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レセプトオンライン請求の義務化

幸地賢治

常任理事 幸地 賢治

レセプトオンライン請求とは

レセプトオンライン請求とはレセプトを指定 された回線を使って請求する事である。これ は、平成18 年4 月10 日に厚労省令第111 号が 公布された事に始まる。省令の内容は保険医療 機関等の診療報酬の請求方法として、オンライ ンによる方法を追加し、一定期間後はオンライ ン請求のみに限定するというものである(これ は一定期間の後はレセプト請求をオンライン請 求以外は認めないという事である。)。

目的

1)医療制度改革大綱を踏まえたもので、年間 約2,000 億円に達するとされる医療保険事 務全体費用をレセプトオンライン化によっ て大幅削減を図るというのが第1 の目的で、

2)レセプトデータをデータベース化する事 により、その疫学的な活用を図り、疾病予 防・医療費適正化につなげるというのが第 2 の目的である。しかし「レセプト数・年 間16 億件のデータがまとまり、2 〜 3 年分 析する事で日本の医療の進むべき方向が打 ち出されるとともに、どのような病気に対 してどのような診療が行われているか調査 しやすい。」との小泉首相(当時)の発言 もあり、どのような使われ方するのか注目 する必要がある。

レセプトオンライン請求に向けたスケジュール

病院

  • 400 床以上:平成20 年
  • 400 床未満(レセ電子請求有り):平成21 年
  • 400 床未満(レセ電子請求無し):平成22 年
  • レセプト枚数100 件以下:平成25 年

診療所

  • レセコン有り:平成22 年
  • レセコン無し:平成23 年
  • レセプト枚数が100 件以下:平成25 年

オンライン請求の普及率(H20)

オンライン請求の普及率(H20)

調剤薬局の伸びが目立つが、診療所の伸びが 鈍い。

費用

機種やソフト、維持費などによって費用は異 なるが、

1)ゼロからのスタートの場合

初期費用

  • レセコン・・・・・・・120 〜 300 万円
  •  今回の省令では電子カルテを要求する記載はない。
  • オンライン請求用パソコン・・10 万円
  • 電子媒体読込用ドライブ・・・・1 万円
  • 電子証明書発行料・・・・・・0.4 万円(3 年間有効)
  • ネットワーク回線接続初期費用・・・・・約2.8万円
  •  Bフレッツ(ハイパーファミリータイプ)の場合回線は速い方が良い。

維持費

  • ネットワーク回線費用・・・・4.8 万円
  • レセコンのメンテナンス料・・・・・・・6 〜 24 万円

ゼロからのスタートが費用面でも困難である 事が分かる。「インストール」「コピペ」などと いうコンピューター用語も慣れて頂くしかないが、最初は大変だろうと思う。従ってどうして もオンラインが間に合わない場合には代行請求 制度を利用して頂く事になる。現在代行入力・ 請求は医師会が行う事になるが、同じように守 秘義務を義務付けられている支払基金に代行入 力・請求の委託が可能かどうか交渉中との事で ある。ただし代行入力・請求の単価がどれ程に なるかについても留意しなければならない。

2)レセコン使用中の場合

初期費用

  • 電子媒体読込用ドライブ・・・・1 万円
  • 電子証明書発行料・・・・・・0.4 万円(3年間有効)

既にオンライン請求を実施している施設は問 題がない。レセコンを私用して紙レセプトを出 していれば、電子媒体(FD :フロッピーディ スク、CD :コンパクトディスク)に移し替え るだけであるので障壁としては低い。注意点は 二つ。第一はレセコンから電子媒体へ移し替え る機能が使用中のレセコンに付いているかをチ ェックする必要がある。付いていればOK だが、 付いていなければオプションとして追加する事 が出来るか出来ないかを確認する。データを移 し替える機能がなく機能の追加も不可ならば、 レセコンを買い換えるしかない。第二は電子媒 体に移し替えFD かCD の形にすると、外から 見えない(紙レセプトでは簡単に出来たチェッ クが出来なくなる)。このままでは本来提出す べきレセプトの半分が消え去っていたとしても 分からない事になるので、FD,CD の中身(提 出すべきレセプトが全て漏れなく入っているか を)をチェックする必要がある。「レセプトチ ェッカー」という無料のソフトでCD,FD の中 身のチェックが可能ですのでご利用下さい

日医の見解および対応

日本医師会は「IT 化推進の立場からオンラ イン請求自体を否定するものではない。しかし 現状において約13,000 もの医療機関がレセプ トを手書きしており、IT 化の旗のもとで強制 的な義務化を行う事は、地域医療崩壊を加速さ せかねない重大問題。レセプトオンライン請求 の完全義務化は拙速である。」というスタンス で厚労省や関係諸団体と交渉中である。当初か ら手挙げ方式が日医の立場であるが、これが不 調に終わった場合以下の5 項目に絞って働きか けをしています。

1)平成21 年度の予算概算要求:代行入力支援 (システム構築等)に必要な初期費用の手当 などを求めています。

2)少数該当要件の緩和:レセプト1,200 件と されていますが、これを3,600 に緩和するよ うに求めています。

3)代行請求業務の改善:代行請求機関は現在 三師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会)の みであるが、支払基金等審査機関でこの業務 が出来ないか交渉中

4)国保請求書、医療費助成制度などの書式を 統一し電子化する事。

5)レセプト電算処理(電子媒体)の活用: CD,FD 等による提出も可とするようにとい う要求です。

現在日医は上記以外でも色々な緩和策を提起 して関係機関と交渉中と聞いています。

最後に

現在レセコンを導入なさっておられる先生 は、今後の事を業者さんとよく相談なさってオ ンライン請求を進めて頂ければ宜しいかと考え ます。業者さんとの話の中で疑問がある場合は どうぞ医師会へご相談下さい。先生の立場に立 ったアドバイスを差し上げます。

手書きの先生はゼロの状態から始める訳です から大変です。色々とご事情もお有りかと思い ますが、これからレセプトコンピューターをお 求めの場合はORCA(オルカ)をお勧めしま す。現在中部地区医師会のシステムサポート課 は優秀な人材を集め、ORCA でのレセプトオン ライン請求を進めています。支払基金での動作 試験もクリアして実績をあげていますし、医師 会がバックにありますので安心してお付き合い が出来るとおもいます。

ここに記載させて頂いた内容は、全部が決定 事項ではありません。現在日医は厚労省はじめ 関係諸団体と鋭意交渉中と聞いています。いわ ゆる省令に対しては政治折衝といいますので、中央情勢の変化によってはどこがどのよ うに変わっていくか分かりません。今は 推移を見守るしかありませんが、流れは オンライン化の方向という事はご理解頂 きたいと考えます。

いずれにしても不明な所があれば、医 師会にご連絡下さい。

オンライン請求に関する問い合わせ窓口

○中部地区医師会システムサポート課:島袋 懇
    TEL : 098-936-8201
    FAX : 098-936-8207

○県医師会: IT 担当 平良亮 
    TEL : 098-888-0087
    FAX : 098-888-0089

○沖縄県社会保険診療報酬支払基金システム障害時:オンライン請求システムヘルプデスク
    TEL : 0120-60-7210
  ネットワーク全般:ネットワークサポートデスク
    FAX : 0120-220-571

最近問い合わせが多く、つながりに くくなっているようです。御承知おき 下さい。

オンライン請求チェックリスト

右記のオンライン請求チェックリスト の手順に従ってご自分の施設がどの位置 にいて何が問題なのかをご確認下さい。 なお同チェックリストは中部地区医師会 システムサポート課島袋 懇(しまぶく ろまこと)氏が作成したものを引用さ せて頂きました。

良いお知らせ

この文章を書き終わってから、レセプ トオンライン請求の代行事務についてニュース が入りました。日医が働きかけていた支払基金 による代行入力、代行請求が実施可能な業務と して支払基金自体で検討されているとの事です。厚労省からも支払基金の業務として該当すると の回答を得たとの事です。一歩前進という形で すが、代行入力・請求の単価が現実的な価格に なるか今後とも日医の頑張りに期待したい。