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『麻酔の日』に寄せて

與座浩次

沖縄県立南部医療センター・こども医療センター麻酔科
與座 浩次

1 年のうちでも10 月は、晴れの日が多いとい われ、学校では運動会も開かれます。こども達 が、夏休みについで待ち遠しい時期のひとつだ と思います。そのような元気なこども達でも病 気になったり事故にあったりして手術を受ける ことになることもあります。われわれが勤務す る南部医療センター・こども医療センターで は、そのようなこども達が入院したり手術をう けたりしています。もちろん、成人の手術も多 く行っています。この手術の際に必要なこと は、痛みを充分にコントロールするということ です。そのためには、麻酔をしなければなりま せん。麻酔は、大きく分けると全身麻酔と局所 麻酔に分類できます。現代では、普通に全身麻 酔をかけていますが、この全身麻酔を世界で初 めてエーテルという薬品を用いて行った医師 が、ハーバード大学のモートン先生です。しか し、日本ではそのモートン先生よりも約40 年 以上も前に華岡青洲という先生が、『通仙散』 という薬品を使用して全身麻酔下で乳がんの摘 出術を行ったと言われております。そこで日本 麻酔科学会では、華岡青洲先生が全身麻酔をか け、手術を行ったといわれる10 月13 日を『麻 酔の日』として定め一般の人たちに麻酔につい て啓発する日としています。琉球大学医学部麻 酔科学教室は、平成13 年度より『市民公開セ ミナー』を開催しています。琉球大学医学部附 属病院外来ロビーを使用して、麻酔科学教室の 麻酔科の先生方が麻酔についてわかりやすく説 明をしてくれます。質問にも答えてくれます。 これまで行った内容としては、『麻酔の歴史』、 『麻酔科医の役割』『麻酔の安全性』『痛みのク リニック』などであります。『麻酔の歴史』と 言えば、ここ沖縄にはこんな話も残っていま す。日本で初めて全身麻酔を行った華岡青洲先 生よりも100 年以上も前に、高嶺徳明という沖 縄の先生が中国で勉強した知識を元に麻酔をか けたという話も残っているのですが、記録が不 十分ということで残念ですが一般的ではありま せん。しかし、琉球大学医学部の敷地内には 『高嶺徳明顕彰碑』が建立されていますので、 セミナーのあとご覧ください。

私も琉球大学医学部に入学してから十数年通 いましたが、10 月ともなれば、ここ沖縄の強烈 な日差しも少しは和らぐ時期で、また附属病院 は小高い丘の上にあり心地よい初秋の風も吹き、 附属病院ロビーから顕彰碑までの移動の間も木 陰を通れば気持ちのいい時期かと思います。

さてわれわれが麻酔科医として勤務する南部医療センター・こども医療センターについてご 説明したいと思います。

南部医療センター・こども医療センターは、 南風原町字新川にあります。ここは以前、農業 試験場があった場所です。最近新設された沖縄 県医師会館とは、道の対面になります高速道路 の那覇インター出口にあり交通の便がいいとこ ろです。2006 年4 月に、病床数434 床(こど も医療センター120 床、救命救急センター30 床、精神科合併病床5 床を含む)、診療科目成 人部門28 科、こども医療センター17 科で開院 しました。県立病院として政策医療も行ってい ます。それには、救急救命医療、小児救急医 療、総合周産期医療、離島医療支援、精神科合 併症医療、障害児合併症医療などが含まれま す。それに加え卒後臨床研修施設として医学部 を卒業した医学生の研修も担っています。毎年 15 名程度の初期研修医を受け入れています。

南部医療センター・こども医療センターの麻 酔科は、現在7 人の職員と2 人の研修医で構成 されています。年間3,200 前後の麻酔症例があ ります。当院は、総合周産期センターも併設し ていますので、0 歳から100 歳までどころか生 まれる前から百歳までの手術症例があるといっ てもいいかもしれません。

年齢別麻酔集計(2008 年度)は以下のとお りです。

診療科も通常の成人の診療科に加え、小児外 科、小児心臓外科、小児脳外科、小児整形外 科、小児泌尿器科、口腔外科、他などの手術が 行われています。

診療科別麻酔症例集計(2008 年度)は以下 のとおりです。

このように多くの手術が行われている南部医 療センター・こども医療センターには、琉球大 学麻酔科学教室から麻酔科医が派遣され、当院 での麻酔に非常に貢献しています。最後に、10 月13 日の『麻酔の日』の前後、今年は10 月 17 日(土)に、琉球大学医学部附属病院にて 『市民公開セミナー』を開き、“麻酔というもの を正しく理解し、安心して手術が受けられる環 境づくりのため、一般市民の方々に麻酔の進歩 とそれに伴う安全性の確立ならびに麻酔科医の 役割”を紹介する予定です。木々が多く木陰が 涼しい琉球大学医学部附属病院へ足を運んでは いかがでしょうか。