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九州ブロック学校保健・学校医大会関連行事

U.平成21 年度九州各県医師会学校保健担当理事者会
(日本医師会学校保健担当理事との懇談会)

開催県である沖田信光佐賀県医師会長より挨 拶があった後、岩佐和雄日本医師会副会長より 「医師の削減・医療費1 兆1 千億円の削減・卒 後研修制度の見直し、この3 つのことが大きく 変わりそこに世界不況が重なった。医療提供体 制が大変な状況にあるが、どのような状況にあ っても我々は医師として医療・介護・福祉のために頑張っていかなくてはならない」と挨拶が あった。

挨拶のあと、1)日本学校保健会と国立感染症 研究所感染症情報センターで共同開発した学校 欠席者情報収集システムの活用について2)運動 器検診についての2 題について協議を行った。

以下、その概要。

1)日本学校保健会と国立感染症研究所感染 症情報センターで共同開発した学校欠席 者情報収集システムの活用について
(鹿児島県)

<提案理由>

日本学校保健会ホームページの「学校保健 ポータルサイト」に日本学校保健会と国立感染 症情報センターで共同開発した「学校欠席者 情報収集システム」が紹介されている。インフ ルエンザの他、ノロウィルスや麻しんなどの流 行をリアルタイムで把握でき、流行初期での対 応や予防に役立たせるほか、新型インフルエン ザ発生時など危機管理対策としても大いに期 待できるが、日本学校保健会が直接協力校を 募集している状況で、県医師会をはじめ、教育 委員会にもこのシステムの周知がなされていな いと思われる。このシステムの活用は、今秋以 降の新型インフルエンザの対応にも効果がある と考えるが、文科省から各都道府県教育委員 会を通じて、ある程度の強制力をもって学校現 場へ強力を促さないことには機能しないのでは ないか。日本医師会としても、日本学校保健 会が作成した本システムには、何らかの関与を されていると思うが、システム普及へ日医の見 解を伺いたい。

<各県回答>

各県とも推進していきたいとの意見であっ た。福岡県からは、「4 月以降新型インフルエ ンザの発生が続いており、小・中学校における 集団感染が発端となった経緯があり、学校等の 集団発生の迅速な把握が重要で、本システムの 普及を早急に推進していきたい」との意見があ った。

沖縄県からも、「現在の集計方法では、報告 から情報を得るまでタイムギャップがあり、し かも年齢や学校別までは把握できない。そのた め、学校感染症の管理が適宜適切になされてい るとは思えない傾向が散見される。本システム の活用により、リアルタイムで、学校毎に病名などの詳細な情報が得られるので有意義だと思 う。学校長等関係者が情報を共有することで、 休校等の措置も適切に行われると思う。パンフ レットでは1 校でも参加するよう求めている が、それでは各校で対応がまちまちになってし まう。是非すばらしいシステムなのですべての 学校が取り組むことが必要である。沖縄県でも 推進していきたい」と回答した。

<内田常任理事コメント>

1 年前に国立感染症情報センターの先生から 本システムについて聞いた。養護教諭のところ に専用のパソコンを置いて、毎日入力してもら う形を考えている。養護教諭の協力、パソコン の購入のハードルが高いので、研究費を利用し て3 年くらいモデル地域で実施していくという ことであった。これまで定点での把握が行われ ているが、本システムだと小中学校では迅速に 把握できることになるので、日医としても文科 省と調整してこのシステムが動くように対応し ていきたい。今年の冬には間に合わないかもし れない。

2)運動器検診について

<提案理由>

現在の子どもたちは、運動をする子としない 子の差が激しく、運動をする子はやり過ぎるケ ースが多く、運動をしない子は全くしない傾向 にある。それが運動器の障害や小児肥満に結び ついていると考えられる。運動器検診について は、「運動器の10 年」日本委員会が中心とな り、体制整備に向けた検討を重ねているところ である。

平成20 年に、福岡市において単年度モデル 事業として運動器検診が実施され報告書が作成 されている。予想された脊柱側わん症以外にも 様々な運動器の障害が見られ、本検診実施の有 意性が示されている。しかし、県教育庁・各市 町村教育委員会・学校・養護教諭等教育関係 者の理解と連携、予算の確保、検診実施医のマ ンパワーの問題など、今後整理すべき課題がある。また、この検診を進めるにあたり、スムー ズに浸透する方法を検討する必要もある。今後 の参考とするため、学校運動器検診に関する他 県の状況を伺いたい。

<各県回答>

検診を実施しているのは、宮崎県のみで他の 県では実施されておらず、各県とも重要な検診 であり是非実施していきたいとの回答であっ た。また、学校保健法に入っていないので是非 入れるよう日医から文科省に要望していただき たいとの意見もあった。なお、熊本県では、脊 柱側わん症検診のみを専門医が出向いて実施し ている。

宮崎県の実施内容:

・宮崎大学の整形外科医が中心となり、平成 19 年度は清武町で小・中学校5 校1,564 名、 平成20 年度は宮崎市と清武町で16 校2,179 名に実施。小学4 ・6 年生、中学2 年生を中 心とした。

・20 年度は「異常あり」が5.3 %。問診表を 加味し、要受診は8 %で治療中の5 %と合わ せ対象者へ医療機関受診を促す等適切な対策 を取ることができた。

・推定罹患率は8.2 %。平成21 年度は、さらに 参加校を増やし、26 校約3,800 名に実施中。

・内科検診と同日実施を基本とした。

・検者は、学校医または大学整形外科医とし、 学校医には検診料として200 円支払い(1 人、大学の研究費から)

・現在、宮崎大学が中心となり、宮崎市教育委 員会の後援で実施。重要な検診であり、今後 は検診地域拡大のため、各市町村教育委員会 や学校医の協力を得て定着させていきたい。

沖縄県からは、「実施していない。小中学生 の疾患が多様化する中で、学校医だけで対応す るのは困難な時代である。各地においても専門 医がどのように関わっていくのかということは 大きなテーマとなっている。今回ご報告の運動 器検診の報告は、これまでの報告と異なり、問 診票から一次検診、二次検診の流れの前に、学 校保健師や体育教諭に対して、運動器に対する 意識調査のアンケートをしていることが特徴だ と思う。医療側が教師の意識を把握するだけで はなく、学校現場が生徒たちの診断結果報告を 受けて、これまでの指導にどんな無理があった のか、また、今後の指導にどう生かすかという 意識改革になると思われる。アンケート形式な ので、診断効果をあげるためには質問の内容が 重要だと思われるが、専門医の負担も軽く協力 してもらうことも容易と考えられる。地域の専 門医が参加すればすぐに活用できる素晴らしい 事業内容であり、本県でも検討したい」と回答 した。

<内田常任理事コメント>

運動器検診は、昨年の新潟での全国学校保 健・学校医大会でも発表がありとても重要なテ ーマだと考えている。九州は先進的で取り組み が進んでおり感謝申しあげる。「運動過多によ る運動障害」と「運動を殆どしないことによる 運動器の未発達」両極である。運動器検診大事 であり、検診を導入する事によって両方の障害 を早期発見・早期治療が進むと思われる。

「子どもの健康を守る地域専門家総合連携事 業」が以前からあるが、4 科の取り組み、金額 余り多くないことで、検診がなかなか厳しい状 況である。内科検診に脊柱側わん症の検診が入 っているので、それに上乗せできるようにする のも難しいと思うが何とか検討できないか。や はり、教諭・養護教諭の意識、予算が問題であ る。実際には予算とても難しい。予算はマイナ スシーリングであり、しっかりしたモデル事業 をして実績を出すことが必要なので、よろしく お願いしたい。

<内田健夫日本医師会常任理事・中央情勢報告>

「子どもの健康を守る地域専門家連携推進事 業」は、予算は1 億1 千5 百万円で、都道府県 頭割りで1 県250 万円の予算である。手上げは 6 割あるが、執行率は65 %だと聞いている。特色は、全都道府県にわたる事業で、100 %文科 省補助事業であることである。ところが、財務 省が「モデル事業で全国共通というのはない」 と文科省にプレッシャーかけてきた。本事業 は、1.5 倍申し込みの実績があることから、総 務省の地方交付税に入れられることがわかっ た。22 年度は従来の形で増額も減額はないが、 その後からは地方交付税の形になる。現在、精 神科のこころ対策、整形外科の運動器疾患、皮 膚科のアレルギーの問題、産婦人科の妊娠・出 産・感染症対策、これを活用した展開をお願い したい。

学校保健会との連携が重要になってくる。医 師会・歯科医師会・薬剤師会・養護教諭・保 健主事・学校長の学校関係者が参加しており、 さまざまな形で連携しているが、減額処置が繰 り返され、昨年は8,000 万→ 6,000 万に減額さ れた。事業の見直しと成果を出すこと、財政基 盤の確立が必要なことから、学校の負担金も増 額していただいた。長期的に安定していく財源 必要であり、方策を検討していきたい。前専務 理事の内藤先生が定年になったので、雪下元日 医常任理事に専務理事にお願いすることになっ た。早速活動していただいているが、財政再建 と今後の事業展開しにご尽力いただきたいとお 願いしている。

学校保健を取り巻く状況で、生活習慣病検診 や運動器検診などの新しい検診をどう取り組む かも課題となっている。予算化が不十分で一部 の県でモデル事業として実施していただいてい るが、成果を学校保健会に集約していくこと で、予算化の展開をしていきたい。

アレルギー疾患については、昨年意見書の様 式を示したところだが、現場では運用に際して 問題が出てきていると伺っている。学校保健会 でマニュアルの見直し、Q & A を作成しようと しているが、現在頓挫している。12 月の学校 保健大会に向けて整理をしていきたい。

内田常任理事のコメントに対して、鹿児島 県より「地域連携事業は、地域のニーズが高 い。現場が必要としている事業を縮小していく のは方向がちがっている。是非とも拡充できる ようにお願いしたい」、佐賀県より「執行率が 65 %なのは、どういうことか」との意見があ り、内田日医常任理事から、「スタートした当 時は、2 億2 千5 百万だったが毎年減額されて いる。執行率が低いのは、一生懸命やっている 県とそうでない県があることや、予算がぎりぎ りになって決められていることによる」との回 答があった。

また、鹿児島県より「昨年8 月に予防接種週 間を実施してはどうかと日医にも提案したが、 3 月に実施しているとの回答であった。鹿児島 県では、8 月1 日から一週間を実施しており、 1.5 倍は増えていると思われる。鹿児島から予 防接種週間始めたので、各県でも広めていただ きたい」と意見があった。

また、佐賀県から「今年から性教育を積極的 に取り組もうとしている。これは、県知事との 直接の話し合いでやることに決まったもので、 予算はまだついてない。こういうものについて も、国からもらうという要求はできるのか」と の質問があり、内田日医常任理事からとりあえ ず新しい事業なのでモデル事業としてやれるよ う調整していくことになると回答があった。