中頭病院小児科 宮里 善次
24 年前、丑年の新春干支随筆の寄稿依頼が あり、駄文を書いた。
12 年前にも依頼があったが、会員誌である以 上同じ人間が書くより、多くの会員に寄稿して 頂いた方がよかろうと思い、丁寧にお断りした。
そして今回3 回目の依頼である。2,249 人の 会員中、丑年の方は12 分の1、大雑把に見積 もっても185 人前後はいると思われる。だとす れば、3 回連続の依頼はすごい的中率である。
この当たりの良さからすれば宝くじでも幸運 が舞い込みそうなものだが、いまだかって100 円のスカ券以外は当たったためしがない。
今回もキャンセルを予定していたが、出張や 雑用などに追われているうちに締め切り日ま で、あと3 日しかないことに気がついた。
……、拙文にお付き合い願おう。
24 年前、文章の最後に『丑年牛座だし、の んびりと反芻しながらやるとしよう』と書いた。
しかし、その後の24 年間は馬車馬の如く働き、 働かされ、反芻する間もなく、背中を押されるよ うな日々を過ごしてきてしまった感がする。
さて、団塊の世代が次々と定年を迎えている。
しんがりを務める私の同年生、丑年組は今年だ。
団塊世代が青春真っ盛りの頃はアメリカンフ ォークソングに始まり、エレキブームであっ た。彼等が定年を迎える時、若い時に買えなか った憧れの高級ギターを購入する人が多いと聞 く。青春期の数年間弾いただけで、40 年近く ギターを触ったことがない人もいるらしいが、 それでも定年退職する自分にギターを買ってあ げる心情が良く分かる。
人生で一番心に残る歌や音楽は、17 〜 18 歳 の頃に聴いたものが最も多いらしいのだ。
ご多分にもれず、私も高校生の頃はギターに夢中になった。
とは云っても指南役はなんとか弾ける程度の 同級生で、あとは我流だったので、腕前はやっ と鳴らせる位で、今でもコードに# やら♭やら、 6 や9th などがつくと省いてしまうレベル、い わゆる3 コード派である。
その頃手に入れたギターは五千円の合板ベニ ヤ製のアコースティックギターだったが、少年 には十分過ぎるものであった。
青春期を過ぎると、ギターとは無縁な日々が 続いた。
42 歳の誕生日に愚妻がギターをくれたが、 ケースから出てきたのはクラシックギターであ った。アコースティックとは弾き方や音質も違 うので、ほとんど触らなかったが、これをきっ かけに一本のアコースティックを手に入れた。
一杯はいった時に、60 〜 70 年代のフォーク ソングを鼻歌で口ずさむだけなのに、気がつい たら数年に一本の割合でギターが増えていた。
Martin やGibson のような高級ギターではな いが、眺めているだけでも私のストレスを発散 させてくれる、そんな彼女達を紹介しよう。
あまりにも増えすぎて場所をとるため、最近 は家族の機嫌がよろしくない。
娘、「お父さん、今からでもギター教室行った ら? ちゃんと弾けた方がいいよ」
妻、「指を使うからボケ防止に役立つかも。で も一つで十分でしょう? 私がプレゼントした ギターは…?」
…、口がさけてもEpiphone の下取りに出した と言えない。