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平成21 年度第1 回沖縄県・沖縄県医師会連絡会議

常任理事 安里 哲好

去る5 月28 日(木)、県庁3 階第1 会議室に おいて標記連絡会議が行われたので以下のとお り報告する(出席者は以下のとおり)。

出席者:宮城会長、玉城副会長、小渡副会長、 安里常任理事、大山常任理事(以上、医師会)
    奥村部長、宮里保健衛生統括監、川久保参事、大嶺参事兼福祉保健企画課長 上原国保・健康増進課長、新垣医務課長 (以上、県福祉保健部)

議 題

1.新型インフルエンザの医療体制の整備に 関するご協力について(福祉保健部)

<提案要旨>

新型インフルエンザA/H1N1 は、北米から 感染が拡大し、世界43 カ国にまん延する状況 となっており、国内でも340 例余りが報告され ている。

沖縄県新型インフルエンザ対策行動計画は、 高病原性のウイルスを想定した内容になってい るが、国内発生初期には感染拡大を遅らせる目 的で、感染症指定医療機関等に発熱外来を設置 して、振り分けを行うこととしている。

発熱外来の設置及び運営には、会員の先生方 のご理解とご協力が必要ですので、ご高配よろ しくお願い致します。

また、感染拡大期及びまん延期の患者の診療 については、各医療機関における感染予防策の 強化が必要と思われるので、会員の先生方への 周知方よろしくお願い致します。

なお、今後感染地域等への渡航歴や患者との 接触歴がない方が発熱した場合は、発熱相談セ ンターではなく、かかりつけ医等の医療機関に 電話して、指導を仰ぐという広報を行いたいと 考えているので、ご理解とご協力を賜りますよ うお願い申し上げる。

<主な意見等>

■全国で見受けられた新型インフルエンザ発生 に伴う受診拒否については、調査したところ 本県では1 例も起こっていない。先生方のご 理解とご協力のおかげである。感謝申し上げ たい。新型インフルエンザについては、そろ そろ収束に向けた手続きが取られていく。今 後ともかかりつけ医の先生方にご協力をお願 いしたい(福祉保健部)。

□今回の新型インフルエンザについては、行政 も医師会も経験したことが無いため、情報の 共有とその対応が重要な点であった。各段階 の医療提供体制については、感染早期の際の 県立病院の対応、まん延期の全医療機関での 対応については理解できたが、感染拡大期の 際の対応が分かり難い点であった(県医師会)。

□本県では1 例も発生しておらず、本来であれ ば従来の季節性インフルエンザと同様の対応 で良いはずなのに慌ただしくなった。また、 時系列での情報伝達の体制が無いため、発出 された情報が、いつ、だれが、どこで決めた のか不明であり混乱が生じた。例えば、患者 数1 〜 32 名等の医療体制を決める数字が、 県全体の共通の取り決めなのか、各地域毎の 話なのかが分かりにくかった(県医師会)。

■時々刻々と情報が変わり混乱があった。今 後、各保健所長と発熱外来設置医療機関との 意見交換会の場を持ちたいと考えている(福 祉保健部)。

□新型インフルエンザに感染した精神障害者の 対応を検討していただきたい。感染した方を 精神科に紹介されたとしても対応に困り、現 場での混乱が予想される(県医師会)。

□インフルエンザ迅速診断キットの数を県では 把握しているか。現在、発熱の症状がある方 のほぼ全ての方に診断キットを用いており、 診断キットが不足しつつある。肝心な時に迅 速キットが不足する事態が起こりかねない (県医師会)。

■迅速キットの数については県で把握している (福祉保健部)。

■今後、感染地域等への渡航歴や患者との接触 歴がない方が発熱した場合は、発熱相談セン ターではなく、かかりつけ医等の医療機関に 電話していただくという対応についてもご協 力をお願いしたい(福祉保健部)。

2.沖縄県「がん登録事業」への「地域がん 登録標準データベースシステム」の導入 について(県医師会)

<提案要旨>

沖縄県がん診療連携協議会は、がん診療連携 拠点病院の整備に関する指針(平成20 年3 月1 日厚生労働省健発第0301001 号)に基づき、 琉球大学医学部附属病院に設置され、県の地域 がん診療連携拠点病院等、県内の医療機関関係 者と患者関係者の委員による全県的な組織とし て設立されている。その下部組織として、研修 部会、がん登録部会、普及啓発部会、地域ネッ トワーク部会、相談支援部会、緩和ケア部会の 6 部会が活動している。

沖縄県のがんによる死亡は逐年増加の一途を たどり、死亡順位の第一位を占め、県民にとっ て健康上の大きな脅威となっている。

国では、平成19 年に「がん対策基本法」が 施行され、同法に基づき「がん対策推進基本計 画」が策定され、その中で重点的に取り組むべ き課題の一つとして「がん登録の推進」を掲げ ている。

沖縄県では、昭和63 年より県内の全住民に 発生した全てのがんについて、発症から治療、 死亡に至るまでの全医療経過に関する情報を収 集し、その情報を基に罹患率の測定、受療状況 の把握等を行い、がん予防の推進、がん医療の 向上に役立てることを目的とした「がん登録事 業」を行っている。しかし、現状ではがん罹患 の把握漏れが多く、本県のがん罹患の実態を把 握しているとは言い難い状況にある。また、県 独自のシステムの登録を行っているため、国が 推進している「地域がん登録標準データベース システム」と比較して、登録データの精度や、 保守・運用面での安全性、信頼性、継続性に乏しい現状となっている。

沖縄県内では、既に院内がん登録を行ってい る施設が11 施設あり、その内、国立がんセン ターが配信している院内がん登録支援ソフト 「Hos-canR」を使用している施設が9 施設あ る。いずれも、沖縄県におけるがん診療の中心 となる施設である。また、「地域がん登録標準 データベースシステム」は、「Hos-canR」から のデータインポート機能が備わっており、将来 的には院内がん登録から電子データの受け渡し が可能となる。

この「地域がん登録標準データベースシステ ム」を導入し、効率的かつ精度の高いがん罹患 登録を行うことにより、生存率の測定、がん予 防・医療活動の評価、医療機関への情報サービ ス、がん疫学研究などに大きな役割を果たすこ とが期待できる。更に、がんに係る医療活動 や、県のがん対策の企画立案、評価等に大きく 資するものと思われる。

以上の理由により、国が推奨する「地域がん 登録標準データベースシステム」を、沖縄県の 「がん登録事業」に速やかに導入して頂きたく、 昨年度3 月に琉球大学から要望書が提出されて いるのを踏まえ、これに対する県のお考え、対 応をお聞きしたい。

<福祉保健部の回答>

沖縄県では、国の対がん10 か年総合戦略の 推進に対応し、沖縄県悪性新生物登録事業(が ん登録事業)を昭和63 年から継続実施してお り、平成16 年には、厚生労働省第3 次対がん 10 か年総合戦略研究事業の第一期支援地域 (全国15 地域)の指定を受けた。当時は、全国 的な標準登録システムがなく、各道府県独自の 登録システムで登録を行っていた。

本県ではこれまで、がんの予防の推進や医療 の向上に資する目的で登録の精度向上に取り組 んできたが、死亡票からの登録割合が高いな ど、登録の精度が悪く、生存率等の重要な指標 を得ることが難しい状況であった。

国では、平成14 年頃から全国標準データベ ースシステムの検討が行われ、モデル地域での 実施を経て、平成18 年度から各道府県で国庫 補助による導入が開始された。

そこで、本県も登録の精度を向上させるた め、全国標準データベースシステムの導入が必 要であると考え、国立がんセンターや先進県か ら導入についての具体的な作業手順などの情報 を得ている。昨年度から実施体制を整えつつ予 算確保を検討してきたが、確保に至らず、今年 度、緊急経済対策枠で、6 月補正予算に予算要 求(980 万円)を提出しているところである。

<主な意見等>

□国は一般のPC で扱えるようなフリーソフト の配布が出来ればよいと考える(県医師会)。

□がん拠点病院の占めるがんの割合が出せない か。それが高ければがん拠点病院の登録率を 100 %近くまで持って行くことで解決する話 なのか。(県医師会)。

■琉大だけの登録では解決するものではないの で、各医療機関の院内がん登録などに協力を 仰ぐという方向に持っていきたい。(福祉保 健部)。

□保健医療計画では、がんの専門的病院等でが んに関する治療がなされている。しかし、 各々の濃淡があり、拠点病院だけで沖縄県の がん治療をしているわけではないことから、 広く行き渡る必要がある。また、法人病院は 放射線治療機器がない事や沖縄病院は肺がん 単独のため、あらゆるがんを網羅しないとい けないというシステムになっているので拠点 病院になれない(県医師会)。

■全数が網羅される方向に取り組んでいきたい (福祉保健部)。

3.国からの補助事業(保健医療福祉分野) の全項目提示について(お願い) (県医師会)

<提案要旨>

本来、国からの様々な保健医療福祉分野に関 する補助事業が各都道府県で実施されているが、国から提示される全ての補助事業(保健医 療福祉分野のみ)についてご教示いただきたい。

<福祉保健部の回答>

標記の件について、福祉保健部各課に照会し 取り纏めた(合計135 事業)。補助事業ごとに福 祉保健部の所管課を記載しているので、詳細に ついては各所管課へ問い合わせていただきたい。

<主な意見等>

□マスコミ等で盛んに言われており、全国的に 問題となっている介護士不足について、今年 の診療報酬改定で3 % UP を行ったが、実質 はそこまでUP されない。依然として介護士 不足という事で今回は補正予算において手当 てする事となっている。また、自立支援法の 中でも精神保健福祉士等の資格者に対する人 件費の補助を行うといっている。その話は県 に来ているのか。また、それを県はやるのか やらないのかご教示いただきたい(県医師 会)。

■基金事業となっており、国からの説明が先週 あったばかりで6 月の補正予算には間に合わ ないので9 月に対応を予定している(福祉保 健部)。

■介護関係の職務改善については各都道府県で 行うことになると思うが、国が予算審議中で 具体的な事業の内容を十分に周知されていな い状況である。(福祉保健部)。

■これまでの補助事業の県側の負担率は1/3 な どであったが、最近では1/3 以内という事業 が増えてきているので対応の幅は広がってく ると思われる(福祉保健部)。

□昨年度本会から情報提供を行った産婦人科医 の分娩に対する補助や救急医の当直に対する 補助などは県の負担が1/3 以内なので、出来 れば早急に申請していただきたい(県医師 会)。

■産婦人科医の分娩に対する補助の件について は、国の方から調査依頼があり、現在、産婦 人科医療機関へどれぐらいの分娩手当てを支 給しているか調査することになっており、調 査結果が出て調整となる(福祉保健部)。

□看護学校の講師の講習が補助事業であると聞 いているがいかがか(県医師会)。

■ 5 年に1 回くらいの割合で実施しており、補 助事業では30 名の定員を確保することとな っている。今年度実施しているが40 名の予 測定員に対し20 名しか応募がない状況であ る。また、長崎県も実施していることから受 講生が少ないのではないかと考えられる(福 祉保健部)。

■調整中ではあるが6 月補正の方で、障害者自 立支援特別対策事業費を要求しているが、具 体的な内容や額等についてはこれから検討し ていく(福祉保健部)。

□基本的には介護報酬できちんと見れば良いこ とでありおかしい話である。現場のスタッフ も混乱する(県医師会)。

□自立支援法の改正に伴い、自立支援の請求業 務がこれまで補助事業であったのに対し、補 助金でなくなり自立支援法に基づく請求業務 となった。それをオンラインで実施するよう 国保からプログラムが配布されているが、重 複入力等が多いなど非常に手間がかかってい る。早急に改善していただきたい(県医師 会)。

■補助事業に関しては優先順位を付けて、より 効果的な事業が実施できるよう検討していき たい(福祉保健部)。

□他県の医師会の事情を聞くと、県から数億円 の補助事業を行っているところもある。それ は、医師会と行政が一体となって保健医療福 祉事業に取り組んでいることとなる。沖縄県 は医療連携体制推進事業のみしかない。これ だけ国の補助事業があれば医師会と連携して 効果的に事業ができるという事なので積極的 に検討していただきたい。また、がん対策に 関して、沖縄県は1/2 の補助となると殆ど手 をつけていないのが現状であるので、がん対 策向上を図る上でも是非着手していただきた い(県医師会)。

印象記

安里哲好

常任理事 安里 哲好

今年度の県福祉保健部の人事は奥村啓子氏が福祉企画統括監から部長になられ、宮里達也氏が 北部福祉保健所所長から保健衛生統括監に就任された。福祉領域の方が7 年間連続で部長に就任 されているが、保健医療の領域、特に5 疾病(CKD :慢性腎臓病を加え)6 事業(新型インフル エンザを加え)についても絶大なるご尽力を頂きたいと切に希望する。今年度第1 回の会議があ り議題は3 題(県から1 題、本会から2 題)であった。

「新型インフルエンザの医療体制の整備に関するご協力について」は感染拡大期およびまん延 期における発熱外来の設置・運営には、会員の先生方の協力についての依頼と、診療の際には各 医療機関における感染予防対策の強化について、会員への周知依頼があった。新型インフルエン ザの医療体制について、一つの流れは出来たようである。しかし、どの時点が感染拡大期かある いはまん延期かは明確でない状況であったように思えるし、基準・指標が地域によっても、受け 入れ態勢の程度によっても、日々刻々と変化しており、各保健医療圏の保健所、医師会、基幹病 院(感染症病院・救急告知病院)で何度も検討し、柔軟かつ適切な対応が望まれる。まん延期を 想定して、医療従事者の感染防御策も十分に強化しつつ、全医療機関で患者を診察し治療できる 状況を準備する必要を痛切に感じた。また確定診断に要する時間の短縮やワクチンの早い時期の 生産が望まれる。一方、医師の発熱外来への応援、新型インフルエンザ感染による休業等に対し、 厚生労働省は、2009 年度補正予算に盛り込まれた「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」を利 用することが可能とし、積極的な活用を自治体に求めているとのこと。

「沖縄県『がん登録事業』への『地域がん登録標準データベースシステム』の導入について」 は6 月補正予算に予算要求(980 万円)を提出したと述べていた。現在、がん拠点病院は県下で 大学病院も含めて4 病院あり、既に院内がん登録を施行している施設が11 施設あるとのこと。更 に、DPC 病院の参加や積極的にがん治療を行っている診療所等も含めネットワーク作りが望まれ る。がん登録率が高いだけで、その地域のがん診療の向上が如実に現れるという研究者もいる。 アメリカ、デンマーク、スウェーデンなどでは国全体でがん患者の登録が実施されているようだ。

「国からの補助事業(保健医療福祉分野)の全項目提示について」は生活支援も含めて132 件あ った。県福祉保健部がどのような事業を推進しているか、今回は、十分には把握できなかった。九 州各県の医師会では、数千〜数億円の単位で、保健医療福祉事業を取り組んでいるが、本会におい ては、平成20 年度は妊婦HIV 母子感染防止事業の約1,000 万円(郡市医師会は医療連携体制推進 事業で150 万円)のみで、それも平成21 年度からは廃止になった。一方、平成21 年度は医療連携 体制推進事業について400 万円の補助があり、県医師会(172 万円)と4 郡市医師会(各57 万円) とで、脳卒中と糖尿病の地域医療連携の充実に利用することになっている。大きな問題として、国 の補助事業における財政支援のその多くは県の負担を伴う。県行政は県立病院に100 億円近くの繰 り入れを行うと、もうそれ以外の保健医療福祉領域の支援が困難になる。また、莫大なる臨時補正 予算が生じても、県行政の負担がなければ、短期間で申請をしなければならないので委託先は県立 病院を中心に行われ、負担があれば時間切れも生じ、申請しないという構図になる。

この度、「地域医療再生基金」事業が平成21 年度中(10 月中)の計画策定を基本に5 年間、100 億円が10 医療圏、30 億円が70 医療圏で、沖縄全体を網羅した視点でこれを活用してもらいたい ものだ。