沖縄県立南部医療センター・こども医療センター
中矢代 真美
SIDS の診断基準は
それまでの健康状態および既往歴からその死 亡が予測できず、しかも死亡状況調査および解 剖検査によってもその原因が同定されない、原 則として1 歳未満の児に突然の死をもたらした 症候群。
平成17 年以後は日本で病理解剖が義務づけ られ、ほかの原因疾患がみつからない場合にの みこの診断名を付けるようになりました。日本 では出生した赤ちゃん4 , 0 0 0 人の内1 人が SIDS で亡くなっており、平成19 年度の死亡 数は158 人で乳幼児の死亡原因の第3 位。欧米 では死亡原因の第1 位でした。1 歳未満の、特 に4 〜 6 ケ月の赤ちゃんが発症し、1 歳を越え た子では稀ですが、除外診断ではありません。 発症原因は不明ですが、呼吸をつかさどる脳の 機能と関係があると考えられています。眠って いる赤ちゃんの呼吸が、一時的な気道閉塞によ り止まったときの覚醒反応が、後にSIDS で亡 くなった赤ちゃんでは遅かったという報告もあ ります。また、イタリアの報告で新生児期の心 電図上のQT 延長があった乳児にSIDS の頻度 が有意に高かったとの報告もありますが、 SIDS の原因はまだわかっていませんが、育児 環境のなかにSIDS の発生率を高める3 つの因 子があることが、これまでの研究で明らかにな ってきています。
1.うつぶせ寝
うつぶせに寝かせたときの方が、あおむけ寝 の場合に比べてSIDS の発症率が高いというこ とがわかっています。うつぶせ寝がSIDS を引 き起こすものではありませんが、医学上の理由 でうつぶせ寝をすすめられている場合以外は、 赤ちゃんの顔が見えるあおむけに寝かせるよう に指導が必要。特に、自宅だけでなく保育園な どの昼寝時にも注意が必要。
また、なるべく赤ちゃんを一人にしないこと や、寝かせ方に対する配慮をすることは、窒息 や誤飲、けがなどの事故を未然に防ぐことにな ります。
2.喫煙
たばこは、SIDS 発生の大きな危険因子で す。両親が喫煙する場合、両親が喫煙しない場 合の約4.7 倍もSIDS の発症率が高いという研 究結果もあります。妊娠中の喫煙は、おなかの 赤ちゃんの体重が増えにくくなりますし、呼吸 中枢にもよくない影響を及ぼします。妊婦自身 の喫煙はもちろんのこと、妊婦や赤ちゃんのそ ばでの喫煙もよくありません。乳幼児と同居さ れている家族は禁煙の指導を受けるよう、指導 することが望ましいです。
3.人工ミルク
母乳で育てられている赤ちゃんは、人工栄養 の赤ちゃんと比較してSIDS が起こりにくいと 考えられています。母乳による育児が赤ちゃん にとって最適であることは良く知られています。 人工乳がSIDS を引き起こすものではありませ んが、できるだけ母乳育児をすすめましょう。
乳幼児突然死症候群(SIDS)の大半は、最 も社会的に脆弱な生後6 ヵ月未満の乳児であ り、またその発症に保育環境が関与するところ から、適切な保育環境が重要であること、母親 や父親、その家族の存在が大きいこと、などを 一般社会に啓発していくことが重要と言われて います。
かかりつけ医を始めとして、乳幼児の家族に 関わる医療従事者からの協力をよろしくお願い します。