会員であることが患者さん の信頼増大につながる地区医 師会を目指したい。
Q1.この度は、八重山地区医師会長にご就任 おめでとうございます。会長に就任されて のご感想と今後の抱負をお聞かせ下さい。
私は八重山に生まれ高校まで八重山で過ご し医師となって5 年目で八重山に帰り今年でも う23 年になる。これまでの人生はほとんど地 元、八重山で過ごし、医療に限らず八重山の 良い点、悪い点を経験してきた。それらの経験 をこれからの医師会活動に生かせたらとまずは 思う。
八重山地区医師会は歴史ある組織だが平成 18 年12 月に社団法人となって社会的に法人格 を有する責任ある組織として再スタートを切っ た。体制も不備なところが多く社会的にもまだ まだ幼児のような存在である。八重山地区住民 の医師会に対する期待が高いことを考えると地 区医師会長に就任することははっきり言って私 にとって荷が重い気がしている。
地域住民やマスコミの考えている医師会像と 現在の八重山地区医師会の実態とはだいぶ開き があり、そのギャップを埋めようと背伸びして いる自分自身に気づかされる時がある。特に最 近の新型インフルエンザ騒ぎでは医師会に対す るまわりの期待の大きさに戸惑うことも多い。 しかし八重山の地域医療を担うリーダー的役割 を考えると逃げてはならないことで、しっかり した見地から適切に対応し住民がパニックに陥 らないよう導いていかなくてはならない。最新 の情報のもとに出来るだけの質の高い医療を提 供できるよう努力しなければと思う。八重山地 区医師会は地域住民と個々の会員医師を結ぶ 「架け橋」的な存在であるべき。私自身も医院 の診療を抱えながらの医師会活動であるが他の 理事のメンバーの協力を得ながら時間の許す限 り活動していきたい。これまで地理的なハンデ ィからなかなか参加しづらかった県医師会主催 の会議などにも八重山地区医師会の代表として できるだけ参加していくつもりである。宮城信 雄会長をはじめ理事の先生方、他の地区医師会 の先生方、ご指導ご鞭撻よろしくお願いします。
Q2.八重山地区医師会が法人化して2 年が経 ち、組織力が強化されたと思いますが、医 師会での具体的な活動をお聞かせいただけ ますか。また、特に力を入れている取り組 み等がありましたら教えて下さい。
医師会の活動には有償のものと無償のものが あるが有償のものには市から委託される集団予 防接種とか校医検診などがある。それらは法人 化されるずっと以前から医師会会員が中心にな り執り行ってきたし、当然これからも会員の協 力を得ながら継続してやっていかねばならない。問題は無償の活動、たとえば石垣島マラソ ン大会や石垣島トライアスロン大会での救護班 としての活動である。忙しい日々の診療の隙間 をぬってボランティア活動を行うのはよほど崇 高な精神が必要で、協力を要請する側としても なかなか頼みにくく協力者探しにいつも苦労し ているのが実情。しかし医師会の公益性を目指 すという理念からすれば、それらの活動こそ非 営利性組織の神髄が問われることになる。だか ら決しておろそかにすべきでない。そのために は日頃の会員の先生方と連絡交流を密にしてお く必要がある。
あと特に力を入れている取り組みは、収入の 増大を図ること。活発な医師会活動のためには 十分な活動資金が必要で、そのために今年度よ り会費値上げを行い、新入会員のみならず現在 の会員全員からの入会金の徴収を行った。幸い 会員の理解が得られスムーズに決議されたがそ れでも年間収入が会費のみの500 万円いうのは 充実した医師会活動のためにはまだまだ少な い。他の地区医師会のやり方も参考にしながら 例えば集団予防接種委託料の何割かを充てると かさらなる増収を図っていくつもりである。ま た八重山で開業していながら医師会に入会して いないところがある。入会を勧誘すると同時に 医師会に所属しているメリットを増大していき たい。会員であることが患者さんの信頼増大に つながる、というような地域住民の尊敬を集め る地区医師会を目指したい。つまりは医師会組 織の基礎体制づくりが私に課せられた医師会長 としての役割と思っている。
Q3.離島医療の現状と今後の課題について先 生のお考えをお聞かせいただけますか。特 に離島での医師不足・看護師不足はかなり 深刻化しているとおもいますが、昨年、県 が打ち出しました県立病院の独立行政法人 化の方針について、どのようにお考えでし ょうか。
県立八重山病院内科勤務時代に平成2 年と平 成11 年、計2 年間、小浜診療所での離島医療を 経験した。平成2 年の時はまるっきり一からの スタートで事務もおらず看護婦と二人で受け付 けを初めレセ作成など何から何までやり繰りし た。約束の1 年間の勤務の後、後続の医師がな かなか探せなかったり小浜公民館長の勤務継続 要請などが出されたりして島を離れるのに苦労 したが今となっては懐かしい思い出である。身 をもって離島医療の困難さは知っているつもり だし離島医療の詳細な問題点も他の医師よりは 理解していると自負している。そのような経験 をこれからの医師会活動にも生かしていきたい。
昨年11 月29 日、八重山で初めて地区医師会 連絡協議会が開催され、その時に発表されたが 八重山で医療に従事している中で八重山出身者 の占める割合が極端に少ないことが指摘され た。理事の中からも郡内にある三つの高校の生 徒を啓蒙し少しでも多くの生徒が医療関係の仕 事を目指すように進路指導の教諭やPTA にも 働きかけたらどうかという意見が出された。ま だ具体的に動き出してはいないが医療を目指す 地元出身の若者が増えれば八重山にリターンし てくる医師や看護師が増えることにつながる。 そういう長い目を持って医師不足、看護師不足 に対応していきたい。
県立病院の独立行政法人化問題に関してはや はり昨年11 月の地区医師会連絡協議会の場に おいて八重山地区医師会の総意見として独法化 反対を表明している。私自身、県立八重山病院 に長年勤務していた経験上県立病院における経 営体質のどこに問題があるかある程度は理解し ているつもりである。沖縄県は3 年間の猶予期 間の後2012 年に独法化を目指すとしている。 私自身は根本的には宮古、八重山病院に関して は本島の他の県立病院とは別個に考えて欲しい という気持ちであるが県立病院の財政赤字をな んとかせねばという県の立場も一県民として理 解できなくはない。難しいところである。八重 山病院もあくまで独法化反対の立場を貫くので あれば、まずは幹部と職員が一丸となって県病 院事業局の経営再建計画に沿って経営健全化を 目指すべきである。そしてその結果独法化しないですむようになることを願っている。
Q4.八重山の文芸同人誌「邂逅」の編集に携 わっておられるようですが、関わった経緯 や文芸同人誌の紹介をして頂けますでしょ うか。
同人誌「邂逅」は郷土の詩人、八重洋一郎さ んの呼びかけで平成元年から始まった。私は事 務局の宮良直充さんに誘われて平成2 年の第2 号から参加している。今年4 月に発行された第 17 号が最新号。寄稿はエッセイがほとんどで、 何も書かないで人生を終わるよりたとえ駄文で あっても何かを残したいという自己保存本能、 そしていったん始めたからには最後(目標は20 号)までやり遂げようという意地で毎回寄稿し ている。同人数人が編集人を交代で務め、スポ ンサーや広告を持たないほとんど自費出版に近 い発行形式だが、私は第14,15,16 の3 号の 編集を担当した。八重山は音楽や踊り、野球な どのスポーツ活動は盛んだが、文芸の分野では この「邂逅」が唯一連続発行されている文芸誌 である。同人各々の職業は様々であるが不定期 に開催される集会では共通の趣味の文芸話で大 いに盛り上がる。様々な立場の人のいろいろな 意見も聞けて視野が開ける。
また医師会の先輩、宮良長和先生も古くか らの同人メンバーの一人で、数年前には沖縄 タイムス社から「立腹のススメ」というタイ トルの単行本も出されているが、毎回風刺が 利いてユーモアも感じられる読み応えのある エッセイを寄稿されている。
Q5.最後に日頃の健康法、ご趣味、座右の銘 等がございましたらお聞かせください。
健康法:夕方仕事を終え、週2 回ほどの割合 でバンナ公園などをスロージョギング(3km 位)していたが、最近は時間がとりにくく週1 回がやっと。
趣味:読書、最近は歴史物が好きで司馬遼太 郎の「坂の上の雲」を読み終えたばかり。その 他、釣りと三味線(八重山民謡)。
座右の銘:「無為自然」(老子)
この度は、インタビューへご回答いただき、 誠にありがとうございました。
インタビューアー:広報担当理事 當銘正彦