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介護保険主治医意見書について

小渡敬

副会長 小渡 敬

介護保険制度は2000(平成12)年にスター トしましたが、創設時より不備な点があり、 「運用しながら考える制度」と言われておりま した。そのため5 年に1 度、本制度の見直しが 行われ、介護報酬の改定は3 年に1 度行われる ことが決まっています。

近年、社会保障に対する国民の関心は高まっ ています。特に年金、医療、介護、福祉さらに は就労保障(雇用保険)等があげられ、それら はすべて生活に密着したものであり、本制度に ついても、これまでにないほど国民の関心が高 まっています。個々の患者も医療だけでなく介 護分野や福祉分野等との関わりが深まっていま す。われわれ医療人は医療のことだけに専念し ても患者のニーズに充分に応えられる時代では なくなりました。

介護保険制度においては、医師の関わりは介 護認定審査会やサービス調整会議への参加、ケ アマネージャーとの連携等があげられますが、 なかでも特に医師の意見書は、利用者の介護認 定度の決定において重要です。今年はその介護 保険の介護報酬改定の年です。それに伴い主治 医意見書の記載方法に一部変更がありますの で、変更点および記載の留意点についてお知ら せ致します。

T基本的な考え方

1.改定率について

近年の介護サービスを巡っては、介護従事者 の離職率が高く、人材確保が困難であるといっ た状況にあり、本年の通常国会で「介護従事者 等の人材確保のための介護従事者の処遇改善に 関する法律」が成立したところである。

こうした状況を踏まえ、平成20 年10 月30 日 に、政府・与党において「介護従事者の処遇改 善のための緊急特別対策」として、平成21 年 度介護報酬改定率を3.0 %とすることが決定さ れた。

2.基本的な視点

平成21 年度の介護報酬改定については、次 の基本的な視点に立って改定を行う。

(1)介護従事者の人材確保・処遇改善

介護従事者の離職率が高く、人材確保が 困難である現状を改善し、質の高いサービ スを安定的に提供するためには、介護従事 者の処遇改善を進めるとともに、経営の効 率化への努力を前提としつつ経営の安定化 を図ることが必要である。

このため、

1)各サービスの機能や特性に応じ、夜勤業 務など負担の大きな業務に対して的確に 人員を確保する場合に対する評価

2)介護従事者の能力に応じた給与を確保す るための対応として、介護従事者の専門 性等のキャリアに着目した評価

3)介護従事者の賃金の地域差への対応とし て、介護報酬制度における地域差の勘案 方法(地域区分毎の単価設定)等の見直し

を行う。

(2)医療との連携や認知症ケアの充実

1)医療と介護の機能分化・連携の推進

介護が必要となっても住み慣れた地域 で自立した生活を続けることができるよ う、医療から介護保険でのリハビリテー ションに移行するにあたり、介護保険に よるリハビリテーションの実施機関数やリ ハビリテーションの内容の現状等を踏ま え、医療と介護の継ぎ目のないサービス を効果的に利用できるようにする観点か らの見直しを行う。

また、利用者の状態に応じた訪問看護の 充実を図る観点からの評価の見直しや、居 宅介護支援における入院時や退院・退所時 の評価を行う。

介護療養型老人保健施設については、療 養病床からの転換が円滑に進められるよ う、実態に応じた適切な評価を行うという 観点から評価の見直しを行う。

2)認知症高齢者等の増加を踏まえた認知症 ケアの推進

「認知症の医療と生活の質を高める緊急 プロジェクト」報告を踏まえ、認知症高齢 者等やその家族が住み慣れた地域での生活 を継続できるようにするとともに、認知症 ケアの質の向上を図るため、認知症行動・ 心理症状への緊急対応や若年性認知症の受 け入れへの評価、認知症高齢者等へのリハ ビリテーションの対象拡大、専門的なケア 提供体制に対する評価等を行う。

また、居宅介護支援や訪問介護におい て、認知症高齢者等へのサービスの評価を 行う。

(3)効率的なサービスの提供や新たなサー ビスの検証

1)サービスの質を確保した上での効率的か つ適正なサービスの提供

介護サービス事業の運営の効率化を図る ため、サービスの質の確保を図りつつ、人 員配置基準等の見直しを行う。例えば、訪 問介護事業所のサービス提供責任者の常勤 要件、夜間対応型訪問介護事業所のオペレ ーター資格要件、小規模多機能型居宅介護 の夜勤体制要件、介護老人保健施設の支援 相談員の常勤要件等必要な見直しを行う。

また、介護保険制度の持続性の確保及び 適切な利用者負担の観点から、居住系施設 に入所している要介護者への居宅療養管理 指導や介護保険施設における外泊時費用を 適正化するなど、効率的かつ適正なサービ ス提供に向けた見直しを行う。

2)平成18 年度に新たに導入されたサービ スの検証及び評価の見直し

平成18 年度に新たに導入された各種サ ービス(新予防給付・地域密着型サービス 等)について、より多くの利用者に適切に 利用されるよう、サービスに対する評価の 算定状況、普及・定着の度合いや事業者の 経営状況等を把握した上で、より適切な評 価の在り方についての検討を行い、必要な 見直しを行う。

※各サービスの報酬・基準の見直しの内容につき ましては、本会HP(www.okinawa.med.or.jp) をご確認下さい。

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