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仕事と育児

佐藤陽子

豊見城中央病院呼吸器内科
佐藤 陽子

原稿依頼が届き、しばらく何を書けばいいの かと悩んでおりましたが、私に文才はなく、紹 介できるような趣味も今のところ持ち合わせて いないので、我が家の最近の事情と仕事につい て少し書いてみようと思います。

今年4 月に長女が小学校1 年生になりました。 子供をもつ先輩先生方には、よく、幼稚園から 小学校低学年の間が特に仕事がしにくくなると 聞かされていましたが、その意味を実感する今 日この頃です。昨年幼稚園に入った時にも平日 に行事がちょこちょこと入ってくるし、土曜日 はお休みだし、保育園の時とは違ってかなりス トレスがありましたが、預かり保育といって幼 稚園終了後にそのまま幼稚園で預かってもら え、17 時30 分に仕事を切り上げれば近くの保 育園で次女をむかえ、なんとか終了の18 時30 分までにはお迎え可能でした。また土曜日は職 場の保育園に次女と一緒に一時預かりで預かっ ていただき、さらに主人がシフト勤務のため、 かなり協力してくれるため、形式上のフルタイ ム勤務が可能でした。しかしこの1 月、長女の 通う小学校の学童保育(小学校終了後にあずか っていただける場所)に入るための大きな難関 があることが判明。40 人近くの希望者に対し、 実際は14 人しか入れないというのです。それ も今年は先着順に学童入りを決めるとの事でし た。ただ、学童は定員70 名のところ、すでに 定員越えの状況で子供たちを預かっており、雨 の日には50 人用の部屋に70 人が押し込めら れ、クーラーもなく、あまりいい環境とは言え ないことも確かでした。それでも共働きの家庭 にはなくてはならない存在であり、どうしたも のかと途方にくれていました。そんな時、私の 職場の先輩にファミリーサポートを紹介してい ただいたのをきっかけに学童に入れることを断 念し、他の方法を考えることとしました。

長女が1 年生になること、娘にとっても親に とっても初めての事であり、幼稚園までとは違 って勉強が始まる、今後社会にでても必要最低 限の算数や字の練習などといった大事なことを 学んでもらわなければならない時期である事、 学童に期待できない事から、この1 年は娘のた めに私も少し時間をとらせてもらおうと考える ようになり、非常に我がままではありますが、 職場の上司や先輩、後輩に業務時間の短縮を申 し出ました。というわけで、ファミリーサポー トの方、祖母、私たち夫婦で娘の預かり日程を 組んで、新1 年生のための準備が完了、楽しい 小学校生活が始まったのでした。

一方時はさかのぼり、研修医時代から仕事の みに全力をそそいでいた(つもりの)5 年目に 突入したある日の事、連日夜間に呼び出され、 医局のソファーで仮眠をしていると、早朝に出 勤してきた同僚に(男性)、鍵くらいかけて寝 ろよなー、嫁行けねーぞと一言。確かに、この 先私ずっとこの生活?とちょっと不安になって いた頃に出会った人が現在の旦那様で、その後 は順調に事が進み、2 人の娘を授かることがで きました。もちろんその間には2 度の産休、育 児休暇をとらせていただきましたし、子供は生 後半年から保育園に預けましたが、小さい頃はとにかく体調を崩しやすく、保育園からは熱発 しているのでお迎えお願いしますとの連絡がし ばしばで、職場の方にはかなり迷惑をかけなが らの職場復帰でした。仕事に戻ったものの、以 前にはなかった新研修医制度が導入され、やる 気に満ち溢れた研修医がいました。もちろん年 数的には指導者の立場となり、大学時代には中 堅として研修医指導もしたことはありました が、私の技量と知識は6 年目でほぼストップし ており、また系統だった研修を受けずに育って きた私にとっては、研修医制度はカルチャーシ ョックでした。もちろん6 年間は仕事をしてき たので、私にわかることは教えてあげられるけ れど、スーパーローテーション、さらに頻回の 研修医レクチャーなど今の研修医はいいなとい ううらやましい気持ちと、もっと研修医時代に やるべき事があったんだろうなという後悔と、 ここに私がいる存在価値ってあるのかななどと かなりマイナス思考になっていた時期もありま した。でもそんな時、大学時代にお世話になっ た先輩に久しぶりに女性医師の会でお会いし、 その時抱えていたもやっとした気分を話したと ころ、先輩も出産後に同じような事を思ったこ とがあると聞かされました。その後私のマイナ ス思考はどこかに吹っ飛び、研修医の為だけで なく、私自身の成長の為にもできる範囲で少し ずつ頑張っていこうと思えるようになりました。

そして数年が経過し、当院の私の所属する呼 吸器内科のメンバーが徐々に増え、今や家族の ようにアットホームでしかも充実したチームと なり、仕事は楽しいものだと思える今日となり ました。勉強だって俄然やる気にだけはなって いるし(実際は伴っていませんが)、少しでも 皆にはぐれないように何とかぶら下がってつい て行っている所です。

子育てしながらの仕事について、私自身何が 一番いい方法なのかということは、はっきり言 ってわかりません。両親が近くにいて子育ての 助けをしてくれるかどうか、子供の体調が悪い 時に休める体制があるかどうか、病児保育施設 の事などそれぞれの個人、職場の環境や子供に 対する意識の違いで大きく違いがあると思うか らです。最近女性医師や看護師の離職を少なく する取り組みがあちこちで進んでおり、職場内 保育園は大きな病院ではかなり整備が進んでき ていると思います。ただ現在の私のように、保 育園を卒園した後の問題もあり、この業界だけ でなく、まだまだ子育て中の女性が仕事をしや すい環境とは言えないとも思います。でも唯一 言えることは、どんな形でもいいので仕事は可 能な限り続けてほしいということです。この先 もう少し客観的にこの事について考える余裕が できた時、少しでも後輩の為に働きやすい環境 作りのお手伝いができればなあと思っています。

少しでも現状が伝わり、今後多くの職場で育 児支援の環境が整っていくことを願ってやみま せん。それは女性医師の為だけでなく、職場全 体の環境整備にがると思います。最後に、私 を応援してくれる家族、両親、そして職場の皆 さんに感謝して終わりにしたいと思います。