副会長 小渡 敬
去る9 月26 日(土)、ホテル日航福岡で行わ れた標記協議会について次のとおり報告する。
開 会
福岡県医師会の山内孝常任理事の司会によ り、平成21 年度第1 回各種協議会介護保険対 策協議会が開かれた。
挨 拶
福岡県医師会の川波壽副会長より、概ね以下 のとおり挨拶があった。
本年4 月に介護報酬改定が行われ、要介護認 定の一部見直しが行われたが、改正後の一次判 定ソフトは軽度化される傾向が指摘され、利用 者や介護現場からの不満もあり、期限付きでは あるが前回の要介護度を選択できるという経過 措置がとられることになった。そして再検証の 上、来月(10 月)から新たな要介護認定制度 が開始されると同時にこの経過措置が廃止され ることになったのはご存知のとおりである。し かしながら、これら一連のことが介護認定審査 会における混乱を更に引き起こし、再検証にお いても、見直しに至るまでのプロセスの不透明 さや、現場の実態を踏まえた十分な審議がない こと等、その本質的な問題は変わっていない。
そこで、九州医師会連合会として、要介護度 認定制度を始め認知症の支援体制や介護職員の 処遇改善等について、現場の実態を明らかにす べく、皆様からご意見を求めたところである。
本日はご提案いただいた14 題の演題を基に、 皆様からの忌憚のないご意見をいただき、介護 現場の業務をより良いものにするために是非と も現場の立場から活発なご議論をお願いしたい。
日本医師会の三上裕司常任理事より、概ね以 下のとおり挨拶があった。
今回、衆議院総選挙において民主党が大勝 し、我々が経験したことのない政権交代が起こ った。従来、小泉改革を始め自民党が進めてい た小さな政府から、民主党は少し大きな政府へ方向転換するという感じがする。医療政策ある いは介護政策の中でも、後期高齢者医療制度や 障害者自立支援制度の廃止、あるいは療養病床 再編の凍結等、我々に非常に大きな影響がある ことがマニフェストの中に書かれており、今後 どうなるか分からないという状況がある。要介 護認定の話以外にも、まだ決まっていないもの として介護従事者の処遇改善の交付金の話もど うなるかが分からない。
今日は先生方の様々なご意見を伺いながら、 新しい政府に対し我々がどのように対応してい ったら良いのかというアイデア等もいただきた いと思っている。忌憚のないご意見をいただき たい。
協 議
<提案要旨>
平成21 年4 月より、要介護認定制度の見直 しが行われたが、改正後の1 次判定ソフトでは 軽度化される傾向にある。導入前の検証が不十 分であったことは、これまでにも指摘されてい たことであるが、その後の検証作業及び今後の 改正の見込みについて、日医の見解及び各県に おける影響についてお伺いしたい。
<提案要旨>
平成21 年度より、全国の要介護認定審査の 平準化を図るため見直しがなされたが、モデル 事業の分析から、要介護度が一律に下がってい ることを指摘する声が各方面から上がり、再検 証結果が出るまで、「前回の要介護度を選択で きる」経過措置が継続することになった。その ため、さらに問題点を増やす結果になってい る。今後、再検証結果により経過措置がなくな った場合、再度混乱が生じることは目に見えて おり二重、三重の混乱を招くことになる。以前 の審査方法が最善とは言わないが、下手なパッチを当てるくらいなら、以前の審査方法に戻す ことを要求する。
その裏付けとして、平成19 年度1 年間のデー タとの比較分析を行った。今後、例数を増やし て、より詳細な検討を行う予定であるが、各県で 同様の検討をされていればご教示いただきたい。
<提案要旨>
4 月導入の介護保険要介護認定基準で従来よ りも介護度が軽くなるケースが相当数ある。ま た、認定審査会で従来の介護度よりも低下し、 必要なサービスが受けられなくなるために審査 委員が従来の介護度に近づけるために理由を付 けるのに長時間を要することがある。更にコン ピュータによる一次判定から動かすことが困難 なために、認定審査会の意味がないので審査委 員を辞退したいと苦情が上がっている。
<提案要旨>
1)要介護認定制度の在り方
今後、要介護認定制度の見直しについては、 社会保障審議会などの公の場で十分時間をかけ 審議し、また審査委員を務める医師の意見が反 映されるよう厚労省に要望する。日医の見解を お伺いしたい。
2)要介護認定支援事業について
本県では、本年度より、各保険者における適 切な審査判定に資することを目的として、福岡 県庁と本会理事(認定審査アドバイザー)が実 際に要介護認定審査の現場に出向き、審査過程 の問題点等を検証する事業が始まった。
本事業が開始してから、驚くほどに各保険者 の独自性が浮き彫りになり、認定審査会の進行 方法や審査過程における新たな問題点が見えて きたところである。
各県における状況や見解等についてお伺いし たい。
○協議事項(1)〜(4)は一括協議。
<提案要旨追加補足>
大分県より、「厚生労働省が見直しを行う度 に制度が悪くなっているような印象を受ける。 また重なる変更により認定審査を行う先生方で も理解が難しくなり、結果として新規に審査員 を確保することが厳しい状況にある。」と発言 があり、熊本県より、「改定により必要な介護 サービスを提供できない。介護保険制度発足時 の理念が無視された改定が行われているように 思う。」と発言があった。
<各県回答>
各県ともに、要介護認定制度の見直しについ ては、導入前の検証の不十分さや、改定に至る までの手順の不透明さが問題であると指摘して おり、今後、恒久的かつ公的な場で制度を見直 す必要があるとの共通の見解が示された。ま た、日本医師会から厚生労働省に対し強く意見 していただきたいと意見がまとめられた。
その他、大分県や福岡県から、認定審査方法 を簡素化することで事務経費を削減し、その分 を介護報酬に充てる等の検討を行ってはどうか との提案も示された。
要介護認定の平準化については、福岡県が取 り組む『認定審査アドバイザー事業』の事例と して、現時点で8 カ所の審査会を確認した結 果、保険者によって審査手順が全く違うことが 分かった等、具体的な事例が報告され、当事業 については、各保険者からも有意義な事業であ るとの評価も受けているとして説明があった。
<日医回答>
日本医師会の三上常任理事より、概ね以下の とおり説明があった。
要介護認定の見直しについては、12 月中旬 の介護給付費分科会の終了直前に突然出され た。これはおかしいのではないかと指摘した が、認定見直しについては介護給付費分科会で の審議事項ではないとして、そのまま突っぱね られたという状態がある。しかし、非常に納得 できないということで、再三に際し検証しろと 言うことを申し上げ、9 月頃から認定見直しに ついての検証をするというような話だったが、 政治的な力を用い厚生労働副大臣から言ってい ただき、4 月から検証検討会をやるということ になった。
これまでに検討会を3 回開催し、問題となっ た点は、非該当が増えるということと要介護5 の 2 割位が要介護4 に軽度化しているという二つの ことがあった。これでは、今まで介護サービスを 受けていた人が受けられなくなる、あるいは要介 護の人が要支援になり施設に入所していた人が 出なければいけなくなるということから、利用者 側あるいは施設系の事業者から何とかしてもら いたいという要望が非常にあった。そのために今 回の経過措置ということが起こった。
今回の見直しは平準化をするためということ で、調査員の主観の入らない形で判断するとし ていたが、実際には矛盾の多い結果が出たとい うことである。また、先程から認定の見直しを やる度に制度が悪くなるという指摘があるが、 これは社会保障費の削減という政府の方針があ ったためである。
今回のテキスト見直しをどうするかというこ とで、今回は、かなりの部分を2006 年度版の 認定調査員用テキストに近づけた形で修正を行 い、もう一度比較シミュレーションするという ことになった。その結果、非該当と判定された 方が3.9 %となり、ほぼ18 年度の判定結果 (3.5 %)と同じ程度に戻っているということで、 2006 年度版の認定調査員テキストに準じた形 で行うということになった。いつから新しい方 式で行うのかということについては、4 月に判 定した方が6 ヶ月経つともう一度経過措置を行 う必要があるということで、10 月1 日から修正 版の調査員テキストで行うことで決定した。
認定審査員の方々から、今回の経過措置につ いては非常にモチベーションが下がることにな ったとして不満やお怒りのお言葉をいただいて いるが、今回の経過措置については、日医が、利用者や施設関係の事業所の先生方のご意見を 反映させてお願いした経緯もあるのでご理解を いただきたい。
今回の新しい方法によって2 次判定の際に重 度判定をすることが難しくなったということが あるが、実際には主治医意見書の特記事項や認 定調査票の特記事項から重度変更の要件や項目 を汲み上げていただきたい。また、樹形図等の 事後検証用参考資料についても本来は付けない としていたが、それが手元にある方が審査し易 いということがあり、今回申し入れを行い、審 査会の別添資料として付けることに決定した。
福岡県が取り組まれている認定審査会アドバ イザーについては、要介護認定業務の平準化を 図る時に非常に重要な取り組みになっていくと 思う。全国一律の基準に基づいて客観的に公平 公正に行われるということが必要だが、実際に は地域格差があるということも事実だと思う。 そのために厚労省も、平成19 年から要介護認 定等の適正審査を徹底するために、認定調査と 介護認定審査会の現場において、要介護認定に 精通した認定適正化専門員を派遣し技術的助言 を行うということを行っている。現在20 年度 については、100 市町村にこういった人達が出 向いているということになっている。また21 年 度においても新しい認定制度が適切に導入され るように助言していくということにしており、 引き続きこれを実施するということである。
<追加発言>
本県から、「財源が無いから若しくは時代が 変わるから要介護の基準を変えるということは おかしいことであり、本来は財源の部分を変え るべきである。また現場ではなく机上で制度を 作るからだんだん複雑になってきている。もっ と根本的な部分からアナログ的な視点から議論 を行うよう、日医は厚労省に対し強く意見すべ きである。」と意見し、日医の三上常任理事か ら、「ご指摘の件については検証会の場でも議 論となった。介護保険は介護度に応じた限度額 の中で(お金ありきで)サービスを選ぶことに なっており、出来高と包括の違いだと考える。 また今回の見直しでは、主治医意見書の特記事 項等から利用者の状況を判断していただく方向 としてアナログ的な部分が強調されている。」 と見解が示された。
<提案要旨>
認知症サポート医養成研修、かかりつけ医認 知症対応力向上研修については、本県において は積極的な予算措置がなされていない状況にあ る。各県の実施状況についてお伺いしたい。
<提案要旨>
厚生労働省は、地域包括支援センターに認知 症連携担当者を配置し、認知症疾患医療センタ ーとの連携を目指しているが、本県では認知症 疾患医療センターが1 施設あるのみで、未だ体 制が整っていない状況である。各県の取り組み についてお伺いしたい。
○協議事項(5)、(6)は一括協議
<各県回答>
認知症サポート医養成研修及びかかりつけ医 認知症対応力向上研修については、各県ともに 毎年実施されており、例年2 〜 7 名程の認知症 サポート医が養成されるとともに、認知症サポ ート医が講師を務め、かかりつけ医認知症対応 力向上研修が実施されていると報告された。本 県においても、認知症サポート医養成研修及び かかりつけ医認知症対応力向上研修は、平成 19 年度から県を実施主体として行われており、 平成19 年度2 名、平成20 年度2 名、平成21 年度2 名と、それぞれ認知症サポート医の養成 がなされるとともに、認知症サポート医になら れた先生が講師となり、かかりつけ医認知症対 応力向上研修も実施されている。
認知症支援体制に係る認知症疾患医療センターの設置については、福岡県、大分県、熊本県 で1 施設が指定を受けており、鹿児島県、長崎 県では、今年度の設置が予定されているとの報 告があった。佐賀県、宮崎県、沖縄県では現時 点では設置されていない状況となっている。
福岡県から、認知症支援の中核となるのがサ ポート医とされているが、具体的に何を行うの かがはっきりとしておらず、県医師会の中に検 討会を立ち上げ役割について議論を行っている が、専門医の定義自体も難しいと追加発言があ り、また大分県からは、厚労省では地域包括支 援センターを中心に虐待の支援等、さまざまな 対策を行っており、地域を支える社会的資源は 整っていると考えるが、統一性がなくうまく活 用されていないと指摘があり、日医として厚労 省の関係部局を一つにまとめてもらい事業の整 理等新しい体制を作っていただきたいと意見が 述べられた。
<日医回答>
日本医師会の三上常任理事より、概ね以下の とおり説明があった。
認知症サポート医については、当初から専門 医的な捉え方をされていた部分があるが、基本 的な考え方としては、かかりつけ医を認知症専 門医に繋ぐような、いわゆるコーディネーター 的な役割を担っていただくことになる。また、 認知症対応力向上研修等の企画立案や研修会の 講師をやっていただくということが基本的なサ ポート医の役割となる。治療を直接行なう専門 医ではないという考え方の基に、現在、全国で 1,000 人弱が養成されている。
国の関係部局を一つにまとめてはどうかとい う大分県の意見があったが、確かに同じような システムが厚労省の中だけではなく省を越えた 部分にもあり、非常に非効率な形で予算が使わ れそうになっているということで、様々な事業 を一括して行なえるようなシステムを作ってい ただきたいということを各検討会で意見として 述べさせていただいている。
認知症疾患医療センターについては、4 月現 在で全国に33 箇所設置されている。センター として指定を受ける際にインセンティブがない ということがあるが、老人保健施設の認知症の 方の合併診断を疾患センターに紹介すればそこ に評価があるということが決まり、これから認 知症が増える中で認知症疾患医療センターを全 国に150 箇所設置するということは重要な任務 であると考えている。
地域包括支援センターについては、現在動い ていないという状態があるが、予算が無いとい うことと介護予防に忙殺されていて本来の仕事 が出来ないという理由から、うまく動いていな いと考えている。予算措置をお願いしていると ころである。
22 年度の予算概算要求については、日医か ら、認知症疾患医療センターの充実評価のため の介護予防の観点から、総合病院における精神 科医の充実と精神病床の確保を要求している。 また、介護サービスの質の向上のために、かか りつけ医の認知症対応力向上研修、サポート医 の養成研修事業あるいは認定審査会の研修費用 の継続実施と拡充を要望している。
<提案要旨>
平成21 年度補正予算にて、介護職員の処遇 改善を目的とした「介護職員処遇改善交付金」 が設けられたが、趣旨としては理解できるが、 その利用法について弾力化していただきたい。
また、今回のような一時的な交付金のような ものではなく、介護事業者が継続的かつ健全に 運営が出来るように介護報酬にて評価していた だきたい。
<提案要旨>
今回介護職員の処遇の改善について補助事業 で対応されるようであるが、補助事業ではなく介 護報酬の中で行われるべきではないか。
<提案要旨>
各県の療養病床再編の進捗状況とその会員へ の対応並びに日医には今後の療養病床再編の動 向を踏まえご教示いただきたい。
<提案要旨>
今回は制度発足後初の3.0 %プラス改定であ るが、これまで平成15 年度-2.3 %、平成18 年 度-0.5 %という過去のマイナス分(老健施設で 平成15 年度-4.0 %、平成18 年度-4.0 %)を補 う上で十分な改定とは言えない。
今改定は、介護従事者の人材確保・処遇会善 に重きを置いたこと、また介護福祉が明文化さ れたことは、介護職の専門性を高める意味から も大いに評価できる。反面、今回のプラス改定 が、景気刺激策の一環で行われているのも否め ない。単発的か継続的か今後運営面から見極め る必要がある。
○協議事項(7)〜(10)は一括協議
<各県回答>
各県ともに、介護職員処遇改善交付金につい ては、施設によっては医療と介護が混在してい るとともに、介護保険は介護職だけでなく栄養 士等も含めたあらゆる職種が携わっているた め、事業者の裁量で介護職員以外にも配分でき るような柔軟な運営を図るべきとの回答が示さ れた。また、介護従事者の処遇改善かつ介護事 業者が継続的に健全な運営を図るためにも、場 当たり的な交付金ではなく、介護報酬全体の底 上げをもって対応すべきであるとして、九州医 師会連合会の総意として、日医から厚労省に対 し強く要望していただきたいとまとめられた。
療養病床再編の進捗状況については、各県と もに、今後の高齢者の増加に対し、削減より増 床が必要であると認識しつつも、国が定めた削減計画に基づいて療養病床の転換等が図られて いると回答があった。福岡県からは、療養病床 については介護療養病床の存続の問題も重要で あるが、経営するための報酬の確保が前提にな ければならないと意見されるとともに、本県か らも、今般の転換施策の一環で設置された介護 療養型老健施設への転換に対するインセンティ ブが未だ不十分である旨を意見した。
<日医回答>
日本医師会の三上常任理事より、概ね以下の とおり説明があった。
今回の介護報酬改定は、介護職員の処遇改善 等が大きな目玉となっていたが、その為には3 % では足りないということを、また基本的には基 本サービス費を底上げしていただきたいというこ とを主張していたが、結果3 %に抑えられた。
介護従事者処遇改善交付金は使い勝手が悪い ということだが、基本的には介護サービス事業 所の経営実態調査の中で、介護職、看護師、准 看護師、ケアマネジャー、PT、OT、栄養士、 その他いろいろな職種の給与が示されたが、介 護職が非常に低い給料だったということから、 介護職の給与を上げようということでこういう 形になった。ケアミックスという点について は、基本的には、一つの介護サービス事業所の 平均的な介護職員の数に対して、1 人当たり月 当たり15,000 円位の手当てが出来るよう計算 した上で、全体の介護収入に何パーセントを掛 けるかという交付率を決めたということであ る。一番大きい掛け率が訪問介護4 %、一番低 い掛け率が介護療養型医療施設1.1 %、訪問看 護については介護職がいないということで0 % 等となっている。そこに何人介護職がいるかと いうことではなく、全体に対して、いわゆる全 収入に対していくら交付するかということであ るので、それを何人で分けても構わない。介護 職の範囲については事業所毎に決めていただい ても構わないということである。また、処遇改 善の方法については、月給を上げるという形で も良いし、ボーナス報酬という形でも構わない。法定福利の上がり分も交付金の中に含めて も構わないとなっている。
療養病床については、民主党のマニフェスト には療養病床再編を凍結すると記載があるが、 介護療養病床を残すかどうかについては法律改 正が必要なのでどうなるか分かり難い。基本的 には削減計画はなくなった。
来年の診療報酬改定で医療療養病床の診療報 酬が改定される。さらに2 年後の24 年に介護療 養型が廃止される。これは介護保険から報酬が 支払われない状況になるということだが、基本 的には介護療養型医療施設に入所されている方 はADL3 の医療区分1、また要介護4、5 の人が 大半である。そこの部分が、現在の要介護4、5 の介護報酬程でなくても1,000 点以上の点数が 付けばおそらく医療療養病床としてもやってい けるということで、来年の診療報酬改定に向け て医療区分1 がなるべく高い点数が付くように、 慢性期入院医療の包括評価分科会の中で申し上 げているところである。現在、医療区分1 の部 分は一日当たりマイナス2,000 円から3,000 円 の赤字が出るような点数設定になっている。そ れが出ないような形にしていただければ良いの ではないかということを常々申し上げている。
<追加発言>
福岡県から、「民主党はマニフェストの中で 介護職員の処遇改善として給与を4 万円上げる という施策を出している。当然これから、政権 与党の中でそういう動きも出てくると思う。あ る意味チャンスなので、日医としても前向きに 提言していただきたい。また、その中身として は交付金ではなく、場合によっては24 年の報 酬改訂を待たずに23 年度中に報酬改正として 行なうということを提案していただきたい。」 と追加発言があった。
福岡県医師会の発言を受け、日本医師会の三 上常任理事より、「マニフェストに書いてある 訳だから、当然、交渉したい。実際に優先順位 と財源が決まらない限りは、なかなか話が進まない可能性が高い。財源の問題が出てくれば優 先的に介護職員の処遇改善に充てていただきた いと意見し、介護報酬のプラス改定にもってい きたいと思う。」と意見が述べられた。
<提案要旨>
医療のバックアップのない介護はありえない という立場から言うと、もっと積極的に医師会 員は介護保険事業への取り組みを行なうべきと 考えるが、各県の会員への働きかけはどのよう に行なっているか。
<各県回答>
各県ともに、医療のバックアップがない介護 はありえないとの認識は示しつつも、医師会員 毎の経営形態の違いや、地域での温度差等があ ることから、介護保険への参入に係る積極的な 取り組みは行なっていないとの回答であった。
<提案要旨>
介護保険での訪問看護は、自己負担率は1 割 で済むと思うが、主治医が訪問看護指示書にタ ーミナルと記載を行なった瞬間に医療保険での 訪問看護に変更を余儀なくされ、3 割の自己負 担が発生することになる。
その結果、必要なサービスをためらう事例の 発生も経験しており、サービス提供者側も利用 者に対し説明が出来ない等制度上の矛盾が発生 している。
在宅を推進したいのであれば、一律自己負担 は1 割とすべきである。
<各県回答>
各県ともに、医療保険と介護保険の整合性は 必要であるとして、長崎県の意見に同意とする 回答が示された。
<提案要旨>
要介護認定を受けた方の身体機能維持には、 身体障害により週2 〜 3 回程度のリハビリテー ションが必要である。
在宅においては、通院が不可能な方は訪問リ ハビリや通所リハビリを利用できるが、ショー トステイ利用時には短期入所療養介護ではリハ ビリが可能であっても、短期入所生活介護では リハビリが制度上できないため、中長期のショ ートステイ利用時にADL の低下とともに、自 宅復帰が困難になる例もあることから日医には 制度の改善を要望していただきたい。
<各県回答>
各県ともに、主治医の指示の下、継続的にリ ハビリを行なうことは必要であり、その為の制 度の改善を期待したいとの回答が示された。
<提案要旨>
介護保険制度改定を2 年後に控えケアプラン 作成システムの根本的改定が必要と思う。主治 医とケアマネジャーの連携が十分とられていな く不適切なケアプランが多い。また、主治医の 処遇がかなり中途半端であり処遇改善が必要で あると考える。
<各県回答>
主治医とケアマネジャーの連携を図るための 施策として、鹿児島県、大分県、本県より、主 治医がケアプラン作成に関与するためのインセ ンティブは不可欠であるとした回答を示し、長 崎県からは、医療経験のないケアマネジャーの 医療の研修義務化や第三者による囲い込みの監 視、ケアプラン評価機構の構築を望むとした意 見が示された。
<日医回答>
日本医師会の三上常任理事より、協議事項 (11)〜(14)について、一括して、概ね以下 のとおり説明がった。
いくつか問題点がはっきりしたと思う。一つ は、会員の介護保険に対する理解度が今一つ進 んでいない可能性が高いことから、介護保険事 業への参入が未だ十分でないということであ る。これからの高齢化社会においては、医療と 介護の両方が不可欠となる。高齢者を対象にさ れている方や在宅をされている方は、これまで の病気を治すという観点ではなく、これからは 生活を支えるという観点でやっていただくこと が大事だとして、日医の介護保険委員会の答申 にも書き入れている。先程あったように、今回 の改定の中では、医療保険と介護保険の整合性 をとるという意味合いの算定内容が決まった。 最終的には、24 年の同時改定に向けて、医療 保険と介護保険の不整合の部分をなるべく合わ せていくということが厚労省の方針なので、今 後そういう形になっていくと思う。これから高 齢者が増えるということで、医師会員が介護保 険の参入を考えていただき、リハビリについて は、急性期、回復期は医療で行い、維持期は介 護保険で行なうという流れになっている。
介護保険は、利用限度額の中でケアプランを 立てていくので、単位数が低ければ比較的利用 されやすくなるということで、訪問看護と訪問 介護では単価の安い訪問介護を選ぶということ が訪問看護の伸びない大きな理由だと思う。
ターミナルケアについては、介護保険で行な う場合と医療保険で行なう場合で自己負担率が 違うということがある。当然、日医としては医 療保険も高齢者については1 割負担として介護 保険に合わせていただくよう主張している。24 年改定に向け、特に整合性をとろうという形 で、今後も主張し続けていきたい。
ケアプラン作成上の問題については、ケアマ ネジャーとかかりつけ医の関係がスムーズに行 っていないという実態がある。一つは、かかり つけ医の敷居が高いという意見がある。かかりつけ医の方からも、利用者の方の立場に立って ケアカンファランスに参加する等のことを医師 会で啓発していくということが大切だと思う。 日医の在宅医研修会の中でも、かかりつけ医と ケアマネジャーのなじみの関係が大切として、 そのために医師とケアマネジャーの懇親会や報 告会等さまざまな取り組みが紹介された。各医 師会においても、このようななじみの関係を作 っていただくと敷居がかなり下がり、今後、か かりつけ医とケアマネジャーの間の医師の疎通 や交流がうまくいくのではないかと思う。
印象記
副会長 小渡 敬
九州医師会連合会の平成21 年度第1 回各種協議会が9 月26 日、福岡県で開催されました。私 は介護保険対策協議会に出席したので会議のなかで印象に残ったことについて若干述べたいと思 います。
今回は各県から14 題の議題が提出されましたが、去った衆議院選挙で民主党が大勝し、政権が 鳩山内閣に代わったこともあり、各議題以上に今後の介護保険制度の行方がどうなるのか、不透 明な状況にあり、これから日医が民主党に対してどのようなスタンスで対応するのかということ に関心が集まっておりました。しかし、新政権が発足して間もないこともあり、日医ではまだ対 応がなされていないようです。各議題については要介護認定制度についての不満が多く聞かれま した。これは今年介護報酬が3 %引き上げられたが、一方で介護認定を厳しくし従来の要介護度 5 が4 になる等、従来より低い認定になることが明らかになったからであります。介護報酬は上げ たといっても介護認定は厳しくするといった、子供だましのような国のやり方に対する不満でし た。これに対して日医の三上裕司常任理事は、今年10 月から元の認定に戻すということを発言し ておりました。また介護報酬改定についても、改定の仕組みが不明瞭であり、医療の診療報酬の ように中医協のような組織を作るべきではないかという意見も多く聞かれました。さらに今回は、 介護職員の処遇改善について「介護職員処遇改善交付金」によって手当すると言っていますが、 これは運用面では不便さがあり、本来介護職員の処遇改善は、介護報酬の改定によって図るべき であるという意見が相次いで上がっていました。今後、民主党政権との交渉に当たってはこのよ うな場あたり的な改正ではなく、現場の意見を充分に反映できるような交渉をして頂きたいと思 います。