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平成21 年度第2 回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る7 月30 日(木)、県庁3 階第3 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する。

議 題

1.地域医療再生計画について(県医師会)

<提案要旨>

「地域医療再生計画」を作成し、その基金を 得て、地域医療の再生・充実を図るための準備 をしていると聞き及んでいる。

具体的には、どのようなスケジュールでどの 程度まで進んでいるか。また、地域住民や地域 医療を担っている地区医師会等の意見をどのよ うに吸い上げていく予定かご教示いただきた い。最終提出期限が10 月16 日となっている が、なるべく早めに「地域医療再生計画書」を 提出し、厚労省の指導と関係各位の支援が必要 と思われる。

<医務課の回答>

1.現在までの進行状況

(1)作成するための体制の整備

・福祉保健部の関係課長で構成する沖縄県地 域医療再生計画連絡会議を設置。

・上記連絡会議の内部に県内医療機関及び医 療関係団体で構成する関係者会合を設置。

(2)連絡会議の開催

・関係者会合を3 回開催し、本県における医 療課題とその解決に必要な施策等について 意見聴取。

・関係者会合の意見を踏まえ、連絡会議を開 催し県の取り組み方、考え方を話し合った。

(3)「地域医療再生計画の策定にあたっての 基本的考え方」の作成

・連絡会議での結果を踏まえ、計画策定にあ たっての県の基本的考え方を作成。

(4)計画する事業の作成依頼

・部内関係課、関係保健所、県病院事業局、県医師会、看護協会等の関係団体に対して 計画する事業の調査(7/17)を依頼した。

・各地区医師会の代表に地域医療再生計画の 説明と事業の調査への協力依頼を行った (7/23)。

2.今後の予定について

(1)事業の取りまとめ

・8 月上旬に医務課で事業案の取りまとめを 行い、計画(素案)を作成し、連絡会議に て協議する予定。

(2)有識者会議への意見聴取と計画(案)に ついて

・有識者会議(沖縄県保健医療協議会を想 定)に計画(案)に係る意見聴取を行い、 それを受けて、沖縄県地域医療再生計画 (案)を決定し、厚生労働省に提出後、認 定を受ける予定。

<主な意見等>

□ 9 月中には計画を固めて厚労省と折衝するの か(県医師会)。

■厚労省からも出来るだけ早めに持ってくるよ う指示があり、9 月下旬までには持って行く よう返事している。出来れば8 月いっぱいで 取りまとめて、9 月の早い段階で持っていけ ればいいと考えている(福祉保健部)。

□地域からあがってきた事業を積み上げるとい う事で、基本方針が出されているが、対象医 療圏毎で積み重ねていくと理解してよいか (県医師会)。

■上限を考えず100 億まで努力して積み上げて いきたい。また、対象医療圏選定の概念は離 島・へき地への医師確保であり、県全体で支 えていくような仕組みを想定している(福祉 保健部)。

■情報収集している段階で、情報収集の目途が 立てば理事会が良いのか、三役との調整にな るのか等、情報提供しながら進めていきた い。なるべく早めに厚労省に行きたいが、事 務方が言うには現段階だと門前払いで恥をか くとの事(福祉保健部)。

■ 3 研修病医群の連携については、県としても 是非うまく連携を図っていきたいと考えてい た。中々切り出しが出来ない部分があった が、先日、医師会で研修医の歓迎レセプショ ンが行われているので、明るい兆しは見えて きていると思っている(福祉保健部)。

■大学は自ら厚労省に出向き、大学が地域医療 に貢献するにはどうしたら良いかなどの指導 を仰ぐ予定との事。(福祉保健部)。

□日医からの情報では、100 億が10 医療圏、 30 億が70 医療圏であったのが、各都道府県 2 医療圏を確実に採れるよう30 億を84 医療 圏に増やすとの事。本県は地域医療再生のた めに是非100 億を確保していただきたい。高 知県では、具体的な計画が出ていないのにも 関わらず、厚労省と交渉しているので本県も 積極的に交渉し、100 億に近づけるべき(県 医師会)。

■全圏域に薄くばらまく事は駄目だと言われて いるが、県全体で実施した方が効率が良いの であれば、全県での実施は構わないとの事 (福祉保健部)。

□概念がよく分からない。積み上げるというの は初めから30 億や100 億を想定して考えて いくのか(県医師会)。

■基本的に上限は100 億円あるいは60 億円と いう事がある。県の考え方として、中・南部 医療圏は支える医療圏で、北部、宮古、八重 山医療圏は支えられる医療圏として計画を立 てていく。最も大きなテーマは人材育成であ り、人材育成に特化した事業を中心に考えて いくこととしている。現在は各関係団体に事 業案の提出を依頼しそれを積み上げていくこ ととしている。事例としては、シミュレーシ ョンセンターを作って、研修医や看護師等の 医療従事者が研修をするためのセンターを作 るという事があがっている。がん対策基本法 に基づく事業についても20 億程度あがって いる(福祉保健部)。

□沖縄県は100 億でいくのか、30 億の2 本でいくのかなど、申請書はいくつ出すのか(県 医師会)。

■厚労省は、100 億が採択されなかった場合を 想定して、直ぐに切り替えられるよう30 億 2 本の計画も併せて作るよう指示がある。従 って、申請書は100 億の分と30 億2 本の分 と両方作成する(福祉保健部)。

□考え方は100 億と30 億で1 つの申請書、30 億を2 本で1 つの申請書の2 つではないのか (県医師会)。

■厚労省の話では30 億を25 億に減らして対象 医療圏を増やしていくとの事。また、100 億 が採択された場合は100 億1 本で25 億は該 当しないとの事(福祉保健部)。

□ 100 億を計画し認められず、50 〜 60 億とな った場合、どこを切り捨てるか考えておく必 要がある。また、宮古、八重山、北部に25 〜 30 億全てを落とすのではなく、県全体に も落とす事により、支援する側を強化し支援 される側が支援されることに繋がるという計 画が必要(県医師会)。

■県内の医療を確保するには研修機能の強化が 必要となってくるので、自ずと切り捨てる部 分は出てくるものと考える(福祉保健部)。

■離島やへき地を支える場合には中心部を強化 しなければならないという理屈でいく必要が ある(福祉保健部)。

2.臓器移植体制整備に関する要望 (県医師会)

<提案要旨>

沖縄県保健医療福祉事業団臓器移植推進委 員会並びに沖縄県臓器移植推進協議会より、今 国会での臓器の移植に関する法律が改正された 事も受け、沖縄県でも県民へ移植医療について の理解を深めるために必要な下記の措置を実施 いただくよう本会宛に要望があった。今後、臓 器移植体制を充実・向上させていくためにもご 検討願いたい。

1.移植コーディネータの体制整備

ここ数年、県移植コーディネータの精力的な 活動と複数の医師の個人的協力により、ドナー 情報は増加し、献腎移植件数も増えてきた。さ らに、アイバンクの業務にも関わっておりアイ バンクは黒字に転じた。沖縄での移植に対する 取り組みは全国的にも注目されており、厚生労 働科学研究へ臓器提供施設として県内の3 病院 が参加し、スペインにおけるT P M ※ (Transplant Procurement Management)の 責任者Dr.Marti Manyalich も興味を示し来沖 した。このように県内の臓器提供の成果が得ら れつつあるが、組織的には未だ弱体である。以 下の現状がそれを示している。

このような臓器提供の場で中心的な役割を担 う県移植コーディネータは「嘱託」された身分 であり、365 日、24 時間拘束されるものの、賞 与は認められず昇給もなく、むしろ給与は年々 減らされている。現移植コーディネータのA 氏 が医療現場で理解され臓器提供の協力が得られ るようになるまでには、A 氏自身の数年におよ ぶ地道な活動を要してきた。その活動は現場の 共感を呼び、更に現場での研修の機会を拡げて きたのである。今後も移植コーディネータのモ チベーションを維持し、高めるためにも「嘱託」 ではなく、継続性のある正規の職員としての身 分が必要である。透析患者の増加は膨大な医療 費に繋がっているが、腎移植の普及はその医療 費の軽減に直結する。移植医療の普及、啓発の 中心に居るのは移植コーディネータであり、現 コーディネータの常勤化は急を要する。

※ TPM とはスペインで1980 年代から移植に 関わる専門家を育成する事業としてスタート した。

スペインでは病院内に臓器提供を専門とする スタッフ(医師または看護師)がおり、この院 内コーディネータを養成することで、臓器提供 を円滑に実施することに成功した。

その結果として90 年代から右肩上がりに臓 器提供数が増加しspanish model として注目されており、WHO でも推奨モデルとされ、沖縄 県でもTPM モデルを中核とする教育システム の導入を準備中。

2.救急医療における終末期の診断と告知およ び臓器提供意思確認の徹底

懸命な治療が行われても助けられない時、厳 密な診断のもとに「間もなく死に至ること」や 「死亡」が告知される。このとき臓器提供意思 確認を行うべき事を医療業務の一環として成さ れるよう行政の強い意思表示が必要である。

3.沖縄県における臓器、角膜、組織、骨髄等 のバンク事業の統合化

従来、腎と角膜の提供時にはそれぞれのバン クコーディネーターが関わってきたが、県民 (特にドナー家族)、提供病院にとっては区別す る理由はない。他の臓器、組織、骨髄などに関 しても同様であり、効率的な臓器提供の斡旋の ためには各バンク事業の統合化が望ましい。

参考:

移植コーディネータの業務;

  • 1.ポテンシャルドナー家族への説明、記録。
  • 2.検体、臓器の搬送、記録、事後の報告書作成。
  • 3.ドナー情報への対応。
  • 4.一般市民への移植医療の啓発。
  • 5.提供病院の開拓、病院訪問、情報提供。

4.CKD(Chronic Kidney Disease)対策に おける前記統合化されたバンクの利用

今や国民病とも言われる慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease : CKD)対策にお いて、沖縄県全体を統括し、かつ多くの関連施 設と横断的に協力し、早期腎不全のスクリーニ ング、生活習慣改善指導、易学データの収集、 最新の知見に基づく研究協力(幹細胞移植によ る残存腎機能再構築など)、末期腎不全に対す る透析、腎移植をセンターが関与して実施する ことで、県民の健康増進に寄与することはもち ろん、増加傾向にある医療費においても、診療 報酬の切り下げなどの方法ではなく抑制するこ とが可能になる。

<国保健康増進課の回答>

1.移植コーディネータの体制整備

<現状>

本県では、臓器移植コーディネーター事業を 平成12 年度から平成19 年度まで民間医療機関 (とうま内科)に委託して実施してきた。

平成元年より、沖縄県保健医療福祉事業団に おいて実施していた腎臓バンク事業を発展さ せ、臓器全般を対象とした業務の集約及び強化 を図り移植医療の普及啓発等を一層推進するこ とを目的として、平成20 年度より、臓器移植 コーディネーター事業を事業団に委託し実施し ているところである。

臓器移植コーディネーターの配置について は、関係部局と協議しているが、現在、嘱託員 としての配置となっている。

<今後の対応等>

臓器移植コーディネーターは、専門知識はも とより医療現場での経験と高い人格性が求めら れる業務であり、移植医療の推進に必要不可欠 である。

福祉保健部としては、嘱託員ではなく同事業 団の正職員として定数配置し、安定的・継続的 な事業の推進を図る必要がある事から、関係部局 と継続的に臓器移植コーディネーターの定数配置 に向けた協議を行っていきたいと考えている。

2.救急医療における終末期の診断と告知およ び臓器提供意思確認の徹底

沖縄県保健医療福祉事業団において、臓器移 植コーディネーターを中心とした以下の研修会 等を通じて、臓器提供意思確認について医療機 関への普及啓発活動を行っている。

○医療機関移植情報担当者会議・研修会の 開催

○救急医、脳外科医等研修会の実施

3.沖縄県における臓器、角膜、組織、骨髄等 のバンク事業の統合化 (4.CKD 対策にお ける前記統合化されたバンクの利用)

沖縄県保健医療福祉事業団において、アイバ ンク事業、骨髄バンク事業との連携協力を行っ ており、効率的な臓器提供の斡旋に向けての連 携や以下の普及啓発活動及び側面的支援を行っ ている。

なお、各バンクの統合については、各関係機 関との調整が必要であり、今後の検討課題とし たいと考えている。

○普及啓発活動
  ・街頭キャンペーンの実施
  ・シンポジウム等講習会の実施

○側面的支援
  ・臓器提供者(家族)への謝礼
  ・臓器移植研究事業への助成
  ・糖尿病等関連疾病に関する健康教育の実施

<主な意見等>

□当事業に対して、福祉保健部がどれだけ保健 医療福祉事業団に要望できるかが重要(県医 師会)。

■当事業に関しては、必要となる事業なので引 き続き部内調整等で検討していきたい(福祉 保健部)。

□移植コーディネーターの常勤化については、 事業団で採用したら良いのではないか(県医 師会)。

■その組織自体を将来どうするのかといったと ころを行革の中で決めるようである(福祉保 健部)。

■外郭団体の取扱いに関する規則があるので、 職員を採用する場合は、それを踏まえて総 務と検討していかなければならない(福祉保 健部)。

□コーディネーターのセンターを作るなど、県 が動いていかなければならない(県医師会)。

■コーディネーターに対する県の運用・運営方 針が決まらないから、採用について結論が出 ない(福祉保健部)。

□行革の対象の財団であるので、統廃合を含め て廃止とはなっていないはず(県医師会)。

■新たな行革プランもあがっているので、それ との整合性を図る必要がある。統廃合になっ たとしても、この事業は継続していかなけれ ばならない事業なので対応していく必要があ る(福祉保健部)。

□予算を確保して県医師会へ丸投げで委託して も運営は可能ではないかと考える。本来、医 療に関係する大事なものである(県医師会)。

□この事業は恐らく事業団でなければ運営でき ない。黒字の団体が行革対象にするべきでな い(県医師会)。

■黒字で大事な財源があるので、もっと有効に 使えたら良い(福祉保健部)。

3.要介護認定主治医意見書提出の協力につ いて(福祉保健部)

<提案要旨>

要介護認定は、申請手続き後、30 日以内に 審査判定を実施することとなっている。

審査判定をするには、認定調査の実施・主治 医意見書の記載後に、介護認定審査会が開催さ れ、審査判定がなされる。

しかし、市町村においては、申請から認定結 果が通知されるまでに30 日を超過するケース が多くあり、その一つの理由として、主治医意 見書の提出の遅れがあるとのことである。

ついては、医師会においては、要介護認定の 円滑な実施のために、主治医意見書の迅速な記 載・提出のご協力をお願いする。

<主な意見等>

■医師会においても主治医意見書の迅速な提出 についてご協力をお願いできればと考える (福祉保健部)。

□主治医意見書の提出が遅れていることは申し 訳なく思う。本会では、主治医意見書の記載 内容に不備がある等の意見を受けていたため、 高齢者福祉介護課にご協力をいただき、今年 4 月に本会会報に主治医意見書の記載方法等 に関する記事を掲載し啓発を行ったところで ある。主治医意見書の提出に関する啓発も何 らかの形で各会員に周知したい(県医師会)。

■県議会議員からも主治医意見書の認定が遅れ ているという指摘を受けているため、現在、 各市町村に対し実態調査を行っているところ である(福祉保健部)。

□実態が分かれば、提出が遅れる医療機関に対 し、県医師会から周知を行うよりも地区医師 会からストレートに早期提出についてお願い することができる(県医師会)。

□実態調査から遅れている実数を確認し、地区 を通し通知していきたい(県医師会)。

□勤務医の先生方の提出が遅れているという場 合も考えられる。その場合、勤務医の勤務体 制や病院の連絡体制等の問題等も含まれると 考える(県医師会)。

□実態調査の結果をご提供いただき、それを基 に対応を考えていきたい(県医師会)。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

「地域医療再生計画」の基金3,100 億円は診療・介護報酬に反映し、医療・介護現場の質の向 上に寄与して欲しいと言う意見もあるが、降ってわいた補正予算に基づく基金を有効的に利用し、 沖縄の地域医療再生において、形あるものにしながら5 年以上先も継続させ、地域医療に寄与し て欲しいものだ。沖縄県における「地域医療再生計画」の骨子として、「離島・へき地医療支援と それを支える人材育成」と「4 疾病を中心とした医療連携とIT」が大きな柱となるであろう。個 人的には、こども医療センターをアジアのおきなわ・こども医療センターを目指して、すべての 基金をそれに使用したら、日本のトップクラスのこども医療センターになるであろうし、そして、 アジアの子供たちに大きく寄与すると思われる。同時に、アジアにおける医療の質の向上にも寄 与すると考える。そして、その実績が評価されれば、その後の基金も必然的に付いてくるであろ うし、沖縄ならではのテーマで、国際・アジア貢献は国策にも合致していると考えるも、次回の 基金に期待しよう。

「臓器移植体制整備に関する要望」の趣旨については、時代的な背景のもとに大きく変化して 行く過程であろう。移植コーディネーターの体制整備、沖縄県における臓器、角膜、組織、骨髄 等のバンク事業の統合化、CKD 対策の前記統合化されたバンクの利用等の提案は、今日において も、将来を見据えた視点からしてもまさに必要とされる内容である。臓器移植コーディネーター が沖縄県保健医療福祉事業団の正職員として定数配置されるよう、関係部局と協議していくとの こと。一方、事業団の存続の問題も危惧され、そのような状況下にある組織に、正職員の採用は 容易でないとも話していた。沖縄県保健医療福祉事業団を県の外郭団体にとどめること無く、県 医師会と密なる連携を構築し、保健医療福祉事業団がより効率的に運営できるようになれば、存 続も含め効果的に対応され、実り多いものとなるであろう。急性医療における終末期の診断と告 知および臓器提供意思確認の徹底については、医療機関におけるコンセンサスとシステムの充実 および県民の臓器移植への意識の成熟と協力が強く望まれる。

「要介護認定主治医意見書提出の協力について」は、申請から認定結果が通知されるまでに30 日と言う期限を超過する理由の一つに主治医意見書の遅れがあり、迅速な対応の協力依頼があった。 実態調査に基づき、現状を分析し、地区医師会から早期提出の依頼をお願いする方向になった。