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平成20 年度沖縄県医師会感染症・予防接種講演会

宮里善次

理事 宮里 善次

平成21 年2 月19 日に感染症・予防接種講演 会が国立感染症研究所感染症情報センター主任 研究官の安井良則先生をお招きして、『新型イ ンフルエンザとその対策について』と題して、 県医師会館で開催された。

65 枚の膨大なスライドを使った講演は、新 型インフルエンザウィルスの発生機序から始ま り、流行時の具体的な行動計画に及ぶ実践的な 内容であった。

スペインかぜなど過去の新型インフルエンザ の特徴は殺傷力が強く、通常のインフルエンザ に比べて15 〜 45 歳の死亡率が高く、社会的機 能不全や経済破綻をきたすことが問題点として 指摘された。

パンデミック対応戦略として1)国内への侵入 を遅らせる(Border control)、2)国内での拡 大を遅らせる(各種公衆衛生対策、予防投薬 等)をすることで、流行のピークを遅らせ、医 療現場やライフラインが機能不全に陥らないよ うにすべきとの指摘があった。なお、沖縄県の 場合島嶼県でしかも鉄軌道がないので、外出の 自粛やタイムリーな学校と職場の閉鎖、集会な どの制限を行えば、他県に比べて流行のピーク をかなり軽減できる可能性が高い。

発熱外来を設置する目的について、1)外来に 押し寄せてくる発病者の交通整理のため、2)で きる限り一般医療機関の外来には新型インフル エンザ患者が来ないようにするため、3)一般医 療機関が感染の温床になるのを防ぐため、と説 明された。その目的を達成するのは非常に困難 で不可能な印象を伴うが、行政機関とのきめ細 かな打ち合わせが必要である。

発熱外来はテントなどの開放空間の方が感染 伝播を最小限に、また拡張性からしてもベスト との提言があった。

基本的には飛沫感染なので咳エチケットは簡単で最も効果的な予防策である。伝播をふせぐ には、1)咳やくしゃみをする際に口を(手で) 覆う。2)覆う際にはティッシュ等を用い、使用 後は捨てる。3)ハンカチ等の布を使用した場合 には共有しない。4)つばや鼻水が手についた場 合には、石けんと流水で手を洗う。5)咳をして いる患者はマスクを着用。この5 箇条を外来な どに張り出して、患者教育にして頂きたい。

さて、会場から二つの重要な質問があった が、安井先生個人の考え方であり、また確たる お答えではなかったので、後日3 月4 日に日本 医師会において感染症危機管理協議会が行われ た際の厚労省の正式な答えを記載したい。

第一の質問は蔓延期において電話による診断 とタミフル処方が可能か?と云う質問であった。 答えは、超法規的な処置になるので不可であ る。ただし、フォロー中の慢性疾患患者に海外 発生期において、前もって電話診断する旨を承 諾頂いたら可能との答えであった。

第二の質問は発熱外来にかり出された医師に 何らかの補償がつくのか?と云う質問に対し て、国は新型インフルエンザを災害と考えてお り、特定の職業だけが補償されることは今のと ころ考えてない。ただし、多くの都道府県医師 会から問い合わせがあるので、何らかの方法が ないか国としても検討中である、との答えであ った。なお、日本医師会としてもこのことを更 に要求していく旨の追加発言があった。

さて、今回の安井先生の講演で、会員間の新 型インフルエンザに対する情報と医師会が協力 すべき箇所が共有化できたと思う。

『新型インフルエンザ対策行動計画』によっ て、医療機関と医師会が担うべき分野も明確に なったので、今後行政側と協力して、今年度中 に体制を作り上げていきたいと思う。