医療法人友愛会豊見城中央病院研修管理委員会副委員長
比嘉 盛丈
過日のWBC における侍ジャパンの活躍は、 日本全土を一気に元気づけるような目覚ましい ものであった。一人一人の選手の実力は当然鍛 え抜かれたものであった。しかし、世界大会で 2 連覇を成し得たのは、単に侍ジャパンの選手 たち個々人の能力の総和が最大だったからでは なく、チームワークというか、チーム全体が目 指すもの(ビジョン・戦略)が噛み合ったとい うか、そういう総合力なるものの比重が大きか ったように感じたのは私だけではないだろう。 同じような観点から考えると、よりよい医療を 達成するには、複数のよい医師達が一つの目標 に向かって力を集約させることが必要なのかも しれない。すなわち、病院内での医師-医師間 での連携や、医師-コメディカルとの連携も重 要であろうし、「診診連携」「病診連携」「病病 連携」といった地域ぐるみの連携プレイもまた 目標達成への鍵を握るのではないだろうか。
日本の医学部では、よい医師は心技体が備わ っていると教えることが多い。その心技体を研 修医らに備えてもらうために、指導医は何を伝 えればよいのだろうか。まず、「技」は基本的 な医学知識と技術を習得してもらうことであろ うから指導医側にもさほどの迷いはないかと思 う。問題はやはり「心」と「体」であろう。こ れらは非常に抽象的で、目標を定めにくい反 面、その修得度の評価が困難であり、これらを きちんと修得しないと先に述べた連携プレイが おぼつかないものになってしまうだろう。「体」 は、「自らの健康」と「態度」の両方の意味に 解釈できるかと思うが、後者の観点から考える と、時間や約束を守ること、身なりや言葉使い などをきちんとすることなど、社会人としての 基本を「接遇」のように教えるのが実際的だろ う。紹介状や返書をきちんと書きあげることも 「体」に含まれるだろうし、患者さんと同じ目 線でしっかりとコミュニケーションがとれるこ とも「体」に含まれるのではないだろうか。で は最後に、よい医師に備わっている「心」とは 何だろうか。その答えからはほど遠いかと思う が、私が個人的にイメージするよい医師像から 列挙したい。まず、よい医師とは患者に対して 愛情を持っており、一緒に働きたくなるような 人である。その印象が生まれるのはその人がき っと、知識があり、コミュニケーション能力が 高く、労苦を厭わず素早く反応し、意に沿わな い仕事であっても嫌な顔せず応答してくれるか らだ。また、よい医師は難しい問題や対立する 意見であっても冷静に理性的に議論することが でき、正しい判断を下すことができるし、リー ダーとしてチームの意見を取りまとめることが できる。そして時には、組織の一つの歯車とし て献身的に働くことができるし(よい医師は必 ずしも社会的に高い評価を得ている必要はない だろう)、より大きな組織と共同して医療や研 究ができる。自分の中に知識や技術や経験を Input することだけに執着せず、他の医療者に 対して今あるものを惜しみなくOutput(教育) していくことができる医師だろう。そういう他 者(患者や医療スタッフら含む)に対する敬愛 と奉仕の念を持ち続ける医師であることを願う 「心」を、研修医には育んでほしい。