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つれづれなるままに

中山仁

中山内科医院 中山 仁

2009 年、私も還暦というわけだが、別に何 の感懐も無い。しかし、これが60 代で初老と 言う事なら別で、少々不愉快である。

何しろ、「老」である、いくら初がつこうと、 老は嬉しくない。私の世代はいわゆる団塊世代 なのだが、これは堺屋太一の造語で、大した意 味は無く、やたらに人数が多い、でかいかたま りみたいな世代と言う事である。アメリカでも 同様にベビーブーマーと呼ばれるが、年代は少 しズレるらしい。

数年前、ある会合で、ある先輩が盛んにダン コンの世代、ダンコンの世代と連発するので閉 口した事がある。塊を魂と間違えているらし い、塊はカイと読む。もっとも、ダンコンの世 代も勇ましくて悪くない気もした。

全共闘世代と言われる事もあるが、私の大学 では学生の5 %くらいしか学生運動はしていな い、残りほとんどはノンポリ(死語か?)だっ たから、「テロリストのパラソル」の作者の思 い入れたっぷりの文章も共感できなかった。 「ビートルズ世代」と称される事もある、私も ビートルズは好きだが、当時の音楽好きな若者 は何十というロックグループを聴いていたので ある。

私の小学生の頃は、まだTV は普及していな い。親子ラジオから流れる歌謡曲(死語?)や アメリカンポップスに夢中な私は意味もわからず“ヘッダンドヘッダン、ドゥーリー”と「ト ムドゥーリー」を口ずさみつつ、中の町小学校 から下校していた。やがて、ポール・アンカ、 ニール・セダカ、コニー・フランシス等の、今 ではオールディーズと言われる音楽が流行し、 日本でも坂本九、森山加代子らが大人気とな る。後年、那覇市の救急診療所で森山加代子を 診察した時、なつかしさに私の頭の中で、“テ ィンタレ〜ラリルンナッ”と「月影のナポリ」 のメロディが流れた(気もする)。ツイスト、 ドドンパ、サーフィン、スイム、と目まぐるし く流行し、クレージーキャッツ、若大将、ビー チボーイズ、ベンチャーズ、それから空前の GS(グループサウンズ)ブームとなる。GS と 共にフォークブームもあり、GS があっ気なく すたれた後もフォークは長く続き、拓郎、陽 水、かぐや姫からユーミン、中島みゆき、長渕 と今日まで脈々と続いている。と言うわけで、 私のカラオケのレパートリーはディックミネ、 田端義夫からサザンまでというスパンの広さで ある。これをビートルズ世代とひとくくりにさ れた日には、サイモン&ガーファンクル、カー ペンターズの立場はどうなる、サンタナ、トム ジョーンズはどうしてくれる、と紛糾する(事 はないか)。ともかく、こうした我々の世代を 名づけるなら団塊というより、カオスがふさわ しい気がする。世代の共通項は文化、いやサブ カルチャーであり、そこが共通していれば5、6 歳違っても同世代だし、共通しないと話も通じ ない。赤胴鈴之助の必殺技は?ときたら、真空 斬り、と出ないといけないし、矢吹丈のライバ ルは力石徹であり、“ま〜っ赤な太陽〜燃えて いる〜”は怪傑ハリマオである。日活アクショ ン、ことに赤木圭一郎について、熱く語り、興 が乗ればツイストも踊る人なら、私は是非友だ ちになって欲しいと思う。蛇足ながら、サンラ イトツイストが大ヒットした「太陽の下の18 歳」のカトリーヌ・スパークのツイストもいい が、ゴダール「女と男のいる舗道」のアンナ・ カリーナのツイストはベターである。「パルプ フィクション」のユマ・サーマンとトラボルタのダンスはツイストになっていない。(私はこ こんとこ、厳しいぞ)

などと、つれづれなるままに、よしなしごと を、書きにけり。