活と習慣からくる。沖縄県人は脂肪の多いも のを好んで食べる。沖縄は車社会だ。沖縄県人 のlifestyle（生活と習慣）の変化は糖尿病増 加、肥満、高脂血症が多いことと関係がある。糖尿病、肥満、高脂血症はlifestyle と関係があ る。Lifestyle の変化が糖尿病の増加をひきお こしている。Lifestyle ・生活習慣の変化の目 安として、買い物と食生活の変化をみた。
1）買い物先と買い物の交通手段；人間は買い 物をする動物1）
人間は買い物をする動物だ。太古の昔、人間 は野原を駆け巡り、イノシシ、ウサギ、キジを 捕まえ、ドングリ、クリを採取して、生活をし ていた。やがてブタ、ウサギ、ニワトリを飼 い、田畑を耕すようになった。しかし、現在で は買い物をすることにより、生活必需品を手に いれる。人間は買い物をする動物だ。人間は 「野原を走り回る」動物から、「車でスーパーに 行き、買い物をする」動物へと変貌した。買い 物先は1991 年では大型店が20 ％だったが、 1999 年では大型店は42 ％、2000 年では44 ％ に倍増した。2001 年では50 ％、2004 年では 大型店は83 ％に増加した。ほとんどの人は大 型店舗で買い物をする。
買い物の交通手段としては1991 年では自家 用車が38 ％だったが、2004 年では車は76 ％ に増加した。1991 年では徒歩は55 ％だった が、2004 年では14 ％に著減した。
運動量は確実に減少している。また自家用車 の保有率も増加している。2 人に車1 台の割合 だ。成人のほとんどが車をもっている。沖縄は 車社会だ。
生活習慣の目安として買い物の交通手段と買 い物先を調べた。人間は「野原を走り回る」動 物から、「車でスーパーに行き、買い物をする」 動物へと変貌した。
2）食生活---外食
食生活を調べた。本土に比べ沖縄では外食す ることが多い。
洋風ファースト・フードを利用する人が多 い。マクドナルド、ケンタッキー・フライド・ チキン、モスバーガー、シェーキーズの都道府 県別の人口1 万人あたりの店鋪数をみると沖縄 が１位である。2 位以下の東京、神奈川、千葉 などの大都市を大きく引き離している。またハ ンバーガー店の人口当たりの割合をみると沖縄は全国1 だ。2 位の東京、神奈川の2 倍に相当 する。沖縄ではハンバーガー店が多い。ファー スト・フード店利用者は高脂血症になる。
沖縄県人の栄養素別摂取構成比をみると脂肪 は31 ％だ。脂肪摂取の全国平均は26 ％だ。厚 生労働省は20 ～ 25 ％を推奨している。1960 年代の終わりから沖縄県は25 ％を超えている。 1980 年代に全国平均は25 ％になった。現在、 脂肪摂取の全国平均は26 ％だ。
沖縄では糖尿病が増加した。肥満、高脂血症 が多い。脂質摂取量が多く、高脂血症が多い。 運動量は少ない。
6．沖縄の糖尿病増加の背景
｢沖縄の糖尿病有病率増加｣は「沖縄県人特有 の遺伝的基盤のうえに、運動量が少ない、脂肪 摂取量が多い、肥満が多いなどの環境因子が加 わったため」だ。沖縄は車社会だ。運動量が少 ない。脂肪摂取量が多い。沖縄の食事がアメリ カ化した。また沖縄では昔から豚肉を食べてき た。沖縄県人は脂肪好きだ。｢沖縄の糖尿病増 加｣は「沖縄県人特有の遺伝的基盤のうえに、 運動量が少ない、脂肪摂取量が多い、肥満が多 いなどの環境因子が加わったため」だ。沖縄は 車社会だ。運動量が少ない。脂肪摂取量が多 い。沖縄の食事がアメリカ化した。沖縄県人は 脂肪好きだ。
7．長寿県沖縄
「長寿県沖縄の未来」を明るくしよう。｢沖 縄の糖尿病有病率増加｣は「沖縄県人特有の遺 伝的基盤のうえに、運動量が少ない、脂肪摂 取量が多い、肥満が多いなどの環境因子が加 わったため」だ。沖縄は車社会だ。運動量が少 ない。脂肪摂取量が多い。沖縄の食事はアメリ カ化した。また沖縄県人は豚肉を食べてきた。 沖縄県人は脂肪好きだ。｢沖縄の糖尿病有病率 増加｣は「沖縄県人特有の遺伝的基盤のうえ に、運動量が少ない、脂肪摂取量が多い、肥 満が多いなどの環境因子が加わったため」だ。 沖縄は車社会だ。運動量が少ない。また脂肪 摂取量が多い。糖尿病を予防するには運動量 を増加し、脂肪摂取量を少なくすることが大切 だ。できるだけ歩くようにし、脂肪の多いもの を食べないようにする。運動と栄養から健康づ くりをする。「Lifestyle 改善」で糖尿病は予 防できる2 ～ 4）。
2008 年（平成20 年）4 月から特定健康診 査・特定保健指導が始まった。特定健診を受け た人のうち、生活改善が必要とされた保健指導 対象者の割合が沖縄県は21.3 ％で、全国ワー スト1 位である。全国平均は15.3 ％だ。沖縄県 人は肥満が多い。
2008 年（平成20 年）度の全国特定健診の対 象者数は2,391 万1,943 人だった。このうち、受 診者数は676 万6,782 人で、受診率は28.30 ％ と3 割に満たない。受診率が高かったのは宮城 県の4 3 . 7 1 ％ で、低かったのは広島県の 16.07 ％。沖縄の受診率は25.96 ％。低い。
沖縄の糖尿病を予防するには運動量を増加 し、脂肪摂取量を少なくすることが大切だ。で きるだけ歩くようにし、脂肪の多いものを食べ ないようにする。食事と運動から、肥満、高脂 血症、糖代謝異常を改善する。沖縄の糖尿病を 予防する。糖尿病を克服し、沖縄を長寿県に！ 糖尿病早期発見、早期治療で沖縄を長寿県に！
文献
1）Takasu N; Influence of motorization and supermarketproliferation
on the prevalence of type 2 Diabetes in
the inhabitants of a small town on Okinawa, Japan.
Internal Medicine 46: 1899-904, 2007
2）Eriksson KF, Lindgarde F; Prevention of type 2
(non-insulin-dependent) diabetes mellitus by diet and
physical exercise. The 6-year Malmo feasibility study.
Diabetologia. 34: 891-898, 1991
3）Tuomilehto J. et al; Prevention of type 2 diabetes
mellitus by changes in lifestyle among subjects with
impaired glucose tolerance. New Eng J Med 344:
1343-1350, 2001
4）Diabetes Prevention Program (DPP) Research Group;
Reduction in the incidence of type 2 diabetes with
lifestyle intervention or metformin. New Eng J Med
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