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TSUNAMI −新たな災害文化の必要性

石川清和

広報委員 石川 清和

TUNAMI −津波から生き延びるために
財団法人 沿岸技術研究センター
「TUNAMI」出版編集委員会
丸善プラネット株式会社

TUNAMI 世界共通語となった津波につい て本当の姿は知られてないのではないだろう か? 2004 年12 月のスマトラ沖地震によるイン ド洋大津波で、津波への知識の有無が生死を分 けた。いざというときのために、津波への理解 を深めておく必要がある。「災害は忘れた頃に やってくる」のである。

スマトラ沖地震による津波から助かった例で

1.英国の少女が学校で地震と津波の怖さを学 んだばかりで、潮が引いて海底が露出するの を見て津波が来ると判断し、両親を通じビー チにいた人々を避難させ犠牲者を出さなかっ た。彼女はSUN 紙から「Angel of the beach」 と賞賛された。

2.スリン島では潮が引いたら山に逃げろとの 言い伝えがあり、津波来襲前に島民全員が山 に逃げ難を逃れた。

3.民話の中の津波の話を思い出し、潮が引き 始めたので山側に逃げて難を逃れた。

一方で津波前に潮が引き潮溜まりに魚が取り 残されたのを見て、魚を取りに行ったり、遠く 沖のほうから押し寄せる波を見ていても津波の 怖さを理解できずに逃げ遅れ波の飲まれた人々 もいたのである。

津波は深い沖合いでは1 〜 2m の波高でも、 浅瀬になると10m 前後にもなりうる。又島や湾 の奥、複雑な地形の所では波が反射や干渉を繰 り返し数10m になることもある。

波は水深によってジェット機並みの速さか ら、自転車のスピードと速さを変える。また海 岸、島などにより屈折、反射を伴うため、津波 は数十分から数時間続くこともある。

津波は普通の波とは違い押し寄せる水流とな る。陸でも川や道路は早く流れ、宅地や林は流 れが遅いため、海側からだけでなく陸側からの 水流となることもある。

津波に巻き込まれた人は、おぼれるよりも津 波の漂流物での打撲によって死亡するケースも 多い。

震度が小さい地震でも持続時間が1 〜 2 分と 長いと大きな津波を引き起こす可能性がある。

震源までの距離によって津波の到着時間が異 なるため、経験による判断や津波情報が役に立 たないことがある。奥尻島では1983 年の津波は 地震後17 分で、1993 年は地震後5 分で津波が 襲来したため逃げ遅れた人が多数出たという。

津波は地すべりの起こり方によっては引き潮 からでなく、押し波からおしよせることもあ る。津波は潮が引いてから逃げろでは逃げ遅れ ることもある。

津波は一生に一度、いや会わない可能性が高 い。しかも体感する地震の揺れや、マグニチュ ード、地形、兆候、言い伝えなどから津波の大 きさを完全に予測し、避難することは不可能に 近い。しかし、 そのときの状況 を適切に判断 し、瞬時に行動 する災害文化を 確立することで 被害を最小限に とどめることが 可能である。