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平成20 年度第2 回都道府県医師会長協議会

宮城信雄

会長 宮城 信雄

みだし会長協議会が去る1 月20 日(火)午 後2 時20 分から日本医師会館(1 階大講堂) で開催された。

当日は、羽生田常任理事の司会により開会の 辞があり、唐澤会長の挨拶の後、各都道府県医 師会から提案された10 題と日本医師会からの 提案議題3 題(報告)を含め、計13 題について 協議が行われたので、概要について報告する。

協 議

(1)決算審査システムの構築について (石川県)

<提案要旨(抜粋)>

現在の日本医師会の決算報告は、毎年10 月 に開催される臨時代議員会における決算書報告 に基づき、主な項目が説明され、当日設置され る決算委員会に付託され、1 時間程度の審査を 経て代議員会に委員長報告がなされ承認されて いる。

決算審査にもう少し時間をかけて事業内容、 評価等に審議がなされ、その内容が必要に応じ 次年度以降の事業にも反映され、また会員等に も分りやすく周知できるような、そういった仕 組み・システムを構築されればいかがかと考え ますが、日医のお考えをお伺いしたい。

【今村聡常任理事回答】

現在のシステムの中でできることはやってい きたい。第一点は、決算資料は事前に送付して いるので、ブロックの質問を集めてそれを決算 委員会の中でお答えする方法。第二点は、内部 資料である決算委員会の速記録を、広く会員に 公開して見ていただく方法があり、この2 点は 直ぐにでも可能であると思っている。

決算委員会は、代議員会と併行して開催して いるので十分な時間が確保できない面があり、 新たな審議体制として、決算承認後に次年度予 算に向けて検討する方法がある。その場合複数 回開くのは厳しいので、開催するにしても、半 日程度の審議で1 〜 2 回程度開くような形にな ると思う。

それから決算の承認前の審議については、代 議員会の決算承認前に審議内容を公表すること ができない。又、代議員会から独立した委員会 を作ると代議員会の決算委員会と齟齬が生じる 可能性もある。決算委員会委員は代議員会議長 が指名するということもあるので、現実的には 決算の承認後議論される場が必要であると思っ ている。

又、公益法人制度改革の定款変更の中で、会 計監査人を設置して決算は代議員会の報告事項 とする方向で検討している。その場合は、今まで 以上に決算審議が十分尽くされないと思われる ので、この場合には改めて委員会を設置する必 要があるかと思っている。公益法人制度改革の 中で決算の委員会についても議論していきたい。

(2)全国健康保険協会の「保険者機能強化 アクションプラン」への対応について (滋賀県)

<提案要旨(抜粋)>

全国健康保険協会が策定した「保険者機能強 化アクションプラン」には、医療提供者として 看過できない内容も含まれていると思われる が、日本医師会はこのプランに反対されるの か、是々非々で対応されるのか、お考えをお示 しいただきたい。また、この「保険者機能強化 アクションプラン」を超える国民を納得させら れるプランをお持ちなのか併せてお尋ねします。

【藤原常任理事回答】

アクションプラン全体は想定内として捉えて おり、日医としては是々非々で対応することに なる。プランの各項目についてコメントを述べ させていただきたい。

1)地域の医療分析の推進について

従来、社会保険庁が保険者機能の役割を果た していたが、昨年10 月から政管健保は全国保 険協会(民間)となった。協会健保としても保 険者機能を果たす必要が迫られていると考えて いる。保険料率の設定は健康保険法により都道 府県別に設定することが可能となっているが、 都道府県別の料率を設定する上で医療費についても予算内で変更が可能である。都道府県別の 医療費の分析は行わなくてはならないものと考 えている。ただ、地域医療費の分析として、都 道府県別の診療報酬点数に繋がるものは中医協 の中で反対していく。

2)後発医薬品の使用促進

後発医薬品の使用促進により、削減額につい ては社会保障のシーリングに昨年度約220 億 円、21 年度予算シーリングにおいても230 億円 の削減が計上されている。国として平成24 年 度までに後発医薬品のシェアを30 %にするとい う目標であるので、今後とも続いて計上される のではないかと思う。この問題は余り反対する と参照価格制にも結びつくことが懸念されるの で、正面きっての反対は難しいと思っている。

3)インターネットを通じた医療費通知の実施

医療費通知の実施については、紙であろうが インターネットであろうが内容が一緒であれば 問題ないと思う。厚生労働省の通知内容が変わ らないよう確認していきたい。

4)保健指導の効果的な推進

特定健診及び保健指導については、必要な被 保険者への保健指導は100 %目指すべきと思 う。その保健指導等については、医師会及び医 療機関は積極的にこれに参加すべきである。日 医として特定健診の受診率向上のため事前申 告における受診券発行の廃止や特定保健指導 の医師会等への業務委託を申し込んでいるとこ ろである。

5)中医協等関係方面への積極的な発信

これまで全国健康保険協会から中医協には、 支払い側委員として県の代表が参画していた。 これまで発言はあまりなかったが、今後、問題 となる項目が追加さるようなことがあれば対応 していきたい。

質疑では、保健指導への動きが不十分であ り、日医では今後保健指導の実践に関してキャ ンペーン等を強めていく考えがあるのかとの質 問があった。内田常任理事からは、保健指導は 取組が非常に遅れている。今後実施率も問題に なってくると思うのでこれからの取組んでいきたいとの説明があった。又、2 〜 3 年前までは 処方箋に後発医薬品の加算があった。その影響 も考えられるが、それを復活させる考えがある のかとの質問には、診療報酬検討委員会の意向 も確認してから対応していきたいとの回答があ った。それから後発医薬品に関して問題になっ ているのは、保険点数がつかなくなったから使 わないということではなく、先発医薬品と後発 医薬品の内容を危惧するところが問題となって いるわけであり、日医はこのことを強く指摘し てもらいたいとの要望が出された。

(3)特定健診と高齢者に対する健診につい て(鳥取県)

<提案要旨(抜粋)>

特定健診を初年度実施した上での問題点を踏 まえて、廃止を含めた今後の見直し並びに高齢 者に対する健診のあり方について日本医師会の 考えをお伺いしたい。

【内田常任理事回答】

75 歳以上の後期高齢者の健診については、 特定健診の対象ではなく広域連合の努力義務と いう規定になっており、健康診査を実施するこ とになっている。ご指摘のとおり生活習慣の改 善による疾病予防よりもQOL を確保し、本人 の残存能力をできるだけ落とさないというため の介護予防が必要になっている。一方で生活習 慣病等の疾病を発見・予防するための健康診査 についても重要であると認識している。又、厚 生労働省においては、特定健診、特定保健指導 に関する健康対策の要望ということで、昨年11 月決裁及びデータ送受信に関するワーキンググ ループが再開された。その中で関係者が集まり 取組状況を確認した上で課題について整理し、 解決策について協議を行った。その内容につい ては都道府県医師会との連絡会議を開催し、い ろいろと周知を行っているところである。

今回調整できなかった課題等については厚生 労働省において健康局、保険局それぞれの検討 会を設置して引き続き協議することを要望して いる。高齢者に対する健診のあり方について は、現在日医の公衆衛生委員会において疾病予 防対策の将来展望について、会長諮問で検討を 進めているところであり、今後もご指摘の点を 踏まえて検討していきたい。

(4)特定健診・特定保険指導について (埼玉県)

<提案要旨(抜粋)>

特定健診は、保険者に義務づけられた一定の 検査項目であると考えるが、市町村国保では、 上乗せ項目が追加されている。今後特定健診を 続けていくのであれば、いわゆる上乗せ部分に ついては一般衛生部門で行うべきものではない か。特定健診により埋没してしまった必要な検 査項目を復活させ、がん検診も含め早期発見を 目的とした二次予防対策健診を一般衛生部門で 行うべきではないか。

尚、当日日本医師会より回答いただく前に、 埼玉県医師会で実施した下記アンケート調査結 果の資料配布があり、吉原会長よりアンケート 結果の内容について説明があった。

  • 1)特定健診満足度調査 (対象:特定健診受診者 1,518 名)
  • 2)特定健診受診者数等調査 (対象:埼玉県郡市医師会担当役員 36 名)

【内田常任理事回答】

特定健診の健診項目は、従来の老人保健法に 基づく基本健診の項目と大きな違いはない。し かしながら従来の基本健診では地域の実情等に 応じて市町村が独自に検診項目を追加する、い わゆる上乗せ健診にあるような健診項目の追加 というのがあった。今回の集合契約のB パター ンにおいては、健診の項目を統一する必要があ るということから、被用者保険、被扶養者につ いては特定健診項目のみの実施となり、検診項 目が減少したという印象をお持ちの方が多いと 思っている。日医では詳細健診項目を基本健診 項目に含めること。又、血糖検査は空腹時血糖 とヘモグロビンA1c を基本健康診査健診項目と して、全員に実施するということを先般開催さ れたワーキンググループにおいて要望している。上乗せ項目を一般衛生部門で行うべきとの 点についてはご指摘のとおりであると思う。市 町村国保加入者について、独自の検診項目が保 険者負担により追加され、一方で健保組合ある いは共済組合等の被扶養者については、特定健 診項目以外の健診が実施できない場合には加入 している保険よって受けられる健診項目が違う ということになり、同じ地域住民の中で格差が でることになっている。従って、上乗せ項目の 部分については全地域住民に対して市町村の一 般衛生部門が実施すべきであることをいろんな 場面で説明している。又、がん検診については 平成20 年3 月に取りまとめられた公衆衛生委 員会の答申において、保険制度の中で運用する 制度についても提言されている。今期も疾病予 防対策の将来展望についてという会長諮問でよ り具体的な検討をお願いしている。

特定健診、特定保健指導が目指す予防重視の 方向性は間違ったものではないと考えている。 しかし、メタボのみに焦点を絞ったものではな くがんやその他の疾病対策、たばこ対策等を含 めた総合的なシステムを構築すべきであると考 えている。

質疑では、我々の要望として一般衛生部門に 集約して欲しいということ。また現場の声とし て手続きが煩雑で通知が2 回送られてきて混乱 があり、住民に対する通知を一本化してもらい たいとの要望があった。内田常任理事からは、 ワーキンググループの中で全て課題を出してあ るので、4 月に開催する検討会の中で取り組ん でいきたいとの説明があった。

(5)医療介護の充実による景気浮揚対策に ついて(山口県)

<提案要旨(抜粋)>

医療・介護への公費投入による経済波及効果 を検証して国民に示すことができれば「医療亡 国論」の呪縛から脱却できると思うが如何か。 厚生労働省が社会保障関係の産業は他の経済波 及効果が大きいといい始めたこのときこそ、大 きなチャンスではないか。

【中川常任理事回答】

ご指摘のように政府も医療や介護分野の経済 波及効果について言及するようになってきた。 経済財政諮問会議は今年の1 月6 日に公表した 経済財政の中長期方針と10 年展望の中で医療 介護サービスを成長が期待される分野として育 成していくと明記している。最近のデータから 更に試算をしなおすと医療介護には公共事業を 大きく上回る非常に高い雇用創出効果があり、 政府がこのことに言及するようになったことは 評価すべきである。財源の手当てなくして雇用 を支えることは困難である。

日医として、地域医療の崩壊が進む中で次期 改定は大幅に診療報酬を引き上げ医療介護が雇 用をそして国を支える好循環体質の根幹になる ことを目指すべきと考える。地域医療の再生の ための財政措置を改めて主張し財源を確保する ことが執行部の責務であり、今年は年末の診療 報酬の改定率の決定まで正念場の1 年になると 認識している。ご指摘の雇用を中心とした医療 介護分野の経済波及効果を強調しながら基本方 針2009 における社会保障費年2,200 億円の機 械的抑制の撤回、そして健全な医療提供体制を 支えるための医療財源の確保を目指し全力を傾 注していきたい。

質疑では、提案者の介護従事者の離職に対す る政府への働きかけについて依頼があり、今回 の景気対策で10 兆円投入方針が出されている が、その中で医療に関わる兆単位の施策があれ ば教えてもらいたいとの質問があった。中川常 任理事からは兆単位の数字はない。ただ緊急対 策はいろいろ含まれていると思うが、日医が目 指しているのは緊急対策ではなく恒久的な安定 財源に医療介護の底上げを目指して進めている との回答があった。

又、社会保障国民会議の答申について評価で きる点と問題点について質問が出され、中川常 任理事から社会保障国民会議が医療費に転換し たことは評価している。ただ国民会議は切り口 が違い平均在院日数を短くして在宅と急性機関病院に特化して集中と集約でやっていこうとし ているので注意しなければいけない。又、国民 会議で議論された時点では雇用不安、経済危機 は想定されてなかった。消費税については、既 に使われるべき財源が5、3 兆円不足している ので引き上げた財源はそこに充当されることに なる。やはり特別会計の見直しを更に進めてい く必要があるとの説明があった。

最後に准看護師養成費用について、国がもっ とサポートすることによって医療へ雇用を確保 できるということを主張して予算を確保しても らいたいとの要望があり、羽生田常任より看護 師・准看護師養成の補助については毎年要望し ているが、引き続き強く要望していきたいとの コメントがあった。

(6)医療類似行為の療養費について(愛媛県)

<提案要旨(抜粋)>

  • 1)柔整師の施術療養費の透明性確保
  • 2)「受領委任払い制度」の中止

【藤原常任理事回答】

1)について、行政は施術療養費の額を積極的 に公表していないが、問い合わせすれば公開し ていく状況にある。ちなみに平成18 年度では 柔道整腹師の療養費は3,212 億円で対前年度比 3.7 %増である。鍼・灸が207 億円(15.6 % 増)、マッサージ282 億円(17.1 %増)となっ ている。診療所を科別にみると産婦人科の 2,496 億円、皮膚科2,856 億円、小児科3,430 億円、耳鼻科3,740 億円とこれに匹敵するよう な額である。ご指摘のようにこの額は推計値で ある。医療費の透明性を確保するための方策と してご指摘いただいた医療類似療養費に対する 社会医療行為別調査については積極的に検討し ていきたい。

2)について、受領委任払い制度の歴史は古く、 昭和11 年に各都道府県の柔道整腹師と政管健 保との協定で料金を定め委任払い方式を採用し たもので、それ以来現在に至っている。この制 度を中止させることは、政治的な意味合いもあ り中々難しい面がある。この他の問題として専 門外の医師が安易に同意のサインをしてしまう 問題もある。医師の教育も必要で医師が仕組み を理解してもっと自粛すべきではないかと思う。 それから保険者による被保険者への教育も健保 組合等でやっているが、未だ不十分だと思って いる。日医としては施術療養費の請求問題につ いて方策を厚生労働省に要求していきたい。

質疑では、将来の国民医療費に占める割合、 養成校が増えている現状、更に卒業生の増加等 の問題取り上げられ、医療費が一般診療所の中 に参入されていることから、一診療所の平均収 入が増えているという誤解を生む要因でもあ り、透明性という面から区分してもらいたいと の要望が出された。又、受領委任払いが政治的 に難しいということであれば、学問的な見地か ら取り組んでもらいたい。打撲、捻挫に関して 定義を是非はっきりさせてもらいたい。医師の 同意書について、啓蒙ということであるが専門 医師の同意書でなければならないということに なっており、これが完全に無視されているの で、この2 点について早い機会に検討してもら いたいとの要望があった。藤原常任からは日医 として取り組んでいくので、各県でも啓蒙につ いてはしっかり進めてもらいたいとのコメント があった。

(7)良質な医療を提供する体制の確立を図 るための医療法等の一部改正、施行に伴 う疑義について(北海道)

<提案要旨(抜粋)>

1. 医療法施行規則第1 条の14 第7 項第1 号か ら第3 号までに該当するものとして届出によ り病床を設置した診療所について、届出後そ の診療所が当該要件に合致しなくなった病床 を転用した場合、病床過剰圏域においても既 存病床数がなし崩し的に増加できることにな る。現状においては、行政指導として病床の 廃止を指導することになるが、行政指導に委 ねるとなると、都道府県で判断が異なること も想定されることから、医療法上の処分規定 を設けるか、都道府県が同一の基準で判断できるよう、日医から厚生労働省に見解を求め るべきと考える。

2. 北海道保険福祉部では、厚生労働省への確 認を踏まえて、同一の第二次医療圏内で複数 の病院または診療所を開設するものが、その 病床を移動する場合における開設許可申請に ついては、医療法第30 条の11 の勧告対象と しない、との判断をしている。

同一の二次医療圏内の病床数は不変であっ ても、病床移動に伴う医療機能に変更が生じ れば、医療計画に基づく医療提供体制の確保 が困難になる。都道府県の医療審議会で違っ た判断が出る可能性があるため、国の統一見 解を求める必要があるのではないか。

【三上常任理事回答】

1 については、ご指摘のように医療法や関係 法令、厚労省の通知の中で、当取り扱いについ ての具体的な規定がない。特例については、診 療所の一般病床に限ったものであり、その診療 所が在宅医療、僻地医療、小児周産期等、地域 に特に必要かつ医療計画に記載されることを条 件に医療審議会の中で認められることになって いる。従って、条件と異なる病床への転用は認 められないとも考えられ、要件に合致しなくな った場合には、都道府県が行政指導を行うこと となっている。この点について、厚労省に対し 各都道府県における行政指導を更に徹底するよ う求めていきたい。

2 については、平成18 年12 月末までに設置 されていた有床診療所の一般病床について、特 定病床という名称で基準病床数制度の適用外と され、既存病床数にはカウントされないという ことになっている。

北海道医師会の意見は、同一の開設者が同じ 医療圏の中で、複数の医療機関を有している場 合に、それらの診療所あるいは病院の間で、病 床を移動させた際に起こる地域医療の混乱を懸 念しているものだと思う。この件についても同 様に医療法や関係法令、厚労省の通知の中で具 体的な取り扱い規定は存在しない。ご指摘のよ うに勧告を行うかどうかについては、あくまで 都道府県の地方医療審議会が判断することにな っている。この点について、厚労省指導課へ確 認したところ「医療計画推進の観点から都道府 県の医療審議会において、地域の実情に応じた 判断をしていただいている」とのことであった が、地域医療に混乱を招かないように国として の一定の配慮が必要ではないかと考えている。

北海道医師会がご指摘の根幹は、現在病床 規制が病床種別によって行われており、小児救 急であるとか、周産期・僻地と言った医療機能 に着目していないところに問題があると思う。 また、これについて全国の統一基準が必要であ るのか、あるいは地域の実情に応じて都道府県 で判断することが良いのかについては、各県に おいて見解が異なると思うので、日医あてに各 県からご意見をいただければと考えている。日 医の病院委員会で医療提供体制の検討を行っ ているので委員会の検討も踏まえて対応してい きたい。

質疑では、提案の宮本北海道医師会長代理か ら厚労省への強い働きかけを切にお願いした い。また、現在の二次医療圏が生活圏と違った 設定になっていることについて、地域の実情に 合わせた医療圏の概念を日医として検討してほ しいとの要請があった。三上常任理事から、二 次医療圏の問題については、医療提供体制や医 療計画の内容を含んでいるため病院委員会の中 で検討したいとの回答があった。

(8)妊産婦の費用負担について(新潟県)

<提案要旨(抜粋)>

厚生労働省は10 月30 日にまとめた追加経済 対策に消化対策の一環として、出産までに14 回 受けることが望ましいとしてされている妊婦健 診のすべてを公費で負担する方針を打ち出した。

現在、5 回分については地方財政処置により 市町村が負担しているが、残りの9 回分につい ては半分を国庫負担し、残りの半分を市町村が 負担する方向のようである。そこで3 点につい てお聞きしたい。

1.この場合、市町村負担分については地方財政措置とするのか妊婦健診に対する補助金の 形態で使用目的を明確化する方針なのか。

2.すでに市町村では21 年度予算編成の段階 であるが、施行日は何時からと想定している のか。

3.助産所での妊婦健診も14 回全てが公費負担 の対象となるのか。健診に際しては、公費該 当項目以外に検査を必要とする場合があり、 公費負担はあくまで妊婦健診の補助金である ことを厚生労働省に申し入れていただきたい。

4.厚生労働省は平成21 年10 月から1 年半の 暫定措置で、出産育児一時金を子ども1 人当 たり4 万円引き上げる。分娩施設が費用の明 細を添えて保険者に請求した場合、保険者が 審査支払機関を通じて各分娩施設へ直接支払 う仕組みとする方針を明らかにした。この仕 組みについて国保法や健保法の改正が必要か 否かお伺いしたい。出産費用の現物給付化に は反対であり、日医から強く要望していただ きたい。

【今村(定)常任理事回答】

9 回分の国庫負担分については、交付金とし て都道府県からの申請に基づき交付される見込 みである。平成20 年度中に都道府県では基金 を造成していただき、この基金を活用し平成 22 年度末迄、都道府県は市町村に対し支出す ることになっている。残り半分の市町村の負担 分については、国としては事業内容について地 方行政に指示することが出来ない。使用目的を 明確化することは非常に難しいとのことで、妊 婦健診に対する補助金の形態として使用目的を 明確化することはないと考えている。

本制度が円滑に実施されるためには、国庫負 担分の交付と併せ、地方財政措置される市町村 負担分の支出が非常に重要になってくる。日医 も厚労省担当課と緊密な交渉を行っていくが、 各県郡市区医師会においても行政に対する積極 的な働きかけをお願いしたい。

平成20 年度の第2 次補正予算は1 月13 日に 衆院で可決されたが施行は予算関連法案成立後 となっており、対象は補正予算成立まで遡及す ると想定されている。第2 次補正予算が参議院 で仮に採決されない場合においても2 月12 日 には自然成立する見込みであるので、早期の対 応をお願いしたい。

次に、助産所での妊婦健診については、従来 行われている基本審査のみが公費負担の対象に なると考えている。診療機器を使用したり、医 薬品を投与するなどの指示が出来ないため、14 回全てが助産所での審査の対象にはならない。 厚労省より標準的な健康診査の実施時期、回数 および内容等が示される予定であるが、新潟県 医師会の指摘のとおり公費該当項目以外に検査 項目が必要になる場合がある。公費の負担はあ くまで妊婦検診の補助の位置づけであること は、既に厚労省に確認しているところである。

出産育児一時金については、本年1 月1 日か ら産科医療補償制度の創設に伴い、現行35 万 円に産科医療補償制度の掛け金相当額として3 万円が加算されることになっている。更に本年 10 月からこの一時金を2 年間の暫定的な措置 として4 万円引き上げる予定となっている。

次に医療機関への直接支払いについては、新 たな法定化、法改正ではなく、受け取り代理制 度を推進する方向で検討されている。今回の引 き上げに伴う、国庫補助の支給対象を医療機関 等に直接支払う保険者に限ることにより、直接 支払いを徹底することが検討されている。

続いて、現物給付の対応については、出産費 用の現金給付および各分娩施設への直接支払い は未収金解決の一助となり、産婦人科に非常に 利便性があり、産科医療補償制度に寄与する等 の点から是非実現させていきたいと考えている が、出産そのものを保険給付とするのかどうか については社会保障審議会の医療保険部会で検 討することになる。

現時点では、厚労省としては保険診療にする 意向は全くない様であり、あくまで現金給付の 意向である。日医としても出産費用は現金給付 であるべきで保険診療には馴染まないと考えて おり、現物給付には反対していく。

質疑では、産婦人科医師不足が顕在化する中、現在、産科医の多くが若い女性医師であ り、近い将来、彼女等が妊娠や出産育児休暇を 取得した場合に、医師不足はより一層顕著にな る。そのため、日医は職場復帰支援策の問題に ついて、先進的に取り組んでいる諸外国へ現地 調査に行って欲しいとの要望があった。今村常 任理事から重く受け止め、そういう方向で検討 したいと回答があった。

(9)日医は救急医療体制へのビジョンを国 民に示すべきではないか(三重県)

<提案要旨(抜粋)>

昨年4 月1 日の診療報酬改定で「病院勤務医 の負担軽減策1)」に外来縮小計画、外部の医療 機関との診療分担の推進等を行うことにより、 入院時医学管理加算が認められた。一次外来患 者は診療所が受け持ち、紹介による二次医療と 入院治療は病院が受け持つという原則推進する チャンスだと考える。日本医師会は病診機能分 化と診療報酬配分を厚生労働省に提案していく 努力が必要である。

【石井常任理事回答】

日本医師会では、地域連携のコーディネータ ー機能を持った救急医療システムの充実、ま た、各医療圏における日本型ER システムの試 行を掲げ、次の10 項目をあげて連携と構築に 務めている。

(1)地域医療の実情に応じた周産期医療、救急 医療体制の構築と連携

(2)一般と専門領域の救急医療の連携構築

(3)妊娠期の疾患の特性に着目した連携構築

(4)総合周産期母子医療センターの機能強化、 本来の役割への機能集中、空床確保策

(5)急性期医療後の患者を受け入れる後方病 床、後方施設の確保

(6)周産期医療や救急医療情報システムの充実

(7)都道府県単位の救急搬送体制の確立と行政 枠を越えた地域間連携の構築

(8)女性医師の離職防止策

(9)地域の開業医による初期救急の充実

(10)分娩を取り扱い診療所の堅持

以上、これらを主張しており、日本医師会グ ランドデザイン2007 各論においても救急医療 のあるべき姿を提案。昨年4 月に開かれた自民 党「救急医療と搬送に関するプロジェクトチー ム」ヒヤリングでも基本コンセプトを提言した 上で各都道府県医師会に報告を行った。

医療へのフリーアクセスのもと初期の救急外 来患者は診療所や中小病院、紹介による二次医 療と入院医療は中核的な病院等が受け持つとい う原則は引き続き大切だと考えている。この考 えのもと日医では地域医師会等による初期救急 医療への取り組みの支援等をこれまでにも採用 している。

診療所や中小病院が初期救急医療を担うため には、医師に対する救急処置医療研修が重要に なる。その為、救急蘇生法の指針を全会員に配 布しており、全ての医師を対象とするACLS2 次救命処置研修事業を実施し、これまで延べ1 万4 千人以上の先生方に修了書を交付してい る。今後もこれらの活動を推進していかなけれ ばいけないと考えている。

次に、病診機能分化と診療報酬配分を厚労省 に提案していく努力が必要との指摘であるが、 診療報酬による施策には、財政中立論の中で平 均在院日数短縮や病床削減等々の様々な問題と の関係にも留意しなければならない。また、入 院外来の役割分担は、医療へのフリーアクセス の堅持を大前提として進められる必要がある。 ご指摘のとおり地域における医療連携体制と救 急医療情報システムの整備を進めると同時に、 地域住民に対して初期救急はかかりつけの医師 や応急診療所へという原則を含めた救急医療の 適正利用というテーマについて啓発活動を引き 続き行う必要があると考えている。

日医でもこれまで定期的に啓発用ポースター を日医ニュースに折り込んでいる。今後も地域 医師会の事例を参考にしながら、テレビCM、 新聞広告などよる啓発活動はある一定の効果が あったと考えているが、広報担当役員と相談し ながら、住民啓発を含めた救急医療のビジョン について今後とも国民に分かりやすい形で発信していきたいと思っている。

提案者の中嶋三重県医師会長から、救急に関 する会員の努力をテレビ等で強くアピールして 欲しい。報道番組などを観ていると我々の努力 が国民に十分に理解されていないのだと感じる。 一次救急は診療所会員と中小病院が責任をもっ て引き受けていることを大きな声で発信して欲 しいと要請があった。また、フロアーから全国 における応急診療所数について照会があった。

石井常任理事から平成20 年3 月31 日現在、 応急診療所、休日夜間急患センターは516 施設 である。平成19 年度に日医が実施した調査で は90 パーセントの急患センターに医師会員が強 く関与していることが分かったと回答があった。

(10)先発医薬品と後発医薬品で承認されて いる効能効果が異なる医薬品の使用問題 について(岡山県)

<提案要旨(抜粋)>

報道によれば、国は今後更に後発品使用促進 に力を入れるようであるが、安全性、適応症の 検討、メーカーに対する品質管理の徹底や指導 などについては、殆ど手をつけていないのが現 状と思われる。このような状況下で、社会保障 財源捻出を目的に、医師を対象とする研修で使 用促進を図ろうとすることや、レセプトのオン ライン化促進により、このような不合理な減点 が一層加速されることについて、日医のお考え をお聞きしたい。

【藤原常任理事回答】

後発医薬品については、国として平成24 年 度までにシェアを30 パーセントにするという 目標を立てているので、2 回の診療報酬改定で 続けて処方箋様式の変更がなされるなど、使用 促進策が講じられている。我々医師サイドとし ての基本的なスタンスは、先発であろうが後発 であろうと医学的な判断に基づき患者に必要な 薬剤を処方すべきであり、それは医師の裁量に 任されていると思う。後発品がダメだと判断さ れた場合には、変更可で処方すべきと思う。

国や後発のメーカーの対応について、平成 19 年10 月15 日に、厚労省が示した後発医薬 品の安心使用促進アクションプログラムでは、 平成24 年度までに後発品のシェアを30 パーセ ント以上にするという目標達成に向けて、国や 後発品メーカー等実施すべき安定供給、品質確 保、情報提供等の取り組みが示されている。各 項目において、達成すべき目標等が定められて いるので、後発品メーカーが淘汰されるような 内容的に厳しいものと受け止めている。

このアクションプログラムの中で、先発医薬 品と後発医薬品の効能効果等を一致させる対応 がなされているが、特許期間中である等の理由 により、後発医薬品が効能を取得できないもの が現時点では内用薬は15 成分存在している。

日医では、この後発医薬品リストについて、 平成20 年10 月1 日付の事務連絡で都道府県医 師会社会保険担当理事宛に連絡させて頂いてい るところである。こうした物の存在を医療機関 も薬局も情報として知っておく必要がある。し かし、医師としての留意事項として、薬局では 処方箋に記載された量しか知りえないと言うこ ともあり、患者の疾患名まで正確に把握するこ とが困難である。

そのために、先発医薬品で後発医薬品を有し ない処方に対する使用目的で、処方する場合に は、当該薬品の銘柄名の近傍に「変更不可」と 記載するなどの方法により、他銘柄への変更を 禁ずるような指示が必要である。

また、処方箋の指示に基づき、先発医薬品か ら後発医薬品に変更された場合や別銘柄への後 発医薬品に変更された場合には、薬局から医療 機関に出し、実際に調剤した後発医薬品の銘柄 名に関する情報が提供されるのが基本であるの で、保険適用上の問題があれば、直ちに指摘す ることが可能である。

これに対する日本薬剤師会の対応について は、先発医薬品の効能効果等に違いがある後発 医薬品リストについて周知を図っている。ま た、処方箋に変更不可の指示がなかったとして も、調剤にあたり異議が生じた場合には、処方 を照会する様指導している。従って、薬局から処方のない物に対する疑義照会を受けた場合に は、適切に医療機関としても対応されるようお 願いしたい。

不合理な減点を未然に防ぐためにも、地区医 師会においても薬剤師会と連携して貰えるよう お願いしたい。

提案者の岡山県医師会長から品質管理のため メーカーへの薬剤評価試験の実施を国へ求めて 頂きたいと要請した。その他、薬価の研究開発 費における基準がおかしいとして、日本も FDA の様な品質確保を担保して欲しいと要望 があった。又、ジェネリックの問題は偏向した テレビ報道から始まっており、国民の理解を求 めるため広報活動を是非PR して欲しいとの要 望があった。

(11)日本医師会表彰規定の改正について (日医)

【羽生田常任理事報告】

平成18 ・19 年度定款・諸規程検討委員会の 答申結果を基に日本医師会表彰規定の改正文を 作成し、去る平成20 年12 月2 日開催の第25 回 常任理事会並びに、12 月16 日開催の第10 回理 事会で協議を行い、了承を得たので報告する。

なお、改正の内容は、最高優功賞受賞の必要 年限の短縮(在任10 年→ 6 年)などであり、平 成21 年4 月1 日から施行することとしている。

(12)産業医研修に係る指定法人制度の見直 しについて(日医)

【今村(聡)常任理事報告】

現在、認定産業医制度の基礎研修会は、法令 に規定されると共に国の指定を受けて実施して いる。

昨年国からの指定等に基づき、行政改革推進 本部事務局を中心に事務・事業の見直しが行わ れ、産業医研修についても2 つの規定が変更と なったので報告する。

一つ目は、事務・事業及び指定基準の基本的 な事項を法令で定めるとともに、その基準に係 る詳細な事項を法令又は告示で定める。

二つ目は、主務大臣に対する報告に係る規定 等を法令で定め、指導監督を厳格に実施する。

これを踏まえ労働安全衛生法令の見直しが行 われ主な内容は、(1)指定の基準、(2)業務の 委託、(3)業務規程、(4)事業計画の認可等、 (5)必要書類の備え付け、(6)主務大臣による 指導監督について省令に規定することになった。

産業医学基礎研修の実施者としては、日医と 都道府県が規定さているが、見直しに伴う実施 者の指定について省令で定めなければならなか ったため、産業保健委員会のブロック代表の委 員を通じって都道府県医師会の意見を伺った。 その結果、現行のシステムにより近く、都道府 県医師会の負担を極力増やさないよう検討を行 った。結果、日医のみ指定を受けることで必要 な手続きは日医が全て行い、都道府県医師会に は日医から業務を委託するかたちで進めさせて いただくことになった。これまでの変更点として 「日医と都道府県医師会との間で実施要領に基づ く研修実施の業務委託契約」の締結のみである。 産業医研修の計画、申請、実施については従来 どおり都道府県医師会で行うことになっている。

なお、本件に関連して日医産業医認定制度の 実施要領を若干改訂しなければならないため、 改訂については産業保健委員会において編成し て頂くことになっている。

(13)厚生労働省予算案における各種補助金 について(日医)

【中川常任理事報告】

先般、厚労省医政局が説明にきた際の資料で あるが、今年度の新規事業として、1)救急医療 を担う医師の支援、2)産科医・産科医療機関確 保のための総合対策など様々な補助事業が存在 するが、補助率が10/10 から1/2、1/3 まで 様々であり、都道府県や市町村、事業主が予算 を付けなければ実施できないことになっている。

非常に予算が厳しい中で、都道府県、市町村 に予め働きかけをしなければ、補助事業が十分 に運用できないことがあるので、是非、ご検討 頂いたうえで取り組んで頂ければと考えている。