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ツーキングのススメ
〜ウォーキングを習慣づけるために〜

崎原永辰

那覇市医師会生活習慣病検診センター
所長 崎原 永辰

自宅のある那覇市壷屋を徒歩でスタートし て、開南のバス停前、せせらぎ通りを抜け、那 覇高校正門前を通り、開南小学校横、泉崎交差 点の陸橋、那覇西消防署前を通り、裏手の那覇 市医師会(東町)に到着するまで片道ちょうど 35 分です。往復で1 時間10 分を要する私の通 勤時のウォーキング(略してツーキング)は、 4 年以上続いています。

ウォーキングは続けてこそ効果があるといい ますが、継続するためには何か特別な方法があ るのでしょうか。私が勧めるウォーキングのコ ツはただ1 点、「踵の着地と同時におへそをそ の上に乗せていくこと」です。このウォーキン グ法は、通常の歩行より地面を蹴るタイミング が一瞬早く、慣れないうちはハムストリング (脚の裏側の筋肉)に多少の張りは出ますが、 一度この感覚を会得すると重心の移動がスムー ズになり、平地では歩行の慣性力をうまく利用 することができます。重心の移動がスムーズな ウォーキングは、ひとたび歩き始めると次々と 自然に足が出るため、歩くことが億劫でなくな るわけです。この考えに至ったきっかけとし て、数年前NHK でインタビューを受けていた 100m の元日本記録保持者の伊東浩司選手のこ とばがあります。彼いわく、「速く走るために は、差し出した足の位置に体の重心(腰)を乗 せていくようにすることだと思います。そのた めには、残った脚のハムストリングをしっかり 使うこと…」。走ることと歩くことは、基本的 に重心の移動がスムーズでなければならないと いう点で共通しており、この意見をウォーキン グに応用したというわけです。

これに対して、継続性のないウォーキング は、重心の移動がスムーズに行われていないウ ォーキングだろうと考えています。つまり重心 が後ろに残っているために、差し出した足の踵 によって逆にブレーキがかかり、壁を作ってい る状態です。このようなウォーキングは、単に 歩くことが苦になるばかりか、膝関節に余計な 負担がかかると思われます。ウォーキングが継 続するポイントは、楽に歩を進めることであ り、それには重心の移動がスムーズな歩行を実 践することです。ウォーキングに関する書籍で 理想のウォーキングフォームを調べてみると、 1)頭は揺らさずしっかりと2)肩は力を抜いて リラックス3)腰の回転で歩幅を広げて4)着 地はしっかり踵から5)目線は真っ直ぐ15m 先 を6)呼吸は自分のリズムで7)肘をやや曲げ て腕を大きく振る8)膝を伸ばして大きく前へ などと書いてありますが、これらの注意事項を全て頭に入れながら歩いても、スムーズな重心 の移動が結果としてなされていなければ、あま り長続きは期待できないだろうと思います。

兵庫県医師会が推進している県民向けの健康 運動に、脊椎ストレッチウォーキングというも のがあります。このウォーキング法の3 大ポイ ントは、1)下腹部を持ち上げるように引き締め る2)頭頂部をひもで引き上げるように意識し て背筋を伸ばす3)つま先を引き上げ、膝を軽 く伸ばし、踵から着地する、同時に腰をその上 に乗せるように意識するというもので、私がお 勧めしているウォーキング法と同じものです。

ツーキング中の時間はできれば無駄にしたく ないため、歩きながら今日一日にやるべきこと を思い浮かべ、その優先順位をつけたり、仕事 の内容を頭で整理したりしています。そうする ことで、ツーキングの時間はより充実し、時間 が惜しいということもなく、まさに一石二鳥と 言えます。夏の暑い時期は汗びっしょりで、仕 事前に汗を拭くことやクーリングが必要なこと もしばしばですが、汗をかくことを嫌がって、 せっかくの運動のチャンスを失うよりはと自分 に言い聞かせています。

参考文献
1. 科学に基づいたウォーキング指導と実践、宮下充正著、 ブックハウスHD、2006
2. 奇跡のウォーキング革命、小山裕司著
3. 脊椎ストレッチウォーキング http://www.healthjp.net/ssw_outline.html