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九州ブロック学校保健・学校医大会関連行事

V.第53 回九州ブロック学校保健・学校医大会
並びに平成21 年度九州学校検診協議会(年次大会)

1)平成21 年度九州学校検診協議会(年次大会)

心臓・腎臓・小児生活習慣病の3 部門よりそ れぞれ講演があった。

  • 1)心臓部門「学校心臓検診のこれからの役割−学童・生徒をつつむネットワーク作り」
      九州厚生年金病院副院長 城尾邦隆
  • 2)腎臓部門「検証可能な学校検尿へ」
      久留米大学医療センター小児科教授 伊藤雄平
  • 3)小児生活習慣病部門「小児のメタボリックシンドロームの現状と対策」
      鹿児島医療センター小児科部長 吉永正夫

2)第53 回九州ブロック学校保健・学校医大会 分科会

1)眼科部門

教育講演「斜視、弱視の子と親によるソー シャル・ネットワーク・システ ムの構築について」
  医療法人卓悠会さが駅前眼科 牛山佳子

教育講演「小児の心因性視覚障害」
  医療法人春陽会上村病院 川添真理子

特別講演「盲学校はいま−佐賀県立盲学校 の視覚障害児・者支援の取り組み−」
  佐賀県立盲学校教諭 福田由美子

2)耳鼻咽喉科部門

パネルディスカッション

テーマ「難聴児とともに歩む」

司 会:佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授 井ノ口昭

パネリスト

「佐賀県における新生児聴覚スクリーニングの現状」
 佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科 講師 佐藤慎太郎

「佐賀県における難聴児の療育について」
 佐賀大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科言語聴覚士 森本邦子

「難聴児の母親として」 H様

「障害を乗り越えて−家庭と小学校の連携−」佐賀市 嘉村聡子
 佐賀市立本庄小学校教諭 國平剛司

3)九州医師会連合会学校医会評議員会

1)報告

平成20 年度九州医師会連合会学校医会事 業・歳入歳出決算、平成21 年度九州医師会連合会学校医会事業経過について各々報告が あり、特に異議なく承認された。

2)議事

平成21 年度九州医師会連合会学校医会事 業計画・学校医会負担金並びに歳入歳出予算 について各々説明があり、特に異議なく承認 された。

また、第54 回(平成22 年度)は鹿児島県 と決定し、第55 回(平成23 年度)は大分県 と内定した。

4)九州医師会連合会学校医会総会

開催県医師会長の沖田信光佐賀県医師会長 より、「ご多忙のなか、九州各県より多くの学 校医の先生方が参加されたことに感謝するとと もに、今後も学校保健の諸問題の解決に向けて 取り組んでいただきたい」との挨拶があった。

また、日本医師会唐澤人会長(岩佐和雄日 本医師会副会長代読)より、「日頃より各地 域・学校現場において学校保健の発展と向上に 多大なご協力を賜り感謝申しあげる。新型イン フルエンザや発達障害の早期発見・早期支援が 求められている。学校保健活動の展開は重要で あり、実効あるものとしていただきたい。学校 保健活動の充実のためには、学校医・医師会の 役割が重要であり、地域医療の一環としてご活 躍いただきたい」と挨拶があった。

西島英利参議院議員からは、「臓器移植法が 改正されたことにより、0 歳からの臓器移植が できることになった。現在、小児科医会のご指 導を受けながら小児保健法の制定に向けて仕事 をしているところである。総選挙が間近になっ てきた。社会保障費抑制の問題・財源の問題・ 消費税の問題に対して、次の世代に借金を残さ ないよう責任ある政権与党として対応していき たい。今回の選挙は、財源という視点で考えて どの政党がよいのか判断していただきたい」と 挨拶があった。

佐賀県知事・佐賀市長からも日頃の学校保健 活動へのお礼と歓迎の挨拶があった。

最後に、次回開催県医師会長の鹿児島県医師 会永盛學会長より、平成22 年8 月8 日(日)に城山観光ホテルにて開催するので、多くの方 にご参加いただきたいと挨拶があった。

5)講演

シンポジウム「軽度ではない発達障害−判って きたこととこれからの課題−」
 座 長:佐賀大学医学部小児科学教授 浜崎雄平

シンポジスト:
  「発達障害の理解と支援−医師の立場から−」
   佐賀大学医学部小児科准教授 松尾宗明
  「発達障害の見えない心によりそって」
   NPO法人それいゆ統括ディレクター 服牧智子

「特別支援教育における発達障害児への支援
 −佐賀県教育委員会の取組−」
  佐賀県教育庁教育政策課副課長 砂後典之

総括:日本医師会常任理事 内田健夫

・発達障害に関しては、先進的に取り組まれて いる県もあるが、地域によって温度差があ る。今後、日本医師会としては、各地の現状 を情報提供し、レベルアップにつなげていき たい。

・心臓検診と検尿は学校保健法に入っている が、生活習慣病検診・運動器検診・こころの 健康についての検診や相談が今後必要になっ てくるかと考えている。

・「子どもの健康を守る地域専門家連携推進事 業」は、財源削減の動きがあったが、縮小は 絶対にありえない。1 億1 千5 百万、各都道府 県に250 万を確保できるように要望している。

・禁煙・運動・食育などの生活習慣に関する健 康教育、性や感染症、アレルギーについての 健康教育が大事だと考えている。小学校以前 からの連続した取り組みは、子供たちの健全 な発育に重要である。感染症対策は、今回の 新型インフルエンザの騒動への学校現場での 緊急時の対応が必要かと考えている。

・これらの問題を解決していくためには、各関 係者の連携が必要である。文部科学省・厚労 省・総務省・内閣府との連携、学校保健会、学校関係者との連携、都道府県・市レベルで は、学校現場、地区医師会レベル、学校医レ ベル、コーディネーター等の連携が必要であ る。その中でキーパーソンになる人の存在が 重要である。

・子どもの心の問題も含めた相談支援体制が、 来年からモデル事業として実施できるよう文 科省と交渉中である。しっかりやっていくの で、ご理解・ご協力をお願いしたい。

印象記

宮里善次

理事 宮里 善次

報告に示すように8 月8、9 日の2 日間、第53 回九州ブロック学校保健・学校医大会並びに平成 20 年度九州学校検診協議会が行われた。

報告書に示すとおり21 年度九州学校検診協議会幹事会で腎臓部門から2 題、心臓部門から1 題 の提案がなされ、11 月の専門委員会において協議することになった。

学校保健担当者理事会において、鹿児島県医師会から感染症サーベイランスの一環として『学 校欠席者情報収集システムの活用』が提案されたが、極めて有効なシステムと思われる。

現在の感染症サーベイランスは集計から発表までの間にタイムギャップがあり、リアルタイム な情報とは言い難い。

紹介されたシステムは学校保健会と国立感染症情報センターが共同開発したシステムである。

Web 形式で欠席児童の病名と学年(クラスも)を入力すれば、自校の学年別、クラス別の欠席 者が把握でき、しかも県内及び全国との比較がリアルタイムで分かるシステムとなっている。

開発者はとりあえず各県1 校の導入を募集しているが、病名が明確であれば、病名別の比較もで きるので、県下の小中高に導入すれば現在流行の新型インフルエンザの管理にも極めて有用である。

システムにかかる補助金関連の質問に対して、日本医師会の内田担当理事から各校一台のパソ コンが予算化されているとの答えがあったので、現在沖縄県の教育委員会に問い合わせて返事待 ちの状態である。

年次大会の生活習慣病部門において、鹿児島医療センター小児科の吉永正夫先生が『小児のメタボ リックシンドロームの現状と対策』と題して講演があったが、興味深く示唆に富んだ内容であった。

以下、要旨を列記する。

  • 1)バブル期に小学校に入学した子供達は肥満率が高く、現在高校生になってもその傾向は持続し ている。小学校入学時の肥満は要注意である。
  • 2)小児の軽度肥満を軽視する傾向があるが、彼等のインシュリン抵抗性は大人の重度肥満と同レ ベルであり、将来を考えると積極的に関与すべきである。
  • 3)肥満治療中のジュース、コーラ等は厳禁。
  • 4)その他の食事制限はしない。
  • 5)食事中に多く噛むことは満腹中枢を抑制するので、多く噛ませることで摂取量を減らせる。
  • 6)運動は『歩く』ことで徐々に伸ばしていく。
  • 7)最初の一ヶ月間で出来るだけ減量させる。患児は一月間の減量の達成感でその後持続できる。

最後に100kg 超から60kg に減量できた症例が呈示された。

ほとんどの場合肥満児の治療は患児、保護者、医師ともに挫折感を伴うことが多い。吉永先 生だから成功したのだろうと云う印象も拭えないが、印象的な講演であった。