沖縄県医師会 > 沖縄県医師会の活動 > 医師会報 > 11月号

九州医師会連合会平成21年度 第1回各種協議会

3.地域医療対策協議会
(医療提供体制の再編、新型インフルエンザを含む感染症対策)

副会長 玉城 信光
常任理事 安里 哲好
理事 宮里 善次

去る9 月26 日(土)、ホテル日航福岡におい て開催された標記協議会について、以下のとお り報告する。当日は、日医から飯沼・内田両常 任理事にもご出席いただいた。

協 議

(1)〜(6)については、紙面回答とし、特に 協議は行わなかった。(以下、概要)

(1)新型インフルエンザ流行に伴う、治療薬 のタミフル・リレンザ、検査キット、マス ク、消毒薬の供給対策について(鹿児島県)

<提案要旨>

新型インフルエンザ(A/H1N1)の流行によ り、治療薬や検査キット、マスク、消毒液など が各医療機関に、安定的な供給がなされない状 況にある。

厚労省の指針に基づき、各県、原則全医療機 関で新型インフルエンザを疑う患者についても 診療を行う体制へ移行していると思うが、上記 の治療薬・医療機材などの供給体制について、 各県の対策状況をご教示いただきたい。

また、本件について、日本医師会と厚生労働 省では、どのような協議がなされているのかお 伺いしたい。

<各県回答>

佐賀県では、治療薬の供給については、卸業 者と県行政との連携体制が組まれている。検査 キット、マスク、消毒液については、一時供給 不足の状況にあったが、幸い混乱を招く状況に は至っていないと回答があった。

宮崎県では、県行政が卸業者の全数を把握し て、卸業者と連携して医療機関への納入の数量を調整している。検査キット、マスク、消毒液 については、在庫不足であったと回答があった。

沖縄県では、11 万2 千人分のタミフルを備蓄 している。また、今後3 年間で沖縄県の人口の 45 %分を備蓄する予定である。検査キット、 マスク、消毒液については供給する予定はない と回答した。

大分県では、県行政を通じ卸業者に安定供給 を要請していると回答があった。

長崎県では、治療薬は十分に備蓄されてお り、今冬の大流行を考えても不足するとは考え ていないと回答があった。

熊本県では、15 万4 千人のタミフルを備蓄し ている。また、今後3 年間で18 万4 千人のタミ フル、1 万8 千人のリレンザを備蓄予定である。 感染防護服については、国の補助事業を活用 し、整備を行うこととしている。検査キットに ついては県行政による特別な供給体制は行われ ていないと回答があった。

福岡県では、治療薬・検査キットについて は、県行政と卸業者が流通分の在庫調査を行っ ている。流通分が不足した場合には、県行政が 調整を行い、備蓄分のタミフルが1 時間以内に 医療機関に届けられる体制になっていると回答 があった。

(2)新型インフルエンザ情報の伝達のあり 方について(沖縄県)

<提案要旨>

新型インフルエンザの診療体制は県知事を対 策本部長として、二次医療圏ごとの診療体制が 組まれました。

沖縄県では(国→県→県医師会、保健所→各 地区医師会→地区医師会員)への通達が必ずし も円滑とは言えず、地区医師会員の間で情報共 有化のタイムギャップが生じました。

特に地区医師会員への通達段階で格差がでた ように思います。

情報の迅速な共有化のあり方について、特に 工夫されたことがあればご教示いただきたい。

<各県回答>

各県ともに、メーリングリストの構築、国→ 県→県医師会→群市区医師会→地区医師会員の 順で文書を送付及びホームページに専用欄を設 けて情報伝達を行っている。また、鹿児島県、 宮崎県では独自のFAX ニュースを作成し全医 療機関に一斉送信していると報告があった。

今秋に備えて、国から地区医師会員までの情 報伝達網をピラミッド化し、情報を一本化する ことが重要であるとして意見がまとめられた。

(3)新型インフルエンザ対策について (大分県)

<提案要旨>

世界中で、蔓延している新型インフルエンザ については、各県で対策がとられていることと 思います。

本会においては、国内発生後、各医療機関か ら簡易検査によりA 型インフルエンザが判明し た際には、各医療機関より直接、FAX にて報 告していただいている。

また、新型インフルエンザの県内発生後は、 クラスター発生時の早期把握のため、A ・B に 関わらず、インフルエンザと診断した際には全 例を報告いただいている。

6 月19 日より国の方針が変わり、全医療機 関で対応となりました。指針に示すとおりには 全医療機関では困難もあると思われる。

そこで大分県では、通常季節性インフルエン ザを診療している医療機関での対応とし、院内 感染対策を示した。

また、マスク・消毒薬などの安定供給につい て自治体等へ働きかけをすべきと考えるが、如 何か。

関西などインフルエンザが蔓延した地区では 慢性疾患患者の通院控えなどによる減収が相当 大きかったとの情報があります。日医としては 何らかの経済的な支援を国に要請すべきではな いだろうか。

「発熱外来機能を有する医療機関」について 日医として何らかの指針なりを示されるお考えはあるのだろうか。

せめて全九州で統一した対応が望ましいと考 えるが、如何なものか。

今秋に備えての日本医師会及び各県の対応策 等、その状況についてご教示いただきたい。

<各県回答>

鹿児島県では、簡易検査によりA 型インフル エンザ陽性の場合は、FAX で報告をいただい ている。また、医療体制については、対応でき ない医療機関を照会し保健所用にリストを作 成。8 月1 日から原則、全医療機関で対応する 体制になっている。院内感染対策については、 各医療機関に任せているのが実情であると回答 があった。

佐賀県では、「発熱外来機能を有する医療機 関」については、空間的・時間的隔離が難しい 場合に、「佐賀県新型インフルエンザ専門家会 議」において取りまとめた院内感染防止対策を 講じていると回答があった。

宮崎県では、「発熱外来機能を有する医療機 関」については、対応策は現時点では考えてい ない。九州で統一したものができれば参考にし たいと回答があった。

沖縄県では、院内感染対策マニュアルは作成 していないが、今後、他都道府県の状況を参考 に検討する。また、「発熱外来機能を有する医 療機関」について、国は何らかの指針を示す必 要があると回答した。

長崎県では、神戸で新型インフルエンザの流 行が発生した時点で、指定医療機関以外の一般 医療機関も新型インフルエンザ診療に参加する と決めていた為、国の方針変更によっても殆ど 混乱しなかった。また、主に空間的隔離を推奨 し、各施設で可能な範囲で対策をとってよいと している。しかし合併症を有する一般患者の感 染防護や感染した場合の迅速な診療開始等には 特別な注意が必要である旨を強調していると回 答があった。

熊本県では、医療機関からの届出について は、国の示した指針通り、7 日間以内に複数の インフルエンザの発生を把握した場合のみで、 集団発生例については患者の受診履歴に基づ き、保健所からの連絡を受けた医療機関からの 届出となっていると回答があった。

福岡県では、季節性インフルエンザと同様の 院内感染防止対策により、原則、全ての医療機 関で診療を行う体制とした。また、院内感染防 止対策については、各医療機関の判断で行うこ ととした。今冬の流行拡大を想定すれば、季節 性インフルエンザワクチンの接種を徹底し、季 節性の発症数を抑えること、手洗い、うがい等 の公衆衛生対策を徹底することが非常に大きな 意味を持つ。現時点から県民への周知が必要と 考えると回答があった。

(4)新型インフルエンザに対する医療体制 について(長崎県)

<提案要旨>

国は6 月19 日、秋冬の新型インフルエンザ の大流行を見越して新型インフルエンザ対策の 変更を発表した。感染拡大のための封じ込めを 中止し、重症者の治療へと重点を移したもので あり、一般医療機関が季節性インフルエンザに 準じた体制で診療に参加することを認めたもの と解釈される。その点は現実的な方法であると 評価するが、実際の運用においては幾つかの問 題点があると考える。

(1)外来における患者隔離法について

 国は診療所にも厳しい感染対策を要求し ているが、待合いが狭い診療所がどの程度の 感染対策を行えばよいか悩ましい問題であ る。長崎県では、患者・診療機関双方にと って実施困難な時間的隔離よりも空間的隔 離法を推奨し、最低、有熱者にマスクを装着 させ、その他の者となるべく離して座らせる 方法で良いと通知している。貴県はどのよう に会員を指導されておられるか。

(2)医療従事者の補償について

 新型インフルエンザの外来・入院診療に 携わる医師の障害補償や休業補償について 県と交渉中であるが、適当な民間保険がないため交渉が行き詰まっている。貴県の状 況は如何か。

(3)新型インフルエンザ患者受入可能な病床 数について

 長崎県は県下全病院に対し、新型インフ ルエンザ患者受入可能な病床数の調査を行 い(21 年7 月)次の結果であった。

  • ○受け入れ病院数73/164(45 %)
  • ○受け入れ病床数 431/12,565 (一般病床数)(3.4 %)

 国は一般病床の約10 %の病床確保を想 定しているようであるが、長崎県の受け入 れ病床数は少なすぎると思われる。貴県で の状況は如何か。

<各県回答>

(1)外来における患者隔離法について

 各県ともに、季節性インフルエンザでの対 応を前提としており、各医療機関の対応に 一任されているのが現状であると報告があっ た。また、大分県では、院内感染対策とし て「一般医療機関向けインフルエンザ診療マ ニュアル」を作成したと報告があった。

(2)医療従事者の補償について

 各県ともに、各県行政へ要望は行ってい るが、明確な回答がないとの報告があった。

 国は、医療従事者及び医療機関に対する 補償制度を創設されるべきであるとして意 見がまとめられた。

(3)新型インフルエンザ患者受入可能な病床 数について

●鹿児島県:特に調査は行っていない。

●佐賀県:特に調査は行っていないが、入院 が必要と思われる患者については、5 の感 染症指定医療機関、12 の大学病院、協力 医療機関が中心になり受け入れることにな っている。

●宮崎県:人工呼吸器のある病院全てに入院 を引き受けてもらえるよう行政が働きかけ ることとなっている。

●沖縄県:県立の5 病院が感染症指定医療機 関に指定されており、感染症に対応した病 床数は18 床となっている。また、感染拡 大期においては、民間病院の病棟を活用し て可能な限り対応することとしている。

●大分県:現在48 医療機関にて、約1,000 床の調整が出来ている。

●熊本県:現在38 医療機関にて、約1,100 床の調整が出来ている。

●福岡県:現在78 医療機関にて、約3,300 床の調整が出来ている。

(5)新型インフルエンザに関する行政との 連携並びに医療機関への情報の周知方法 について(熊本県)

<提案要旨>

厚生労働省から平成17 年度に新型インフル エンザ対策行動計画が出された後、本県では郡 市医師会担当理事連絡協議会、県行政との打合 せ会議を開催した。

今回、新型インフルエンザA/H1N1 が発生 してからは、更に県行政との連携を密にし、発 熱相談センターなど県の対応や備蓄タミフルの 放出方法などについて協議を重ねてきた。ま た、日医や県からの情報提供を受け、郡市医師 会への周知や医療機関を対象とした研修会を数 回開催したが医療現場への情報伝達の難しさを 感じた。

今秋以降の第2 波発生の医療体制に向けて、 各県医師会の取組みと県行政との連携体制、医 療機関への情報周知体制をご教示頂きたい。

<各県回答>

各県ともに、各県行政と頻回にわたり会議を 開催し、新型インフルエンザの医療対応体制、 今秋以降の新型インフルエンザ対応体制等、連 携強化を図っている。

(6)新型インフルエンザ(A/H1N1)に関す る日本医師会の取り組みについて(福岡県)

<提案要旨>

6 月19 日の「医療の確保等の運用指針」の改定に伴い、本県においては、現状の新型イン フルエンザ(A/H1N1)に対しては、季節性イ ンフルエンザと同様の院内感染防止対策等によ り、7 月23 日から原則全ての医療機関において も診療を行う体制へと移行した。

今回のウイルスについては、毒性が弱いため に上記の対応も可能であったが、強毒性の新型 インフルエンザが発生した場合には、医療提供 側においても混乱が生じることは、想像に難く ない。そのため国は、毒性の段階別にしっかり とした医療対応方針を策定する必要がある。ま た、医療従事者及び医療機関に対する補償制度 について、本県から、平成21 年5 月1 日付け で、日本医師会に対し要望書を提出している が、国の制度として創設されることを強く要望 する。

以上を踏まえ、新型インフルエンザに対する 日本医師会の取組みについてお伺いしたい。

また、各都道府県における状況の把握(情報 収集)や、毎年度3 月に開催されている日医感 染症危機管理対策協議会を、今冬の本格的なシ ーズンを迎える前に開催し、モデルケースとし て神戸など感染者が多数発生した地域から、こ れまでの経緯や取組みをご報告いただく等の対 応も有効ではないかと考えるが如何か。

<各県回答>

各県ともに、国は、毒性の段階別にしっかり とした医療対応指針を策定する必要があるとと もに、医療従事者及び医療機関に対する補償制 度を創設されるべきであるとして意見がまとめ られた。

<沖縄県の経緯や現況、問題点等について報告 及び質疑応答>

沖縄県より概ね以下のとおり報告した。

沖縄県の医療提供体制とその他の問題点

1. 各地区で医療体制と流行状況が異なる。

2. マスコミの対応

沖縄県医師会は年4 回ほどマスコミとの懇談 会を行っており、今年は5 月と9 月に新型イン フルエンザに関する懇談会を行った。正しい知 識とパニックにならないような報道のお願いを した。また、患者の半分が15 歳以下であるた め、うがい、手洗い方法等を具体的に報道して ほしい旨お願いをした。

3. 沖縄県がCM を作成。

4. 第2 波にむけてポスター作成している。

診療治療に関する問題点

1. 重症化の症例はほとんど、タミフル処方が 48 時間を超えている。

2. キット検査ではほとんど陰性であるが、入院 例は症状の進行が非常に速く、初日か2 〜 3 日で重症化する。

<質疑応答>

長崎県)沖縄県では、時間外診療の対応は基本 的に夜間となっていますが、週末の夜間も対応 していたのでしょうか。

沖縄県)新型インフルエンザという病気の問題 は、診断と治療が難しいということではなく、 患者が殺到することが何よりの問題であると感 じた。昼間はかかりつけ医で対応できるが、時 間外や日曜祝祭日、夜間等は対応が困難にな る。よって、各地区医師会の協力により、週末 の夜間も時間外診療を行っていた。

大分県)今般、大分県では軽症の患者でも救急 病院等に殺到している状況にある。そこで、沖 縄県ではどのようにマスコミ対応していたの か。また、今冬に向けての日本医師会のマスコ ミ対応についてご教示いただきたい。

沖縄県)沖縄県では、一人目の死亡例がでた翌 日に、発熱、咳だけの症状が軽い患者に関し て、翌日にかかりつけ医を受診するように報道 してもらった。

日医)報道のあり方に関しては、早速、厚労省 やマスコミに対し国民の不安を煽らないよう要 望する。

福岡県)日本医師会は、これからの流行シーズ ンに向けて、厚労省やマスコミに対し早急に対 応していただきたい。

鹿児島県)慢性疾患の定期受診患者に対して、 電話による診療で新型インフルエンザが診断で きた場合、抗インフルエンザ薬を処方できると ういう厚労省の考えは、現場を無視している。 この件に関し、日本医師会の考えをご教示いた だきたい。

日医)原則、慢性疾患を有する定期受診患者を 対象とする。ただし、インフルエンザ様症状を 訴えて受診した患者に対して、解熱剤や鎮咳薬 を追加処方する場合など、同一の急性疾患にお いて最近の受診歴があり、かつ医師が電話によ り適切に診療できると判断した場合には、電話 による診断で抗インフルエンザ薬を処方できる。

福岡県)沖縄県では、医療従事者に対しタミフ ルの予防投与は行っていたのか。

沖縄県)沖縄県では、医療従事者に対し予防投 与を行っていたが、厚労省の見解が二転三転 し、対応に困った。

日医)医療従事者へのタミフルの予防は、現場 の先生方の判断により対応していただきたい。

佐賀県)いわゆる7 : 1 や10 : 1 といった看護 配置がくずれた場合の保険上の問題について、 日本医師会の見解をご教示いただきたい。

日医)新型インフルエンザの流行に伴う診療報 酬上の臨時的な取扱いについて、1) 1 日あたり 勤務する看護師及び准看護師又は看護補助者の 数、看護要員の数と入院患者の比率並びに看護 師及び准看護師の数に対する看護師の比率につ いては、暦月で1 ヶ月を超えない期間の1 割以 内の一時的な変動。2)医療法上の許可病床数が 100 床未満の病院及び特別入院基本料を算定す る保険医療機関にあっては、1 日あたり勤務す る看護師の比率については、暦月で3 ヶ月を超 えない期間の1 割以内の一時的な変動である場 合、診療報酬上、問題はない。

熊本県)沖縄県では、患者が入院する場合、陰 圧病棟と一般病棟のどちらを使用したのか。

沖縄県)陰圧病棟を使用したのは、感染拡大初期のみで、後は、一般病棟を他の患者とは部屋 を区切って対応した。4 床二つで十分に対応可 能である。

長崎県)長崎県では、季節性インフルエンザに 準じた対応を行っている。時間的隔離方法は難 しいと考えるので、空間的隔離方法を会員へ推 奨している。また、蔓延し空間的隔離方法で対 応困難になった場合に、時間的隔離を検討して いきたい。

福岡県)福岡県では、情報の伝達に問題があ り、各病院の対応にばらつきが見られる。県行 政と対応について協議中であるが、他県の対応 についてご教示いただきたい。

沖縄県)沖縄県における情報の伝達について は、病院間だけでの連携には限界がある。県行 政と各保健所、各地区医師会と連携し、情報の 一本化を図った。

佐賀県)県が単年度の臨時交付金を用いて、独 自に補償制度を創設するよりも、国の責任にお いて、恒久的な補償制度を創設するよう、県に 対し要望しているが、明確な回答がない。各県 はどのように対応しているか。

日医)5 月15 日に発熱外来等に出務する医師 等の感染に対する補償制度について、厚労省に 要望した。2 〜 3 日後に舛添厚労大臣から検討 する旨、回答があった。

沖縄県)新型インフルエンザのワクチン接種が 始まるが、厚労省の見解では、対象は新型イン フルエンザ患者の診療に直接従事する医療従事 者となっているが、現実的には、医師、看護師 よりも受付対応職員のほうが濃厚接触する可能 性が高い。この件について日本医師会の見解は いかがか。

日医)まず、季節性インフルエンザワクチンの 使用に関して、一部の医療機関において大量に 注文し、その多くが後に卸売販売業者へ返品さ れる事例がみられ、市場に流通するワクチンの 量に影響を与えるなどの問題があった。季節 性、新型を問わず、インフルエンザワクチンの 流通を確保するために、さらに適正使用を徹底 することをお願いしたい。また、新型インフル エンザワクチンの優先的に接種する対象につい ては、1)インフルエンザ患者の治療に直接従事 する医療従事者、2)妊婦及び基礎疾患を有する もの(このなかでも1 歳〜小学校低学年に相当 する年齢の者の接種を優先)、3) 1 歳〜小学校 低学年に相当する年齢の者、4) 1 歳未満の小児 の保護者及び優先接種対象者のうち身体上の理 由により予防接種が受けられない者である。な お、1)の医療従事者については、インフルエン ザ患者の治療に直接従事する医療従事者が基本 となっているが、その他の職種であっても、 個々の医療機関の適切な判断で対象として差し 支えない。

鹿児島県)基礎疾患ごとに病院を分けて入院を させるシステムを構築できれば、もっとスムー ズに治療が可能になるのではないか。

日医)各地域によって診療支援の形態が異なる ため、日本医師会としては、具体的な指示はで きない。各地域の行政と連携し、地域にあった 診療支援を構築することが必要だと考えている。

沖縄県)当件については、二次医療圏の地域医 療を中心に、行政等と情報の交換を密に行い、 システムを構築することが大事である。

鹿児島県)今後の参考としたいので、沖縄県全 体で、成人と小児の入院は、これまでにどれく らいの患者がいたのか具体的な数字をご教示い ただきたい。

沖縄県)現在、県対策本部と琉球大学附属病院 の感染症専門チームがデータを収集中で、具体 的な数字が把握できたら報告致します。

(7)県医療対策協議会および県保健医療協 議会の現状について(沖縄県)

<提案趣旨>

県医療対策協議会における医師確保および県 医療対策協議会作業部会や保健医療協議会にお ける4 疾病5 事業の推進は、県行政が中心か、 県医師会が中心か、それとも両者に加え大学病 院・各医療機関も含め密なる連携を取って推進 しているか、各県の現状をご教示いただきたい。

※紙面回答のみ

協議事項(8)〜(11)については、特に協 議はせず、日医からのコメントをいただいた。

(8)「医師の適正配置」について(宮崎県)

<提案趣旨>

昨年10 月に某新聞社から「医師の適正配置」 の提言が発表された。医師の適正配置は喫緊の 課題に対しての即効性のある対策であると考え る一方で、種々の問題もはらんでいる。マスコ ミ主導ではなく、医師会が主体となり、この問 題の議論を深め、国へ積極的に働きかけていか なければならないのではないか。

医師にも当然職業選択の自由が保障されるべ きであるが、配置に関して一定の規制をつけな ければ、地域医療、救急医療の崩壊は進んでい く現実がある。

医師会として「医師の適正配置」を推進して いくべきか、行うのであれば、診療科偏在の是 正を優先するのか、地域偏在の是正を優先する のか日医の考えを伺いたい。

<内田常任理事コメント>

本件は、日医の地域医療対策委員会でも検討 しているところであるが、非常に大きな問題と して診療報酬の大幅な引き上げなど、様々な課 題がある。今回、民主党が医師養成数を1.5 倍 にするというマニフェストを掲げているが、日 医の見解としては、1.5 倍が実効性を持つのは 恐らく10 年後であろうと考えている。1.5 倍に した後の最初の卒業生が出る頃には、どれだけ 減らすかという事を考えていかなければならな い。大学病院の病院長学部長会議の中でも同じ ような意見が出ている。また、財源の確保をし っかりしていただかなければ話にならない。

医師の適正配置について、強制力を持ったシ ステムを作るかどうかという事について日医は 反対である。強制力を動かして本当にインセン ティブが与えられるのかという事や法的な問題 など、いろいろな課題が出てくる可能性がある。

まず、診療科の偏在や地域の偏在の基になっ ているところを正す事が先決である。それには 医療費の大幅な引き上げが必要で、診療報酬や 今回の地域医療再生のような地域で着手できる 事などの条件づいたものが必要である。また、 医学部の地域枠や奨学金制度の利用による対応 なども必要となってくる。

その他、ICU など救急医療の診療是正に対す るキャリアアップの評価、待遇の問題、子供の 育児や女性医師への配慮(代診医師の活用)、 外科・産婦人科等における医事紛争や訴訟リス クの軽減等々を早急に対応する必要があるとい う主張を持っている。

いずれにしても、地域特性が大きなファクタ ーになるので、県単位でこうした課題を検討す るシステムも必要となってくると思われる。日 医の中では地域医療ネットワーク(大学、病 院、医師会、行政が参画)を設置し、少なくと も地域の問題を洗い出すという点で役立つので はないかと提案しているところである。

〔長崎県医師会より『医師不足に関するアンケ ート調査・結果』の報告〕

平成20 年7 月、長崎県の医師不足の実態を 明らかにするため、県内の病院に対してアンケ ート調査を実施したので、調査結果について以 下のとおり報告があった。

1.対象病院数161、回答数82、回答率50.9 %

2.平成18 年度と平成20 年度の勤務医数を比 べてみると、総勤務医数は2 年間で7.4 %増 えていた。地域別には、9 つある地域のうち 長崎・県央・佐世保地域で77 %を占めてお り、地域における偏在が明らかにみられた。

3.現行の医師数と比較し、更に必要と考える 医師数では、70 %の病院が医師が不足して いると回答し、不足医師数は221.6 人(総勤 務医数の26 %)に達した。この結果より、 県内の勤務医数は全国平均を上回るものの (厚労省・病院報告の概況による)、長崎県は 勤務医不足にあると考えられた。

4.過去2 年間の標榜科別の医師の増減と病院 が考える標榜科毎の不足している医師数につ いて、10 %以上増加した科は外科、循環器 科、放射線科で、減少した科は、精神科と小児科であった。 医師不足感が大きい科は、内科系(循環器 科、呼吸器科を含む)、整形外科、麻酔科、小 児科であった。診療科における偏在や細分化 も医師不足感の原因と考えられた。

5.女性医師に対する何らかの支援を行ってい る病院は41.5 %で、女性医師に対する支援 体制はまだ不十分であった。

6.医師不足解消のため、若手医師に特定の地 域医療機関で働くことを義務付けることにつ いては、50 %の病院が賛成又はどちらかと 言えば賛成であった。

以上のアンケート調査結果から、診療科偏在 および地域偏在は明らかではあるが、これとい った対策がないのが現状である。

<主な意見>

・医師の確保に関しては速効性が求められてい るが、世論を含め医師会から先手を打つ形 で議論をした方が良いと考える。日医が各県 の実情を踏まえて攻めていくべきである(宮 崎県)。

・偏在の問題を考えた場合、何も動かない事 には始まらない。何かをしないといけない。 地域で考えた場合、大学病院がドクターバ ンクの最たるものであるので、大学がその 気になって動いていただければ幸いである (長崎県)。

・現在議論されている総合医の問題も絡んでく るのではないか。システム的には速効性の部 分で大きく絡んでくると思われるので、そう いう意味では議論を深めていただきたい。 (宮崎県)。

(9)ナースプラクティショナー(NP)に関 する件について(大分県)

<提案趣旨>

大分県医師会としての本件に関する主張は以 下の如くである。

1.病院内で医師との連携を密にした病院型の 専門(あるいは認定)看護師の導入には賛成 であるが、地域医療の現場に地域医療型の NP を導入することには絶対反対する。

その理由は、地域医療レベルの低下を懸念 するからである。仮にNP を導入した場合、 地域医療レベルは低下こそすれ向上しないと 思われる。それは、現在行われている専門大 学院教育の情報公開不足および(聞き及ぶ範 囲内での)質の低さにあるからである。

2.また仮に長い年月をかけ、質を上げていっ たとしても、地域住民に『2 級医師もどき』 以上のものとして混乱なく受け入れられるの か、その見通しが全く不透明にもかかわら ず、米国で行われているという一点をもって 社会宣伝し、既成事実を作ろうとしている点 は看過できない。

医師不足の解消にNP が役立つという主張が あるが、十分に質が担保されたNP が輩出され る数十年後には逆に医師過多になっている可能 性も十分あると反論したい。したがってNP は 医師不足解消には役立たないばかりか、質の低 下で地域医療にマイナスであると考える。

3.NP 導入を主張するマスコミ、学会、一部 病院団体にも医制の根幹に関わるこの問題を 医師不足面だけで考えるのではなく、地域で の医療体制(質向上に誰が責任を持って取り 組むべきなのか?それは医師ではないの か?)にまで十分考えを巡らし、判断して貰 いたいと思っている。

4.ただし医療職種の業務分担については現行 法内で十分議論し、その上で具体化した形 を示していくこと(例えば平成14 年医政局 長通知における看護師等による注射実施を 可とすることの明文化など)は推進すべきで ある。

5.医療職種の協働は大いに推進すべきで、と くに保健師、訪問看護師との連携強化は医師 会として積極的に取り組む事項であると考え ている。

以上につき、今後NP 問題に関して各医師会が対応する上での参考にして頂き、全国的 な広がりをみせているNP 問題に対する大分県 医師会の考え方にご理解いただきたいと考え ている。

<内田常任理事コメント>

本件については今年の6 月に記者会見で発表 している。

大分の特区について、特区はそもそもモデル 的な事業を地域を限定して実施した上で有効な 政策については全国展開するといったものであ る。ナースプラクティショナーを実際に特区で 行うという事は将来的に新しい職種を創設して 全国展開する事になる。そういう点からは当然 出来ないという事になる。

NP 導入の問題点として、一つ目は国民皆保 険の視点から、NP の導入がもっとも進んでい るアメリカでは民間保険中心であり、公的保険 はメディケア、メディケイドのみである。また、 無保険者が15.3 %に達している。支払い能力 によって受けられる医療に差があり、医療の質 より医療費の安さが優先されることもある。こ のため、医療費が安く済むNP へのニーズもあ ると考えられる。これに対し、日本でアメリカ のようなニーズがあるかどうかは明らかではな い。むしろ、国民皆保険の日本では、国民の多 くが同じ医療を受けられることを望んでいる。

二つ目は医療の質の視点から、診察や診療は 人体に侵襲を及ぼす行為である。また軽微な症 状や症状が安定した時期であっても、常に急変 し重症化したり、全身状態に影響を及ぼしたり するリスクを抱えている。したがって、診察、 治療、処方などは高度な医学的判断及び技術を 担保する資格の保有者によるものでなければ、 患者にとって不幸な結果をもたらすだけでな く、生命をも脅かすことになりかねない。

三つ目は業務分担の視点から、業務分担の拡 大については、現行の医師法、保助看法で十分 対応できる。保助看法には、看護師が「診療の 補助」を行うことが定められているが、補助の 内容までが規定されているわけではない。その 内容は、医師の指示によって、また医療の普遍 化、高度化に応じて変化する。厚労省は、業務 分担に関する検討会の立ち上げを予定している が、日本医師会としても医療現場における実際 の業務を把握し、現行の保助看法の下で「チー ム医療」全体として捉え、メディカルコントロ ールの確立を前提に業務分担の在り方について 検討していきたい。

(10)地域医療再生基金事業に対する各県の 具体的対応について(熊本県)
(11)「地域医療再生計画」の策定と各県の 現状について(福岡県)

<提案趣旨>

本事業における各県の「地域医療再生計画」 策定の進捗状況並びに課題等についてご教示い ただきたい(回答は紙面のみ)。

<内田常任理事コメント>

地域医療再生基金に関しては現在、見直しを するのか凍結するのかという話が出ているが、 日医としては、この基金は診療報酬が各医療機 関に対する対価であるとすると、基金は地域全 体を見渡した中で、どういう事が今後の地域医 療提供体制で必要かというところを考えて付け る基金だと認識している。診療報酬の引き上げ はもちろんの事であるが、地域医療再生基金と いうのは是非とも実現していただきたいと思っ ている。その中で一番力になるのは地域で一生 懸命具体的なプランを立ち上げているところな ので、それを実現するために、地域の代表者 (知事や代議士等)に強く働きかけていただき たいと思う。

具体的には100 億や25 億といった問題もあ るが、何らかの形で都道府県全体に行き渡るよ う働きかけるとともに、今後も継続していける よう政策として訴えていきたい。

今回の基金では、少なくとも地域における医 療課題を的確に浮かび上がらせたという点では 良かったと思う。今後、各県での行政に対する 強い働きかけを是非とも望む。

印象記

玉城信光

副会長 玉城 信光

地域医療対策協議会のメインテーマは新型インフルエンザについてであった。2 時間の協議時 間のほとんどを費やした。

九州各県とも沖縄の取り組みに大変な感心を持って頂いた。新型インフルエンザの流行に対し て医師会の取り組みや救急病院への患者の殺到など、たくさんの質問が宮里理事に浴びせられた。 詳細は前述の報告で述べられるので印象を述べたい。

沖縄の対応がよいのは沖縄県、沖縄県医師会、地区医師会、琉球大学、県立病院、民間の医療 機関の連携が大変よいので、このようにすばらしい体制ができたと考える。これからの課題は琉 大が中心になり分析をはじめている、重症患者の病態分析や今回の対応で不備な点の洗い出し等 をおこない、次の流行に備えることである。新型インフルエンザのおかげで日頃の地域医療の連 携のあり方、非常事態での診療体制等多くのことを学んだと思う。鉄は熱いうちに打っておきた いものである。

医師の適正配置については、様々な問題を内包しており簡単にはいかないであろう。単純に医 師を増やしても次に医師過剰時代が来るかもしれない。私の考えは日本のトップレベルの医療機 関を地方に配置すれば良いのではないかと考える。国立がんセンターを岩手県に持っていく様な ものである。その周りには都会からくる患者さんの宿泊施設を安く作ってあげれば良いのである。 沖縄という地方にこれだけの研修医が集まるのは中部病院が積み上げた実績と現在の各研修群の 努力によるものである。これからもその充実が求められる。

地域医療再生基金に関して、内田常任理事は「診療報酬が各医療機関に来ている対価であるな ら、地域医療再生基金は地域全体を見渡し、どういう方策が地域医療の中で必要かを考えて付け る基金だ」と話した。この基金の話しが出たことで、全国的に自分の地域の医療を真剣に考える 様になったと思う。沖縄県でも沖縄の医療のグランドデザインを描く委員会で話されたことや地 区医師会で話される地域医療の連携が真剣に語られる様になった。時事通信によると新政権でも この基金の予算はつくという話しである。沖縄らしい施策を作り上げたいものである。

新型インフルエンザのおかげで活発な会議になった。

印象記

宮里善次

感染症担当理事 宮里 善次

9 月26 日、ホテル日航福岡にて九州医師会連合会の平成21 年度第一回各種協議会が行われた。 9 月19 日に福岡の担当理事の方から『新型インフルエンザを含む感染症対策』は資料にある各県 の答えを参照にしてもらいたいと軽く流すので、第一波を経験した沖縄県の現状を20 〜 30 分ほ どで報告して欲しい旨の電話を頂いた。

地域医療対策協議会の冒頭、司会から議題の議事進行を変更するとアナウンスがあり、沖縄県 の経験と実情を以下のように報告し、自由討議に入った。

1) 4 月下旬にメキシコで発生報告の2 日後に県医師会と対策本部の合同感染症委員会を開催し、国 のガイドラインにそって、二次医療圏毎に活動することを確認し、関係者のメーリングを作成。

2)二次医療圏毎に、管轄保健所、医師会、県立病院が実務者会議を開催し、医療機関の役割分担 や発熱外来の設置を決定。

3) 6 月29 日に中部地区で第一例発症。その後、急速に感染拡大が始まる。感染拡大は中部から南 部地域へと移行。

4)情報の流れは【県対策本部→県医師会、保健所→各地区医師会→会員】となっているが、各地 区医師会から会員への流れが、医師会間でかなりのばらつきがあった。今回、沖縄県から本協 議会に提出した質問は伝達方法にどんな工夫をされてるか、と云うことであったが、後日、メ ーリングリストを追加することと、最初の死亡例がでた後からは逆に会員の意識が高まり、情 報を要求されるケースが多くなった。

5)最初の死亡例が報告されると、一部の時間外外来に患者が急増。第34 週の8 月16 日に那覇市 立病院の発熱外来が230 人に至り、週末には那覇市医師会が応援。

6) 8 月24 日に県医師会と対策本部、南部医療センターの小児科部長が集まり、『新型インフルエ ンザ小児医療情報ネットワーク』の構築と運用、さらには各地区医師会に日曜祝祭日と輪番制 による夜間診療を依頼。

7)マスコミから軽症はかかりつけ医へ、那覇南部の他の救急告示病院は余裕があるので、そこへ 受診するよう誘導アナウンスをお願いした。

8)幸いにも34 週をピークに減少傾向がみられ、医師会による応援態勢は5 日間で終了となった。

9) 34 週時の定点報告は46。その時に那覇南部は60 で中部は30 と減少傾向にあった。また北部 と八重山はそれから遅れて増加傾向となっており、沖縄県全体をみると、二次医療圏ごとに流 行の実体が異なっており、臨機応変に動くには、二次医療圏と行政の協力が最重要課題である。 情報の迅速化と共有をはかるため。メーリングリストの窓口を広くした。特に感染症を専門と している会員の参加はそれ以後の活動に多いに貢献している。

10)定点医療機関からの報告は1 万人。推定罹患者数は少なく見積もって5 万人で県民の3.6 %が罹 患。入院は246 人(後日判明)。重症化は9 名で死亡は2 名。死亡率は0.004 %でWHO のそれ の百分の一。

11) 沖縄県の場合は二次医療圏毎に保健所と中心となる県立病院があり、医療提供体制を構築する ために地区医師会と協力しやすい体制にあった。

12) 5 月と9 月に県医師会とマスコミとの懇親会を開催し、2 回とも新型インフルエンザについて協 議した。9 月の懇親会では県民向けの分かりやすいキャッチフレーズをつくりませんか、と云 う発案があり、県立中部病院の遠藤先生が提案された『うつらない、うつさない、つぶさない』 を県医師会でポスター作成することになった。

さて、報告後各県から様々な質問を受けたが、質問の内容は来るべき時に備えて、積極的に動 いているように思えない、医療関係者だけが対岸の火事に対しているような印象を受けた。

早急に各県の対策本部がしっかりと医療体制を構築し、医療機関はその役割を明確に協議すべ きであろう。沖縄県の安里常任理事から二次医療圏と行政が何回も協議することが最も重要です と発言があった。

沖縄県では考えて行動する時間もなく、走りながら考えるどたばたとなったが、最小限の被害 でくい止めることができたのは、県対策本部の宮里統括監と糸数班長の働きがあったからだと云 う印象を強くした協議会であった。