理事 宮里 善次
去る11 月29 日(土)、福岡県にて標記会議が開催されたので報告する。
心臓部門・腎臓部門・小児生活習慣病部門 の3 専門委員会別に分かれて意見交換を行っ た。各部門の協議題は、心臓部門と腎臓部門は 各5 題、小児生活習慣病部門は2 題であった。
専門委員会別の協議終了後には、全体協議会 が開催され、各部門での協議内容について報告 がなされるとともに、次年度の開催について協 議された。協議の結果、次年度は、九州学校検 診協議会(幹事会)及び年次大会を平成21 年 8 月8 日(土)〜 8 月9 日(日)に、佐賀県に おいて開催すること、九州学校検診協議会 (専門委員会)を平成21 年11 月28 日(土) 15 : 00〔於福岡県〕にて開催することに決定 した。
以下、専門委員会別の提案議題・協議内容の 主な概要は次のとおり。
1)心臓部門(座長 吉永正夫)
<提案理由>
現在、沖縄県では、4 ヶ所の検診センターが 心臓検診を担当しているが、県全体のデータと して纏められていないため、心臓検診を担当さ れる会員にフィードバックできていない。
どの程度の頻度で精査に回っているのか、精 査の結果がどうなったのか、纏められた資料が あれば提供いただきたい。沖縄県では、問診表 と心電図に医師が目をとおしているが、一次で引っかかったものは全部医療機関へ二次検診に まわしている。
<各県回答>
県全体の数字を纏めているのは、佐賀県のみ であった。佐賀県以外は、県全体の把握はでき ていない(長崎県)、一番肝心な宮崎市郡がで きていない(宮崎県)、大分市が中心となって まとめている(大分県)、この機会に纏められ るようにしていきたい(鹿児島県)、全体的な 統合は難しい(福岡県)等で、県全体として纏 められていない状況であった。
中核都市は纏められているが、全県レベルで は纏められていない県がほとんどであることか ら、協議の結果、今後は毎年全県の数字が把握 できるよう纏めていくことにした。
<提案理由>
現在の心臓検診では心電図は12 誘導が主流 となっていると理解しているが、省略4 誘導を 行っている地区もあり、その実態を知りたい。
また、一地区では、小中学校では心電図、心 音図。県立高校では心電図とレントゲン(結核 検診を流用)。県立中学校では心電図のみとい う地域があり(心電図は全て省略4 誘導)。各 県の現状と今後の対応について伺いたい。
<各県回答>
ほとんどが12 誘導に移ってきている。しか し、まだ4 誘導のところもいくつかあり、早め に12 誘導に変えていただきたいと提案したが、 経済的に難しく簡単にはいかないとの回答であ った。
<提案理由>
毎年、小中高の1 年生及び経過観察者の心臓 検診が行われ、検診結果がまとめられている。 しかし、小学校から中学校、中学校から高等学 校へと情報は必ずしも伝えられていない。特 に、高等学校から大学、社会(就職先)への情 報は途絶えてしまう。
各ステージにおける心臓検診結果の取扱いに ついて各県の状況をご教示願いたい。
<各県回答>
情報を伝えていくことは必要ではあるとの認 識は各県一致しているものの、高校以上は、個 人情報保護の問題等もあり徹底するのは難しい との意見が出された。
協議の結果、小学校・中学校・高校では、で きるだけスムーズに行くようにしていくように 努めることとした。
<提案理由>
当施設は各県からの心検結果報告を書いてい るが、様式がばらばらで記入内容に重複が多い と感じている。「わかりやすい」、「書きやすい」、 「見やすい」、「結果の集計がしやすい」などの 点から議論しはじめたいと思うがどうか。
<各県回答>
福岡県から、県内で統一した調査票の紹介が あった。
協議の結果、福岡県の調査票はたいへんすば らしいので、これを参考にしてできるだけ、九州 管内で統一する方向で検討していくこととした。
<提案理由>
特定(一部)の疾患に関して、九州管内で統 一した基準を作成し、疾患頻度と予後を検討し たい。
<各県回答>
腎臓部門は、九州ブロックで統一したチャー トがあるが、心臓部門はない。心電図の見方も 一人一人のくせがあり、心電図のスクリーニン グの診断基準がない。ある程度のグレーゾーン を踏まえた基準を作って同じ方法で心電図を取 り、できるだけ診断基準を一緒にしていきたい。
協議の結果、突然死を起こしやすい心筋症に ついて、母集団を5 〜 10 万人(九州管内)に して調べていくこととし、来年までに診断基準 を作っていただくこととした。
2)腎臓部門 座長 服部新三郎
<提案理由>
2008 年6 月13 〜 14 日、久留米大学伊藤雄 平教授の主催で開催された「第43 回日本小児 腎臓病学会学術集会」で、当委員会で(伊藤先 生のお骨折りで)集計された腎臓検診結果を 「九州・沖縄における学校腎臓検診結果の集計 について」として発表させていただいので、報 告する。
<協議内容>
長崎県の冨増邦夫先生より、上記学会におい て概ね以下の通り発表した旨報告があった。
対象者は、九州全体で、小学校で約70 万人、 中学校で約37 万人、高校で約17 万人であり、 三時検尿の受検率はそれぞれ約78%、約62%、 約66 %であった。臨床診断の主なものを示す と、血尿症候群が(3 年度平均で)小学校 0.22 %、中学校0.13 %、高校0.07 %、蛋白尿 症候群は、小学校0.026 %、中学校0.088 %、 高校0.048 %、慢性腎炎症候群では、小学校 0.043 %、中学校0.039 %、高校0.030 %等で あった。
臨床診断陽性率(有病率)は、同一県での年 度別の変動に比べ各県別での差異が大であった。 例えば、平成18 年度の全ての臨床診断の合計 (有病率)では、小学校で0.206 %〜 0.678 %に 分布し(全体0.447 %)、中学校0.247 %〜 0.636 %(0.392 %)、高校0.047 %〜 0.540 % (0.309 %)であった。病理診断は検診の年度内 に施行されたものと、年度を経て施行されたも のが混在していると思われるが、平成16 年度 57 例、17 年度65 例、18 年度53 例が報告され ている。IgA 腎症が最も多く、紫斑病性腎炎、 非IgA 増殖性腎炎がそれに次いだ。
今回3 年分の集計を発表した。統一した診断 基準で広域での集計を行ったが各県別で多少診 断率のばらつきがみられた。統一マニュアルを 作成したが、まだ広く普及されているとは言え ず、検診の方法、診断基準の細部での不統一に よる差異も否定できない。今後、この集計を続 けてフィードバックすることにより、各地域で の診断基準や分類の共有化が進み、より信頼性 の高いデータになると思われる。
<提案理由>
2001 年の本委員会の宮田委員による九州沖 縄97 郡市医師会の回答によると、概ね専門医 でない学校医による個別検診が全体の58.8 % を占め、特に人口6 万人以下の地方医師会では 67.7 %を占めていた。従って、そのような地域 では、個々の学校医によって検査や診断、管理 の基準が異なるのはもちろんだが、説明にも不 統一が生じやすく、受診者の不安の原因となる こともあるようだ。
学校医の方も、専門以外の質問に対しては、 回答することによって生じる責任を懸念して、 消極的にならざるを得ない等、仕方のない面も あるかと思われる。学校医で経過観察するよう な大多数の軽傷者に対しては、検診する学校医 の一言が大きく作用することもある。過剰な不 安を取り除き、また逆に経過観察の重要性を過 小に軽視することを防ぐためには、最低限はっ きりと伝えることが大切であり、そのような事 例のQ&A を追加する改訂は有用かと思われる。 各県のご意見はいかがか。
<協議内容>
各県ともに、検診する学校医が保護者等から の質問に答えるためのQ&A は必要であると意 見され、当専門委員会でQ&A 集を作成し、検 尿マニュアルに追加するための作業を進めることが決定した。また、宮崎県の宮田純一先生よ り、保護者からの質問に対してのQ&A だけで なく、検診する医師のための統一したマニュア ル的なQ&A も加えてはどうかと提案があり、 協議の結果、学校医向けのQ&A も検尿マニュ アルに追加することが決定した。
なお、作業にあたっては、鹿児島県の二宮誠 先生、宮崎県の宮田純一先生、福岡県の伊藤雄 平先生の3 名が中心になって進めることに決定 した。
作業スケジュールについては、2009 年11 月 開催の当専門委員会において追加する具体的な Q&A について協議を行い、2010 年の夏に開催 される検診協議会幹事会に検診マニュアルへの 追加について諮り、承認を得られたら、2011 年の春には改訂版を発行するとした。
<提案理由>
本協議会作成の検尿マニュアルが、全国的に 使用される方向にある。潜血反応、尿蛋白(±) から(+)に変わる地区も多いと思う。その影 響について知りたい。
<協議内容>
座長の服部新三郎先生(熊本県)より、実際 には検尿マニュアルに記載されているカットオ フ値を用いた検診が実施されていない場合もあ ると指摘があり、先ずは、各県の現状について 各県で調査を行い、その結果を福岡県の伊藤雄 平先生に回答することとした。
<提案理由>
現在まで3 年間の集計は手作業で行ってお り、各県検診担当者、事務職の皆さんの多くの 労力を要した。また、これを全国レベルで広め るためには入力の簡便化が望まれる。
今回、ウエブ上で行う目処がついたので討議 願いたい。
<協議内容>
福岡県の伊藤雄平先生より、ウエブ上で集計 を行うことで、随時検診結果を打ち込めるよう になり、また集計結果を共有することが可能と なるため、他県や他地区等との比較検討も容易 に行えるようになると補足説明があり、協議が 行われた。
座長の服部新三郎先生より当システムにかか る費用について質問があり、伊藤雄平先生より メンテナンス費用(ランニングコスト)につい ては別途検討する必要があるが、高額になるも のではないと説明された。
宮崎県の宮田純一先生より直接ウエブ上にデ ータを入力するのではなく、データの整合性を もたすためのチェック機能を加えてはどうかと 提案があり、伊藤雄平先生より入力欄に注釈を 付け適正な箇所に適正な病名等を入力していた だけるようにしたいと回答があった。
開発スケジュールについて伊藤雄平先生より、 来週(12 月の1 週目)に開発業者と最終の打ち 合わせを行い1 月には最終版が完成する予定と なっているので、1 月中には各県医師会の事務 局に連絡できるようにしたいと説明があった。
座長の服部新三郎先生より、各県に当システ ムが届いた時点で、使用方法、入力方法等をご 検討いただき、2009 年のデータから集計して いただけるようお取り組みいただきたいと提案 された。
<提案理由>
九州学校検診協議会によるマニュアルでは 「基礎疾患がなく1 年以上検尿異常が続く」と、 古い厚生省研究班の診断基準を使用している。 今後もこの方針でよいかをお聞きしたい。
<協議内容>
福岡県の伊藤雄平先生より、検診マニュアル を全国的に普及させる際に、当該の記載内容を どのように取り扱うべきかご協議いただきたい と補足説明があり、協議が行われた。
各県より、当該記載はWHO の診断基準と異 なっており、WHO 基準に統一すべき等の意見 も出されたが、提案事項2 で協議されたQ&A を追加する際に検尿マニュアルの改訂を行うこ とから、それまで検討を行っていくことに決定 した。
3)小児生活習慣病部門 座長 田ア 考
<提案理由>
この健診はまだ軌道に乗っておらず、各地で バラバラな状態だと思います。九州地区だけで もまとめて一つの流れを模索したいので、各県 (地区)のこの1 年間の活動状況をご教示下さい。
<各県回答>
それぞれの地区でそれぞれのやり方をやって きているが、養護教諭がなかなか足りない。事 故処理・フォローアップができていない。それ をきちんとすることによって、検診の形を打ち 出すことができる。これまでやった検診につい て、来年度纏めてみようということになった。
<提案理由>
学校での身体計測は定期的に行なわれます が、生活習慣病としての肥満への取り組みには 利用されていないのが現状です。法制化されて いる学校検尿において、学校から検査業者に提 出される結果報告書に身体計測値を入れること で、肥満のスクリーニングに役立つと思われ る。教育委員会、学校現場などを含め各県の事 情はいかがか。
<各県回答>
計測値が入れていただく必要があることか ら、協議の結果、小児生活習慣病部門としてで はなく、学校検診協議会として教育委員会に要 望していただくこととした。
検診協議会専門委員会の終了後に開催された。 協議を開催するに当たって、佐賀県医師会沖 田会長より次のとおり挨拶があった。
「去った8 月、熊本県で開催された九州ブロック学校保健評議員会で、平成21 年度九州学 校検診協議会並びに九州ブロック学校保健・学 校医大会を担当することを承認いただいた。本 日、同大会等の開催要項案を提出させていただ くので、ご検討をお願いしたい。大会開催日 は、平成21 年8 月、8 日(土)・9 日(日) で、ホテルニューオータニ佐賀を会場に、「子 どもたちの輝く未来のために」をメインテーマ として開催する。シンポジウムも開催すること にしている。ご協議をお願いしたい。また、鹿 児島県と福岡県から提案議題についてもご協議 をお願いしたい。」
続いて、熊本県医師会原理事より、「去った 8 月9 日〜 10 日に開催された第52 回九州ブロ ック学校保健・学校医大会並びに平成21 年度 九州学校検診協議会(年次大会)へのご協力に 感謝申しあげる。第52 回大会の参加者は、353 名であった」とお礼があった。
沖田会長を座長として協議を開始した。提案 議題は3 点で、提案要旨・各県回答の概要は次 のとおりであった。
協 議
〔提案要旨〕
本県では、別紙開催要項(案)のとおり、標 記大会並びに協議会を企画いたしております。 例年通り、午前中は内容等についてのご意見、 ご要望等がありましたらご教示下さい。
〔各県回答〕
生涯教育の単位だけでなく、眼科部門・耳鼻 科部門も含め各部門が各学会の専門医の認定が 取れるようお願いしたいとの意見が出され、佐 賀県からは調整を図っていきたいとの回答があ った。
協議の結果、各県とも佐賀県の提案に異議な く省略された。
〔提案要旨〕
本年5 月21 日付・日医発第202 号(地U 25)で日本医師会からも情報提供がなされてお りますとおり、文部科学省監修のもと日本学校 保健会から標記ガイドライン等が発行されてい ます。
「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」 並びに「活用のしおり」については、日本学校 保健会の「学校保健」ポータルサイト(http://www.gakkohoken.jp/)からダウンロードで きるようになっており、このことは郡市医師会 並びに本会FAX ニュース等で会員には周知し ているものの、「学校のアレルギー疾患に対す る取り組みガイドライン」は購入(1,600 円) しなければならず、記載方法・使用方法につい ての案内は、この通知のみであり現場で使用す るにはまだまだ課題があるのではないかと考え ている。
そこで本会では、来年1 月16 日(金)、17 日 (土)に県内2 カ所(各日1 会場)で、「学校の アレルギー疾患に対する取り組みガイドライ ン」の作成に携わった、国立病院機構相模原病 院の海老澤元宏先生を講師に、「小児気管支喘 息の病態と治療、食物アレルギーガイドライン (学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイ ドライン)の活用法について」研修会を開催す ることにしている。
各県の取組・使用状況をご教示下さいますよ うお願いします。
また、学校生活管理指導表の文書料について は、昨年12 月に開催された九州学校検診協議 会心臓専門委員会でも協議されているとおり、 各県のほとんどの医療機関(医師会判定委員会 での記載を含む)が無料で記載しているようだ が、アレルギー疾患用のものについても同様な 取扱いをするのか、各県で取り決め等があれ ば、併せてご教示下さい。
〔各県回答〕
各県より概ね以下の通り回答が示された。
また、エピペンの取り扱いについても協議が 行われ、日医では蜂刺され等の場合を考えエピ ペンを学校に常備しておくべきとしているが、 宮崎県より医療行為を学校側の判断に任せるこ とは危険であると意見され、大分県、長崎県よ り、アレルギー疾患と蜂刺されの例は一緒に考 えるべきではなく、エピペンを必要とする児童 には主治医が事前に説明し配るべきであり、対 象児は登校時にそのエピペンを養護教諭等に提 出する等の対応を図るべきであると意見された。
○大分県
実際にアレルギー疾患用生活管理指導表が必 要な方は少ないと考える。就学時健康診断等を 利用した対象児のスクリーニングをきちっと行 うことが重要となる。文書料については、県に 公費として対応していただくよう申し入れてい るところである。県は前向きに検討するとの回 答であった。
○福岡県
現在のところ県医師会としては郡市医師会に 周知を行ったのみで他の対策は講じていない が、郡市医師会によっては研修会等を行う等の 対応が図られている。文書料については本県に おける取り決めはない。
○沖縄県
沖縄県においては、各学校医におけるアレル ギー疾患の認識が非常に異なる状況であること から、福岡病院の柴田留美子先生を講師に招い た研修会を来年3 月に企画しており、学校医、 保健師等で共通の認識が得られることを期待し ている。
○長崎県
ガイドラインについては会報に掲載し周知を 図るとともに、来年2 月にガイドラインの各論 についての研修会を企画している。文書料につ いては、現在のところ長崎県医師会として統一 はしていないが、県医師会としては有料が良い と考えている。
○宮崎県
ガイドラインの取り扱いについて学校保健担 当理事者会を開催し、県担当課も交えて協議を 行ったが結論には至らなかった。県では、この ガイドラインを参照にアレルギー疾患の対応に ついて周知を図っていくが、「エピペン」だけ を特化した研修は現在のところ考えていないと のことであった。文書料については、有料とし て取り扱っていただくよう会員に通知を出して いる。
○熊本県
熊本県では、現場の混乱を避けるために現時 点での「アレルギー疾患用」学校生活管理指導 表の使用は見送っている。文書料については取 らない方向で考えている。
○佐賀県
ガイドラインについては、佐賀県医師会学校 医部会で一括購入し、部会員全員に配ってい る。文書料については、無料が良いと考えてい たが、大分県同様に県に公費として負担可能か 県に掛け合ってみたいと考える。
○鹿児島県
鹿児島県においても文書料についての結論は 出ていない。大分県から意見されたようにスク リーニングをしっかりやらないといけないと考 える。
〔提案要旨〕
現在、本県においては、フェーズ4 以降を想 定した新型インフルエンザ対応指針の見直しに 取り掛かっているが、本年5 月に学校保健法の 一部改正により、学校において予防すべき第一 種伝染病として、新たに「鳥インフルエンザ・ 新型インフルエンザ」が加えられた。
新型インフルエンザについては、県や保健所の 職員の間でも認識・意識にレベルの違いがあり、 教育委員会や教職員も同様であると思われる。
通常のインフルエンザでは、子どもが学校で 他の生徒から感染し、それを家庭に持ち帰り保護者等に伝染する。そして社会へ拡がってい く。強毒であることが懸念される新型インフル エンザに対する対策は、学校側が感染症予防の 要として、まずは教職員にしっかり教育をし、 その上で、正しい知識・対応を生徒たちに教え 込む必要がある。
また、県が策定する対応指針と学校における 対応がしっかり連動しなければならない。
本県においてはまだ学校における対策は進ん でいないが、各県のご意見・進捗状況をお伺い したい。
〔各県回答〕
各県の対応について各々紹介があり、これら を参考にして厚労省から出される通知に十分に 留意して、各県で対応していくこととした。
○鹿児島県
・厚生労働省の示している13 項目のガイドラ インに加え、鹿児島県では教育委員会と連携 し「学校等におけるガイドライン」を作成し た。
・新型インフルエンザ対策等について協議を行 う、「鹿児島県感染症危機管理対策協議会」 にも県教育委員会が参画している。
・学校現場には、県教育委員会から校長会等を 通じ各学校へ配布、周知を行い、各々対策を 検討していただくことになっている。
・今後は、学校現場だけでなく社会全体として このガイドラインで機能するのか検証を行 い、関係部局と連携を図りながら対策を進め ていきたい。
・厚労省が新しいガイドラインを来年2 月に出 してくると思うので、それに沿ってまた検討 していきたい。
○大分県
・県福祉保健部健康対策課と県教育委員会が協 力して、県の対応計画に沿って学校での対応 等について策定中とのことであるが、文科省 から学校保健法のように「学校における新型 インフルエンザ対策」の指針がだされていな いため、困惑している様子である。
・本県の教育委員会では、市町村教育委員会担 当者会議や養護教諭対象の研修会等を利用 し、新型インフルエンザの知識及び感染拡大 防止の意義等についての研修を行っていると ころである。
・地域で一人でも患者が出れば、学校は休校に すべき。
○沖縄県
・今年に入って行政主導で、県が中心となって 新型インフルエンザ対策のプロジェクトが立 ち上がった。沖縄県医師会が協力する形で進 んでいる。
・新型インフルエンザは医師会員によっても温 度差があるため、平成21 年2 月に、国立感 染症研究所感染症情報センターから講師をお 招きして、新型インフルエンザを正しく認識 してもらうとともに、沖縄県における今後の 対策の進め方などを学ぶ予定にしている。
・学校における対策もこれからであるが、これ らの共通認識を共有してから、早急に対応す る予定である。
・地区でも温度差があり、訓練を終えた地区も ある。行政によって休校にすべき。
○長崎県
・福岡の提案に賛成。郡市区医師会感染症対策 担当理事協議会を開催し、対策等について 種々検討する予定。
・県行政では、県教育庁において、福祉保健部 との連携の下、本年12 月までに「学校感染 対策ガイドライン(仮称)」を策定し、各市 町村の教育委員会において伝達公衆を実施予 定であり、来年3 月までには「学校感染対策 マニュアル(仮称)」を作成予定である。
○宮崎県
・学校における新型インフルエンザ対策は進ん でいないのが現状である。各県の状況をうか がって早急に教育委員会と検討していきたい。
・フェーズに沿った必要な対策として、情報提 供・発熱外来の場所の情報提供・相談窓口の 設定・学校再開の時期の検討等・予防接種の 啓発等を行っていくべきであると考えている。
○熊本県
・鳥インフルエンザ・新型インフルエンザに対 応するために行われた学校保健法施行規則の 一部改正について、郡市医師会と学校医部会 への周知依頼を行うとともに、会報・HP に て会員への周知徹底を図った。
・学校医部会では、部会全員へ改めて通知を行 われている。
○佐賀県
・佐賀県教育委員会では、学校現場における新 型インフルエンザ対策として、養護教諭を中 心とした関係者への情報発信、関係書籍の斡 旋、学校管理職及び関係者を対象とした研修 会の開催などが行われている。
・佐賀県健康教育課では、「佐賀県新型インフ ルエンザ対応行動計画」第3 版を作成中、学 校における対応も記載されているので、行動 計画に沿った対応の周知徹底を図りたいと考 えている。
その他の意見として、現在、学校保健担当理 事者会と学校検診協議会専門委員会は、別々の 場所で開催されているが、同じ場所でやってい ただけないかとの提案があり、今後調整してい くこととした。
印象記
理事 宮里 善次
平成20 年11 月29 日、福岡県において「九州学校検診専門委員会」が行われ、心臓、腎臓、生 活習慣病の各部門に分かれて、活発な議論がなされた。
前回、8 月の熊本県の会議において、『沖縄県では県内小中高等学校の心電図を4 業者に依頼し ている。しかしながら、精査にまわった症例から要管理者がどれくらいあったのか、まとまって おらず、学校現場や学校医に還元できていない。各県の状況はどうなのか、提示をお願いしたい。』 と提案をしてあったので、私は心臓部門の委員会に出席し、意見を拝聴した。
資料に示すように、九州各県とも県全体としてまとまったところはない。都市部ではまとまっ ているものの、郡部のデータが入ってない県が多い。
また沖縄県では12 誘導で測定しているが、県によっては簡易式の4 誘導を併用しているところ もあり、データの取り方もばらばらな印象を受けた。それでも各県がまとめたデータによれば、要 管理者は全体の1 〜 2 %であり、事前にまとめた沖縄県の値とほぼ同じ率であった。
今回の沖縄県の提案を受けて、九州各県はもちろんのこと、九州全体でデータをまとめましょ うという提案と同時に、座長から九州全体の心筋症発症率をまとめることが提案され、全員一致 で可決された。
それを受けて、12 月19 日に県医師会において、沖縄県の4 業者と調整会議を行い、「九州学校 検診専門委員会」の報告と、7 月に提出して頂いた今年度のデータの集計と次年度以降の定期開 催を決定した。4 業者は業者ごとに要精査と返事があった事例のデータは持っているが、4 つをま とめたものはなかったので、今後は県医師会事務局が集計管理することになった。
なお、腎臓は県の教育委員会保健体育課が集計している。
九州学校検診協議会専門委員会に引き続き、担当理事者会が行われた。次回開催担当県の挨拶 に続き、2 つの議題が協議された。
最初に学校における新型インフルエンザの対応である。鹿児島県は既にガイドブックを作成し、 配布済みである。しかしながら、担当者の話では2 年前に作成したので、訂正すべき箇所がある との報告であった。他の県においてはほとんどこれから作業に入る段階ということで、沖縄とほ ぼ同じ動きであった。
また、他県では新型インフルエンザが流行した時、「私は診ない」と発言している医者がいる が、いざパンデミックな状態になった時に施設を閉鎖しないかぎり、発熱患者のどれが新型イン フルエンザなのか分からない。診ざるを得ないのが実情だろう、それと診療所を閉めると社会的 制裁を受ける可能性は否定できない。結局、医療機関であれば診ざるを得ないという意見が大半 であった。新型インフルエンザに関していえば、医師会員の中でも温度差があり、まずは共通の 認識が必要である。沖縄県医師会では平成21 年2 月19 日に専門家を招き、新しい県医師会館で 講演会を行うので、多くの方々のご参加をお願いしたい。
二番目に日本学校保健会が出した『学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン』に ついて議論があった。
特に学校管理指導表を記載した時に有料と無料の県があったが、議論の結果、診断書と同様に 有料にすべきとの意見が多く、最終的には全会一致で有料が採決された。また、学校現場におい て、教師によるエピペンの使用は現段階では時期尚早との意見が大勢を占めた。それよりもエピ ペンを使用するような症例があった場合、学校、主治医、救急隊の三者で事前に協議し、救急車 が何分で到着し、救急病院まで何分かかるのか、救急車内での薬品使用の指示をどうするか、を 事前に協議することが望ましいとの意見がだされた。
学校現場におけるアレルギーの取り扱いについても医師間や学校保健師間でも対応が異なるの で、県医師会では平成21 年3 月1 日専門家による講演会を予定している。学校医担当の先生方に は是非ご参加をお願いします。